異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第55話『家と部屋と彼女(ココ)たちの帰る場所』

 無事。

 と言っても良いのか分からないが、ココちゃんとジーナちゃんが家に住む事になった。

 という訳で、とりあえず家に帰って部屋などを決めなくてはいけなくなったのだが……。

 

 会議室の扉を開いた瞬間、多くの人間が廊下に倒れ込んだ。

 どうやら聞き耳を立てていたらしい。

 恥という概念は無いのか?

 

「何をやってるんですか?」

「いや、物音がまるでしないからな! 何かあったかと心配していたんだ!」

「どう見ても心配している様には見えませんが」

「それはお前、感情が分かるように動く冒険者なんて素人だからさ」

「あぁ言えばこういう……まったく」

 

 俺は面倒な対応は辞めて、桜たちとさっさと家に帰る事にした。

 とりあえず歩くからとアピールして道を作ると桜たちに通る様に合図する。

 

「さ、帰ろうか」

「ちょ、ちょっと待ってくれ! リョウ!」

「何ですか?」

「結局どうなったんだ! その子達は!」

「どうって、同じ家に住みますよ」

「サクラちゃんは!?」

「家族なんだから同じ家に決まってるでしょう」

 

 俺の言葉に、盗み聞きをしようとしていた者達は泣いた。

 しかし、そんな声は無視し、気になるのか足を止めたフィオナちゃん達にも俺は気にしない様に言って冒険者組合の建物を出ていくのだった。

 

 そして、無駄に注目を集めながら大通りを歩き、自宅を目指して歩いた。

 既に歩きながら桜はココちゃんと、ジーナちゃんはフィオナちゃんやリリィちゃんと話をして楽しんでいる様に見えた。

 

 それから、それほどせずに自宅へ着いて、俺はジーナちゃんとココちゃんを家の住人として登録して二人を迎え入れるのだった。

 

「じゃあとりあえず部屋を決めようか」

「リョウ君のお部屋は何処なの?」

「……」

「どうしたの?」

「いや。思ったら何となく部屋を使っていたけど、正式に俺の部屋というのは決まって無かったなと思ってさ」

「じゃあさ。じゃあさ。今日決めちゃえばいいんじゃない?」

「確かにな」

 

 俺は頷きながらふむと考える。

 正直なところ、別にこだわりがないのだ。

 冒険者という仕事をしていると、外泊する事も多いし、部屋は何処でも構わない。

 

「なら、とりあえず桜の部屋を聞いてからだな」

「え!?」

「うん? どうした?」

「いや、その、なんで私の部屋の位置が気になるのかなって思って」

「それは、もう」

「……」

 

 何故かワクワクとした顔をしている桜に疑問を持ちながらも、俺は改めて言葉を続ける。

 

「ほら、この家の家主は桜だろう? それに俺よりも桜の方がこの家に居る時間も長いし、出来れば桜が過ごしやすい部屋が良いと思うんだけど……って、どうしたんだ? 桜」

「別に?」

「別にって顔じゃ無いだろ」

「別にって顔だよ。これは。別にってカオ」

「そ、そうか」

 

 酷く不機嫌そうな桜に戸惑いつつも、とりあえず気にしないまま俺は話を進める事にした。

 

「という訳だから、まずは桜の部屋を決めて欲しいなって思うんだけど。今使ってる部屋とかはあるか?」

「うん。あるよ。じゃあまずは2階に行こうか」

 

 桜は俺の横をスッと抜けて、家の中に入った。

 そして階段を上がり二階に行くと、玄関のちょうど上辺りにあると思われる部屋の一つに入った。

 窓からは玄関が見える。

 

「私の部屋はここ」

「じゃあ、サクラの部屋はここという事で……俺の部屋は」

「ここ」

「うん?」

「お兄ちゃんの部屋は、ここ」

「いや、そういう訳には……」

「何か問題があるの?」

「そりゃ問題はあるだろう」

「お兄ちゃんと私は妹でしょう? だったら何も問題ないじゃない」

「……まぁ、そう言われるとそうだな?」

 

 俺は桜の言葉に頷きながら、家にいる時は殆ど居ないし、良いかと納得する。

 同じ部屋に居る桜が狭くない、気にならないというのなら、まぁそこまで悪くない選択の様にも思えた。

 

