異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第431話『謎の子供(静かな嵐)11』

 ノーラちゃんの導きによりセオストへと戻ってきた俺であったが。

 いきなり……というか、おそらくはノーラちゃんの望みによってソラちゃんと出くわす事になった。

 そして、ソラちゃんはある意味当然と言えば当然なのだが、非常に怒っている。

 

 まぁ、結構長い間放置してたしな。

 俺自身セオストに全然いなかったし。

 仕方がないと言えば、仕方がない話ではある。

 

「リョウお兄ちゃん!」

「はい。なんでございましょうか。ソラリアお嬢様」

「今までどこに居たの!? 冒険者組合にも、家にも行ったけど、全然会えなかったし!」

「まぁ、色々かなぁ。ヤマトとか、シーメル王国とか。リメディア王国とか。スタンロイツ帝国とか。色々だね」

「もー! リョウお兄ちゃんはセオストの冒険者でしょ!! なんで別の国にばっかり行ってるの!?」

「いやぁ。年明けはセオストも依頼が少なくてね。お金稼ぎという奴ですよ」

 

 なんて言い訳をしながら、俺は当然の様にエルネスト家に向けて歩く。

 あまり外で立ち話をしていると、ソラリアお嬢様の怖いお爺様が怒り始めるからな。

 

「ところで」

「うん?」

「その子、だれ?」

「ノーラちゃん。だね」

 

「ノーラちゃん?」

 

 ソラちゃんはノーラちゃんの名前を繰り返しながらノーラちゃんをジッと見た。

 が、ノーラちゃんはあまり、ソラちゃんに興味が無いようで、ボーっと空を見ている様だった。

 

「どういう子なの?」

「まぁ、拾った子だね。自由な子なんだよ」

「んー。そうみたいだね。ま、いいや。それよりも! お爺様がリョウお兄ちゃんに用事があるって!」

「……そうかぁ。なら、行かないと駄目だなぁ」

 

 本当に気乗りしないが、エルネストさんが呼んでいるという事であるならば、ソラちゃんの理由を抜きにしても行かねばなるまい。

 が。元々行く予定だったとはいえ、エルネストさんが待っていると思うと、微妙な気持ちだ。

 足が重くなるような感覚がある。

 

「どうしたの? お兄ちゃん」

「いや。ちょっと足が重くてね」

「もー! そんな事言って! ちゃんと来ないと駄目だよ!」

「分かっておりますとも」

 

 行かなかった場合どうなるか、なんて考えたくもないからな。

 

 

 というワケで。

 サクサクとエルネスト家へと来た俺であったが。

 生憎とエルネストさんは不在の様だった。

 

 安心した様な。ガッカリした様な。

 微妙な気持ちである。

 

「じゃあお爺様が返ってくるまで、私の部屋で遊ぶ?」

「それは構わないけど。お爺様に怒られないかが心配だねぇ」

「え? 大丈夫でしょ。だって、家に居て怒られた事無いもん」

「それは、まぁ。ソラちゃんはそうだろうねぇ」

「?」

 

 問題は俺がソラちゃんの部屋に入っても大丈夫なのか。という所なのだけれども。

 まぁ、その辺りは気にしても仕方ないか。

 どちらにせよ。ソラちゃんを悲しませたら、エルネストさんは怒り狂うわけだし。

 どうやってもアウトな選択肢しかないのだ。

 

 であれば!

 俺はこの選択の中で、唯一の正解を導き出す。

 

 それは……!

 

「あ、頼子さん。こんにちは」

「あら。リョウさん。お久しぶりですね。今日はソラちゃんと遊びに来たんですか?」

「えぇ。そうなんです。でも、ソラちゃんと二人きりというのはマズいでしょう?」

「ふふ。大丈夫ですよ。ソラちゃんのお部屋にはレイちゃんも居ますから」

「三人だけというのは不安になりませんか!?」

「なりませんねぇ。リョウさんは信頼できますし」

「ですが……!」

「それに。もし、万が一という事があれば、責任は取って下さるのでしょう?」

 

「くっ!」

 

 駄目だ!

 作戦失敗!!

 頼子さんはまるで味方になってくれない!!

 ならば、どうするか!?

