異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第63話『物語から飛び出して来た王子様(リョウ)』(シャーロット視点)

(シャーロット視点)

 

 セオストはお父様が管理・運営する街である。

 街ではあるけれど、国と同じくらいの力があるし。

 他の国の偉い方も、お父様を下に見たりはしないし、お母様にもお兄様にも……そして私にも他の国の王族と同じ様な接し方をするのだ。

 

 お父様は国王様で、お母様はお妃様。

 お兄様は王子様で、私はお姫様だ。

 外の国の人たちはみーんなそうやって扱う。

 

 でも。

 でも! 肝心の私たちが住んでいるセオストでは違う!

 誰も彼もあの子をお姫様みたいに扱うのだ。

 

 ソラリア・シュノール・エルネスト!

 

 確かに? ソラリアのお爺様であるエルネスト様は素晴らしい人だわ。

 セオストだけじゃない。人類の救世主と言っても過言じゃない人。

 でも、でもでも! ソラリアはそんなお爺様の孫ってだけで特別な何かは無いのよ!

 

 そりゃ確かに、子供の時から魔術が使えたり、世界の歴史をよく調べていたり、セオストや周辺国の事情、現状なんかを調べたりはしているわ。

 子供だけど、とても優秀だと思う。

 でも! でもでも! そんなの私だってやってるし。私だって出来る!

 

 ……まぁ、確かにソラリアよりは出来る様になったのがちょっとだけ遅かったかもしれないけど。

 それでも、私だってセオストの為に出来る事を考えて、勉強して、特訓して、毎日頑張っているのだ。

 

 なのに、誰も彼もみーんな、ソラリアの事をお姫様みたいに扱って、私はおまけみたいな扱いなのだ。

 本物のお姫様は私なのに!

 

 ソラリア様は凄いですね! シャーロット『も』凄いですね。

 

 セオストの中心にいるべきなのは私なのだ! おまけになるのはソラリアの方じゃないとおかしい!

 だから、私はこの理不尽をひっくり返して、世界を正しく戻す為に一つの案を思いついた。

 

 そう!

 セオストで発言力のある方に私の凄さを教えて、その人から私の凄さをセオスト中に広めて貰おうと考えたのだ。

 我ながら名案であると思う。

 

 特に私はソラリア程自由に動けないし。

 冒険者組合なんかソラリアが何度も出入りしているせいで、影響力はソラリアの方が上。

 ここは今更私が入った所でどうにもならないわ。

 

 でも、でもでも! 冒険者で有名な方をこちらの味方に付ければ、その人から私の影響力は広げていけるのだ。

 流石のソラリアも冒険者の方よりは組合への影響力も少ないだろうし。

 勝てる!

 これならソラリアに勝てる!

 

 という訳で作戦も決まったし。

 良い冒険者の方は居ないかな。とお父様にそれとなく話を聞いたら、つい先日セオストを襲った新種の魔物について、目覚ましい活躍をした新人の冒険者さんがいるという話を聞いた。

 

 その方は冒険者としてはまだまだ未熟だが、異国の戦士であったらしく、かのエルネスト様とも戦った事のあるとても強い方の様だった。

 しかも名前を聞けば、つい先日ソラリアが気になっていると言っていた方と同じ名前。

 ソラリアがお兄様の様に慕っている方というのならば都合が良い。

 

 この方を私の味方に付けて!

 ソラリアよりも私の方が上だってハッキリさせてあげるわ!

 

 ……。

 

 でも、ソラリアがお兄様の様に慕っているという話なら、奪ってしまうのは可哀想よね。

 大丈夫かしら。

 泣いたりしないわよね?

 

 ソラリアは凄い子だけど、結構寂しがりな所があるし。

 とりあえず、私を優先して貰いつつも、ソラリアのお兄様もやっていただきましょう。

 少し大変かもしれないけれど、英雄と呼ばれる方だもの。それくらいは大丈夫よね?