「よし。じゃあ俺もこの部屋って事で」

「ココ」

「うん? どうしたんだ? ココちゃん」

「ココも、この部屋が良い」

「……だそうだけど、桜はどうだ? 部屋が狭くなるから微妙か?」

 

 桜は腕を組みながらふむ、と考えて……考えていた。

 そして、目を閉じて少しばかり考えた後、ハッと目を開いて答えを出した。

 

「ココちゃんなら良いでしょう」

「……! やった」

「まぁ、まだ小さいしね。一人の部屋っていうのも可哀想だし。良いでしょう」

 

 ココちゃんは喜びながら桜に抱き着き、桜も優しい姉らしい笑顔をしながらココちゃんの頭を撫でる。

 良い話だな。

 等と思いながら、やはり俺がこの部屋に居るのは良くないのでは? と考えるのだった。

 

「なぁ、桜。やっぱり俺は別の部屋の方が良いんじゃないか?」

「駄目だよ。ココちゃんはお兄ちゃんの妹にするんでしょ? 放置したら可哀想だよ」

「それはそうだけど。狭いだろう」

「そこは大丈夫。ベッドは広くする事が出来るし。洋服をしまう場所も工夫すれば三人分くらい余裕だからね」

「うーん」

「そもそもの話だけど。お兄ちゃんは不安じゃないの? 私やココちゃんが見てない場所で怖い何かに襲われるかもしれないんだよ? 近くで守りたいって思わないの?」

「そう言われると、確かに傍に居た方が安心だな」

「でしょ?」

 

 桜の言葉に納得し俺は大きく頷いた。

 そんな俺の姿を見て、フィオナちゃんとリリィちゃんは笑っていたが、俺は少しばかり恥ずかしく思い、二人に話を振る事にした。

 

「フィオナちゃんとリリィちゃんはどうする?」

「私たちは階段を上がってきてすぐの所にあった部屋を使わせて貰ってますよ」

「でも、部屋の中は散らかってるから、中を見るなら、片付けるから、少し待って下さい」

「いやいやいや! 女の子の住んでる部屋を見ようなんて思わないよ! 流石に!」

「ふふ。リョウさんは紳士さんですね」

「普通の事だと思うけどね」

「そう仰るのなら、そういう事にしておきましょう」

「……まぁ、そういう風にしておいてくれると助かるよ」

 

 俺は話を逸らしても、また別の話で恥ずかしい思いをしてしまったなと小さく息を吐いた。

 しかし、ふとここで気になった事があった。

 

「そう言えば、さ。ちょっと気になったけど、フィオナちゃんとリリィちゃんはこの家に住んでいて良いの?」

「この家で良いの? とは?」

「ほら。二人の家には戻らなくても良いのかなって」

「……? あ!」

「そう言えば、リョウさんには言ってなかった」

「忘れちゃってたんだ! 申し訳ございません! リョウさん!」

「え?」

 

 俺はどういう事かと首を傾げていると、桜が答えを教えてくれた。

 

「お兄ちゃん。フィオナちゃんとリリィちゃんは家が無くなっちゃって、今この家に住んでるんだよ」

「ごめんなさい! 実は、色々あって家が無くなっちゃいまして……! それでサクラちゃんにお願いして、この家に住まわせて貰っているんです! 家賃とか、今までの分もまとめてお支払いしますので!」

「あー。良いよ良いよ。二人のお陰で桜が安心してセオストで暮らせるっていうのもあるし。これからも俺は冒険者の仕事で何日か空ける事もあるしね。だから家賃の代わりってワケじゃないけど、俺が居ない時に桜の事を任せたい。良いかな?」

「もちろん! お任せ下さい! これからはココちゃんの事もバッチリ守りますよ!」

「頼もしいね。助かるよ」

「はい!」

 

 元気よく返事をしてくれるフィオナちゃんと、小さく静かに頷くリリィちゃんを見ながら、俺は安心して心を落ち着かせた。

 そして、最後に残った一人について聞くべく俺は空にふわふわと浮きながら眠そうにしているジーナちゃんへと視線を向けた。

 

「じゃあ最後はジーナちゃんだけど……」

 

 と言った瞬間、家の呼び鈴が鳴り、俺は窓から外を確認して、腕を組みながら立っているミクちゃんの姿を確認するのだった。

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