異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第79話『イエローチキンと魔物解体(ルール)の話』

 依頼は依頼である。

 どんな形であれ、依頼を受けた以上はしっかりとこなし、成果を持ち帰る。

 それがプロという事だ。

 

 だから、俺は依頼をこなしつつ、桜をキッチリと守る為に、意識を集中させて森を歩いていた。

 

「そう殺気立つなリョウ。獲物が逃げる」

「……しかし」

「でももしかしもあるか。俺らが何をしに来ているか思い出せ。奥へ行けば行くほど面倒も増えるんだぞ」

 

 アレクシスさんの言葉で、俺はとりあえず警戒態勢を解いた。

 そして周囲を威圧しない様に無心で歩く事にするのだった。

 奥へ行くほど桜も危険になる。

 

 ならばなるべく手前で仕事を終わらせる方が安全だと考えたからだ。

 

「まぁ、そうピリピリしなくても大丈夫だよ。リョウ。メンバーを考えれば何が出てきても対処できるメンバーだ」

「確かにな。これで食料漁りとは、贅沢な依頼もあったもんだよ」

 

 ヴィルヘルムさんとアレクシスさんの言葉に、俺は周囲を見渡しながら、確かにと頷く。

 前を歩くベテラン冒険者のヴィルヘルムさんとアレクシスさんは言うまでもなく、続く俺も戦闘力だけならそれなりだ。

 桜は魔術師として天才的な腕を持っているらしく、同じくらいの年齢の子で桜ほど上手く魔術が使える子は居ないらしい。

 

 そして、そんな桜と並んで歩くのはフィオナちゃんとリリィちゃんで、二人も冒険者としての知識が深く、こういう仕事なら何も問題は無いだろう。

 更に、二人の後ろを進むのはヴィルヘルムさんやアレクシスさんの師匠というか兄貴分のオーロさんと、オーロさんと同等くらいの腕を持つ天霧瞬さんだ。

 何かあった際に怪我を治せるミラちゃんも居る。

 

 まぁ、確かに何も間違いは起きないだろう。

 起きないだろうが、それでも万が一という事はあるのだ。

 だから俺は警戒は怠らない。という訳だ。

 

「駄目だこりゃ」

「もう諦めよう。ヴィル。アイツに何を言っても無駄だ。妹が居る限り、あの病気は治らんよ」

「そうみたいだな」

 

 何やら前方から酷い事を言われている様だが、森の中は何が起きてもおかしくないのだから、警戒はしてもし過ぎる事は無いと思う。

 間違いない。

 これが正しい行為なのだ。

 

「つんつん」

「ん? どうした? 桜」

「んー、とね。退屈だからお話でもしようかなって思って」

「あぁ、そうか。良いよ。何の話をする?」

「そうだなぁ。じゃあお兄ちゃんが西の方に行ってた時の話とか」

「良いね。気になってたんだ」

 

 俺は桜の隣を歩きながら、桜の話に耳を傾ける。

 桜が頑張ってきた話だ。一瞬足りとも聞き逃したくはない。

 

「ま、そんなに頑張って聞かなくても良い話なんだけど」

「うん」

「食堂で働いているとさ。色々な話を聞くんだよね」

「人も集まるからね」

「そう。それでさ。オリビアさんの噂話なんかもよく聞こえてくるんだ」

「オリビアさん? あぁ、まぁ良い人だからね」

「それに美人さんだしね。お兄ちゃんもよく見てるけど」

「……まぁ、偶然ね。受付さんだからよく話をするだけだよ」

「そう。それでさ。そのオリビアさんが今度結婚するって話で」

「は!!?」

 

 俺は驚きに目を見開いて、桜を見た。

 が、次の瞬間背後に何かの気配を感じて、刀を抜きながら振り返り……そこに居た魔物を切り捨てる。

 

「おぉー。あのタイミングで斬るのか」

「腐ってても侍か」

「見てないで、手伝ってください!」

 

 俺は現れた首の長い鳥の様な魔物を斬りながら、続く二匹目、三匹目も斬ってゆく。

 が、ヴィルヘルムさん達は見ているばかりで手伝ってはくれないのだった。

 

 仕方なく、俺は目の前に居る魔物を全滅させるべく刀を構えなおす。

 黄色い鳥はだいぶ興奮しているらしく、仲間がやられたというのに、戦闘の意思を一切削らず俺を睨みつけているのだった。

 

