俺達冒険派遣業 ~黒いのは会社だけで充分だ~   作:八切武士

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 駐在さんとの顔見せの後、いよいよ現場に足を踏み入れた派遣社員一同。
 分かっちゃいたけどくっせぇ現場に萎え萎えとなる……が、手と足を動かさなきゃお金は貰えない訳で、(元)防空壕へ足を踏み入れていくのだった。


業務契約 5:~買おう、買おうと思ってもついつい忘れる物ってあるよね~

 埃まみれの防空壕に潜り込んで、その奥の洞窟に踏み込むと、すぐに濃密な獣臭が鼻をついた。

 声こそ出さないが、背後で息を詰める気配がする。

 俺は鼻で呼吸しないようにしつつ、そろそろと足を進めてゆく。

 前方確認はいつも俺の仕事だ。

 しかし、いつもの事ながら、NBCM(Newclear.Bio.Chemical.Magic arms)対応のマスクが無いのが悔やまれる。

 いつも買おう、買おうと思うのだが、その度に手持ちが無い。

 口元を覆っているネックマスクで今のところ我慢するしかないだろう。

 洞窟の中は薄暗く、奥は完全に見通しが効かない。

 

「先行して確認する」

「おう、気ィ締めて行け」

 

 俺はようやく酒が抜けてきた三衛門に親指を立て、M870と同じく、事務所からの借り物である赤外線ゴーグルのスイッチをONにした。

 

(相変わらずひでぇな……)

 

 安物のポンコツゴーグルは俺の視界を極彩色に変える。

 

(せめて白黒の照度強弱表示固定か、切り替えの奴がいいが……)

 

 欲しけりゃ自分で買うしかないが……金が無い。

 お宝、お宝と、まるで遺跡荒らしの様に念じながら、俺は奥にに踏み入っていく。

 臭いと気配が強くなる。

 あの熊と鳥の合いの子みたいな獣を見つけるのはそう難しい事じゃない、ただ、臭気に我慢しさえすれば達成可能だ。

 

(しっかし、こりゃ、たまらんな……)

 

 殆ど180°カーブした先にある少し広い空間に2つ、でかい熱源がうろついている。

 雨風の入ってこない理想的な巣だが、換気は絶望的だ。

 

(充分だな……)

 

 俺は吐き戻して存在をばらす様な無様なまねをする前に皆の所へ戻った。

 

「奥に鳥熊が2頭、酷い臭いだ……もっと奥にいるかも知れんが」

「ッく……手前の奴らから片すしかねぇな、調べるにしても邪魔だ」

「はっやーく、いきまショー、狩りの時間ネ!さっきからボクの拳、夜鳴きしまくりデス」

 

 俺と三衛門が真面目に額を寄せて相談している間、フリードリヒのアホウはグローブをはめた指をぽきぽきと鳴らしまくっている。

 いつも思うが、こいつのおかげで、俺のドイツ人に対するイメージはがた落ち、大暴落、世界大恐慌だ。

 つられて俺の株まで破綻したらどうしてくれる、このお気楽独逸人め。

 H&K社の職人さんに謝れ、全く。

 

「どうでもいいけど、さっさとおわらせましょ……ここ、臭い」

 

 翠先生、俺も同意見だ。

 今度は全員で置くまで進む、ゴーグルをつけてる俺と暗視能力持ちの三衛門は普通に歩いているが、そんなもんが無い翠とフリードリヒはそろそろとついて来る。

 先手を打てるときはわざわざ明かりで自分達をアピールしてもしょうがない。

 まぁ、正直三衛門みたいな金物の塊が居ると微妙かと思うが。

 歩く度にカチャカチャとうるさくて仕方が無い。

 

 (あの獣共が想像を超えた間抜けであります様に……)

 

 幸い俺の祈りは何かに届いたらしく、熊共はまだ所在無げにウロウロとしていた。

 

 俺はライフルを下ろしている三衛門の肩を叩き、左側の奴を指差し、ついでに右側の奴を指差してから自分を親指で指す。

 おっさんはうなづいて左側の奴に狙いをつけはじめた。

 俺も右側の奴に狙いをつける。

 元々大物相手って事で、M870には散弾ではなく、一粒弾が込めてある。

 当てる所に当てれば効く。

 俺が発砲した瞬間、三衛門も発砲した。

 即座に銃身下のストックを前後にしゃくって次弾を装填し、ゴーグルをはねあげて、射撃するのと同時に瞑っていた片目を開く。

 発砲音に合わせて翠が解き放った神光に照らされて咆哮を上げる巨獣が目にやきついた。

 断末魔の絶叫を奏でながら崩れ落ちる一頭を無視して、猛り狂う一頭へ俺と三衛門の火線が集中し、止めを刺した。

 

(首か……4発使った)

 

