異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

58 / 436
第58話『未だ届かぬ(オーロ)の背中』(アレクシス視点)

(アレクシス視点)

 

 セオストへ走ってゆくヴィル達を見送りつつ、走り出した俺はひとまず木の上に駆け上がり、巨人の姿を確認しようとした。

 しかし、どうにもデカすぎて、上を見ていると首が痛くなりそうだ。

 ひとまず街壁よりデカい事は分かるし、何かしらの対応が必要だという事も変わらないだろう。

 

 ならば、ここで仕留めなくてはいけない。

 が……。

 

「どうしたものかな。これは」

 

 俺は大木の枝の上に立ちながらデカすぎる巨人を見て、ため息と共に言葉を零した。

 サイズを考えればいくら銃を撃ったとしても豆粒みたいなものだ。

 何かしらのダメージを与えられるとは考えにくい。

 

 デカさは力だとはよく言った物だが……これは少々デカすぎる。

 神話に出てくるドラゴンも同じ様な怪物なんだろうなと、遠い過去を思いながら鼻で笑った。

 

 なんて事はない。

 遥か昔の人間が、大した武器も持たずに戦っていたドラゴンと同程度の化け物だ。

 それほど恐れる事は無いだろう。

 

 今の時代は、太古の昔よりも戦う為の道具が充実しているのだから。

 

「……まずは、挨拶をしてみるか」

 

 俺は巨人の体に向かって風の魔術が込められた弾丸を撃つ。

 奴が水の塊だというのなら、風で体を吹き飛ばしてしまえば良いという話なワケだが……。

 風の魔術は巨人の表面を揺らすだけで終わった。

 

 体が真実水で出来ているのか。

 まるで大きな湖に石を投げ込んだ時の様に、体の表面を波紋が伝わってゆき、巨人には何ら影響を耐えられないまま、波紋は消えていった。

 

「まぁ、こんなモンと言えばこんなモンか。逆にあのサイズを考えると、影響を与えられただけマシとも言えるな」

 

 俺は呑気な言葉を吐きながら次なる弾丸を込めて、巨人に向かって撃ちだした。

 

「こんだけデカいと狙いをつけるのも簡単で嬉しいぜ」

 

 巨人に命中した弾丸は一瞬で巨大な炎となって、巨人の体にまとわりつきながら燃える。

 一発で森に大火災を起こせるほどの魔術が込められた弾丸であったが、やはり体の表面を波紋の様に揺らしながら、どこかへスッと消えてしまうのだった。

 

「んー。これは魔術による攻撃はほぼ意味がないと思った方が良いな。となると……後はコイツか」

 

 ヤマトで手に入れた特別製の弾を一発取り出して、それを込める。

 そして、意識を集中させて……二発の弾で流れる様に動いている巨人の魔力を見極め……その流れの中心点を見つけ出した。

 

「やっぱり中心は魔力石か……!」

 

 俺は巨人の行動を見極め、次に動く場所を予測し、魔力石が来るであろう場所にその弾丸を打ち込んだ。

 が、弾丸が巨人の表面に触れた瞬間、巨人はその体を大きく動かし、魔力石の位置を無理矢理変えた。

 

 結果、俺の放った弾丸は巨人の体を貫通してどこか遠い空へ消えてゆき……巨人が動きを止めて、緩やかにこちらを見た。

 敵意の様なものは感じないが、ビリビリと空に巨大な魔力が蠢くのを感じる。

 

 そして、巨人は俺に向かって大きく一歩を踏み出すと、その巨大な手を振りかぶって俺が居る場所に打ち付けた。

 

 だが、そんな見え見えの攻撃に当たる程、鈍ってはいない。

 俺は瞬時に転移用の弾丸を地面に撃ち、その中に飛び込んだ。

 転移先は周辺のどこかだが、まぁ拳が当たらなければどこでも良い。

 

 しかし、転移先から飛び出した俺は巨人が地面に拳を叩きつけた時に発生した爆風と巻き上がった土石の影響を直接受ける事になり、風に煽られて飛びながら何とか姿勢を戻して巨人に弾丸を打ち込んだ。

 

 巨人は先ほどの攻撃が全て俺だと気づいたのだろう。

 体を震わせながら、再び俺に向かって攻撃を繰り出そうとしている。

 

 大きく振りかぶった拳を、空で木の葉の様に舞っている俺に向かって放つつもりなのだろう

 

