夕食も食べ終わり、俺達は翌日行う作戦についてミラちゃんから話を聞いていた。
「ドラゴンもどきの解体には時間が掛かりますから、実際に行うのは明日の朝から行っていこうかとおもいます」
「なるほど?」
「ドラゴンもどき? コイツはドラゴンの仲間なのか?」
ミラちゃんの言葉に、瞬さんが倒れている中型の魔物を見ながらミラちゃんに問う。
俺も瞬さんの言葉を聞いて、ミラちゃんへと視線を送った。
ドラゴン。
ドラゴンである。
いるのか。この世界にドラゴン!
空を飛んで、火を噴いて、なんかお姫様とかを攫ったりするあの生き物が!
何か興奮してきちゃったな!
「ドラゴンもどき……正式にはヒガシモリオオトカゲという名前なんですが、名前の通りドラゴンではありません」
「なんだ。そうなのか」
「えぇ。ドラゴンもどきという名前も、ドラゴンの話を聞いた村人が、討伐したヒガシモリオオトカゲこそドラゴンだと言い始めた事で生まれた物ですからね」
「なるほどな。まぁ、奴に比べたら大して強くも無かったからな」
「いや……アレもドラゴンかと言うとまた難しい話なんですが」
ミラちゃんと瞬さんの会話を聞いて、俺はふと疑問に思った事を聞いてみる事にした。
「もしかして、もしかしてなんですけど! 瞬さんはドラゴンと戦った事があるんですか?」
「あぁ。あるぞ。オーロやミラもな」
「おー! 二人も!」
なんと! この世界には本当にドラゴンが存在しているらしい。
これは夢がある。ロマンがある!
もしかして、ドラゴンに乗ったりする人も居るんだろうか!?
ドラゴンライダーみたいな!
「さっきミラも言っていたが、アレはドラゴンとはまた別の何かだよ」
「ドラゴンと似た何かって、ドラゴンもどきって事か?」
「そういう訳じゃねぇんだが……どう説明したら良いかね。ミラ。何か上手く説明できるか?」
「うーん。そうですねぇ」
オーロさんに話を振られたミラちゃんは唸りながら考え、そして考えた末に口を開いた。
「アレは、イメージの中にあるドラゴンを魔術で世界に投影した存在……というのが一番正しい表現であると思っています」
「魔術で生み出されたドラゴン。って感じか?」
「そうですね。ですから、被害も最小限で抑える事が出来たのだと思っています」
「なるほど。神刀か」
「はい。魔術である以上、規模に関わらず神刀で切り裂く事が出来ますからね」
ミラちゃんとアレクシスさんの会話に俺もなるほどと頷きながら、遠い空の向こうを見た。
どうやら瞬さん達が戦った存在は本物では無かった様だ。
しかし、だ。
イメージでのドラゴンが存在するという事は、本物も存在するという事だろう。
いつか会ってみたいものだな。
「……お兄ちゃん?」
「ん? どうした?」
「いや、なんか楽しそうだから」
「そんな事は……あるかもしれないけど」
「……」
「いや、ほら。ドラゴンの話を聞いて、ちょっとワクワクしちゃってね」
「……お兄ちゃん」
呆れた様な桜の声を聞いて、俺は少しばかり恥ずかしくなって視線を夜空にさ迷わせる。
ドラゴンに憧れているなんて、子供っぽかったか。
「お兄ちゃんって英雄に興味あったの?」
「英雄? 何の話だ?」
「そりゃお前。ドラゴン殺しの英雄だろ?」
「え? いや、俺、別にドラゴンに恨みとか無いんで戦いたいとかは考えた事無いんですけど」
「は?」
「え?」
桜から怪訝そうな目を向けられ、アレクシスさんから妙な言葉を向けられる。
何だか話がすれ違っている様な感覚があった。
この世界だとドラゴンってそんなに恨まれてるの?
何をやったんだ、ドラゴン……!
