異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第85話『(ひきこもり)に備える日』

 祭りをする為に必要な食料は集め終わり、急ぎの依頼は全て完了した。

 が、我が家の冬支度問題はまだ解決していない。

 

「じゃあ準備は俺たちでやっておくよ」

「ごめんね。お兄ちゃん」

「良いって。それよりも祭りの準備。無理しないでな」

「うん!」

「じゃあ、フィオナちゃん。リリィちゃん。桜の事、お願いね」

「はい! 私たちにお任せ!」

「がんばる」

 

 俺は食堂の手伝いで忙しくなる桜とフィオナちゃん、リリィちゃんを見送り、冬支度について調べ始めるのだった。

 

「まぁ、とは言っても……基本的には生活に必要な物を蓄えておくって事だけなんだよな」

「うん」

「じゃあ一緒に買い物に行こうか。ココちゃん」

「うん!」

 

 俺は桜から渡されたメモを持ち、ココちゃんと共に買い物に行こうとした。

 しかし、そんな俺たちに気づいたジーナちゃんがふわふわと浮きながら近づいてくる。

 

「どこ行くのー?」

「買い物だよ。冬支度をしないといけないからね」

「ふゆじたくー?」

「そう。セオストは冬になると雪が積もって家から出られなくなるからね。その前に必要な物を買っておくんだ」

「なーるほーど! じゃあジーナちゃんも買い物に行く!」

「何か欲しいものがあるなら買ってくるけど」

「ちっちっち。こういうのは自分の目で見るのが良いんだよ!」

「……まぁ、そういう物か。良いよ。一緒に行こうか」

 

 俺はジーナちゃんに外へ出る時は地面を歩いて欲しいと伝え、三人で大通りに向かう事にした。

 ひとまず必要な物は色々とリストアップされている訳だが。

 

「まずは……まぁ、服から見るか。冬物。桜たちの分も後で改めて買いに来ないといけないけど、先に俺たちの分だけ買っておくと、後で時間短縮になるからね」

「はーい」

「うん。分かった」

 

 という訳で、俺はジーナちゃんとココちゃんを連れて服屋へと向かった。

 そして、自分用の服はさっさと選び、購入予定の棚に放り込みながら、ジーナちゃんとココちゃんの元へ向かうのだった。

 

「どんな感じ?」

「うーん。って感じ!」

「悩んでるの? 値段なら気にしなくても良いよ。結構持ってるし。この辺の服屋ならそこまで高くないしね。流石にオーダーメイドはお金と相談だけど」

「えっとね。お金も大事なんだけど、似合う服を選ぶのも大事なんだよ。着ない服をずっとしまっておいたら、可哀想じゃない?」

「まぁー分からなくもない」

「だからー、ココちゃんに似合う服を今探しているんだよー」

「それは重要だね」

 

 俺はジーナちゃんの言葉に頷きながら、ココちゃんを見た。

 そして、今ココちゃんが試着している服とジーナちゃんが持っている服を比べる。

 甲乙つけがたいな。

 

「ココちゃんの好みは無いの?」

「ココは……なんでもいい」

「そうか。なら、俺たちのセンスにかかっているという訳だな」

「そうだね!」

 

 それから俺とジーナちゃんは、アレが良いこれが良いと話し合い、意見をぶつけあい、ようやくいくつかの答えを見つけた。

 その頃にはすっかりココちゃんも疲れていたが、服は気に入ったのかココちゃんお服が入った袋を抱きしめて満足そうであった。

 

 それから荷物を一度家に転送して、次の買い物に向かおうとしたのだが……。

 

「ゲームを買おう!」

「ゲーム?」

「そう! ゲーム! 色々なゲームがあるんだよ!」

 

 ジーナちゃんはココちゃんの手を握りながら、楽しそうにスキップをして、笑う。

 その姿を見て、子供の様だなと思いながら俺はジーナちゃんの背中について歩いていくのだった。

 

 それからジーナちゃんは、セオストの中央にある大通りをキョロキョロと見回しながら歩き、少ししてからその店を見つけた。

 

「ここだ! きっとこのお店だよ!」

「ふむ」

 

 俺はジーナちゃんが指し示した木造の店を見て頷く。

 正直なところ、大雪が降ったら潰れてしまいそうな見た目に見えるが……昨年にも雪は降ったんだろうし、何だかんだと大丈夫なんだろう。

 そして、店の中に飛び込むような勢いで入っていくジーナちゃんとココちゃんに付いて、俺も店の中に入ってみる事にするのだった。

 

 内装は、まぁ普通だ。

 いくつもの棚があり、そこには大小様々な箱がある。

 これがきっと、ジーナちゃんが言っていたゲームだろう。

 

