ソラちゃん達の提案で、とある冒険者の店を救う事になったのだが……。
「これは酷いですわね」
「ホントだね!」
「ひどい」
「……ガーン」
「三人とも。もう少し手加減してあげて欲しいかな。みんながみんな何もかも上手くいく訳じゃ無いからさ」
シャーロットちゃんとソラちゃんとレイちゃん。
三人の言葉で打ちひしがれている冒険者の知り合いを見ながら、俺は一言三人に注意する。
そんな俺の言葉を聞いて、三人は顔を見合わせながら素直にごめんなさいと謝った。
「ありがとう。三人とも。三人が優しくて嬉しいよ」
「えへへ。そうかな」
「嬉しいですわ」
「えっへん」
「うん。じゃあ、このどうしようもない料理を何とかしようか」
「あぁ……ってェ! リョウ! お前が一番何言ってんだぁ!?」
「いや、人を傷つける事を言ってはいけないという教育と、本当に酷い物を酷いという優しさを同時に教えているんだよ。助かる」
「助かるなァ!」
わいわいと騒ぐ男の言葉を流し、俺はソラちゃん達に問うた。
「ソラちゃん達は何か考えはある?」
「うーん」
「悩みますわね」
「リョウせんせーは何か考えがあるの?」
悩むソラちゃんとシャーロットちゃん。
そして、直接聞いてきたレイちゃんに微笑みながら俺は首を横に振った。
「ううん。残念だけど、俺の考えは無いかな」
「ないんだ」
「まぁそうだね。それに、これはあくまでみんなが考える事だしね」
「そうなの?」
「だって、この店を助けたいのはレイちゃんとソラちゃんとシャーロットちゃんだろう?」
「たしかに」
「だから俺はみんなに協力するだけさ。別に失敗しても良いし。考えてやってみよう」
「うん」
レイちゃんは納得したと頷いて、ソラちゃんとシャーロットちゃんも互いに顔を見合わせた後、頷いた。
この店の主である男たちは非常に微妙な顔をしていたが、まぁどの道このまま放置していても何も生まれないのだ。
失敗は継続。成功すれば何かが変わると思って納得して貰いたいものだ。
「私たちで考えてみる……ですわね」
「そうだね」
「ソラリアは何かありますの?」
「まずは、やっぱり味じゃない? 見た目もそうだけど」
「おいしくなさそうだし、おいしくない」
「そうだね。だから、まずは味を変えようよ。冒険者のご飯っていうのは珍しいけどさ。やっぱり美味しくない物は食べたくないし」
「まちがいない」
ソラちゃんの言葉に、皆納得した様に頷いた。
そして、続くソラちゃんの言葉に耳を傾ける。
「コンセプトは良いと思うんだ。でもさ。別に本当の冒険者ご飯を出さなくても良いと思うんだよね」
「と言うと、どういう事でしょうか。ソラ様」
「ソラ様……!」
「どうしたの? ソラちゃん」
「いや、様付けで呼ばれると何かくすぐったくて」
「しょうがない。ソラちゃんはすごい子だから」
「凄いのは私じゃなくてお爺様でしょ。レイちゃん」
「まぁ、たしかに。お爺様もすごい」
微妙に逸れていく話にソラちゃんはコホンとわざとらしい咳をして、話を切り替えた。
その姿はとても可愛らしく、みんな頬を朱色に染めているソラちゃんに視線を向ける。
が、その視線がまたくすぐったいらしく、体を震わせてからソラちゃんは再び話題を変える様に喋り始めた。
「とにかく、だよ。私が思うに、冒険者はこんなご飯を食べてるんじゃないかなーっていう想像のご飯を出せば良いと思うの」
「具体的にはどういう物ですの? ソラリア」
「そりゃ、やっぱり味が濃いとかさ。とにかくパワーが出そうとかさ。そういう感じのご飯じゃない?」
「こうソースをかけて火で焼いて、かぶりつく! みたいな感じですかね。ソラ様」
「うん! そんな感じ」
ソラちゃんの提案に、彼らは顔を見合わせながら作戦会議を始めた。
当然と言えば当然な話ではあるが、彼らだって森で様々な調理をした事くらいはあるのだ。
ただ、調味料を運ぶ手間とか、わざわざ外で料理をする手間を考えて、味は捨てているだけなのだ。