 

「ソラちゃん。お部屋で遊ぶのも良いけど。今日はお庭で遊ばないかい?」

「えー? でも寒いよ?」

「く……な、なら。お部屋の扉は開けておこうか。ほら閉じこもったままだと空気が悪いからね」

「うーん。イイケド」

 

 微妙に納得していないという様なソラちゃんであったが、何とか頷いてもらい、俺は部屋の扉を開けたままにしておいて貰う事にした。

 重要な事なのだ。

 これは。

 

 だが。しかし。

 ソラちゃんの部屋に居るのはソラちゃんだけではないという事を俺は完全に失念していた。

 いや、意識はしていたのだが、おそらく大丈夫だろうと楽観視していたのだ。

 

 その結果が…・・これである。

 

「寒い」

 

 部屋に入り扉を開けっぱなしにして中に入った俺とソラちゃんにレイちゃんはベッドからむくりと起き上がると、やや怒りながら扉の場所へと向かい扉をバタンと閉めてしまったのだ。

 結果。

 俺はソラちゃんとレイちゃんの部屋に閉じ込められる事となり、ここに密室が誕生してしまった。

 

「まぁ、春はまだまだ寒いからね。仕方ないと言えば、仕方ない」

「よーし! じゃあ遊ぼう!」

 

 しかし、楽しそうなソラちゃんと、寒そうに毛布をかぶっているレイちゃんに余計な事をいう事は出来ず、俺は大人しく彼女たちの遊びに参加するのだった。

 

 

 それから。

 何て事もなく俺はソラちゃんのお人形さん遊びに付き合い、眠そうにしているレイちゃんとお話をしたりしていた。

 ノーラちゃんはセオストに来てから、ずっと眠そうにしており、ソラちゃん達と遊んでいる間もウトウトしたり、俺に寄り掛かって寝たりしていた。

 かなり平和な時間である。

 

 だが、そんな平和な時間も、不意にノーラちゃんがバッと体を起こして目を覚ました事で崩れ去った。

 

「ん?」

「どうしたの? お兄ちゃん」

「いや、何かノーラちゃんが反応しているみたいで」

「はんのー?」

「うん。そう。ノーラちゃん? 大丈夫? 何かあった」

「……怖いのが、くる」

「怖いの?」

 

 何の話だろうかと俺が考えていると、ソラちゃんとレイちゃんの部屋に一つのノックが鳴り響いた。

 ソラちゃんは「開いてるよー」と返し、レイちゃんも、語尾だけ「よー」と繰り返す。

 どこか呑気な空気だが、ノーラちゃんだけは怯えた様に俺にしがみついて、顔を埋めているのだった。

 

「どうしたんだ……? 何が来る?」

 

 俺はどうやらノーラちゃんが怯える存在が扉の向こうに居るらしいと警戒しながら腰に差した神刀に手をかけた。

 イザとなれば、すぐに抜く事が出来る様に、と。

 

 しかし……。

 

「おぉ! ソラリア! レイシリア! お爺様が帰ったぞ!」

「あ! お爺様! おかえりなさい!」

「なさーい」

 

「おぉ、おぉ! 今日も元気そうで何よりだ。ところで……リョウは何故ここに? 何かソラリアとレイシリアにしていないだろうな?」

 

 ニコニコと笑顔のまま部屋に突撃してきたエルネストさんはソラちゃんを抱き上げて、微笑んだ後、俺に視線を向けて、いつもの様に威圧してくる。

 何というか、この人も変わらないな。

 

 なんて考えていたのだが、ノーラちゃんの震えが酷くなってしまい、俺はひとまずエルネストさんに文句を言うコトにした。

 

「エルネストさん。ノーラちゃんが怯えてますから」

「ノーラ?」

「えぇ。この子です」

「んー? なんだ。また子供を拾ったのか。お前は」

「またって言われると困るんですけど……」

「またはまただろうに。それで? なぜ怯える必要がある」

「そりゃエルネストさんが怖いからでしょう」

「そんなバカな! どこに怯える要素があるというのか。なぁ? ソラリア」

「んー。どうかな!」

「な、なにぃ? れ、レイシリア! どうかな。お爺様は怖いかな?」

「ところにより?」

 

「な、なんて事だ……!」

 

 よく分からないが、勝手に自分でダメージを追っているエルネストさんを見て、俺はため息を吐いていたのだが。

 腕の中に居たノーラちゃんが小さく呟いた言葉に、俺は意識をそちらへと向けてしまうのだった。

 

「けもの、ごろし」

「……?」

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