異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第88話『セオスト祭り当日(ほんばん)

 桜やココちゃんとセオスト祭りの準備を見ながら散歩した次の日。

 俺は朝一番に外へ出て、ランニングしながら祭りの状況を確かめに行った。

 どうやら日付が変わった瞬間から祭りを始めた人たちも居たらしく、酒瓶を持ちながら楽しそうに笑っている人たちも見かけた。

 

 なんとまぁ気の早い事だ。

 いや、でもそうか。

 正確にスケジュールが決まっていたワケじゃないし。祭りの準備をしている間に楽しくなって飲み始める人もいるか。

 

 なんて考えながら、セオストの通りを走り、ある程度の運動を終えてから俺は自宅へと戻った。

 

 そして、自宅へ戻ってからはシャワーを浴びてから朝食を食べて、リビングでのんびりと食後のお茶を楽しむのだった。

 今日のお茶は冬支度の時に偶然見かけたヤマト茶である。

 まぁ、前の世界における緑茶なのだが……やはり飲みなれた物は心と体を癒す効果があるようだ。

 

「ふぅー」

「あ、お兄ちゃん。おはよう。今日も早いね」

「あぁ。おはよう。桜。今日も良い天気だよ」

「絶好の祭り日和ってやつだね」

「そうだね」

 

 俺は桜と笑い合いながら、テレビの電源を付ける。

 ちょうど、セオスト祭りについて、どこかの人たちが話をしている様で、セオストの様子をモニター越しに見る事が出来るのだった。

 

『ご覧ください! セオスト始まって以来の大イベント! 第一回セオスト祭りの様子を!』

「テレビでお祭りの事やってるの?」

「そうみたいだね」

「じゃ、そっちでたーべよ」

 

 桜は自分の手で作った朝ごはんを皿にのせて、俺の隣に座った。

 そして、俺に寄り掛かりながらテレビを見る。

 

『セオストの東西南北に走る大通りには無数の店が立ち並び、祭りの始まりを今か、今かと待ちわびている様です!』

「あ、まだお祭りは始まって無かったんだね。もう楽しんでいる人は居たけど」

「そうなんだ」

「そう。お酒を飲んで、歌を歌って、楽しそうだったよ」

「ふむふむ」

 

 ご飯を食べながら頷く桜に笑いかけながら俺は再びテレビへ視線を戻した。

 それからテレビはセオスト祭りが生まれた経緯や、壁を直した人たちへの感謝を込めて、など色々な背景事情を語ってくれる。

 

 祭りの始まりは桜やシャーロットちゃんやソラちゃんのお話からだったけど、その辺りは色々な事情を考えてセオスト家や貴族の家々という事になっていた。

 まぁ、余計なトラブルに巻き込まれない方が大事だから、この辺りはしょうがない。

 

「んー! ご馳走様でした! で、とりあえず、どうする? フィオナちゃん達はまだ寝てると思うけど」

「無理に起こさなくても良いんじゃないか? 祭りは今日だけじゃないし」

「それもそうかー。じゃ、二人の時間を楽しんじゃおー」

「そうだね」

 

 それから俺は、寄り掛かる桜とゆるやかな会話を楽しみ、二人の時間を過ごした。

 が、それほど時間も経たずにココちゃんが起きてきて、フィオナちゃんやリリィちゃんも起きてきて、最後にジーナちゃんが起きてきて、全員が目を覚ますのだった。

 

 そして、お昼ごはんを食べるついでに祭りへ行こうと決まったのである。

 

「じゃあ、お祭りに行く前に決まり事を作っておこう」

「きまりごとー?」

「そう。お祭りは人でいっぱいだからね。迷子になっちゃうかもしれない。そういう時の為に、何かあった時は、こういう行動をしてね。って決めるんだよ」

「なるほどー」

「という訳で、セオストの街を歩くときは基本的に誰かと手を繋いで歩くこと。ジーナちゃんはココちゃんと、フィオナちゃんはリリィちゃんとね」

「私はお兄ちゃんと?」

「まぁ、そうだね。桜はしっかり者だから大丈夫だとは思うけど、警戒は大事だ」

「うん!」

「そして、ジーナちゃんとリリィちゃんは俺の位置は常に意識してて欲しい。見失ったら通りの端に移動して、見失った場所から動かない。良いね?」

「はーい」

「分かった」

「こっちもジーナちゃんとリリィちゃんは意識しておくから、居なくなったらすぐに探しに行くよ」

 

