異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第420話『お姫様の旅路(新しい世界)30』

 まぁ、正直なところ。そうだろうなと思っていた話ではあるのだけれども。

 ジーナちゃんのお家の話に関しては賛成だ、反対だの前に、そもそも受け入れる事が難しい状況だった。

 しかし、ジーナちゃんだけ仲間外れというのも非常に悲しい事である為、俺はどうにかならんかな、と考える。

 いや、俺は別にジーナちゃんの家がどんな場所にあっても気にならないんだけどね。

 

「どうにかなりませんか。ミク様」

「取って付けた様に様とか付けるのは止めて下さい。どうにもなりません」

 

 わーぎゃーと大騒ぎの中、比較的冷静な勇者チームの一員であるミクちゃんに助力を願い出たのだが。

 あまり反応はよろしくない。

 

「そもそもの話ですが、神獣というのは神話の中にだけ出て来る様な存在なんです。ですから、未知の物を受け入れろというのは非常に難しい」

「それはまぁ、ごもっともで」

「さらに言うのであれば、神話で描かれている神獣は、人がどうすることも出来ない『災害』そのものです。それに近づきたいと願う者はそれほど居ませんよ」

「んー」

「ですから。食堂等の場所を作るのであれば、スタンロイツ帝国に作る方が健全かと想います。世界でもここ以上に安全な場所は、そうはありませんから」

「なるほど」

 

 俺はミクちゃんの言葉にうーんと唸りながらも頷いた。

 そして、チラッとドロシーさんを見ると、ドロシーさんは笑顔のままコクリと頷いてくれる。

 この家に大きな食堂を作っても良いよ。という事だろう。

 ありがたい話だ。

 

 しかし、食堂の問題はそれで解決するとはいえ、ジーナちゃんの問題をこのまま放置も出来ないだろう。

 

「んー。ジーナちゃん」

「なぁに? リョウ君」

「一度さ。俺もジーナちゃんのママに会ってみたいんだけど。良いかな」

「良いよ」

 

「ちょ!? リョウさん!? 危ないって言ったじゃないですか!」

「でも、ジーナちゃんのお母さんなんでしょ?」

「だとしても! 何が起きるかは分からないんですよ!?」

「まぁ、だからさ。行くのなら、俺とジーナちゃんの二人で行くよ。それなら何か起きても俺達だけの被害で終わるし」

「何か。なんて起きる訳ないじゃん!」

「分かってるよ。だから、今の言葉はミクちゃんを安心させる為の言葉」

「はふーん?」

 

 ジーナちゃんはよく分からない。とでもいう様に首を傾げてふわふわと浮いた。

 そんな姿を見ながら、俺はミクちゃんに再び向き直る。

 

「意外と、っていうのも何かおかしいかもしれないけどさ。力ある存在の方が、結構話が通じたりするもんだから」

「あー。分かる。力はないけど、偉い。みたいな奴の方が面倒だよねー」

「モモちゃん……!」

「どしたの? リン。いつも私らに迷惑かけてくるのって、大抵、どこかの国のお偉いさん。ただし、弱い。ばっかりじゃん」

「そうかもしれないけど! そうじゃない人もいるから……!」

「どれだけ居るか分からないけどね。この国の皇帝は強いし。セオストとかシーメルとかべべリアとかヴェルクモントとか。王様は弱いけど。全然偉そうじゃないし。話も通じるじゃない?」

 

 モモちゃんが笑いながら返した言葉に、リンちゃんは言葉を失っている様だった。

 まぁ、そうだよね。って感じではあるけれども。

 

 リンちゃんはいい子だからなぁ。

 

「モモちゃんが言ってたみたいにさ。やっぱり力がある存在は話が通じやすいと思うんだよね」

「人においてはそうかもしれませんが、人でない存在にそれを当てはめるのはどうかと思います」

「それを言われると……まぁ、困っちゃうんだけど」

 

「んー。てか。そんなに心配ならミクも付いていけばいいじゃん」

「は!? モモ!?」

「ユウキ。ユウキー!」

「んー。どしたのー?」

「ちょっと、森に散歩しに行かない?」

「いいよー。ご飯食べたし。お散歩したい気分だったし」

「リンは?」

「当然行くよ」

「おっけ。じゃあこれで私とユウキとリンは決まりね。で? ミクは?」

「~~! 分かりましたよ! 行けばいいんでしょ! 行けば!」

 