 

 ……。

 なんだか少し不安になってきたわ。

 私の行動でソラリアが悲しい想いをするのは嫌ね。

 確かに私をセオストで一番のお姫様として扱って欲しいというのは本心だけれど、ソラリアを蔑ろにして欲しいという事では無いもの。

 

 ソラリアはとてもいい子なのだから。

 悩むわ……。

 こういう時、レイシリアが居れば相談出来るのだけれど。

 

 ソラリアと会わずにレイシリアと会う事は難しいし……。

 うーん。

 

 駄目ね。考えていても良い案は浮かばないわ。

 とりあえず会ってみましょう。

 リョウ様という方に。

 

 ソラリアのお兄様みたいな方なのだし。悪い方では無いでしょう。

 セオストの外のお話が聞きたいのは確かだし。

 何も問題はない筈だわ。

 

 という訳で、お父様にお願いして、冒険者組合の方へ依頼を出していただいたわ。

 でも、セオストの為に戦った傷が酷くて、まだ依頼を受けられるような状態では無いと聞いて……。

 

 仕方ないわ。と思いながら気持ちを何とか落ち着かせて。

 待って、待って……。ようやく組合から連絡がきた時は飛び上がる程に嬉しかったわ。

 私をこんなにも待たせるなんて! という気持ちはあるけれど、ようやく会えると考えるとドキドキと胸が高鳴って、悪い気分じゃなかった。

 

 けれど、お父様から聞いた家に来る日は、三日後という事だった。

 

 最初に浮かんだのは、何故? という気持ちだったわ。

 だって怪我は治ったという話だし、お話するだけだし、同じ街に住んでいるのだし……。

 と不思議だったけれど、お母様の言葉ですぐに私は事情を理解したの。

 

「セオストのお姫様と初めて会うのよ? 準備があるのでしょう」と。

 

 私は嬉しくて空に飛びそうになったわ。

 もう私の事をお姫様だって思ってくれているんだって。

 紳士的な方なんだわって!

 

 ソラリアがお兄様と慕う方ですものね。

 当然と言えば当然なのかもしれないけれど、それでも私はまだ見ぬリョウ様の事を想って三日間を過ごしたわ。

 こんなにも一人の男性の事を想ったのは初めてかもしれないわ。

 

 ……。

 

 いえ、考えてみれば、お兄様以外の若い男性の方とお話しするのは初めてかもしれない。

 そう考えると緊張してきた……私も身だしなみを整えなくては……!

 

 と、考えてドタバタと迎える準備をすればちょうど三日ほどの時間が経っていた。

 ここで私はさらにハッと気づく。

 

 もしかしたら、私の為に三日後という日時を設定したのではないかと。

 家の人に調べてもらった話では、リョウ様が我が家に来る為の準備は半日ほどで終わっており、後は冒険者としての活動で必要な物品を揃える時間に使っていたという。

 つまり、リョウ様に三日という時間は必要なかったのだ。

 

 しかし、それでも三日後を指定した。

 それは、私がしっかりと準備をして、迎え入れる為に必要な時間。

 

 ここまでお考えになってこの時間を設定したんだわ。

 そう考えると、なんだか頬が熱くなって、胸の奥がドキドキと高鳴る様になっていた。

 

 まるで小説で見た異国の王子様みたいだわ。

 そうだ……リョウ様も確か異国から来た方ですものね。

 そう考えると全て納得出来るわ。

 

 異国から来たリョウ様はセオストという街のお姫様である私に礼を尽くしているのだろう。

 も、もしかしたら、どこかで私を一目見て、恋とかしてしまったのかもしれないわ!

 でも、リョウ様と私はそれなりに年の差があるし……良いのかしら?

 

 いえ! ヴェルクモント王国のミラさんとセオドラー王太子殿下は年が離れているけれど愛し合っているというわ。

 外の世界では普通の事なのかもしれない……!

 

 もしかしたら! リョウ様が命がけで新種の魔物を退治して英雄となったのも! 私に釣り合う方になろうとした結果かもしれない!

 あぁ、なんて……! まるで物語の恋みたいだわ!

 

 どんな御方なのかしら、早くお話してみたい。

 私は姿見の前で赤く染まった頬を両手で押さえながら、熱の籠った瞳で自分の姿を見つめるのだった。

 

 今日という日の為に、準備した装い。

 真実に気づく前までは、貴族の令嬢として正しい姿に見えていて、大丈夫だと。完璧だと思っていたけれど。

 今は……。

 

 リョウ様に素敵だと思っていただける装いになっているか、それが少しだけ不安だった。

 

 そして、リョウ様が家に来たという知らせを聞いて、私は思わず部屋の中で飛び上がってしまうのだった。

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