異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第54話『孤独な少女(ジーナ)はぬくもりを求める』

 さて、ココちゃんの問題は解決した訳だが……。

 俺はもう一つの問題についてどうするか考える。

 

 が、正直な所、ココちゃんの問題がスムーズに解決したので、これ以上は良いかと話を終わる事にした。

 

「という訳で俺から話す事は以上だ」

「ん? あれ? ジーナちゃんの事は?」

「え?」

「え?」

「いや、何もないよ?」

「なんでー! ジーナちゃんもリョウ君の家に住むって言ったじゃん!」

 

 ジタバタと暴れるジーナちゃんに、どうしたもんかなと考えていると、桜が不思議そうな顔で尋ねてくる。

 

「えっと、お兄ちゃん? こっちの人も獣人さんなの?」

「いや、違う」

「そうなの? じゃあ、どういうお知り合い?」

「あー。なんていうかな。偶然一緒に付いてきただけの人なんだ。まぁ気にしなくても良いよ」

「あー! またそんな意地悪言って! ジーナちゃんも独りぼっちになっちゃうよ」

「いや。ジーナちゃんは帝国に家があるでしょ」

「ないもん!」

「無いって、じゃあ今までどうやって生活してたの」

「エリク君のお家に住んでた」

「エリク君……ってスタンロイツ帝国の皇帝?」

「そう」

「じゃあ、立派なお家がスタンロイツ帝国にあるって事だね。はい。じゃあまた今度遊ぼうね」

「やだやだやだー! セオストがいいー! セオストに住むー!」

「ジーナちゃんなら冒険者としてもやっていけるよ。それで家を借りて住めばいいでしょ」

「ジーナちゃん一人じゃなーんにも出来ないもん!」

 

 子供の様に駄々をこねるジーナちゃんにどうしたものかなと俺は考える。

 一応引き取るという考えが無い事もないが。

 まぁ、無い。

 

 しかしなぁー。このまま放置というのもそれはそれで面倒というか、なんというか。

 

「よし。妥協案だ。ジーナちゃん」

「……なぁに?」

「隣の家に住めば良い。ご飯くらいなら一緒でも……大丈夫か? 桜。ココちゃん」

「うん。私は大丈夫だよ。ご飯くらいなら」

「ココも、へいき」

「ありがとう。という訳でご飯くらいなら良いよ」

「やーだー! 一緒の家がいいー! ジーナちゃんもリョウ君の妹でしょー!?」

「そんな話、知りませんが?」

「言ったじゃない!」

「ジーナちゃんが勝手にね?」

「良いじゃん良いじゃん! ジーナちゃんが言ったって良いじゃーん!」

 

 駄目だ。まるで交渉にならない。

 言いたいことを言っているだけだ。

 

 どうしたものかね。これは。

 

「どうする? お兄ちゃん」

「さて、どうしたものかね。俺も悩んでる」

「いちど泊めてみる? もしかしたら上手く付き合えるかもしれないし」

「どうかな。正直な所、その最初の一回が最後の一回になる可能性もあるからね。あくまで断固とした態度でいるのが大事だと俺は思うよ」

「……」

「どうしたんだ? 桜」

「いや、お兄ちゃんがここまで頑ななのも珍しいなって思って。だってジーナちゃんって子供みたいな女の子でしょ? 一人で放置したら心配じゃない?」

「いや、そこは心配ないよ。ジーナちゃんは多分俺より強いからね」

「「「え!?」」」

 

 当然と言えば当然だが、桜とフィオナちゃんとリリィちゃんが驚いたような声を出した。

 まぁ、ね。

 見た目だけだったらね。か弱い女の子だし。

 精神は子供だもんね。

 気持ちは分かるよ。

 

 でも、ジーナちゃんは普通の子じゃないからなぁ。

 

「一応ね。ココちゃんとは違う理由でジーナちゃんにも事情があるんだ。だから俺が何もしなくても大丈夫なんだ」

「そうなの?」

「あぁ。まぁ、何というか難しいけどな。とにかくジーナちゃんは大丈夫だ」

 

 流石に魔法使いだというのはまずいか。

 と一応気を利かせて話していたんだが、そんな気持ちは当のジーナちゃんによって粉々に打ち砕かれた。

 

「そうやって! ジーナちゃんが魔法使いだから、虐めるんだ!」

「あ!」

「……? 魔法使い?」

 

 不思議そうな顔でジーナちゃんを見つめる桜に、俺は何とか魔法使いを説明しようとした。

 

