まだまだ言いたいことはあったであろうパメラちゃんに黙ってもらい、俺はパメラちゃんと共にお風呂を出た。
そして、新しい服に着替えて地下のテーブルがある場所へと戻る事にした。
「やぁ。みんな、もうお風呂は出たんだね」
「あ。リョウさん。どこに行ってたの? 台所を探しても居ないしさ」
「悪いね。風呂に入ってたんだよ。夕食の準備を終わらせてちょっと時間があったから」
「そうなんだ」
「というワケだからさ。夕食にしようか」
俺はフィオナちゃんからの追及をサクッとかわして、昼食の時に座った場所と同じ場所へ座る。
パメラちゃんはまだ何かを言いたそうにしていたが、俺は唇に人差し指を当てて言っちゃ駄目だよ。とパメラちゃんに伝える。
「あら」
「っ! どうしたの? ドロシー姉さん」
「んー? どしたの? 姉さん」
「いえ。何やら面白い状況になっている様な気がしまして」
「面白い状況~?」
首を傾げながらドロシーさnに問いかける妹たちにドロシーさんはふわりと微笑んで俺に視線を向ける。
俺は何でもないよという様な顔で笑みを返した。
「お兄さん。パメラはいかがでしたか?」
「んー? どういう意味?」
「さて。何のことか。よく分からないね」
「お兄さんは誤魔化すのがあまり上手くはありませんわね」
「……」
中々言葉の争いが得意そうな空気を出しているドロシーさんに、俺はどうしたものかと考えていたのだが。
ドロシーさんと俺のやり取りを聞いていたフィオナちゃんが俺にジトっとした目を向けてきた。
「なに? なんかいやらしい話してる?」
「してないよ」
「でも、なんかそういう雰囲気」
「気のせいだよ」
「本当かなぁ~」
「えぇ。ただ一緒にお風呂へ入っただけ。ですものね」
「っ!?」
「ドロシー姉さん!? なんで、それが!」
「あら。本当に入ったんですのね。パメラ。貴女もなかなか」
「!?」
ドロシーさんのカマかけに引っかかってしまったパメラちゃんは、激しく動揺しながら視線をさまよわせる。
両手はキュッと胸の前で結び、不安そうに俺へと視線を向けた。
「はー。バレちゃったか」
「お、兄さん……?」
「実はそうなんだよね。パメラちゃんにお願いしてさ。一緒に入ってもらったんだ」
「えー」
「パメラずるーい!」
「ね、ね。お兄さん。私とも入ろ!」
「また今度ね」
俺は一瞬パメラちゃんへと向いた鋭い視線を外すために、それらしい事を言って意識を逸らす。
だが、ドロシーさんには見抜かれている様だった。
まぁ、特に突っ込むことは無さそうであるが。
「また今度ね。じゃなーい!」
「うわっ! フィオナちゃん!?」
「見損なったよ! リョウさん! こんな小さな子に手を出すだなんて!」
「出してないよ!」
「出してたじゃない! 一緒にお風呂に入ってさ! リリィにも手を出したくせに!」
「く、苦しいよ……」
興奮したフィオナちゃんは俺の胸倉を掴んで勢いよく言葉を投げる。
それは全て俺に命中し、さらに両手を締め上げているからか、息もあまり出来ない状況であった。
そんな状況の中、この混乱を引き起こした主であるドロシーさんが困った様な声を上げた。
「落ち着きなさいな。フィオナさん」
「これが落ち着けるワケないでしょ!」
「まぁ。それほどリョウさんと共にお風呂へ入りたかったのですか?」
「そ、そそそ、そんなワケ無いでしょ!?」
フィオナちゃんは顔を真っ赤にしながら俺を開放してくれた。
いや、命が無くなるかと思ったよ。
「ホントにさ。何も無かったよ。ただ頭洗ってもらっただけ」
「あら? パメラの髪と体も洗って下さってますよね?」
「リョウさーん?」
「落ち着いて。フィオナちゃん。体を洗って、洗ってもらっただけだよ」
「……確かに?」
「でも、よく分かりますね。俺が洗ったって」
