俺達冒険派遣業 ~黒いのは会社だけで充分だ~   作:八切武士

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 お宝部屋(旧帝国軍の武器庫)を発見し盛り上がる派遣社員達。
 しかし、紅一点の翠と三右衛門の様子が……って、半数は盛り上がってない?


業務契約 7:~とある旧帝国軍の超電磁砲~

 

 普通に手続きを踏めば、元、所有者の国がしゃしゃり出てくるが、それでも旧軍の軍装と兵器はミリタリーマニアに高くさばけるので、オークションの拾得者配当だけでもそれなりの額になる。

 非合法に横流しすれば、一財産なんだが、それをやったらトレジャーハンターと変わらない。

 俺達は掃除しに来たのであって、盗掘に来たわけじゃない。

 

(ま、お宝眺めてつかの間いい気分にひたるのは嫌いじゃないけどな……ものによっては買い取っても)

 

 銃架に並んでいた三八式歩兵銃はよく磨いてあるが、造りとしては並だ。

 銃底に施された焼印は左照準だの、上照準だので、そのまんま狙って当たる正照準のものは見当たらない。

 ありゃ、ちっと価格が違うんだが。

 九十九式は無いらしい。

 となると、“時滑り”が起きたのは、配備前の時期になるが。

 

「お、珍しい、百式短機関銃か」

 

 少数生産されて、実際に配備された日本製サブマシンガン。

 これは展示施設も欲しがるだろう。

 金に余裕があれば俺が引き取って撃ってみたい所だが、生憎と金が無い。

 俺はSMGを木箱に戻し、瀬戸物製の手榴弾を一撫でしてから、奥まった所に置かれた金属ケースに注意を向けた。

 明らかに他と雰囲気の違うその箱は、当時、通常の金属としては、かなり貴重品だったジュラルミンで出来ている。

 錠前をぶら下げる為のリングはついているが、そこに錠前は無い。

 俺は妙なワイヤーや何かないか確認してからラッチを外し、蓋を開ける。

 

「ブラーヴォ、ボク知ってる、コレ、ちょっと前に見たアニメに出てたーヨ、エイリアンやっつけるミライ銃ね」

 

(大当たり)

 

 頭の痛くなるフリードリヒの歓声も気にならない。

 箱の中に入っていたのは、五七式電磁誘導架線加速長銃……つまり携行型のリニアレールガンだ。

 銃身から射出されたプロジェクトタイルは音速の数倍の速度で飛翔し、有効射程圏内の邪魔者にことごとく大穴を開けて行く。

 理論上は地球の丸さに邪魔されない10kmまでの目標ならことごとく排除できる筈だ。

 通常兵器の装甲厚の違いなんざ、こいつに狙われたらトイレットペーパーか濡れた和紙位の違いしかない。

 もっとも優秀なセンサーと射手が揃わなければ無理な話だが、それでも、俺は絶対にこいつにだけは狙われたくない。

 

(痛みを感じる間もないだろうな……)

 

 冷却フィンだらけの太い鉄パイプに機関部を取り付けた様な本体に、背中に担ぐ革鞄、中にはリアクターとバッテリーが詰まっている筈だ。

 無限に電力を放出し続けるリアクターは発掘品で、現在コピーもできないブラックボックスだ。

 宇宙軍の非公開遺物に入っている技術ならできそうだが、使えないなら無いのと変わらんだろう。

 このサイズのリアクターだと、直接つないでぶっ放すには出力がちと足りないが、急速充電可能なバッテリーとあわせる事で、チャージしながら断続的に連射できる様になる。

 射出用のプロジェクトタイルと銃身さえもてばほぼ事実上無限に打てるのだ。

 残忍以前に余りにも危険な兵器の為、ヴェルサイユ条約で提示された戦争利用禁止兵器リストのガウスガンの項目でこの辺のレールガンは筆頭に上がっていた筈だ。

 

(手元において置くのは、絶対に無理だなぁ、ま、俺達の稼業には過ぎた代物だけど、しかし、一発撃ってみてぇなぁ)

