ソラちゃんが家に遊びに来て、十分に家の中を楽しんでから出て来た言葉は。
「じゃあ、次の家に行こう!」
であった。
まぁ、正直予想していたことだし。
仕方のない事だとは思うけれど。
ここで連れて行っても良いかは少しだけ悩んだ。
が、ノーラちゃんがソラちゃんやレイちゃんとかなり仲良くなり、一緒にいたいという様な顔をしているし。
やはり条件付きで頷く事にした。
「しょうがないなぁ。行っても良いけど、家からは出ない事。いいね?」
「はぁーい」
「わかった」
「じゃあ、今回だけね。次の家に行くよ」
というワケで、やってきましたシーメル王国の我が家。
だいぶ久しぶりの我が家であるが、桜たちの管理が良いのだろう。
だいぶ綺麗な状態で保たれている。
「おぉー。ここが、次の家」
「セオストと雰囲気がちがう」
「ねー」
ソラちゃんとレイちゃんは言葉を交わし合いながら楽しそうに家の中を探索し。
その中でふと奇妙な物を見つけてしまうのだった。
「む? むむむ?」
「どしたの? ソラちゃん」
「何か、妙な扉があるよ!」
「気のせいじゃないかな」
「気のせいじゃ無ーい! てーい!」
そして、ソラちゃんは勢いよくその扉を開け放って、現れた下へと続く階段に目を見開いた。
そう。ここはシーメル王国の家の一階。
この階段は地下へと繋がる階段である。
「いえーい! とつげーき!」
「とつげーき!」
その階段を元気な二人が見逃すはずもなく、二人は勢いよく下へ向けて駆けだしていった。
転ばないよな!? と心配になって後ろを追ったが……まぁ、ソラちゃん達よりも小さな子が落ちない様にと色々工夫して作った階段だ。
そうそう簡単に転ぶワケもなく、二人は無事、地下世界へと降り立った。
「おぉー! なんだこれー!?」
「すごい。外の世界がある」
久しぶりにやってきた地下の世界では、相も変わらず子供達が楽しそうに遊んでおり。
こちらに気づいた何人かの子が、こちらへと駆けだそうとしていたが……ソラちゃんとレイちゃんの存在に気づき、足を止めていた。
まぁ、知らない子供が居たら緊張するよな。
しかも、二人は結構いい服を着ているから貴族だって分かるし。
はてさて、どうしたモノかなと考えていると、地下の遊び場から一人の少女が現れる。
「殆ど予定通りですね。リョウさん」
「あ、アリアちゃん!? どうしてここに!?」
「そろそろソラリアさんとレイシリアさんが、リョウさんのお家にお邪魔して、シーメル王国に来るころかと思いまして」
「え……えぇ……」
ごくごく当たり前の事を言うようにアリアちゃんは語るが。
当然の様に俺はアリアちゃんに何も話をしていないし。ソラちゃんとレイちゃんに会う予定すら、ノーラちゃんと会うまでは無かった。
だというのに……もはや未来予知か何かか、という話であるが。
ここで、アリアちゃんは一つの驚愕する様な事実を俺に伝えてくれた。
「ふふ。驚いていますね」
「そりゃ、人類なら誰でも驚くと思うよ」
「では、種明かしをしましょう。ノーラさん」
「……んー? なぁに? アリア」
「っ!?」
「いいえ。お友達のお名前を呼んだだけですよ」
「んー。そう」
俺は驚き、目を見開きながら、腕の中で眠っている少女ノーラちゃんと、アリアちゃんを交互に見やった。
驚くな。というのが無理な話だ。
まさか、ノーラちゃんとアリアちゃんが繋がっていたとは。
「ノーラさんは、スタンロイツ帝国でスパイ活動をしていたのです。子供の姿なら怪しまれませんからね」
「いや……えぇ……? 本当に?」
「えぇ。本当ですよ。ノーラさんは凄い人ですから」
「ふふ。ノーラ。すごい」
本当か?
