異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

425 / 436
第425話『謎の子供(静かな嵐)5』

 ミーシャ様の提案を受けて、俺はひとまずしなければいけない行動を考えていた。

 が、甘い匂いの影響だろうか。

 腕の中で寝ていたノーラちゃんがモゾモゾと動き始める。

 

「ん?」

「んー」

「ノーラちゃん。おはようかな?」

「……ん」

 

 そして、ノーラちゃんはくぅーと声を上げるとゆっくりと瞼を開いて目を覚ました。

 それから、俺を見て以前と同じ様に小さな声で「ママ」と呟く。

 

「あら。リョウ様はママ様になられたのですね」

「そうみたいですね。ならパパを見つけないと」

「あらあら。男性同士で?」

「お兄ちゃんが可愛い女の子に囲まれてるのに何もしない理由は……!」

 

「こらこら。そこ! 妙な噂を作らないの!」

「はぁーい」

「ふふ。申し訳ございません」

 

「まったく」

 

 俺はどうしようもないなとため息を吐きながら再びノーラちゃんへと視線を落とした。

 そして、ノーラちゃんの状況を確かめようとしたのだが……ノーラちゃんはどうやら桜をジッと見ている様だった。

 

 家に居た時もそうだが、桜に何かあるのだろうか?

 

「ノーラちゃん? 桜が気になるのかな?」

「桜お姉ちゃんだよ~。こんにちは~」

「……しんじゅの、みこ」

「ん?」

「なんて?」

 

 俺と桜は互いに視線を交わしながら首を傾げる。

 しんじゅのみこ?

 どういう意味だろうか。

 

 真珠、新樹……いや、神樹か。

 神樹の巫女。

 神樹の巫女?

 

「神樹の巫女……か」

「どうしたの? お兄ちゃん」

「あー。いや。なんでもないよ」

 

 桜はどうやらノーラちゃんの言葉に気づいていない様で、俺はとりあえず誤魔化す。

 が、しかいs。そうか。

 まぁ、桜は楓ちゃんとは血の繋がった姉妹なのだから、神樹の巫女という存在の可能性は十分にあるという事か。

 

 ならば、いざという時に桜をヤマトに送るのは良さそうだが。

 それはそれとして、何故それをノーラちゃんが知っているのか。

 それが分からない。

 

 もしかしてヤマトの関係者なのだろうか?

 

「ノーラちゃん。君は……」

「ママ」

「あー、うん。まぁ、そうだね。俺はママだね」

 

 そして、さらに分からないのは俺を指さしてママと言う所だ。

 桜は割と正確な所を言っているのに、何故俺はママなのだろうか?

 なんかママ的な要素ある??

 

「ノーラさん。こんにちは。私は、ミーシャ。です」

「……ん」

「ふふ。握手しませんか?」

 

「……ん」

 

 ミーシャ様はジッと自身を見つめているノーラちゃんに軽く手を振り、握手をしようと手を伸ばした。

 しかし、ノーラちゃんは不思議そうな顔をしながらその手をジッと見つめ、指でツンツンと突く。

 

 そして、ふわりと笑う。

 それは初めて見た花が咲く様な笑顔で、俺は思わず言葉を飲み込んでしまった。

 

 しかも……。

 

「みーしゃ」

「あら! あらあらあら」

「ノーラちゃん。私は桜。サクラだよ」

「みこ」

「なんで~!?」

 

「ママ」

「何故なのか」

 

 それから俺たちは何度かノーラちゃんに試したが、何度言っても呼び方が変わる事は無かった。

 俺はママである。

 

 そして、ノーラちゃんが飽きたのかツマラナそうな顔をしていた為、俺はとりあえずテーブルの上に置かれたクッキーを一つ取り、ノーラちゃんに手渡した。

 ノーラちゃんは最初不思議そうな顔をしていたが、俺が同じクッキーをテーブルから取り、食べるとノーラちゃんも同じ様に食べた。

 

「ん~~!」

「おいしい?」

「ん!」

 

「じゃあ、もっと食べていいよ」

「ん」

 

 俺はクッキーが気に入ったらしいノーラちゃんにクッキーの沢山入った皿を渡して、どうぞと言った。

 ノーラちゃんは嬉しそうにそれを食べて、満面の笑みで微笑むのだった。

 

 そんなノーラちゃんに笑いかけてから、俺はミーシャ様へと顔を向ける。

 