「分かりますよ。毛先まで一本一本丁寧に洗って下さってますし。肌だって。パメラは一人でこれほど綺麗に洗えませんからね」
「ちょっ! ドロシー姉さん!?」
「なるほど」
「お兄さんまで! 納得しないで!」
「なるほど。普段からいい加減にやってるからお兄さんに誘ってもらえたのかー。うまい手を考えたなー」
「ねー。こういう趣味の人もいるんだねー」
「おやめなさい。リョウさんは気になっただけで、手を出したという事は無いでしょうから。ね? パメラ」
「う、うん。その通り」
「分からないじゃーん」
「そうそう。結構お風呂長かったし」
「わかるわよ。パメラはまだ経験が無いから。もしリョウさんが手を出していれば、動きで分かるわ」
「あー。なるほどー」
「でも、口でしたかもよ?」
「確かに!」
「そうね。確かに。その可能性もあるわ。パメラ?」
「してない! してないですから!」
「あら。そうなの? それは残念ね」
「残念って……!」
「パメラに手を出していたら、リョウさんを落とせる道が出来そうだったから。本当に残念だわ」
ニコリと笑うドロシーさんに、俺はなんだかなぁとため息を吐いた。
そして、すぐ隣からジトーッとした目を向けてくるフィオナちゃんに声をかける。
「えと? どうしたのかな。フィオナちゃん」
「ホントに手を出してないんでしょうね」
「妹に誓って」
「……それなら、まぁ……良いか」
フィオナちゃんが何とか納得してくれた為、俺は夕食の時間にしようと手を叩いて宣言した。
話を逸らすワケではないが、ミーシャ様を待たせているのだ。
早くするに越したことはないだろう。
「申し訳ございません。ミーシャ様。食事前にドタバタと」
「いえいえ。楽しませていただいております」
「……それは何より」
「しかし、本当にモテるんですねぇ。リョウ様は」
「年下の子ばかりにですけどね」
「あら。年下はお嫌いですか?」
「嫌いでは無いですよ。妹の様に思っています」
「なるほど。それで恋愛対象にはならないと」
「まぁ、そういう話ですね」
「では、私などは?」
「王族に手を出す勇気はありませんよ」
「なるほど。リョウ様は罪作りな方ですね」
「……いやいや、そんな事はありませんよ」
冷や汗を流しながらミーシャ様の言葉を否定するが、ミーシャ様はクスリと笑って俺に視線を向ける。
「王族に手を出す勇気はないと言いながら、王族の意見を否定するのは良いのですか?」
「……それとこれとは話が違うと言いますか」
「同じことですよ。同じ不敬罪。であれば、リョウ様にとって王族と敵対する様な行為は恐れる様な行為ではない。しかし、私には手が出せないという。これは何かおかしいですわね」
「何も……おかしなことはありませんとも」
「ふふ。私が好みではないのだ。という事でしたら納得も出来ますが、綺麗だ。美しいと何度も言われておりますからね」
「うっ……」
「フィオナさんの苦労が分かるようですわ」
「ですよね! ミーシャさんも分かりますか!?」
「えぇ。短い付き合いではありますが、よく分かりますわ。様々な女性に手を出して、責任は取らない。本当に悪い方」
「ですよねー! 私の親友もすっかり騙されちゃって!」
「まぁ。酷い状態ですわね」
言いたい放題され始めてしまい、俺は言葉を飲み込んだまま針の筵で耐えていた。
ここは耐える時である。
辛抱の時だ。
「ぐ、ぐぅ……」
「苦しそうな顔してるけどさ。リョウさんが悪いんだからね」
「そうですわね」
「分かっているよ」
俺は両手をあげて、いつもの様に白旗を振りながら降参だよ。と示す。
しかし、フィオナちゃんの視線はいつも通りジトっとしているし。
ミーシャ様は困った様な顔で苦笑しているのだった。
「いや、本当に。本当に、俺はそんなつもりじゃないんだって」
「はいはい。分かった分かった」
「妹が! 冷たい……!」