 俺は一つの箱を手に取ってその名前を見た。

 

「人生ゲーム」

 

 どこかで聞いたことのある様な名前だが……どういうゲームなんだろうかと裏面を見て、説明を読む。

 

「えーと。何々? もし、今とは違う人生を歩んでいたら! そんな空想が現実となるゲーム! 夢の世界で新しい人生を体験しよう! か。なるほど」

 

 昔、桜や山崎さんご夫婦と遊んだボードゲームと同じ様な奴かな。

 遊びやすくて、桜も楽しんでいたし、こういうのを買っておくのも良いかもしれない。

 ココちゃんもまだ子供だし、桜もお姉さんとしてまた遊べることだろう。

 

「んー? あー、人生ゲーム! そのゲーム面白いんだよねー」

「ジーナちゃんは知ってるんだ」

「うん! よく遊んだよー! 買うの?」

「あぁ。評価も高いみたいだし、買おうかな」

「おー! じゃあみんなで遊べるねー!」

「そうだね」

 

 俺はジーナちゃんの反応も良かったことから人生ゲームを持ち、次のゲームを探し始める。

 

「リョウ君。リョウ君」

「んー?」

「これ、買おうよ! ドラゴンゲーム!」

「ドラゴンゲーム?」

「そう。ドラゴンになって遊ぶゲームだよ!」

 

 ドラゴンになって、遊ぶゲーム。

 自分の中でジーナちゃんに言われた言葉を繰り返してみたが、正直意味がまるで分からなかった。

 いや、どういう事だ?

 

 ドラゴンになる?

 

「ねー? 買おうよー! 家は壊れないから―」

「家が壊れる可能性があるの!?」

「大丈夫! 安全装置が付いてるから!」

「安全装置!!?」

 

 ゲームって、サイコロとかルーレットとか使って遊ぶ物じゃないのか?

 トランプとかみたいに紙を使って遊ぶ奴もあるけど。

 いや、でも、どちらにしても、家が壊れる可能性とは!?

 

「ねー? ねー? だめー?」

「むー。いや、家が壊れるのはなぁ」

「大丈夫! 絶対に壊さないから!」

「……」

「そ、そうだ! ほら、ココちゃん! 見て! このゲーム! 面白そうでしょ!? やってみたいよね!?」

「え? あ……!」

 

 必死に言葉を紡いでいたジーナちゃんは、ココちゃんが手に持っているゲームを見て、止まる。

 ココちゃんが持っていたゲームは『ふしぎ探検隊』という名前のゲームで、どうやら色々な場所を探検するゲームの様だ。

 なかなか面白そうである。

 

 しかし、ココちゃんは見つかってはいけない姿が見つかったとでもいうようにゲームを背中に隠してしまった。

 

「えと、ね。これは、ちがうの。ちょっと持ってただけで」

 

 嘘だ。

 ココちゃんは凄く興味がありそうだったし、ジッと説明の部分を読んでいた。

 気になるんだろう。

 

 だが、だいぶ遠慮している様な状態だし、このまま無理に話を進めるのはなぁ。

 なんて、考えていたら、すぐ隣に立っていたジーナちゃんがクスっと笑ってから、ココちゃんが棚に戻したゲームを手に取る。

 

「……ぁ」

「あー! ふしぎ探検隊だー! ジーナちゃん、これやってみたかったんだよね! ね? リョウ君買って!」

「ほう。お値段は? 良いんじゃない? だいぶ安いし」

「わーい! やったー!」

 

 大喜びしているジーナちゃんの向こう側で、ココちゃんは申し訳なさそうにしながらも、小さく笑みを作っているのが見えた。

 頭の良い子だ。

 色々と察したのだろう。

 

 しかし、買うと決めたからにはもう購入は決まっている。

 俺はふしぎ探検隊の箱をジーナちゃんから受け取り、人生ゲームの上に重ねた。

 まぁ、正直なところ稼ぎから考えればこの程度の出費は問題じゃない。

 

「じゃ、ついでに。ドラゴンゲームも……」

「……」

「……だめ?」

 

 子供の様に首を傾げて問うジーナちゃんに俺は少し考えてから首を縦に振った。

 

「良いよ」

「わーい!! やったー!!」

 

 ジーナちゃんのお陰でココちゃんが好きそうなゲームも買えるわけだし。

 このくらいは良いだろう。

 

「ただ、家は壊さないでよ?」

「うん! がんばる!」

 

 頑張る?

 頑張らないと家が壊れるのか?

 やっぱり買うの、止めるか?

 

 それから会計を終わらせるまでドラゴンゲームについて考え続けたが、結局ジーナちゃんのおねだりには勝てず、いくつかのゲームもついでに買ってしまうのだった。

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