「あー。ほら、アレだ。桜。昔、絵本で見た事があるだろ? 魔法使い」

「うん」

「あんな感じなんだよ。ジーナちゃんも色々な事が出来るんだ。その……魔法でな」

「えへん」

「だから、一人でも大丈夫ってこと?」

「まぁ、そういう感じかな」

 

 どこか納得できていない様な顔はしつつも、一応頷いてくれた桜に安堵していると、また別の場所から爆弾が落とされた。

 

「ジーナちゃん? ジーナ? 魔法使い……! 帝国の、魔女!?」

 

 そう。フィオナちゃんである。

 さっきシーメル王国に居たという話を聞いた時から嫌な予感はしていたが!

 ジーナちゃんの事も知っていたらしい。

 

 有名人というのはこういう時に厄介だな!

 

「むー! その呼び方は可愛くないからヤダー!」

「りょ、リョウさん! 帝国の魔女と言えば! 相当な危険人物として有名ですよ!」

「無視しないでよー!」

「どうしてこんな人を連れてきてしまったんですか!? しかも妹だとか!」

「ジーナちゃんはリョウ君の妹だもん!」

 

 フィオナちゃんとジーナちゃんが交互に叫び、耳が痛みを覚えるほどであった。

 しかし、そんな状態でも二人は止まらない。

 俺の両耳に向かって叫び、鼓膜を破壊しようと進み続けるのだった。

 

「帝国へ戻すべきです! セオストがめちゃくちゃになっちゃいます!」

「ジーナちゃんはセオストに住むのー! そう決めたの!」

「だいたい魔女なんて呼ばれている人なら、一人で生きる事は可能な筈です!」

「ジーナちゃん! 一人じゃ死んじゃうもん! なーんにも出来ないから死んじゃうもーん!!」

「魔法使いに出来ない事なんか何もないじゃないですか!」

「いっぱいあるよ! いっぱい、いーっぱいあるよ!」

「じゃあ言ってみてくださいよ! 何が出来ないんですか!? 何と何が!」

「それは、よく分かんないけど! でも!! 一人は寂しいもん! ジーナちゃんだって家族やりたいもん!! 家族が欲しいって思ったらおかしいの!?」

 

 その、最後にジーナちゃんが言った言葉で、会議室はシンと静まり返った。

 俺は何とも言えない気持ちのまま、感情が高ぶって泣いているジーナちゃんへと視線を向ける。

 そこに居たのは、ただの寂しがりな弱い女の子だ。

 

「……お兄ちゃん」

「分かってるよ。お兄ちゃんが悪かった」

「うん。私も、ね。だから私は良いよ。ココちゃんはどう?」

「いいよ。ジーナちゃん。良い子だから」

「そっか。らしいよ。お兄ちゃん」

「あぁ」

 

 俺は桜とココちゃんの助言を得て、ジーナちゃんに向き直り、近くに歩み寄った。

 そして、涙を流しているジーナちゃんにハンカチを一つ差し出す。

 

「これ、使って」

「ん、うん」

 

 涙を拭った後、勢いよく鼻をかむジーナちゃんに何とも言えない気持ちが芽生えるが……まぁ良い。

 この手を離せば、ジーナちゃんも独りぼっちになってしまう。

 そうならば、そうだというのなら。

 

「ジーナちゃん」

「なぁに?」

「流石に俺よりずっと年上の人を妹には出来ない」

「ぅえ」

「……でも、家族にはなれる。弟ってワケでも無いし。兄ってワケでも無いけどさ。同じ家で住めば、役割の名前が無くても、それは家族だろ?」

「……いいの?」

「何が?」

「だって、わたし、家を壊しちゃうかも」

「それは困るね。家は壊さない様に注意して下さい」

「嫌いな食べ物があったらヤーってしちゃうかも」

「君より年下の子は食べてるのに、君はイヤーするのか!」

「……それは、その、まぁ、たべるけど」

「なら問題ないね」

「でも、でも! でも!」

 

 何故か家に住めるというのに、否定し始めるジーナちゃんがおかしくて、俺はクスリと笑った。

 何だかんだと臆病な子なのだろう。

 

「まぁ良いよ。何かあればこうして話せばいい。喧嘩をすれば良い。それが家族って奴だ。そうでしょ?」

「……そう、かも」

「という訳なので! ジーナちゃんも今日から家族。よろしくね」

「……ヨロシク」

 

 何故か固くなってしまったジーナちゃんに、前途多難だなと思いながら俺は笑みを一つ落とすのだった。

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