さて。
怒りの中にあったミクちゃんもどうにか落ち着き、俺たちは大広間で始めての食事をする事になった。
俺の座る位置は当然の様に大広間の中央で。
流石に落ち着かないからと背中には壁があるけれども、左右には様々な子達が入れ替わり立ち替わり来るようになった。
まぁ、楽しそうだから良いのだけれど。
そして、食事はビュッフェ形式である為、自分の食べたい物を食べたい様に持ってくる形式だ。
その為、皿の中の物が無くなったら、その子が取りに行って、空いた場所に別の子が座りに来る。という感じになっている。
殿様じゃないんだからさ。
もっとみんな話したい子と一緒に話をしていれば良いと思うんだよな。
が、まぁ、そういう事は言わない方が良い為、俺はニコニコと子供達の話を聞いていた。
が。
そんな俺の皿も空いてしまう事もある為、俺は食事を取りに行こうと腰を浮かせたのだが。
それに待ったをかけたのはフィオナちゃんであった。
「良いよ。リョウさんの分は私が取ってくるから」
「いや、それくらい俺が」
「良いから。リョウさんと話したい子はいっぱい居るんだからさ。リョウさんの仕事はそこで話を聞く事だよ」
「そ、そう? なら、そうするけど」
フィオナちゃんに座ってろ。と言われ、俺は大人しく再び話を聞く事にした。
そして、フィオナちゃんが持ってきた皿の食事を食べたり、おままごとの延長戦で、ご飯を食べさせて貰ったりしながら、食事を終えた。
食事が終わってから、子供達は元気にシーメル王国の地下にある遊び場へと向かい。
俺も一緒に、と言われたが、まだやる事があった為、それは断って、ドロシーさん達が座っている大人組の所へと向かう。
「あら。お疲れ様ですわね。リョウさん」
「えぇ。まぁ。あ、ミーシャ様は食事、どうでしたか?」
「えぇ。とても楽しませていただきました。皆さんのお話も楽しくて」
「それは良かった。申し訳ないです。放置してしまって」
「いえいえ。リョウ様にはリョウ様の役目がございますものね。それに子供達も楽しそうで。見ていると私も楽しくなってしまいました」
「それは、何よりですよ」
ハハハと軽く笑いながら、ミーシャ様は問題なしと判断し、次の話に移る。
「それで……どうだろう? この大広間は問題ないかな?」
「えぇ。多少汚れましても、魔導具で掃除は簡単ですし。何よりも座っていて安心出来ますからね。私は良い部屋だと思いました」
「それは何より。フィオナちゃんとリリィちゃんはどうかな」
「良いけど。食事はちょっと工夫しなきゃなぁって感じ? ね? リリィ」
「うん……ビュッフェ形式だと、料理の置き場に困るし。先に一品をお盆に乗せて食べる食堂形式の方が良いかも」
「後は小さなテーブルとかあると良いんじゃない? どうしても畳の上だと食べづらいし。麺類とか食べるなら、お盆は置けたほうが楽でしょ?」
「確かにね」
「流石は専門の方々という所でしょうか。たった一回でこれほどの意見が出るとは」
「ホントにね。俺なんか何も考えないで食べてただけだよ」
「それは私も同じですわ」
「そこはほら。餅は餅屋っていうし。狩りをするならお兄ちゃん、接客とかならそこの女。って感じでそれぞれ得意分野がある感じで良いんじゃない?」
「サクラちゃん……ドロシーさんの事、まだ名前で呼んでないんだね」
「仲良くしなきゃ」
「良いの! 私は! フィオナちゃんもリリィちゃんもアイツに心を許しちゃってるから、私だけは負けないの!」
「何の勝負をしてるのさ」
やや呆れた様な顔でフィオナちゃんが意地を張っている桜に笑いかけた。
しかし。
「リリィちゃんはもうドロシーさんと仲良くなったんだね」
「えぇ、まぁ。悪い人では無いですし」
「悪い人だよ!! お兄ちゃんを騙す悪い女!」
