異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第52話『帰還した地(セオスト)で待ち受ける試練』

 無事、アリア姫様たちをシーメル王国まで送り届け、馬車も世界国家連合議会に戻っていった。

 そして、俺とヴィルヘルムさんとアレクシスさんとココちゃん。

 それに……何故か一緒にいるジーナちゃんとミクちゃんも一緒にセオストを目指して歩き始める事になった。

 

「いや、なんで二人も一緒なんですか?」

「何か文句があるんですか? リョウさん」

「文句という訳ではないですけど、ミクちゃんは、アリア姫様に用事があったんでしょう? アリア姫様はシーメル王国に行きましたよ」

「そのくらいは分かっています! 子供扱いしないで下さい!」

「別に子ども扱いしてはいないですけど」

「むー! 私は! 災害対策局局長として! セオストへ視察に行くのです! 文句は言わせませんよ!」

「別に文句も無いですけどね? ただ、セオストへ行く用事があって、立場のある方なら、ポータルで移動する方が良いかと思いますが」

「それは! 良いのです! 災害はどこで起こるか分かりませんからね! こうして野を歩き、地を進む事で見える物もあるのです!」

「そうですか」

 

 俺は何を言っても、何だかんだと理由をつけて言葉を返してくるミクちゃんにこれ以上は無駄かと視線をジーナちゃんの方に移した。

 

「それで? ジーナちゃんはなんでここに?」

「なんでって、ジーナちゃんはリョウ君の妹だからね!」

「うん。違うね」

「違くないもん!」

「帝国はほら。向こうの方だよ。帰るなら向こう」

「また意地悪言って! ジーナちゃんの帰る家は今日からセオストのリョウ君の家だから!」

「……誰が決めたの」

「ジーナちゃんだよ!」

 

 キラキラと輝く様な笑顔でそんな風に告げられてしまえば、これ以上言葉を向けても無駄だなと感じてしまう。

 非常に厄介な事になった。

 

 ココちゃんの件はまだしも、ジーナちゃんは難しいだろう。

 桜はこういう元気な子が苦手だし……いや? そうか。フィオナちゃんとも上手くやっていたし。

 そう考えると、もしかしたら上手くいくかもしれないな。

 

 そうなれば、桜の友達も増えるし。悪い事はないか。

 

「分かったよ。とりあえず、桜に相談してからね。桜が嫌だって言ったら絶対に駄目だよ。良いね?」

「はーい!」

 

 元気よく手を挙げながら返事をするジーナちゃんに、まぁ大丈夫だろうと思いながら俺はココちゃんと手を繋ぎながら、ヴィルヘルムさんやアレクシスさんと共にセオストを目指して歩くのだった。

 しかし、だ。

 

 一応シーメル王国に行くまではあったいくつかの戦闘も、ジーナちゃんという戦力が増えた状態で何も起きる筈がなく。

 俺たちはまるでピクニックにでも出たような気軽さでセオストへと帰還するのだった。

 

 そして、エルネストさんの所へ挨拶に行くというミクちゃんと。

 冒険者組合に行くというヴィルヘルムさん、アレクシスさんと別れ、俺はココちゃんジーナちゃんと共にまずは自宅へ向かうのだった。

 

 一歩一歩進むたびに、気持ちと足が重くなるが、先に進まねばならない。

 何故なら、時間をかけたところで、結局の所、いつかは桜に事情を話さねばならないからだ。

 

 という訳で、無事我が家に到着した。

 

 ……。

 

 が、ここで一つ問題が発生した。

 なんと、家に桜が居ないのである。

 

 まぁ、考えてみれば当然の話であるが、今は昼間であるし、桜は食堂で働いているのだろう。

 どこか安心したような、余計に緊張したような。

 不思議な感覚を覚えながら、二人に荷物を置いてもらい、ふろ場で……と思ったが、少女二人に男の俺が一人。

 嫌な誤解をされても嫌だから、清浄化の魔術で身を清めてから食堂へ向かう事にした。

 

 そして、俺はなんて事はなく冒険者組合の建物に入ったのだが……!