なら、手間を気にしなくても良いこの場所なら、色々な事が出来るという事である。
という訳で、冒険者ご飯改め冒険風ご飯が出来上がった。
とは言っても、出来たのはただ骨付き肉を焼いて、濃いめの味を付けただけであるが。
しかし、そんな料理であってもソラちゃん達が店の前で客引きをして、実際に食べてみているとあれば話が変わってくる。
「おぉ……! 行列が!」
「リーダー! 行列が出来てるよ!」
「見えている! 見えているぞ!」
チームは感動しながらも手は止まらず料理を作り続け、渡し続けた。
そして、いつしか店は大きな注目を浴びる様になり……偶然近くを通りがかった桜たちにも見つかるのだった。
「お兄ちゃん!? 何してるの!? 今日は冒険者の仕事だったんじゃあ」
「まぁ、そうなんだけど、護衛対象が店をやってみたいって事で、こんな事にね」
「でも、ソラちゃん達だけじゃ対応出来てないけど」
「うん。そうみたいだね。このままじゃ危ないし、そろそろ撤退かな。店は見捨てる様で悪いけど」
俺は店のメンバーに視線を送り、意図を伝えた。
向こうもプロの冒険者である。
視線だけで俺が伝えたい事の意味を理解し頷いた。
万が一ソラちゃん達が傷つくようなことになれば大変だからだ。
しかし、それに待ったをかけた人物が居た。
桜である。
「お兄ちゃん。まだ解散しないで」
「え?」
「私たちが手伝うから、ソラちゃん達は店の中に」
「いや、それは嬉しいけど。良いのか?」
「良いよ。このまま中途半端で投げ出したらソラちゃん達が可哀想でしょ」
「……」
「それに。調理場の中なら安全だし、お兄ちゃんも護衛しやすいでしょ」
「……桜」
「こっちは任せてよ。もう何ヵ月も食堂で働いてるんだからさ」
「ありがとうな。桜」
「うん!」
俺は桜の好意に甘え、ソラちゃん達を回収しに行った。
そして、全員を抱えて内側に引っ込み、その間に準備をしていた桜たちとバトンタッチする。
「リョウ君!? まだ仕事は」
「あるよ。でも、外は得意な子達が来てくれたから、ソラちゃん達は内側を手伝ってくれるかい? こっちも人が足りなくてね」
「得意な子って……! あ、サクラちゃん」
ソラちゃんは俺に抱えられたまま外へ飛び出していく桜とフィオナちゃんとリリィちゃんを見て、ホッと安心した息を落とした。
そして、大人しく内側へ入ると、料理の手伝いをしているココちゃんやジーナちゃんの元へ向かうのだった。
「色々足りないから、君たちも手伝ってね」
「うん」
「はーい」
「わかりました」
三人は流石に疲れていたのだろう。
用意された椅子に座り、休みながら料理の手伝いを始めるのだった。
それから桜たちのお陰で行列は綺麗に整理され、ジーナちゃんやココちゃん。ソラちゃん、レイちゃん、シャーロットちゃんのお陰で調理の速度も早くなり、何とか行列にも対応出来る様になるのだった。
そして、大盛況の中で材料が無くなり今日の戦いは無事終了となった。
「祭りはかなり盛り上がってるみたいだから、明日からもまた頑張ってよ」
「あぁ、そうさせて貰うよ。このソラリア様スペシャル料理でな」
「ソラちゃんが起きたら恥ずかしい! って叫びそうな名前だな」
「大丈夫だ。シャーロット様スペシャルとレイシリア様スペシャルもあるから」
「そういう話じゃないんだよなぁ。まぁ、良いけど」
俺は苦笑しながら疲れて眠ってしまった三人を見て頷く。
大満足の中でお祭りを体験出来たらしく三人の顔は笑顔であった。
「お疲れ。お兄ちゃん」
「あぁ、桜もお疲れ。助かったよ」
「うん。ありがと。そう言って貰えると頑張った甲斐があったね」
控え目に笑う桜に俺も微笑んで頭を軽く撫でる。
それに、桜は嬉しそうに笑ってから俺に体重を預けてくるのだった。
この街に来てからかなりの時間が経ったが、その間に桜は大きく成長したようだ。
これ以上の喜びは無いだろう。
俺は喜びを噛みしめながら空を見上げるのだった。