 モモちゃんが周囲を塞いでから意地悪な顔で聞いた質問に、ミクちゃんはプンプンと怒りながら叫んだ。

 そして、俺たちはとりあえずジーナちゃんのお母さんに会いに行ってみようという事になり、後々その日程を決める事になったのである。

 まぁー、何とも忙しい事だが。

 みんなの住みやすい場所の為なら、この程度は大した事は無いだろう。

 

 

 それから。

 ひとまず森へ向かう人はジーナちゃんのお母さんの問題もあるし後日調整となって、俺はそれぞれの場所に戻っていく彼女たちを見送った。

 大広間に残ったのは、俺とドロシーさんだけ。

 

「ドロシーさんはまだ時間大丈夫ですか?」

「えぇ。今日は妹たちが自主的に頑張る日なので。何かがあるまで私は待機です」

「なるほど。あの子達の自立心が強い理由はこれですか」

「えぇ。私も、いつまであの子達の面倒を見ていられるか、分からなかったですからね」

「……ドロシーさん」

「無論、今は何も心配していませんよ。ここは平和ですから」

「みたいですね。スタンロイツ帝国。結構いい国みたいです」

「いえ、そうではなく……あ、いえ。そうですね。国も、そうですね」

「うん?」

「何でもありませんよ」

 

 ドロシーさんはふわりと笑ってから、話を終わらせた。

 そして、上に行きませんか? と誘ってくれる。

 

 その言葉に乗って、俺はドロシーさんと共に、簡易転移装置を使って、一番上の階まで移動した。

 そこにはなんと、茶室の様な物があり、茶室の外にはどこか懐かしい庭園が広がっていた。

 

「……すごい」

「ふふ。リョウさんの驚く顔を見る事が出来て良かったです」

 

 縁側から庭を見渡すと、どこか心がざわつく様な感覚があり、それと同時に静かに澄み切ってゆく様な感覚もある。

 なんとも不思議な感覚だ。

 

「ここは、ヤマトにあるというお茶をする場所を参考にして造ったんです。如何ですか?」

「いや……本当に凄いですね。ヤマトには行った事が?」

「いえ。私はありません。ただ、実際にヤマトへ行った事があるという方とお知り合いになる事が出来まして。教えていただきました」

「なるほど……ドロシーさんは本当に凄いですね」

 

 俺は縁側に座り、そこに広がる景色を見る。

 今すぐにでも駆けだしたい気分だが、ここはそういう場所でも無いからな。

 

「庭園の方に降りますか?」

「あぁ、まぁ、そうですね。降りて見ても?」

「えぇ。勿論構いませんよ。こちら、下駄という履物も用意していますから」

「これはまた……用意が良いですね」

 

 俺は苦笑しながら下駄をサッと履いて、少し苦戦しているドロシーさんの前にしゃがみ、丁寧に下駄を当てる。

 ドロシーさんは最初困っていたのだが、良いからと言って押し切った。

 

 そして、そのままドロシーさんの手を取って、共に庭園の中央へと向かう。

 ちょうど、小さな池がある前辺りだ。

 

「気を付けて下さいね。慣れないと下駄は歩きづらいですから」

「え、えぇ……そうですね。バランスを取るのが、少々……あっ」

 

「大丈夫。俺に掴まっててください」

「は……はい。では、失礼します」

 

 俺はドロシーさんを支えながら、自分でも意識しないままに笑みを浮かべていた。

 ドロシーさんは本当に凄い人だ。

 おそらくは俺や桜がヤマトの出身だと聞いていたから、この場所を作ってくれたのだろう。

 

 その心が、想いが……俺にはとても嬉しかった。

 

「ふふ。リョウさんに喜んでいただけた様で、何よりですね」

「本当に。ありがとうございます。感謝で言葉もありませんよ。いつか、桜にもここを教えたいですね」

「あら。リョウさんがお望みでしたら、すぐにでも……」

「いえ。ドロシーさんが言っても良いかなと思ってからでお願いします」

「……リョウさん」

「二人の秘密っていうのも。それはそれで良いと思いませんか?」

 

 何となく、ドロシーさんがそれを望んでいる様な気がして。

 俺はドロシーさんにそんなことを告げた。

 そして、ドロシーさんもまた、俺の言葉にふわりと微笑んで、小さく頷くのだった。

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