ひとまずイエローチキンの群れを狩った事で大量の肉を手に入れた俺達であったが、まだまだ食材は足りないと狩りを続けることになった。
しかし。
「このまま森を捜し歩いても良いんですけど。どうせならもっと効率よく探しませんか?」
「効率よく?」
「はい。正直な所、セオストに居る人たちに料理を振舞う以上、この位の量では足りません。もっと大量の魔物が必要だと考えます」
「ミラは大型の魔物を狩るべきだと?」
「その通りです! オーロさん」
「しかしな。大型の魔物は危険も多いぞ」
「それは承知しています。しかし、不可能ではないと私は考えます」
「ふむ」
ミラちゃんの提案にオーロさんが腕を組みながら考える。
そして、順番に俺、ヴィルヘルムさん、アレクシスさん、瞬さん、フィオナちゃん、リリィちゃん、桜を見て、唸った。
「俺は問題ないぞ」
「アレクシス。お前の心配なぞしていない。問題はミラやお嬢ちゃん達だ」
「大丈夫です! 私だって冒険者ですからね! 覚悟は出来てますよ!」
「んな覚悟する必要はない」
「わ」
胸を張りながら叫ぶフィオナちゃんにオーロさんはやや乱暴に頭を撫でながら怒ったような声で笑う。
フィオナちゃんは乱れた髪を押さえながらオーロさんを見上げるが、オーロさんの意思は固いようだった。
なら……。
「そういう事なら、少し離れて戦いますか」
「どういう事だ?」
「完全に離れてしまうと怖いですが、フィオナちゃん達を後方に置いて、ヴィルヘルムさんにフィオナちゃん達を見ながら、俺達の援護をして貰って、残り全員で大型の魔物を仕留めるんです」
「しかし、それなら嬢ちゃん達を先に帰した方が安全だろう」
「それはホラ。狩った魔物をセオストまで運ぶ必要もありますからね」
「む」
「瞬さんやヴィルヘルムさん、アレクシスさんはどうですか?」
俺はオーロさんを一人で説得するのは難しいと判断して、周囲にも意見を求めた。
そんな俺の意図を察してくれたのか、アレクシスさんはフッと笑う。
「別に良いじゃねぇか。離れた場所で戦う。護衛にはヴィルが付く。何が不満だっていうんだよ」
「万が一という物はあるからだ」
「それをさせない為に、俺達は強くなったんだろ」
「……」
「二度も同じ事はさせない。そうだろ?」
アレクシスさんは笑みを消し、ジッと真剣な眼差しでオーロさんを見つめる。
昔からの知り合いだという二人には何かがあるのかもしれない。
この会話はその何かを二人が確かめ合っている様であった。
いや、二人じゃない。
ヴィルヘルムさんも同じか。
「オーロ。俺からも頼む」
「……ヴィル」
「これは、一つの試練だ。そして、今超えるべき壁でもある」
アレクシスさんと同じ様にヴィルヘルムさんもまた自らの想いをオーロさんへと伝えようとしていた。
そして、その想いを受け取ったオーロさんは小さく息を吐いて、空を仰いだ。
「いつまでも俺達は守られるだけの人間じゃないんだよ。オーロ」
「俺達だって、強くなったんだ。まず最初の一歩を認めて欲しい」
「……俺が」
「……」
「俺が思っていたよりも、成長していたんだな。お前らも」
「当たり前だろ?」
「いつまでも子供じゃないんだ。俺達は」
「ふっ、分かった。なら良いだろう。分かった。お前らを信じよう」
オーロさんの言葉にヴィルヘルムさんとアレクシスさんは嬉しそうに笑い。
ミラちゃんや瞬さんも安心した様に笑っていた。
それから、オーロさんの了解も得たという事で、俺達はミラちゃんの作戦通りに大物の魔物を狩るべく動き始めた。
「狙いはジャイアントボアです」
「それは良いが、どうやって狙うんだ?」
「ジャイアントボアは、その体の大きさから大量の魔力を必要としています」
「……」
「ですから、中型の魔物を狩り、その骨を利用してジャイアントボアを呼び寄せます」
「ふむ」
