・九郎 …… チャカ使い(レンジャー?)・中衛
・フリードリヒ …… 格闘屋・前衛
・三衛門 …… 長銃使い・中衛
・翠 …… 神職・後衛
この世界、火薬式銃器に絶対的な防御を発揮する様な魔法鎧は、軍用か宇宙軍管理の“遺物”扱いになりがちなので、前衛でも銃器による遠距離攻撃手段は普通に持ってたりします。
銃が効かない(効きづらい)ものに対処する必要もあるので、近接格闘の需要は充分ありますが。
愛用の大口径オートマティック達を軽くばらして、点検とクリーニングを済まし、弾倉に弾丸を込め始めた辺りで事務所のドアが開いた。
「こんにちは」
元気な挨拶がして、紅白のめでたい装いをした娘が部屋に入った瞬間、ソファでごろごろしていた外人が跳ね起きた。
「ブラーヴォ、ミドーリ、お久しぶ~り~ねー」
「げッ、似非ドイツ人」
神職についているにしては微妙にはしたない言動をしつつ、両手を広げて顔を突き出してくるドイツ人、フリードリヒ=ヴァンヒルトをぐいぐいと押しのけているのは、巫女の婆沙羅翠(ばさら みどり)自称20歳だ。
神道の巫女というより、どう見ても密教の験者しか思いつかない、冗談みたいな苗字だが、本物の巫女だ。
確か、天照大神を祀ってる神社だった。。
骨格は正直大人の女というより、せいぜい高校生どまりだが、魔女、魔族の本当の年なんざ見た目じゃわかりゃしない。
魔族…っと、差別用語だったか、“魔法適応種”は平たく言えば魔法の使える連中の総称だ。
一応、エルフだのドラゴンだの魔法を使える化け物…失礼、“種族”も含むが、普通にそこらのおっさんが使う時は大体人間なのに魔法が使える連中を指している。
DNAだのは普通の人間と特に変わらないらしいが、連中、奇妙な年の取り方をする。
一定まで育つと、見た目の肉体年齢がそこで止まってしまうのだ。
まぁ、中身まで全て若いままとは中々いかないらしいが、一応見た目は10代から30台程度の幅で止まる。
珍しいのではガキのままとか、最初からジジババというのもあるらしいが、少数派だ。
前にフリードリヒと入った店でいい雰囲気になった女の子が、実際には孫が居る年、っていうか、実際に居たのが分かった時には正直へこんだ。
いや、泣いた…トイレで新兵みたく。
涙が涸れてお店に戻ったら、フリードリヒの野郎、平気の平左で口説いてやがった。
そういう悪い方向に分け隔てない所は尊敬に値すると思う。
俺には無理だが。
ま…そんな事を気にしてたらエルフだのドワーフだのといった妖精族の娘を口説くのなんざ無理難題な訳だけども。
ドワーフなんて樽みたいな生き物口説きたくないって?
ドワーフも女の子になると、ヒゲが生えた樽って訳でもないぞ。
丸顔で小柄、うーん、どちらかと言えば愛嬌のある顔立ちの子が多いな…触ると骨格が結構がっちりしてて逆に驚いたりするんだが…いや、そういう話じゃないか。
…そういえば俺、最初に翠と仕事を一緒にした時、極普通に年を聞いていきなり怒らせたっけなぁ。
イロイロと望み薄だ。
「ちょ、ちょっと、どこ触って、ってか、揉んでるッ」
確かに、ペアダンスのように身を寄せ、女性の背中を反らせる形でチューを迫る形を作っているフリードリヒの左手が、背中から尻にかかってもにゅもにゅと蠢いている。
はさみになった翠の手が振り上げられ、人差し指と中指がフリードリヒの目に突き刺さった。
「イターイ!ミドーリ、愛がイタイヨー!」
片手で顔を抑えて、大げさに苦しむドイツ人からようやく逃れると、翠は指についたヘンな汁を拭いた。
俺の銃用のクリーニングクロスで。
「何よ…文句があるなら、最初っから助けなさい、もぉ」
触らぬ巫女に祟りなし。
俺は銃弾を箱型弾倉に充填していく作業に戻った。
俺が紅茶、フリードリヒがエスプレッソ、翠が緑茶と好き勝手に淹れたお茶を飲んでいると又ドアが開きいて、とんでもない臭いが吹き込んできた。
「くさっ…酒くさっ」
翠が懐から取り出した手ぬぐいで鼻を抑える。
酒呑みにはお馴染みの、人間の体で発酵したアルコールの臭いだ。
「ゲボップ…まだ、正ちゃんは来ておらんか」
ずんぐりした人影がよたよたと事務所の中に入ってきた。
背中に担いでいた荷物をどさりと下ろすと、ソファなど無視して床にどっかりと座り込む。
人間だのエルフだの用に作られたソファは高すぎて落ち着かないという事らしい。
「ちぃ…仕事前にちぃっとだけ、効かせ過ぎたか…頭が金床みてぇな音させてやがるぜ」
ブツブツ言いながら尻ポケットのフラスクを取り出し、きゅうっと呷る。
中身は多分“アペカムイトゥリヒサケ”アイヌ火酒だ。
ポンアイヌレ、今で言えばアイヌドワーフ(アイヌ小人は差別用語だ)出身の北山三衛門(きたやま みつえもん)は200歳前後でドワーフとしては中年辺りの年代だ。
カムイも、アイヌコタンも、ついでに元の名前も忘れて久しいが、あそこの酒だけは止められないらしい。
俺も少し呑ませてもらった事があるが、アレは人間が口にしていい液体じゃない。
アレに比べればウォッカなんて蒸留水程度のもんだ。
アルコール濃度以上のものがあるに違いない。
実際あの火酒の中毒で廃人になった酒飲みは多く、街に転がってる浮浪者にそれを見る事ができる。
もっとも、火酒で廃人になったのが先か、浮浪者になってから火酒にやられたのかは俺にもわからない。
「うぃ~」
アイヌユーカラと酒気でのどをごろごろ鳴らして吐き出し、三衛門はさっき床に落とした頑丈そうな皮ケースの鍵を開ける。
中には整然と格納された旧式のボルトアクションライフルが1丁と、これまた古臭い鉞(まさかり)が一丁、他には工具が納まっている。
鉞を取り出した三衛門は刃を調べ、何かをブツブツつぶやきながら携帯砥石を取り出すと、酒を垂らしてしゃこしゃこやり始めた。
独特のきつい香りが広がり、翠があからさまに顔を顰める。
確かに独特だか、俺は火酒の臭い自体はそこまで嫌いじゃない。
ま、なんで斧を研ぐのに使いたがるのか気は知れないが。
(有坂九十九式短小銃…ボルトアクション、装弾数5発、7.7mm弾使用)
「あんだ坊主、見てたって撃たせちゃやんねぇぞ」
「別に、俺はこいつで充分」
俺がさっき点検が終わったばかりの、ベレッタ92FSオートマティックを持ち上げて見せると三衛門は鼻を鳴らした。
確かにあの時代のものにしては高品質な小銃だとは思うが、生憎とおれは銃についてはオート党だ。
To Be Countinued...
女性はいつまで経っても女の子なのさ……って、フリードリヒ君、君、ドイツ人じゃなくてイタリア人だったりしない?
これにて、今年分の投稿は最後となります。
皆さん、良いお年を!