 

 撃たれたくは無いが、せめて試し撃ち位はしてみたいのが人情である。

 

(できれば重装甲のMBTのスクラップ辺りにぶっぱなして、すこーんと穴が開くのを……)

 

 馬鹿な事を考えつつも俺の腕はケースの蓋を閉め、ここの部屋の扉についていた南京錠で施錠した上、鍵穴を速乾の金属パテで埋めていた。

 

「……何面倒な事してんの?」

 

 折角のお宝に胡散臭い事をしている俺に翠が不審気な表情を向けている。

 

「持ってきゃ邪魔くせぇ上に、こんなせめぇ場所で使うにゃ大仰過ぎる……かといって、そのまんまにしといて後ろからぶっ放されたくねぇか」

 

 三衛門の見立てに俺は肩を竦めて見せた。

 大体そんな所だ。

 全長が1m半を超え、重量8キロの本体に、重量6キロのリアクターなんて代物を他に加えて装備して歩くなんざ真っ平ごめん被る。

 一撃でどんな相手でも排除できるだろうが、逆に言えば、敵と味方が絡んでる状況じゃ絶対に使えないのだ。

 ま、それなりの価格で引き取ってくれる筈だから、まずは喜んでもいいだろう、持って帰れれば。

 

「今回はもうタイリョー、タイリョーね、帰ったら祝杯ヨー」

「帰れればね……」

 

 能天気なフリードリヒの台詞は兎も角、翠の台詞はいただけない。

 普段なら三衛門辺りが吐き棄てそうな台詞だ。

 どうもさっきから、三衛門だけじゃなくて翠までそわそわしている。

 俺まで感化されちまいそうだ。

 実を言えば俺の勘も、そろそろお宝を纏めて一旦引き上げろと言っているのだが、俺の仕事が宝漁りじゃない以上、ここで引き上げる訳にはいかない。

 まだ全部を見た訳じゃないのだ。

 武器庫を出て次の右側の部屋は宿舎変わりの大部屋だった。

 3段ベッドが幾つかに、それに見合う手荷物、そして机。

 まぁ、大したものは無かった。

 机の上に放置されていた小さな葉書にも、家族にあてた当たり障りの無い、元気にやってます程度の私信が書かれていただけだ。

 まぁ、途中検閲で墨塗りされちまうんだから、そうなるのも当たり前だが。

 左側の部屋は簡単な鍵がかかっていたが、まぁ、開けるのは難しくも無かった。

 中は上級士官用の個室らしく、書類と本が詰まった小さな本棚と机、上等なベッドがあった。

 

「お宝はっけーんネ」

 

 いち早く机を漁ったフリードリヒが、多分、秘蔵の代物だったと思われるウィスキーを勝手に呑んでいた。

 敵性国家のものと言えども、嗜好品は嗜好品なのである。

 当時うるさいのに見つかったら事だっただろうが。

 

(今はただ呑みする奴に見つかっちまった訳だが……)

 

 俺が呆れていると、不意に三衛門がフリードリヒの手から瓶を奪い取り、ラッパのみし、たかと思うと、咳き込んで半分がた噴きだした。

 

「ミツエモン、慌てて呑むからヨ、とったりしないから安心して残り呑んじゃうネ」

 

(おいおい、お前じゃあるまいし、三衛門のおっさんは仕事中にそこまではのまねぇぞ)

 

 三衛門のおっさんが瓶を持っている反対の手にはくしゃくしゃになった紙が掴まれている。

 どうやら軍の書類の様だ。

 

「やっぱり、くそったれだぜ……ここはよ」

 

To Be Countinued...

 




 この世界、二次大戦までは魔法やら錬金術やら、超古代文明の作り出した兵器やらが割とごんごん戦場に投入されたので、現実より死人が倍がけドンしてます。
 防御や回復についても技術は高かったし、死人蘇生自体は限定はあれど宗教や魔術で実現されてるので、その分は減ってるのですが……
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