 という感じに、ひとまず群衆の中で動く方法だけ決めて、俺は桜、ココちゃん、フィオナちゃん、リリィちゃん、ジーナちゃん、ミクちゃんを連れて祭りへと飛び出した。

 

 祭りは想定通り、凄い人の数で、無計画に飛び込めばすぐにここがどこか分からなくなってしまいそうである。

 しかも熱気もすごく、体調不良にも気を付けなきゃなと思いながら俺はみんなにとりあえず話しかけた。

 

「じゃあ、まずはどこから行く?」

「最初は食堂の出店が良いとおもいまーす! 祭り専用焼き鳥サンドスペシャルがあるからね! 私たちが頑張って仕込んだんだよ!」

「そうなんだ。じゃあまずは食堂の出店に行こうか」

 

 俺はフィオナちゃんの提案に頷き、大勢の人が賑わう大通りを避けて、裏道から冒険者組合の建物を目指した。

 まぁ、裏道は裏道で人があふれており、どう進んでも苦労する様な状態であったが。

 それでも何とか進んで冒険者組合の建物までたどり着いた俺たちは建物の前にある出店に声をかけるのだった。

 

「すみませーん」

「いらっしゃい! って、リョウじゃねぇか。それにフィオナにリリィにサクラ。どうしたんだ? 祭りに行くって言ってただろ」

「そう。お祭りを楽しみに来たんだよー! まずはマスターの特製料理からね」

「うん。マスターの料理を食べないと始まらない」

「間違いなく一番おいしいもんね」

「お、お前たち……! くぅー! 金は要らねぇ! 全部もってけ!」

「いやいや流石にそれはマズいから」

 

 フィオナちゃんは笑いながらお金を食堂のマスターに渡し、焼き鳥サンドを四個貰う。

 スペシャルなメニューというだけあり、サイズが非常に大きかった。

 何とか両手で持つ事が出来る、という様な大きさで、俺は一つ渡されたが、フィオナちゃん達は二人で一つを食べるようだ。

 

「んー!? おいしいー! おじさん! すごい! てんさい!」

「そう褒められると照れるな」

「焼き加減とか最高だね!」

「まぁお前たちが仕込みを手伝ってくれたからな。焼くだけで楽なモンよ」

 

 焼き鳥サンドを一口食べたジーナちゃんが興奮しながら喜びを伝え、フィオナちゃんもそれに乗り、マスターを褒める。

 そんな食事風景が周囲の目を引いたのか、いつの間にかマスターの出店には多くの人が集まっていた。

 どうやら宣伝に協力出来たらしい。

 

「そろそろ邪魔になりそうだね。別の所へ行こうか」

「さんせーい」

 

 そしてマスターの出店を離れた俺達は出店を順番に見ながら、たまに買い物をして、たまに遊んでと祭りを満喫する。

 桜たちも終始楽しそうで、俺も十分に満足できる祭りであった。

 

「あ! お兄ちゃんお兄ちゃん!」

「どうした? 桜」

「ほら! あの店! 金魚釣りのお店!」

「あぁ、そういえば……行くって話してたね。行ってみるか」

「うん!」

 

 祭りの中を歩いていた俺たちは、偶然、例の店を見つけ、とりあえず寄ってみる事にした。

 

「どうもー」

「らっしゃい! って、昨日の兄ちゃんじゃないか。来てくれたのか?」

「まぁ、どんな遊びか気になってましたからね」

「そうかい。じゃあ見てってくれ! これがー! 金魚釣りだよ!」

 

 店主さんの言葉に俺は目の前に広がるやや大きなプールを見た。

 それは、昔庭に置いたビニールプールにも似たプールで、昔祭りで見た金魚すくいよりも大きなプールだった。

 

「この金色の魚は……?」

「金魚釣りの魚だよ。釣ったら持って帰って食べな。旨いぜ」

「そうですか」

 

 食べる前提なのか。

 すくった金魚を育てる遊びとは随分と方向性が違うが……まぁ、魚の大きさは俺の腕くらいあるし、これを育てるのは中々至難の業だしな。

 始めから食用だと決まっている方が気分も楽かもしれないな。

 

 なんて思いながら店主に金を払い、俺は桜たちが金魚釣りをしているのを見ているのだった。

 金色の魚はそれなりに強敵な様で、桜たちは苦戦しながらも何とか魚を釣って喜んでいた。

 

 しかし、金色の魚か……。食べられるのかな?

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