俺達冒険派遣業 ~黒いのは会社だけで充分だ~   作:八切武士

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 どう見てもヤバそうな扉を開け、地下へ進んで行く派遣社員一同。
 意外な程、幻想的な美しさをたたえる地底湖にて、全く綺麗では無い住民達に遭遇するのであった。


業務契約 9:~地底湖は綺麗だけど、住民は汚なかった~

 

 扉の向こうの道は下りながら右に曲がり、180度展開したかと思うと、左に曲がって、右、右、左、右、左、左とやたらとぐねぐねとしていた。

 一本道だからいいが、分かれ道にでもなってたら厄介だ。

 そういえば、黒い太陽の地下神殿は、黄泉国の似姿として作り、そこに続く道は黄泉比良坂とするんだったか。

 

 けた糞悪い話だ。

 

 しかし、ここに入ってから妙にタキオンバロメーターの数値に動きが無い。

 何か湧いたりとかどっかにぶっ飛んでいきそうにないって事なんで、いい事っちゃいい事なんだが、普通ここまで大掛かりな遺跡が湧いて出た場合、もう少し上下が激しいもんだ。

 かえって気に食わない。

 

 何か聞こえた。

 

 カー、とも、コーともつかない、喉を鳴らす音。

 角から飛び出してきた何かに反射的に銃口を向け、目前に迫ったそれに一粒弾を叩き込む。

 

(抜けた)

 

 当たった箇所にぼつっと穴が生じるが、突進力は落ちない。

 もう、銃器の間合いじゃない。

 俺はショットガンを回し、銃杷をそいつの顔面辺りに叩き込んだ。

 硬い肉を叩く感触。

 

(うへ、噛み付きやがった)

 

 ショットガンの木製銃床になまっちろい歯をむき出しにして噛み付いているのは、青白い肌で目を濁らせた日本兵だ。

 

(護国の鬼……か)

 

 物凄い力だ。

 俺は坂の下側にいる、自分より小柄なゾンビにずりずりと押しあげられるのを感じた。

 こいつはちょっとばかり新鮮過ぎる。

 俺が四苦八苦していると、後ろから何か独特の詠唱が聞こえ、激しい光が目を灼いた。

 

 翠の祝詞だ。

 

 明らかにひるんだゾンビに蹴りを入れて引き剥がし、俺は後ろに下がる。

 こんな近接レンジは俺の距離じゃない。

 

「フラー!」

 

 俺の脇を駆け抜けたフリードリヒがゾンビに物凄い前蹴りを入れた。

 蹴りを胸倉に喰らったゾンビが吹っ飛び、壁に叩きつけられる。

 ぴょーんと飛び上がり、天井に手をついたかと思うと、そのまんまゾンビの上に両足で着地。

 ちょっと形容したくない音がした。

 

 ついでに強烈な臭いも。

 

 果敢かつ過激な攻撃を受け止めたゾンビの体のどこかから何かが漏れたらしく、どろどろになるまで腐敗した代物の臭いが爆発した。

 

「ちょ、っと……」

 

 何か言いかけた翠が絶句する。

 俺は兎に角息を止めて、まだフリードリヒを乗っけたままびくびくと動こうとしている英霊のなりそこない、いや、その抜け殻の前を通り過ぎた。

 

(絶対に、ここ、生きて出たら新しいマスクを買う……)

 

 今日、何回目になるか分からない誓いを胸に刻む。

 しかし、ここは風が上に吹き出すのではなく、下に吹き込んでいる為に臭いが中々消えない。

 上の方では瘴気が吹き出していたのだが。

 しかし、そもそも、風の流れが出たの自体、この妙な道に踏み込んでからだ。

 実にけたくそ悪い。

 道が曲りくねり過ぎてどれ位下ったのかはよく分からないが、時間的には5分も下った辺りで広い場所にでた。

 じめっとした空気が頬を撫でる。

 

「地底湖か」

 

 翠が灯したままにしている天照大神の神光に照らされ、地底湖が蒼く、幻想的な光を放つ。

 俺達が足を踏み入れた空間は底の見えない地底湖に幾つかの島が浮かんだ場所だった。

 カルスト台地から溶け出し、沁み込んだカルシウムとミネラルが壁にきらきらと輝く内装を提供し、上と下で手を伸ばしあう鍾乳石と石筍がインテリアの大広間だ。

 噴水は無いが、水気だけはたっぷりある。

 入った瞬間に耳をうった妙なうめき声が無ければ、しばらく見入っていた所だ。

 中央に浮かぶ一際大きい島に10人程度の人影が佇んでいた。

 

(……畜生、数が多い)

 

 全部、元が付く連中だ。

 

(ゾンビ7、ワイト3、近づかれると厄介だ)

 

 発光する菌糸を纏って蠢くワイトにやられたら、こっちまでご同輩になっちまう。

 細かい事を言ってる暇も無く、全員が一斉に武器を向け、こちらに顔を向けた死者に向かって攻撃を開始していた。

 俺のショットガンがワイトの胸に1発、頭に1発命中して腐った脳漿を撒き散らし、三衛門の九十九式が連中の胸だの腕だのにぽつぽつと穴を穿つ。

 とてつもない轟音を響かせてフリードリヒのS&W M29リヴォルヴァから発射された44マグナム弾は胸に当たったゾンビをよろめかせ、手脚に当たったやつはそこを吹き飛ばした。