 転移の弾丸は地面に撃たねば効果はない。

 そして、飛行の魔術も俺は覚えておらず、空中を自在に走る様な方法もない。

 

 万事休すだった。

 

「チッ。思ったよりも抵抗出来なかったな」

 

 たったの一撃で満身創痍となってしまった俺は、向かってくる拳に舌打ちをしながら笑う。

 時間稼ぎはほんの少ししか出来なかったが、それでもヴィルがセオストへ戻るには十分な時間だっただろうと。

 セオストには俺とは比べ物にならない化け物が居る。

 

 それに、将来有望な奴も……。

 

「俺の仕事はここまでだな」

 

 俺は遥か遠方。僅かに見えるセオストに向かって一発の弾丸を撃った。

 これは言葉を伝える為の物だ。

 

「ヴィル! コイツに魔術は効かねぇ! 効くのは魔力を絶つ神刀だ! 後は任せたぞ! リョウ!」

 

 ありったけの声で叫び、言葉を残す。

 セオストを破壊させないために。

 

 そして、俺は迫りくる巨大な拳を前にして目を閉じた。

 短く、幼いころに誓った願いも叶えられないままであったが。

 悔しさもあるが、それでもやることは十分にやったと。

 

 そう自分を満足させて終わろうとした。

 

 しかし。

 

「天斬り!!」

 

 眼下にある森から聞こえた声は、その持ち主にしては珍しく叫ぶような声であった。

 そして、天を斬る一撃は、俺の目の前に迫っていた拳を両断し、腕の半ばから斬り落とした。

 

「っ!?」

 

 俺は巨人の攻撃から逃れ、森へと落ちてゆき……酷く懐かしい腕に受け止められた。

 

「相変わらず無茶をしているな。クソガキ」

「……オーロ。何だよ。笑いに来たのか?」

「素直じゃない奴だ。ミラ」

「はい! すぐに治しちゃいますね! って! オーロさん! 地面に投げちゃ痛いですよ!」

「このくらいで泣くような奴じゃないさ。それとも? まだ子供だったか?」

「んな、ワケ……無いだろ」

 

 俺は痛む体で無理矢理起きようとしたが、オーロに鼻で笑われ、小突かれて地面に仰向けで倒れた。

 

「駄目ですよ! オーロさん! けが人なんですよ!?」

「分かってるさ。まぁ? アレクが望むのならそれらしく扱ってやるが。コイツはそんな事は望まないさ」

「当たり前だ」

「ったく。いつまでも変わらないクソガキだな」

 

 オーロはため息を一つ零してから、俺から視線を外し、空を見上げる。

 そして、先ほどの一撃を放った天霧瞬と話をしているのだった。

 

「どうだ? 瞬」

「駄目だな。腕は落としたが、そのまま行ってしまった。おそらくは核を破壊しない限り動くだろう。ヤマトに出た奴と同じだな」

「にしては随分とデカかったな」

「ヤマトに現れた物はまだ成長途中だったのだと思います」

「なるほどな」

 

 オーロはミラや瞬と話をしてから俺の方をチラッと見た。

 そして、小さく息を吐くと瞬の方を見て軽い調子で話しかけた。

 

「すまんが、瞬。あいつの事は任せられるか?」

「構わないが、おそらくセオストには奴の方が早く着くぞ」

「だろうな。しかし、被害はなるべく抑えた方が良いだろう」

「それもそうだな」

「それに……あの街にはエドワルド・エルネストも居る。早々容易く落ちる事は無いだろうさ」

「分かった。では行ってくるとしよう」

 

 瞬はさっさと会話を終わらせると、セオストへ向けて駆けだして行った。

 しかし、俺は納得が出来ず、まだ痛む体を起こしながらオーロに訴える。

 

「お前も、行け! オーロ!」

「大人しく寝てろ。ミラを置いて行けるわけが無いだろうが」

「俺を、捨てて、行け!」

「……ハァ。いつまで経ってもお前は変わらないなぁ。アレク」

「っ!」

「目の前で落ちてる命を見捨てるほど俺は落ちちゃいない」

「……だが!」

「それに、奴に俺が出来る事は少ない。それならば有効的な手段をもってるお前を動かせるようにした方が戦略的には正しい。違うか?」

「……!」

「分かったら大人しくしていろ。もしかしたら何か役割が出来るかもしれん」

 

 俺はオーロの慰めの様な言葉に力を抜いて地面に体を預けた。

 悔しさを、ただ噛みしめて。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。