「まぁ。悪い女だなんて。ちょっといい響きですわね。それらしくリョウさんを誘惑しようかしら」
「キィー!」
「あーあ。またサクラちゃんが壊れちゃった」
「落ち着いて。桜ちゃん」
何だかんだと仲良く出来ているみたいで良かったな、と思いつつ、俺はそのまま桜たちの奥に居る、部屋の隅でアイスを食べながら笑っている一団を見た。
が、まぁ。ミクちゃん達は客人だし。
楽しそうな話を邪魔するまい。
「ひとまず頂いた意見をまとめますと、大広間は何か、大きなイベントの時に使うのは良いですが、普段使いは難しそうですわね」
「そうだねぇ。確かに」
「そうなると、食堂の様な部屋が必要かしら」
「んー。でも、そうするとフィオナちゃん達が常に料理を作らなきゃいけないみたいになりそうでなぁ。あんまりよくない気がする」
「それなら、もうキッチンも入れる様にしちゃえば? 勿論許可制だけどさ」
「あー。食べたい時に食べたい物を作る形式? でも、大丈夫?」
「キッチンが荒れるって話なら、ほら。今日のメニュー! って言って、大量に作って置いておくとかさ。後は温めるだけー。みたいな?」
「それは良いかもしれないですわね。私達は夜の仕事で朝起きられませんし。夜のご飯もおそらくバラバラですから」
「逆に私やリリィはさ。朝早くなるんだよ。三食の仕込みから始めないといけないし。でもその代わり夜は早く寝るけどね」
「私やココちゃん、他の子達は結構時間通りに過ごしてるよ。だから、私達の時間が一番人が多いんじゃないかな?」
ドロシーさん。フィオナちゃん。桜。
それぞれに、それぞれの事情があり、それぞれの時間がある。
俺だって、食事をする時間は決まってないし。
やはり食べたいと思った時に食べる形式が一番の様に思えた。
「そう考えると、自動販売機みたいな感じが一番良いのかもね」
「あー。確かに。そうだね」
俺が呟いた言葉に、桜はなるほどと頷いていたが、他の子達はよく分からず首を傾げていた。
言葉は通じても、概念が無いと意味は通じないという奴だ。
「あー。っと、こう商品が並んでてさ。客がこれって選んだ奴が出てきて、それを食べるっていう感じの魔導具なんだ」
「はー。便利そう。だけど、仕込みが結構大変じゃない?」
「それもそうだけど。調理はどうするんですか? その形式だと簡単な料理しか作れないんじゃ……」
「ふっふっふ」
「ん?」
「お悩みのよーですね! そんな時は!! ジーナちゃんの出番だよ!」
今までどこに居たのか。
突如として部屋に現れたジーナちゃんは余っていたビュッフェのご飯を皿に乗せて、もぐもぐと食べながら俺達の前に舞い降りた。
「ジーナちゃんに何か名案が?」
「おー。ジーナちゃんに何か名案が?」
「あるよ! とっておきの魔法! その名もー! 時間停止魔法ダー!」
「……?」
ジーナちゃんが大きな声で叫んだせいか、奥の所にいたミクちゃんがバッと顔を上げて、立ち上がり、こちらに歩いてきた。
その顔は既に険しい。
「時間、停止……ですか?」
「そう。箱の中の空間を拡張して、その中に入れた物の時間を止めるんだ。こうすれば腐らないし。作ってすぐの料理だから、暖かいんだよー!」
「へぇー。便利」
「でも、それ大丈夫? 中に入った人間も動けなくなるとかじゃないの?」
「そこはダイジョーブ! 人間はその対象から外せばいいんだよ。もしくはお皿の上に乗っているモノだけ。とかに設定すれば良いし。ジーナちゃんは魔導具なんかに負けないから。何かあってもジーナちゃんが何とかするのだ!」
「なるほど」
「それは、メニューも工夫出来るし。結構いいかも?」
「ちょっと!? 時間がどうのという話が聞こえたんですが!?」
ジーナちゃんの提案に俺たちがウンウンと頷いていると、やはりというか怒りに染まったミクちゃんが話に乱入してくるのだった。