「ドラゴンって、何かそんなヤバい奴なんですか?」
「そりゃヤバいだろ。生きている災害なんて言われる奴だぞ」
「生きている災害、ですか」
「あぁ。ドラゴンっていえばとにかくデカい生き物だからな。奴が歩いたり飛んだりするだけで街は崩壊した。なんて言われるほどだ」
何とまぁ。
この世界のドラゴンは怪獣映画の怪獣であった。
「そうですね。ドラゴンに関する伝承はそれなりにありますが、そのほぼ全てがドラゴンの引き起こした災害について書かれています」
「そんなに」
「はい。先ほどアレクシスさんも言っていましたが、とにかくドラゴンは大きいですからね。個体によっては山より大きい、なんて事もあった様です」
「山よりって、小高い丘くらいの山って事かな」
「いえ。ドラゴンが降り立った事で王都が滅んだという話もあるくらいですから、セオストが数個分くらいの大きさはあったと思いますね。そして、その大きさの生き物ですから。高さも当然それ相応にあります」
「……なんと」
「さらに言うと、そんな体を支える為に翼はもっと大きいという話で、ドラゴンが羽ばたく事で、国が滅んだという話もあったワケです。まぁ、実際には翼の力だけじゃなく、魔力を使って飛んでいたという話もあるので、そこまでの大きさは無いかもしれません」
「でも、伝承に残っている程度には大きかったワケでしょう?」
「はい。それは間違いなく」
なんてこった。
なんてこったである。
これではドラゴンの上に乗って、空を飛び回るという話ではなく、ドラゴンの上で生活するみたいな話だ。
そして、そんな大きさの存在がその辺に居るとなれば災害と呼ばれるのも納得であった。
夢は所詮夢という話だったんだなぁ。
「なんかガッカリしてる?」
「まぁ、お兄ちゃんの夢が壊れてしまってな」
「夢? ドラゴンの夢?」
「そう。なんかこう、ドラゴンに乗って空を飛ぶという夢があってね。それが消えてしまったんだ」
「ま!」
「わはは! そりゃ壮大な夢だな。だが、何で消えちまったんだ?」
「いや、流石に国と同じ大きさのドラゴンには乗れないでしょう。いや、乗る事は出来るかもしれないんですけど。そういう乗るじゃなくて、ドラゴンにまたがりながら空を飛ぶ夢をですね……」
「ふぅん。そりゃ中々壮大な夢だな」
「そこまで壮大なつもりは無かったんですけどね」
ちょうど良いサイズのドラゴンが居れば、多分それで解決した話であった。
が、現実は怪獣映画の怪獣である。
悲しいものだ。
「しかし、ドラゴンにまたがって空を飛ぶか。俺は結構好きだな」
「あー。確かにヴィルはそういうのは好きそうだな」
「俺も昔は同じ夢を見た物だ。まぁ、既にドラゴンが滅んだ種族だと聞いて夢は破れたがな」
「あったあった。本を抱えながら帰ってきて、夢は滅んでた。ってこの世の終わりみたいな顔して言ってたな! わはは!」
「笑うんじゃない。夢が消えたんだぞ」
「いやーすまんすまん。あまりにも面白かったモンで」
「ったく。どうしようもない奴だな。お前は」
ヴィルヘルムさんは未だ笑い続けているアレクシスさんに文句を言ってから俺の方に顔を向けた。
そして、笑いながら言葉を投げる。
「だがな。夢はまだ終わって無かったんだよ。リョウ」
「っ! そうなんですか?」
「あぁ。ドラゴンは既に滅んでいるが、似た様な種族なら居る。しかもちょうど良い事にサイズも俺達の夢には良いサイズだ」
「それは……!」
「ワイバーンっていうドラゴンの友達みたいな奴でな。ちょうど人間の倍くらいの大きさだから乗る事もきっと出来るぞ」
「おぉー!」
「いつか。俺達で探しに行こう。どこかの山にいるらしいから、まずはどこに居るのか探す所から始めないといけないが」
「そうですね」
「むむ!? ワイバーンの生態について知りたいという事ですか!?」
「落ち着けミラ。今の奴らはそこまで求めていない」
「しかし、探すのならば生態を知らなければいけないのではないでしょうか! かっ!」
「それはそうだが、こんな所で聞いてもどうしようもないだろう」
オーロさんの呆れた様な声にミラちゃんは動きを止めたが、どこか話したそうにしており、俺は明日の狩りが終わったら聞いてみようと考えるのだった。