 正直なところ、そこまで強大な魔物ではない。

 が、数がまだ十匹ほど居る為、油断は出来ないだろう。

 しかも一匹一匹の大きさは俺とそれほど変わらない。

 

 囲まれれば面倒だ。

 

「っ!」

 

 刀を軽く上にあげ、鳥の注意が上に向いた瞬間に俺は走り出し、一番手前に居た鳥の首を落とす。

 その動きに反応して、鳥たちは奇声を上げながら刃物の様に鋭くとがった嘴を俺に向け突き出してきた。

 が、見え見えの攻撃だ。

 わざわざ受けてやる理由もない。

 

 後ろへと飛び、俺の居た場所へと伸ばされた長い首を刀で落とし、一匹、また一匹と無力化してゆくのだった。

 大した強さはないが、数が多いと処理が非常に面倒だ。

 

 が、泣き言は言っていられない。俺がやられれば桜が危ないのだから。

 

 という訳で俺は確実に、慎重に黄色い首の長い鳥を仕留め、既に俺が倒した鳥を解体して運びやすい様に処理しているアレクシスさんたちの所へ戻るのだった。

 

「おー。終わったか」

「終わりましたけど。少しくらい手伝ってくれても良いでしょうに」

「いや、お前ひとりで余裕だったろうが」

「それはそうかもしれないですけど」

「こっちもあんまり時間を掛けたくないからな。効率重視で動いているぞ」

「……まぁ、それならそれで良いんですけど」

 

 俺は不満を抱えながらも、大きく息を吐いて解体を見守る。

 そして、そろそろ終わるかなというタイミングに、仕留めた鳥を解体しているアレクシスさん達の所へ持っていくのだった。

 

「しかし……フィオナちゃん、上手いもんだね」

「えへへ。そうですか? いっぱいやってるので慣れちゃいました」

「そうなんだ」

「お兄ちゃん。桜も頑張ってるよ」

「うん。確かに。桜もうまいもんだ」

「へへ。でしょ」

 

 俺は桜の頭を撫でながら笑い、まだたどたどしい手つきで魔物を解体している桜を見守った。

 ナイフを使っている姿にはヒヤヒヤするが、危うげなく骨から肉を切り離してゆく。

 

「そういえば、この骨は使わないの?」

「使っても良いけど。持って帰るのは大変だからね。砕いて捨てます」

「なるほど」

「という訳だ。お前も手伝え」

「分かりましたー」

 

 俺はアレクシスさんから鉄の棒を借りて、骨を砕いてゆく。

 何かの魔術が込められているのか。骨は乾燥した木の葉の様に容易く砕け、白い粉の様になるのだった。

 便利な物もあるんだなぁ。

 

「後は、その辺にこの粉をまけば終わり。ほい」

「はい」

「俺は向こうにまくから、お前は向こう」

「分かりました」

 

 あんまり一か所に固めると、そこの魔力だけ濃くなるから、分散して色々な場所にまく方が、後々森も成長するし良い事だらけ。

 というのが以前聞いた話だ。

 

 こういう知識はまだまだ足りないから、増やしていかないとなぁと思うところではある。

 いつまでも冒険者として最低ランクというのも格好悪いしな。

 

「しかし」

「ん?」

「結構みんなちゃんとルール守ってるんですね」

「そりゃそうだ。少し前に起こったアレは事故みたいなモンだが、適当にやると自分らに返ってくるからな」

「もしかして……前にも同じ様な事件があったりしたんですか?」

「あぁ、まぁセオストじゃないがな。歴史を見ればいくつかあるよ」

「……なるほど」

「大型の魔物に関する事件で調べればいくつか出てくるだろうさ。有名な話じゃあ、ジャイアントボアが大壁をぶっ壊して安全圏に侵入。そのまま西側諸国へと突き進んでいった。なんて話が有名だな」

「大壁って、あのセオストの北側からスタンロイツ帝国の方に伸びている奴ですか?」

「そう。んで、アレが壊されると、街道とかの魔物被害が増えるからな。大事件になった」

「そんな事件があったんですね……でも、どうやって解決したんですか?」

「お前もよく知ってる奴が解決したんだよ。災害対策局局長殿。だな」

「あぁ、ミクちゃんが」

「おかげで人的被害は少なかったが、町や村は結構な被害を受けてな。今でも忘れられない奴は若手の冒険者によくよく言い聞かせてるみたいだぜ」

「それは、そうでしょうね」

 

 俺は何となく、壁より大きなイノシシが壁を破壊する光景を想像し、身を震わせるのだった。

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