異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第416話『お姫様の旅路(新しい世界)26』

 我が妹。天才フィオナちゃんのアイデアにより、桜とドロシーさんの間で行われていた戦争は、ひとまず停戦という形に決着した。

 まぁ、争うのが好きというワケではなく、二人にとって譲れないものがあるから争っているだけだろうし。

 争いの根が無くなれば、落ち着くのも必然という物である。

 

 そして、争いが無くなってからは、各家のどこに転移門を設置するかと。

 設置した後の動線について話し合う事になった。

 

 現在存在している家はセオスト、シーメル王国、スタンロイツ帝国の三か所である。

 それぞれの家の見取り図を用意して、かなり広いスタンロイツ帝国のお店スペースにそれぞれの家の見取り図を置いた家のゾーンを作り出した。

 そして、現在家の中で生活している主要人物を集めて、各家のやり方や立ち入り、利用に関するルールを決めてゆく。

 

 残念な話ではあるが、シーメル王国に居る子供達に関しては、現在シーメル王国を管理している桜に全て一任する事とし。

 ユウキちゃん達に関しては客人扱いとする事で大雑把に決めてゆく事になった。

 

「まず最初に決めるのは、どこでも行ける人?」

「まぁ、そうですわね。とは言っても、こちらに該当する方は少ないでしょうけど」

「そうだね。お兄ちゃんは確定として……後は、誰? そっちの家で、こっちの家の人で許可を出しても良い人は居るの?」

「えぇ。無論おりますわ。フィオナさんと、ココさんですわね」

「フィオナちゃんは分かるけど、ココちゃんは何でさ」

「立ち入りを許可する事に理由を話す必要性を感じませんが」

「ココちゃんを騙したり、何かに利用したりしないか確認したいだけ」

「ハァ……まったく。疑り深いですわね。ココさんに全面的な許可を出す理由。そんな物。ココさんがとても可愛らしいから。に決まっているでしょう!」

「は?」

「私はグチグチと煩い小娘とは話もしたくありませんが、あの愛らしい御方とは仲良くなりたいのです。スタンロイツ帝国の家を楽しんでいただきたい。ただ、そう考えているだけですわ」

「……ハァ。分かったよ。ココちゃんを泣かせたら許さないからね」

「それこそ、こちらのセリフですわ」

 

 相変わらず少しの会話の中でビリっと火花を散らしながら会話をする二人に、俺は小さくため息を吐いた。

 が、まぁ話し合いは進行しているし、問題は無いだろう。

 

「あ。ドロシーさん」

「はい? なんでしょうか。フィオナさん」

「調理場だけでも良いけどさ。リリィにも許可を出して欲しいな。リリィも私と同じくらい美味しい料理が作れるの。それに、すっごい良い子だから。悪いことはしないよ」

「あら。フィオナさんと同じくらい。であれば、家の全てに許可を出しましょう」

「えっ!? 良いの!?」

「えぇ。そこまで多く話したワケではありませんが、私はフィオナさんを信頼しています。そんなフィオナさんが信頼できると言う人ですから。何も問題は無いでしょう。それに、リョウさんが受け入れた方ですしね」

「ありがとう! ドロシーさん」

 

「お兄ちゃんが受け入れたって話なら、私が誰よりも早く、長くお兄ちゃんと一緒に居るんだけどね」

「別に私は貴女の善性を疑ってはいませんわ。ただ、甘ったれた小娘だな。と思うだけで。話をしているとイライラするので、スタンロイツ帝国の家のプライベートスペースは全面的に貴女の立ち入りを拒否しますね」

「好きにすればいいじゃん! 別に興味無いからさ!! アンタの家なんて! こっちだって、セオストとシーメル王国の居住区は立ち入り禁止だから!!」

「あら。それは困ってしまいますね」

「何が! 私と会うとイライラするんじゃないの!?」

 

「いえ。別に貴女はどうでも良いのですけれど。あ、いえ。見たくないのですけれど。フィオナさんや、リリィさん? それにココさんやリョウさんと親しくなって、部屋でお話がしたくても、封鎖されているのでは困るので」

「イチイチ嫌味な女だね!」

「何かある度に噛みついてくる方よりはマシかと思いますが?」

「誰の事言ってんのさ!」

「鏡が必要でしたら持ってきますけれど?」

「たたき割ってやるから!」

「まぁ、恐ろしい」

 