「それで、話が流れちゃったんですけど。さっきの話で」

「トラップの話ですね?」

「えぇ。結構良いと思うんですけど。一応許可を取らないといけないと思うんですよね」

「そうですね。国全体にとなると、国家の運営にも問題が出る可能性もありますし」

「はい。なので」

「……?」

「ミーシャ様も一緒に城へ行っていただく事は、可能ですか?」

「えっ……! わ、私も……ですか? それは、構いませんが」

「申し訳ございません。俺じゃあ上手く説明が出来るかわからなくて……! あ、でも、皇帝陛下は怖い人ですけど、怖い人ではないので!」

「え? え?」

 

「お兄ちゃん。一言で矛盾するの。やめようよ」

「いや、しかしな。こうとしか説明が出来なくてな」

 

 俺は別に騙してやろうとか。

 混乱させてやろうとか。

 そういう事を考えているワケじゃなくて、純粋に事実をそのまま話しているだけなのだ。

 

 しかし、それが混乱を呼んでいるというのは考え物ではあった。

 

「ふむ。どう説明したものかな」

「そんなに難しい?」

「うーん。そうだね。人を表現するっていうのは、これほど難しいのかって思うよ」

 

 俺はどう言ったものかと思考を巡らせながら考える。

 が、良い答えは見つからず唸るばかりであった。

 

 しかし、そんな俺にミーシャ様はクスリと笑って一つの答えを示してくれる。

 

「であれば、直接会ってみましょうか。そして、お話すれば見えてくるものもあるでしょう」

「それは確かにその通りではあるんですけど……よろしいのですか?」

「えぇ。ご心配は嬉しいですが、どちらにしても、私が説明しなければいけない事でありますからね」

「ごめんなさい。お兄ちゃんが、こんなので」

「いえいえ。とても助けられておりますよ。それに、人間らしい姿を見ると安心しますからね。少々リョウ様は人間離れしている所が多いですから」

「あー。まぁ、そういう考え方もありますか」

「えぇ」

 

 ニッコリと微笑みながら桜と話をするミーシャ様はとても美しいし、桜も可愛らしいが。

 話している内容は非常に悲しい物である。

 いや、俺は人間なのだけれどね。

 

 と、いつもの様に反論したい所であるが……まぁ、二人が楽しそうだし。それは良いかと俺は言葉を飲み込むのだった。

 そして二人がある程度話を落ち着かせてから、これからの話をする。

 

「まぁ、そんなワケだからさ。皇帝陛下に面会を申し入れて……一番早くて明日かな」

「分かりました。では明日、スタンロイツ帝国の皇帝にお話をする準備をしますね。主に心の準備となりそうですが」

「心の準備は大事ですからねぇ」

「はい。私も他国の王族と面会するのは初めてですから……気合を入れないと駄目ですね」

 

 むん! と両手を握りしめて笑うミーシャ様に俺はニコリと微笑んで頷く。

 そして、お茶をしてから一度王城に行こうかという話になったのだが。

 

 そんな俺たちの元へ一人の男が話しかけてきた。

 その男は少し前に話をした男であり、その暑苦しさから俺がよく覚えていた男でもあった。

 

「リョウ殿!!」

「っ! あ、あなたは……騎士団の団長殿?」

「えぇ。覚えていていただけるとは! 感謝で言葉もありませんぞ!!」

 

 凄いデカい声で、言葉もないと言っている事に違和感を覚えるが……まぁ、良いだろう。

 こういうのはたとえ話とか、そういう類の奴だ。

 

 しかし、まぁ突っ込みたくなる気持ちも仕方が無いだろう。

 

 

「ところで、俺に何か?」

「えぇ。あの……以前お話したことについて、なのですが」

「以前話した事」

 

 と言われ、俺はふむと何のことだろうかと少し考えた。

 が、思い浮かばず俺は何のことだろうかと問い返す事となった。

 

「あ、いえ。用件を正確に伝える事が出来ず、申し訳ございません。例の花の件ですね」

 

 ヒソヒソと小声で教えてくれる団長さんに、俺はあぁ、と彼の要件を思い出していた。

 いつかの時、彼がドロシーさんの作ったお店に彼らが行きたいという話をしていて、それの橋渡しを頼まれていたのだ。

 一応皇帝陛下には話を通したけど、彼らには話してなかったなとお漏れは思い出していた。

 故に、団長さんへ話を伝える事にした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。