異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第404話『お姫様の旅路(新しい世界)14』

 ワイワイと騒ぎながらも、ひとまず全員が床に置いたカーペットの上に座った事で、テーブルに置いた夕ご飯を食べ始める。

 とは言っても、料理は全て大皿に盛られた物であり、各人が食べたい物を好きな様に取っていく形式であるが。

 なので、俺はミーシャ様を見て、どの様に行動するのか見ていた。

 

 ミーシャ様が自分で料理を取りたいと考えているのなら、その様にするべきだが……そうでは無いのなら、こちらで取るとしよう。

 

 そんな事を考えてミーシャ様を観察していたのだが。

 どうやらミーシャ様は何を食べるか悩んでいる様で空の皿を持ったまま視線をウロウロとさ迷わせていた。

 

「ミーシャ様。こちらでお取りしましょうか?」

「あ、申し訳ございません。はしたないお姿を」

「いえいえ。見た事のない料理ばかりでしょうから。何を食べれば良いか悩んでしまうのは仕方のないことかと思います」

「……そうですね。では、オススメの料理をお願いします」

「了解です」

 

 と、俺はミーシャ様から皿を受け取り、盛り付けようとしていたのだが、すぐ隣に座っていたフィオナちゃんからクイクイと服を引っ張られる。

 

「ん? どうしたの? フィオナちゃん」

「盛り付けなら、ここにプロが居るでしょうが」

「あ。それもそうだね。では、よろしくお願いいたします。フィオナちゃん様」

「よろしい。私にお任せあれ」

 

 フィオナちゃんはうむ。と言いながら俺から皿を受け取り、テーブルの上におかれた料理を順番に、綺麗に盛り付けてゆく。

 料理は見た目も大事だというが、フィオナちゃんの盛り付けは非常に美しく、食欲をそそる物で。

 受け取ったミーシャ様も、とても嬉しそうな顔をしていた。

 

 俺はそんなミーシャ様を横目で見つつ、俺自身の皿にも料理を入れようとしていた。

 が、また服をクイクイと引っ張られる。

 

「今度は何かな?」

「リョウさんのも盛ってあげる」

「良いよ。俺は。自分でやるから」

「……」

「何かな。その顔は」

「別に? ただ、リョウさんの盛り付けはアレだからな。って思ってるだけ」

「アレとは……? どういう物なのでしょうか?」

 

 フィオナちゃんの呟きに、ミーシャ様が反応し、俺たちのやり取りを見ていた子達も俺に視線を向ける。

 何とも恥ずかしいな。

 

「別におかしな盛り方はしてないですよ。普通ですね。普通」

 

 と言いながら、俺はとりあえず手前にあったサラダを適当に量取って皿に乗せ、その上に肉料理をぽいぽいと乗せてゆく。

 とにかく量を食べたいから、多めに作っている料理から攻略していく方針だ。

 

「……」

「何かな? そんな目で見て」

「野生の魔物じゃないんだからさ。もっと彩りとか気にしようよ」

「気にしてるでしょ。ほら。カラフル」

「二色しか無いじゃん! もっと色々な料理があるんだよ!?」

「手の込んだ料理は数が少ないからね。そういうのはみんなが食べ終わってからだよ。今はまず量」

「く~。こんの~!」

 

 フィオナちゃんはどこかイライラとした様子で声を漏らしていた。

 しかし、こればかりは仕方のない事だと思うんだよな。

 俺はとにかくいっぱい食べるから、繊細な味とかはもっとお腹が膨れてからにしたい。

 けど、フィオナちゃんは自信のある料理だから、幅広く味わって欲しい。

 

 だから、互いの考えが違うのだからぶつかってしまうのは仕方のない事だとは思う。

 

「仕方のない事なんだよ。これは」

「くんの~!?」

「まぁまぁ、どうどう」

「私は落ち着いてます!!!」

 

 とてもそうは見えないが、一応落ち着いていると言い張っているフィオナちゃんを否定するのも違うな、と思い……俺は言葉を飲み込んだ。

 そして、自分の食事へと向かった。

 何だかんだと色々あって、今は結構腹が減っているのだ。

 とにかく飯が食いたい。

 