と、もう一度聞きたくなってしまったのは仕方がない事だろうと思う。
両手を握りしめながら笑うノーラちゃんは非常に可愛らしく、とてもじゃないが諜報活動をしている様には思えない。
が、エルネストさんの話もあったし。
思えば、お風呂から出て、水分を全て消すみたいな事もやっていたし。
何かしらの力はあるのだろうから、不可能では無いかと心の中で頷いた。
そして、俺がそんな風に考えている頃。
ソラちゃんとレイちゃんは突如現れたお友達に喜びを全身で示しながらアリアちゃんの下へと突撃していた。
「アリアちゃーん!」
「ひさしぶり」
「えぇ。本当に! ソラリアさん。レイシリアさん。お久しぶりです。ごめんなさい。あまりセオストへ行けず」
「ううん。国が大変だったって聞いたよ。だから、全然気にしないで」
「うん。無事なのが、イチバン」
「ありがとうございます……! お二人にお会いして、お話し出来て……本当に良かったです。最近は国を出るのも難しくて」
「そうなの?」
「えぇ。実は私……王様になってしまいましたので」
「へぇー。王様に……えぇぇえええ!? 王様!!??」
「はい。シーメル王国の女王。アリア・テオドーラ・ルチア・シーメルです」
アリアちゃんの発言にソラちゃんは絶叫を上げ、レイちゃんも少し驚いたのか、「おー!」と両手をあげていた。
いや、別にそれほど驚いていないか。
「アリアちゃん、お姫様じゃなくて、王様になっちゃったの!? じゃ、じゃあ敬語! 使わなきゃいけない事でしてよ?」
「ソラちゃん、それ、敬語じゃないよ」
「わ、分かってるよ! ちょっと動揺しちゃっただけなんですよ」
「レイちゃんに敬語を使っても、しょーがないね」
「だから、分かってるってば!」
「ふふ。お二人とも。敬語など使わなくても大丈夫ですよ。お友達ではないですか」
「アリアちゃん……!」
「ひしっ!」
ソラちゃんとレイちゃんは嬉しそうにアリアちゃんに抱き着いて、感激を伝えていた。
そのまま三人で固まっている為、恐怖が無くなったのか遠くから見ていた子供達が近づいてくる。
「……おにいちゃん」
「うん。どうしたのかな?」
「この人たちは?」
「んー。シーメル王国から南の方に行った場所にセオストっていう場所があるんだけど。そこのお姫様。かな?」
「おー。お姫様! アリアちゃんと同じ!」
「そう。アリアちゃんと同じだね」
ニコニコと笑みを浮かべながら、俺は子供達の疑問に応えてゆく。
分からない事を何でも聞くというのはとても優秀であるし。
可愛らしい事である。
「おひめさま……!」
「でも、私たちと同じくらい。ちっちゃいね」
「えー。でもアリア様もちっちゃいよ?」
「アリアちゃんは可愛いから良いんだよ」
子供たちはワイワイ、きゃいきゃいと楽しそうにお姫様という存在について語っており、俺はそんな子供達を見守りながら、うんうんと頷いていた。
そして、どうやらアリアちゃん達の感動の再会も終わった様で、ニッコリと笑いながら俺の方に歩いてきた。
「では、リョウさん。悪だくみを始めましょうか」
「……はい?」
「ふふ。リョウさんは実に良い仕事をしてくれました。私は感謝していますよ。全て。私の予定通りです」
両手を後ろに回し、悪魔の様な笑みを浮かべながら笑うアリアちゃんに、俺は何かとんでもない事に巻き込まれているようだと心の中で大きなため息を吐くのだった。
いや、しかし、良い仕事をしたって、俺は何もしていないんだがな。
勝手に共犯にしないで欲しい。
「……それで、アリアちゃんは何が目的なのかな?」
しかし、俺がアリアちゃんに文句が言えるワケもなく大人しくアリアちゃんの言葉に従う。
「はい。闇神教の者たちを表舞台に引きずり出して……殲滅します」
……。
そうか。
うん。そう。
そうか……。
まるで話には付いて行けてないけど。
「全面戦争の始まりです!」
「……そうか」
俺は考える事をやめて、アリアちゃんに頷くのだった。