 ここで一つの問題が生じた。

 

 俺が建物に入った瞬間、周囲の人間たちがざわついたのだ。

 何かを見て、驚いている。

 いや、何かではない。俺とジーナちゃんとココちゃんを見て、驚いている。

 

 まさかココちゃんが獣人であるとバレたのか!? と一瞬焦ったが、その辺りはしっかりと隠されていた。

 

 では何が? と疑問に思っていると、仲の良い冒険者の一人が近づいてきて、話しかける。

 

「お、おい。リョウ。これはいったいどういう事だ」

「どういう? どういうって言われても。何を驚いてるんだ。サラス」

「驚くに決まってるだろ! 世界国家連合議会に行って、帰ってきたらメイドを二人も連れているだとぉ!? しかも! こんな美少女を! 二人も!」

「っ! あまり大声を出すなよ。耳に響く」

「これが大声を出さずにいられるかよ! こんのやろう! まだ家に女の子を増やすのか! ハーレム野郎が!」

「待て。誤解だ。彼女たちは妹みたいなもので……!」

「うるせぇ! 言い訳なんか聞きたくないね! 言いふらしてやるー! サクラちゃんにある事無い事言いふらしてやる!」

「おい!」

 

 サラスの腕を掴もうとした俺の手は空をきり、驚異的な速さで走り出したサラスに追いつこうと俺も走ろうとしたが、ココちゃんに服を掴まれていて、それも叶わない。

 しかも最悪な事に、サラスが話しかけてきた事で切っ掛けが出来、周囲の冒険者達も話しかけに来たのだ。

 

「また女の子を連れ込むのか? リョウ。羨ましい限りだな」

「いや、違うんですよ」

「俺もあやかりたいぜ」

「あんたじゃ無理よ」

「やっぱり男は顔かぁ?」

「いやいや。リョウは実力もあるだろ。Bランクだぞ。Bランク」

「でも! まだ冒険者ランクはFじゃないか! 力はあっても頭がないって言われてるようなもんだぞ!」

「そういう話じゃないでしょ。個人戦闘力ランクは」

 

 周りでガヤガヤ、ザワザワと話す人々に、俺は良いからどいてくれと叫ぼうとした。

 しかし、俺の動きをジッと見ていたジーナちゃんが手首を返しながら、やる? と口パクで聞いてきた事で、言葉を止める。

 ここで叫べば、彼らはきっとどかされる。

 

 それがどういう風になるのかは分からないが、おそらく魔法を使ってどかすのだろう。

 魔法使いが恐れられているとか、そういう事は一切気にせずに。

 ジーナちゃんはそういう子だ。

 

 ならば! ここは俺だけで解決しなくてはいけないだろう!

 

 俺はジーナちゃんに向かって全力で首を横に振った後、大衆に向けて静かに言葉を向けた。

 

「事情は後で話すので、今は道を開けて下さい。まずは話をしないと」

「……誰と話をするの!?」

「決まってるだろ。それは……!」

 

 俺は、集まる人々の向こうから空気を切り裂いて届いた声に返事をしながらハッとなった。

 聞きなれた声だ。

 最近は聞いてなかったが、ずっと昔から傍で聞いてきた声だ。

 間違えるわけがない。

 

 そして、その声が、声の主が、酷く怒っている事を俺は理解して、唾を飲み込む。

 

「誰と話をしたいのかな。お兄ちゃん」

「あー。うん。それはもちろん桜とだよ」

 

 怒りに震え、腰に手を当てながら俺を真っすぐに見つめる桜を見て、成長したなとまずは心が震えた。

 あの引っ込み思案だった桜が、こんな大勢が居る場所で、大きな声を出して話が出来るとは。

 

 感動である。

 

 この世界に来てよかった。

 まずはそう思った。

 そう、まずは……。

 

 しかし、現状を考えると喜んでばかりはいられない。

 俺は周囲から引き潮の様な勢いで消えてゆく大衆を横目に、桜と……その後ろで心配そうな顔をしているフィオナちゃん、リリィちゃんを見据えた。

 

「まずは話をしよう。二人の事もそうだけど。桜の話も聞きたいんだ」

「分かった。じゃあ、話をしようか」

 

 桜はそう言いながら会議室へと目線を送り、俺も桜に続いて会議室へと向かうのだった。

 勝負はこれから。

 まだ始まったばかりである。

 

 桜が二人を受け入れてくれるか。

 はたまた俺が桜に刺されてしまうのか。

 

 全ては会議室での俺の頑張り次第だ……!

 行こう! 決戦の地へ!

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