 これは最近気づいた事なのだけれど。

 どうやら俺の体はこっちの世界に来てから大きく変化をしている様で。

 冒険をしている間や仕事中。緊張している間などはあまり食事を取らなくても大丈夫で、睡眠等も少なく活動出来るのだが。

 ひとたび仕事が終わり、緊張が解放されると、今まで取っていなかった食事や睡眠を体が求める様になり、食べて、寝て。という生活になってしまうのだ。

 しかもその時の量は普段よりも遥かに多く、どれだけ食べても止まらない。

 

 まぁ、フィオナちゃんもそれを知っているから、サラダと肉料理がここに居る人の数から考えるとかなり多くなっているという事なのだろう。

 ありがたい話だ。

 

 しかし、それはそれとして栄養バランスやら、見た目の問題やらがあって、綺麗に彩りを気にしながら料理を取って欲しいという思いもあるのかもしれない。

 だが、だがしかしである。

 

 折角妹が丹精込めて作ってくれた豪華な料理を、ただの栄養補給という形で消費してしまうのは非常に勿体ないと思うのだ。

 だから、今はまだ妹の冷たい視線を受けながらも、まず栄養補給としての食事を終わらせる。

 それから、丁寧に整えられた味を楽しもうと思う。

 そう思うのだ!!

 

「……ん。こんなもんかな」

「落ち着いた?」

「まぁね。じゃあ、これからはちょっとずつ食べていこうかな」

「そういう事なら、はい。お皿。貸して」

「あいあい」

 

 フィオナちゃんはため息と共に俺の皿を受け取って、今度こそミーシャ様に行った様な盛り付けをしてくれた。

 そして、俺はその皿をテーブルに置いて、一つ一つの料理を丁寧に味わうのだった。

 

「……うん。凄く美味しいね」

「リョウさんはすぐそう言うからなぁ。何の参考にもならないんだよね」

「これは困ったな」

 

「フィオナさん。私もとても美味しいと思いますよ」

「ミーシャさんの口に合うっていうのは、嬉しいですね! どれが美味しいですか!?」

「どれも素晴らしいですが、私はこの……」

 

 ワクワクとした顔のままミーシャさんと話し始めたフィオナちゃんに、席を変わろうかと言って、俺はフィオナちゃんと座っている位置を変えた。

 テーブルの端に座っているミーシャ様の隣に座ったフィオナちゃんは楽しそうにミーシャ様と言葉を交わし合う。

 

 そして、俺はフィオナちゃんの隣に座っていたミリーちゃんや、斜め前に座っているドロシーさんへと視線を送った。

 

「あら。いらっしゃいませ。リョウさん」

「えぇ。お邪魔しますね」

「っ!? お、お兄さん!? ぶほっ」

「ちょっと、お姉ちゃん。汚いから。ご飯吹き出さないでよ」

「ご、ごめん。驚いちゃって」

 

「ごめんね。驚かせちゃったみたいで」

「いいんですよー。ミリーがおっちょこちょいなだけだから」

「別に焦らなくてもいいのに、口いっぱいに詰め込んでね」

「恥ずかしい~」

 

「別にいいじゃん。ずっとこうだったんだから……! 今更変えられないよ!」

「まぁ、それはそうだよね」

 

 俺は、ミリーちゃんの口元をタオルで拭きながら、大丈夫、大丈夫と頭を撫でる。

 そんな俺の行動に、ミリーちゃんは酷く恥ずかしそうにしながら、うぅ……と呟いていた。

 

「変えたい事、変えなくても良い事。色々と考えて、選んでいけばいいと思うよ。変えたい事があるのなら、協力するけどね」

「私は……その、姉さんみたいになりたいから……」

「それだと、確かに所作には気を付けた方が良いかもね。ドロシーさんは見てて美しい立ち振る舞いをしているし」

「まあ」

「そうそう。お兄さんの言う通りだよ」

「ガツガツ食べないもんねー」

 

「まぁ、俺は元気に食べる女の子も可愛いと思うけどね」

「あ! 私、もっと食べる!」

「あたしも!」

 

「みんな元気で何よりだよ」

 

 消極的に。

 あまり進んでいない食事を半ば強制的に進めながら俺はニッコリと微笑むのだった。

 実に可愛らしい事だ。

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