俺達冒険派遣業 ~黒いのは会社だけで充分だ~   作:八切武士

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 九郎君達の上司、後藤正二郎(ごとうしょうじろう)のおっさん登場。
 親子二代で経営してるあたり、後藤派遣事務所は割と歴史ある会社な模様。


業務契約 3:~人(法人)にも(多分)歴史はあるらしい~

 

「お、みんな揃ってるじゃねぇか」

 

 事務所のドアが勢いよく開かれ、三衛門とどっこいどっこいの横幅をしたおっさんが入ってきた。

 身長も似たり寄ったりといった所だが、三衛門が鍛造した様ないかつい体をしているのに対し、おっさんの体はイースト発酵のパンみたいにふっくらしている。

 後藤正二郎(ごとう しょうじろう)、この性質の悪いジャム叔父さんみたいなのが、この事務所の所長で、ありがたくも俺達みたいなのに仕事をお分けくださっている訳だ。

 当然若干の手数料や何やかんやと……いや、大分ピンハネされてる様な気もするが、このおっさんが依頼の入札、条件の交渉、武器使用許可の法手続きといった、冒険野郎共がだいっ嫌いな書類仕事をしてくれるお陰で難しい事を考えずに俺達は心置きなく遺跡に潜れてるって訳だ。

 古き良き冒険者みたいに冒険やる毎に酒場でツケ貯めて、しまいにゃ路傍で野宿なんて生活とはおさらば、文化的生活を謳歌している。

 

「おぅぇえぁっぶッ……ック」

 

 ま、人にもよるが。

 

 何か困ってる市民が後藤のおっさんみたいな派遣会社の社長に泣きついてきたら、おっさんは事務所で抱えてる俺たちみたいな技能持ちから適当なのを見繕って集め、現地へ派遣する。

 そこで俺たちが困りごとを解決すれば、依頼者たる善男善女が大喜びでなけなしの金を払い、おっさん満足、俺達の懐もそれなりに暖まるって寸法だ。

 さっきから冒険者、冒険者と連呼しているが、一応、今風に言えば、派遣業者の契約社員の立場で、業務の実態は何でも屋。

 我が日本の派遣業に関する法律はぐだぐだゆるゆるなんで、何でもやる。

 ダンジョン掃除から、家の片付け、ペットの世話に捜索、家庭教師、中小企業の臨時の応援まで。

 いや、まともな業者なら法に触れない範囲だけどな。

 残念ながら、いつも銃をぶっ放す様な気持ちのイイ仕事ばかりじゃない。

 

「おう、正ちゃん……うぇ、今日はどんな穴倉だ……斧が磨きすぎてピカピカになっちまったぜ」

「叔父さん、今日そいつを振るったら、刃から羽毛を落とすのに一苦労しそうですよ」

「なんだぁ、今日の獲物は鳥熊かよ……なべにゃあできそうにねぇな、大東亜の戦ん時に、あれ喰った馬鹿がいてなぁ、営倉がくせぇのなんの、掃除する方の身に……」

 

 又、三衛門の手がフラスクに伸びた。

 俺が目配せすると、後藤のおっさんは咳払いしてとりあえず先を続けた。

 

「……今日の現場は秋川渓谷で農家をやってる田沢さんからの依頼だ、山の畑の近くに昔防空壕に使っていた洞窟があるらしいんだが、どうも最近妙な臭いがするって事で見に行ってみたらよ、せいぜい10メートル位だった奥行きが、奥が見えねぇ位に増えてるわ、入り口付近に鳥熊のクソが落ちてるわって事らしい」

 

 成る程、確かに鳥熊が出た程度なら地元の猟友会にでも頼めば済む話だが、単なる防空壕がダンジョン化した様な事例ならこっちの仕事だろう。

 まぁ、単なる野獣駆除も引き受けるけどな、たまに。

 ちなみに“鳥熊”っていうのは、毛の代わりに羽毛が生えた卵生の熊みたいな生き物だ。

 

 格別不潔って訳でも無いくせに、まぁ兎に角、凄く臭い害獣。

 

「くれぐれも失礼のねぇ様にな、こぃつぁ前にやった仕事のクライアントからの紹介で入札じゃねぇ、直電で受けた依頼だ、次に繋げろよ」

 

 俺は正二郎のおっさんに目を向けられ、三衛門に目をやる。

 床に座り込んだドワーフは斧磨きを止め、7.7mm弾を数えていた。

 経験豊富なのは認めるが、本当にこんなんよく雇ってるな、後藤のおっさん。

 先代からの付き合いらしいが……とにかく、俺に振られるのは面倒だなぁ。

 

「……この銃オタク」

 

 と、まぁ……その後、事務所から秋川に向かうバン後部で、俺は翠の冷たい視線に耐えつつ、事務所から借りてきたショットガンの点検に勤しんでいた。

 バンはフリードリヒが運転して、助手席では三衛門が大いびき、床に座り込んだ俺を壁を背にして座るタイプのシートに座った翠が睨んでいる訳だ。

 バン全体が酒臭くてイラつくのも分かるが、俺に当たらんで欲しい。

 

(レミントンM870……)

 

 今回は大物相手という事で、後藤のおっさんが貸してくれたのだ。

 弾代はしっかりさっぴかれるみたいだが、ま、背に腹は変えられない。

 俺も自前の長物が欲しいが、本体だけ手に入れるなら兎も角、ライセンス取得でごたついていてまだ手元に安心して持ち歩ける様な物が無いのだ。

 開発が1960年中期なんて古い銃だが、未だにポンプアクションショットガンの定番としてパトロール警官の携帯火器や、狩猟の友として使われて続けている堅実な代物で、手入れもいい。

 銃身下のチューブ型装弾部も延長されていて、装弾数が4発から、倍の8発に変更されているのもあり難い。

 

(素性のいい銃だ……もって帰れたら、ちゃんと整備して返そう)

 

 ポッと出のダンジョン、浮動遺跡は何もかもが不安定だ。

 あそこで無くした物を後で見つけ出せるなんて考えない方がいい。

 俺は点検が終わったショットガンをきちんとケースにしまって鍵をかける。

 いくらこんな稼業してるとはいえ、銃をむき出しで運搬してる所を職質されたら厄介な事になる。

 つまらん点数稼ぎのネタに武器所持ライセンスを取り上げられた契約社員は結構いるのだ。

 人里離れると結構すぐに危険生物がうろついている地方なら兎も角、都市圏では銃器はきっちり装弾しないで鍵のかかる専用ケースに閉まって持ち運ぶのが基本である。

 てか、流石に仕事の契約書と探索許可書持って現地に行くんでもない限り、都下で武器を携帯しようとか考えない方がいい。

 連中チンピラのダガーは鼻も引っ掛けないが、個人契約事業者から魔剣や銃器を取り上げる時なんて、すっぽん並みのしつこさで食らいついてくるからな。

 

To Be Countinued...

 




 という訳で、九郎君達のチームが今回のお仕事を受けて動き出した所で……

 あけましておめでとうございます。

 2025年の初投稿です。

 今年もよろしくお願い致します。
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