 生き残ってた奴は俺が撃った方だった、くそ。

 最初にくたばった方は綺麗に頭が撃ち抜かれている。

 頭が戦車並みに固い並みの熊じゃああはいかなかったろうが、しかし、スコープつきライフルに、ショットガンのアイアンサイトじゃ流石に狙撃で分が悪かったか。

 

「くさーいね、とりあえずここはこの2頭だけみたいだ」

 

 すばやく空間の中を調べていたフリードリヒが思い切り熊の死骸を蹴飛ばした。

 ぐったりとした死骸が一瞬跳ね、どさりと床に落ちた。

 相変わらず出鱈目な腕力である。

 

「でもここが巣じゃないわね、奥かな」

 

 翠のくぐもった声に俺はこもった硝煙を透かし見る。

 確かにこの空間には奴らの寝床も、獲物の喰いカスもない。

 もっと奥を探索する必要がありそうだ。

 俺はたすきがけにした弾帯から手早く実包を抜き出し、消費した分を再装填する。

 しかし、閉鎖空間でドンパチなんてやるもんじゃない。

 イヤープロテクターを装着していても耳が効かなくなって来るし、硝煙が実に目にしみる。

 まぁ、硝煙については俺は嫌いって程じゃないが、鳥熊の死臭と混ざり合って、吐きそうな毒ガスと化している。

 

(次にまとまった金が入ったら、NBCM対応のフェイスマスクを買おう……決定)

 

 鼻が曲がりそうだ。

 これだけ大騒ぎをした後じゃこそこそしてもしょうがない。

 明かりを持った翠を真ん中にすえた隊列で、空間の奥へ伸びる通路へ踏み込む。

 左右に分かれている。

 左は下り、右はすぐ先で→ぐぁに曲がりくねっていて先は見えない。

 

「ふん、奴らの巣は右だな……」

 

 床を軽く調べていた三衛門が呟く。

 言われてから見てみると、確かに右の方はいくつもの大きな足跡で踏み固められている。

 ついでに腐った獣脂の臭いが充満しているが。

 

「とりあえず確認しますか」

 

 手ぬぐいを鼻と口にあてている翠があからさまに嫌そうな顔をするが、口に出しては嫌と言わない。

 一度一人で待ってた時にグール共に襲われて死ぬかと思った事があるらしい。

 ま、確かにダンジョンで単独行動等、自殺行為だ。

 さっきの空間よりは狭いが、八畳間くらいは有りそうな開けた場所に出た。

 そこらの農家から盗んできたと思われる稲藁、布団等で営巣された巣が三つ。

 特に動くものは見当たらない。

 

「足りねぇな」

「ですね」

 

 さっき倒したのは二頭、一頭足りない分は外に仮に出ているのか……ま、外の警官も流石に鳥熊出没地帯なのにパトカーの外で居眠りしたりはしないだろう。

 今日日地方のパトカーに使われている抗弾ガラスは鳥熊のパンチ位じゃ破れない。

 

 少なくとも一発二発程度なら。

 

「卵があるわね、そこと、そこ、あ、そこも……全部で三つ」

 

 相変わらず手ぬぐいで片手が塞がっているが、中々目ざとい指摘だ。

 俺は翠が指した巣の中身を確認し、確かに大人の頭ほどはある卵が三つ入っているのを見つけた。

 でかいくせに保護色で見つけ辛いのだこれ。

 鳥熊の卵は錬金術素材として結構いい値段で売れる。

 ここの所有者へのリベートを差し引いても俺たちの報酬に色をつけてもらうには充分だ。

 ついでに言えば鳥熊の羽毛も魔法触媒として需要がある。

 後藤のおっさんはその辺も考慮に入れて今回の仕事を引き受けたに違いない。

 がめついおっさんだ。

 俺達は卵を大事に入り口まで運び出し、次に鳥熊の死体を台車で外に運び出した。

 勿論翠は見てただけだが。

 立会いの警官に未発見の鳥熊の件を警告し、再び中へ進む。

 いい加減鼻が馬鹿になってきて、臭いは我慢できるレベルに落ち着いた。

 今度は下に下っている通路だ。

 低くなっていく天井に苦労しながら下へ下る。

 左の手首に振動が走った。

 

 腕時計の後ろに巻いておいたタキオンバロメータの警告だ。

 

(30%超えか……)

 

 10%の上下があったら警告が出る様にセッティングしてある。

 

「きやがったか」

「はい」

 

 中腰で抜けた通路の先は、コンクリと木材で補強された通路になっていた。

 明々白々な人工建造物だ。

 

To Be Countiued...

 




元旦二本目の投稿となります。

 いよいよ、銃が火を噴き、ガンファイト……って程の事にはなりませんでしたが、新たな遺跡が発生し、ちょっときな臭くなってまいりました。

 さてさて、どうなります事やら。
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