 しかし、アレだな。

 こうして見ていると、桜の方がいつも負けているんだな。

 勢いがあるから対等な様に見えるけど、ドロシーさんの方が基本的にカウンターしてるから、ダメージは桜の方が大きそうだ。

 それでもスタミナがあるから、何度も挑んでて、結局対等みたいに見えるのが、少しおかしな所ではあるけれど。

 

「二人とも。喧嘩をしない為にルールを決めるんでしょ?」

「だって、お兄ちゃん! この女が!」

「桜」

「だって、お兄ちゃん!」

「だってじゃありません。そんなに怒ってるとココちゃんもビックリしちゃうよ」

「うぅ……」

「ほら。ちゃんといい子に出来たらご褒美上げるから。桜の好きなもの。だから、表面上だけでも仲良くね」

「はぁーい」

 

 桜はイヤイヤという顔をしながら、キッとドロシーさんを睨みつけた。

 が、約束である為、文句は言わず、大人しく話し合いをする体勢に……は、なれなかったのかフィオナちゃんやリリィちゃんの所へ走って行った。

 まずは気持ちを落ち着けるのだろう。

 

 何ともまぁ、難しい事だ。女の子というのは。

 

「リョウさんは……」

「はい?」

「少々甘すぎるのではないですか? あの子に」

「そうですか?」

「えぇ。私にはそう見えます。このままではあの子は色々な場所で衝突して、生きる事も困難になるのでは?」

「まぁ。確かにそうですね。その可能性はあると思います」

「でしたら……」

「でも、今のままの桜を愛して受け入れてくれる人も、場所もありますから。何があっても大丈夫ですよ。貯金もなるべく多く残していますしね」

「……リョウさんは」

「はい」

「何故、それほどあの子を、その……特別甘やかす様な真似をするのでしょうか。他の子よりも、どこか歪に見えますが」

「桜は、ずっと苦しんできた子なんです」

「……こんな事を言いたくはありませんが、私の妹たちも、苦しい人生を送ってきましたよ」

「えぇ。そうでしょうね。人により、色々な不幸はあるでしょう。でも、俺は……自由なんて一つもない世界で、何も出来ない俺に、苦しみながらも笑いかけてくれた桜に、少しでも自由に生きて欲しいって願ってしまうんです。あの子の冷たい手をずっと握っていたから」

「まさか……リョウさんが前に言っていた、病弱な子というのは」

「桜の事ですよ。今はすっかり元気になりましたけどね。それでも、俺はあの子に厳しくする事はどうしても出来なくて」

「そうですか……。分かりました。私も少しだけ、あの子に柔らかく接してみます。出来るかは分かりませんが」

「ドロシーさん……良いんですか?」

「えぇ。私も、握りしめた手が、冷たくなっていく感覚は……よく分かりますから。もし、今もここにいたなら、元気になったのなら、きっとリョウさんと同じ様に、どこまでも甘やかしてしまうでしょう。だから……同じですよ。私も」

「ドロシーさんは、本当に優しい人ですね」

「止めて下さい。私は自分の知っている事に共感しているだけの女ですよ。だから、優しくは無いんです」

 

「それでも、ありがとうございます。あ、でも……本当に無理はしないで下さいね。桜は、アレで結構強いですから」

「まぁ、そうですね。適度に遊んであげますよ」

 

 ドロシーさんはフッと笑ってそのまま再び家の見取り図を見ながら色々と書き込み始めた。

 何となく、もしかしたら桜も色々な場所に入れる様にするのかな。なんて想いながら見取り図を見れば、トイレに『サクラ立ち入り不可』と書かれていた。

 

「ちょっとー!? 何書いてんのよ!」

「あら。見つかってしまいましたか」

「見つかったかじゃないよ! こんな堂々と書いておいて! トイレが使えなかったら、どうすれば良いのさ!」

「漏らせば良いのでは? お子様ですし。何も恥ずかしい事はありませんよ。クスクス」

「キー! お兄ちゃん! 私、この女! 嫌い!」

「はいはい。分かったから」

 

 桜は怒りを示しながら、俺に飛びついて、ドロシーさんの悪口を言う。

 が、ドロシーさんは何も気にせず微笑みを浮かべているのだった。

 

 仲良く……仲良く出来ているのか?

 仲良く?

 

 色々と疑問は残るが、順調に家の見取り図は埋まっていくのだった。

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