「なら、とりあえず中型の魔物を狩る事から始めますか」
俺はミラちゃんの作戦を理解し、とりあえず周囲を確認し、動いている大きな物を探す。
そして、すぐに見つけたその気配に向かって俺は歩き始めた。
「む?」
「瞬さん?」
「どうやら同じ獲物を見つけた様だな」
「その様ですね」
俺と同じタイミングに立ち上がった、瞬さんを見ながら俺は笑い、後ろを振り返りながらミラちゃんに問う。
どういう風に狩れば良いかと。
「特別な事はなくても良いと思います。ただ……可能であれば周囲が開けた場所で仕留めて頂けると嬉しいです」
「分かった」
「あぁ」
「……お兄ちゃん!」
「ん。ちょっと行ってくるから、フィオナちゃん達の傍を離れちゃ駄目だよ」
「うん……!」
俺はひとまず桜の事をフィオナちゃんや、ヴィルヘルムさんに任せ瞬さんと共に走り出した。
ミラちゃんの言葉では広い場所で仕留めて欲しいという事だったが……。
「何か良い案はありますか? 瞬さん」
「周りの木を全て斬れば良いだろう」
「……いや、流石に森林破壊はまずいでしょう」
「なら、どうする?」
「上手く追いやって、広い場所で仕留める。というのはどうですか?」
「うむ。良いんじゃないか?」
「ではそれで行きましょう!」
俺は走りながら地面を蹴って木の枝に飛び移り、そのまま枝をバネにして空に飛んだ。
そして、空を飛びながら周辺の地理を把握する。
「見えました。中型の魔物の右側に広い空間があります。手前側にあるので、奥から追いやりましょう」
「分かった。では俺は左側から行く。手前から調整してくれ」
「はい」
瞬さんは自分の行動を俺に伝えると、とんでもない速さで駆け抜けて行き、あっという間に消えてしまった。
それを見送り、俺も瞬さんの動きと中型の魔物の動きを把握しながら位置を調整して走り続けた。
「む? 早いな?」
そして、想像していたよりも早く動いていた瞬さんにより、中型の魔物が大きく動き始めていた。
どうやら食事中に襲われたらしく、中型の魔物に襲われていたと思われる小型の魔物が森の中を逃げ回っている様で、こちらにも数匹流れてきた。
「ほっ!」
俺は小型の魔物を避ける為に木の上まで駆けあがって、枝から枝に向かって飛び跳ねながら逃げる中型の魔物を追うのだった。
それから、少しして上手く中型の魔物を補足した俺は、地面に居りて刀を抜いた。
そして、雄叫びをあげる中型の魔物に向かって走り、皮膚を切り裂く様に浅く斬る。
その衝撃に中型の魔物は恐怖を覚えたのか、方向を変え、広場の方へ向けて走り始めた。
「どうやら上手くやったようだな」
「みたいですね」
「このまま追いかけて、適当な所で仕留めるとしよう」
「はい」
俺は瞬さんと合流し、走り続ける中型の魔物を追いかけながら、頷く。
「しかし、アレはなんだ?」
「何でしょうかねぇ。トカゲの様にも見えますが」
「トカゲか。食えるのか?」
「さぁ。分かりませんが……とりあえず食べてみれば分かると思いますよ」
「それは確かに」
「まぁ、これから大型の魔物と戦うワケですし。その前に体力をつけるという意味でも、火を起こして食べてみますか」
「ふむ。そうだな」
瞬さんと適当な会話をしながら走り続け、中型の魔物が広い場所に出た瞬間、俺は横に飛び、中型の魔物に向かって飛び込んだ。
「天斬り!」
「そこだ!!」
俺は瞬さんの天斬りによって動きを止めた中型の魔物に向かって刀を振り上げて飛び込み、勢いよく振り下ろす。
そして、その一撃がトドメとなり、動かなくなった中型の魔物に近づいて、動きが完全に止まった事を確認した。
「うん。仕留めましたね」
「分かった。じゃあ俺はオーロ達を呼んでくるぞ」
「はい。俺は解体してますね」
「頼んだ」
俺は連絡を瞬さんに頼み、さっき桜が見せてくれた様に解体を試みるのだった。