 しかし、生憎と銃器では腐った肉人形を止めるのは困難だ。

 翠が祝詞と照魔鏡で追い払った所で、逃げ場の無い連中は怒り狂って戻ってくるだけである。

 後ろでかちりと小さな金属音がして、何か小さな金属ボールが足元をコロコロと転がっていく。

 それは、島にかけられた渡り廊下を渡って俺達に殺到しようとしていた死者達の目前でかしゃりと弾け、高圧縮されていた液体を霧状に撒き散らした。

 

「ぶは」

 

 液体を喰らった奴等は強酸でもかけられた様に煙を上げ、痛みを感じない筈の死者が激痛にのたうつ。

 その隙を逃さず、俺達は残った弾丸を奴等に注ぎ込んだ。

 腐った肉と骨が更に撒き散らされる。

 瞬く間に残弾を撃ちつくした俺はショットガンを手放し、腰のホルスターからベレッタを引き抜く。

 フリードリヒはリヴォルヴァを棄てて素手で打ちかかり、三衛門は斧を抜いている。

 残ったゾンビ4体とワイト2体、フリードリヒと三衛門がゾンビと組討ちで忙しい中、俺は銀の弾丸をワイト達にご馳走してやった。

 本来貫通力の高い9×19mm弾だが、軟い銀剥き出しの弾頭は半ナマワイトの中でぶっつぶれて貫通しない。

 並の弾丸では効き目が薄いが、こいつは流石に効いたらしく、一瞬よろめく。

 しかし、まだ倒れない。

 俺が更に引き金を引き絞るのとほぼ同時に、右のワイトの胸に矢が突き立ち、内側から光が爆発した。

 

 翠の破魔矢だ。

 

 天照大神の神力がエンチャントされた破魔矢はアンデッドに対する必殺兵器だが、それなりの寄進をしないと分けてもらえないし、自分で作るのはメンドイので翠もケチる。

 

(機嫌が悪いんだろな……ま、ワイトにやられると治すのも厄介ってのも)

 

 頭をよぎる間に、左のワイトは連射された銀の弾丸に屈している。

 ほぼワンラウンド分使ってしまったが……まぁ、今回は実入りが多そうだからマイナスには程遠いだろう。

 いくら俺がセコくても、アンデッドの中からちまちま銀のかけらをほじくる程じゃあない。

 やる奴はやるが。

 フリードリヒと三衛門の方に目を向けると、ちょっと苦戦していた。

 自分より背の高いゾンビ3体の足元で斧を手にした三衛門は這いずり、転がる様な独特の動きで攻撃をかわし、一体のゾンビの足首を叩き切っていたが、鎧の隙間にゾンビの軍刀を貰ってしまっているらしく、背中から血を噴いている。

 フリードリヒもわき腹の辺りに一発貰ってしまったらしく、白いシャツに下半分を真っ赤に染め上げたまま、ゾンビの三八式長銃を跳ね上げて力の篭った逆突きをみまっていた。

 俺は撃ちつくしたベレッタを左手でしまい、幾分遅れてホルスターにたどり着いた右手で通常弾が詰まったベレッタを引き抜く。

 幾分慎重にゾンビ共の胸から上を狙撃すると、連中は多少の刺激を感じたらしく上半身が多少揺らいだ。

 

(くそ、豆鉄砲じゃ効果が薄いな)

 

 血の流れていない連中相手では、小指の先程度の鉛弾の衝撃なんて多寡が知れたものである。

 しかし、連中の鈍い注意を此方に割かせる役には立った。

 連中の内の1体がこちらに向けてよろよろと歩き出し、すかさず背後から背中に飛びついた三衛門が斧で後頭部を叩き割る。

 しかし、まだ五体満足な一体が三衛門の背後から迫り、着剣した三八式長銃を三衛門の背中に振りかぶった。

 俺は残った弾丸を全てそいつの上半身に叩き込んで仰け反らせようと試みたが、勢いの付いた銃剣は鎧の表面を滑って鉄の隙間に潜り込み、三衛門の左二の腕に食い込んだ。

 怒りの咆哮を上げてドワーフは銃剣を振り払うと、たたらを踏んでいるゾンビの三八式を掴んで引っ張り、斧で腕をすっぱりと断ち切った。

 続く二打ちで、バランスを失って前のめりになったゾンビの首が落ち、完全に決着がつく。

 撃ちつくしたベレッタの弾倉を交換して構えると、自分の受け持ちを片付けたフリードリヒが片脚を失ったゾンビに脚払いを食らわせ、首を踏み折っていた。

 

「とりあえず片付いたか」

「そーね」

 

To Be Countinued...

 




 ガンアクション!……今一、銃が役に立ってない気が。
 まぁ、相手が悪いですね。

 次回、一難去って、周囲を探索する一行は何を見つけるのか?
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