バサバサと、エグゼズ・ワイバーンが朝の空に羽ばたいていく。
謎のヒューマノイドの件はこれで良しとして、と、ユーカーンは一息ついた。やはり、今はそれ以上に思うところがあるのだ。
闇侯爵ハウクス、と言う男がボルシャック渓谷に現れたのは、つい先日の事だ。彼は闇文明の主導の下、光と自然を相手する戦いに参戦しないか、と言った。
ヒューマノイドならばいざ知らず、貴方達にはあるはずだ。我々と同じ、「千年の屈辱」が、と。
その申し出を自分は当初、断った。
無論、憎んでいる。光文明も、光に加担した、自然の民の事も。千年前、自分は生まれる前のこと。しかし、先代より聞かされた龍の末裔としての屈辱、ヒューマノイドに与えられたそれにも遥かに勝る屈辱として語り継がれてきた想いは、まるで自分が昨日受けたかのように、ありありとこの心に刻まれている。
だからこそ、断ったのだ。得体の知れない連中の胸を借りるなど、まっぴらごめん。これは誇り高きドラゴノイド、そしてドラゴンの戦い。他人の助けを借りるなど、龍の誇りを貶めるにも同じ行為だ、と。なにが、同じ千年の屈辱。同格に並べられることを許しては歴代の王たち、崇めるドラゴンたちに面目も立たぬ、と。
ハウクスはそれを聞いて……笑った。『いや、さすがは龍の末裔。我々以上にすら、誇り高くあらせられますな』と。
……今、その笑みの理由が分かる。
誇りで何とかなるほどに、楽な時代ではないのだ。そして我らドラゴノイドも……この広大な星の中では、ちっぽけな種族にすぎない。龍の末裔でありながら、龍ではあれない自分たちでは。
奴は、見抜いていたのだ。自分のその、空虚なプライドを。
自分は、どうするべきか。
意固地にならねばこそ、輝く誇りもある……自分が、ドラグストライクに言った言葉だ。いくら自分が誇り高き龍人の王とは言えど、誇りを胸に全員飢え死にせよ、など、とてもとても言えるものか。
自分一人が屈辱を被ってでも……今、ドラゴノイドたちが飢えずに済む道を選ぶことこそが、誇りなのではないだろうか。……しかし、それはそれで誇りと言えるのだろうか。過酷な時代への迎合ではないと、何故言い切れる。いや、そもそも迎合が善なのか、悪なのか。
ドラグストライク達がマナを持ち帰って以来、そんな考えが頭の中をぐるぐる駆け巡っている。こんな時に限って、前はしつこく訪れていたハウクスは来ない。自分の胸中をもてあそばれているような気分だ。一応、心が変わりましたらこれに念じてくださいませ、と水晶玉を渡されはしたが……。
迷い、しかしそれでも、振り切れない。自分はなぜ、これほど無力なのだろう。死せば必ず龍に転生する、と言われるほどの武勲を立てた自分であるが、ならばいっそこの場で喉を切り裂き、強い龍へとすぐにでも生まれ変わりたいと願うほどだ。「誇り」と言うものがなんたるか、もやがかかったように見えない状況になり、ユーカーンはほとほと、自分の無力を痛感した。
いっそ、貴方様が目覚めて下さればよいのに。貴方様だけでも。
このボルシャック渓谷に眠ると言われている、偉大なるアーマード・ドラゴン。
《ボルシャック・ドラゴン》様。
●
……火山要塞ヴァル。
今日も今日とて、ヒューマノイドは軍事訓練だ。そしてその端っこで、ポップルも自分の訓練に奮闘している。
自分が発掘してきた、純度の高い火文明のマナ。それを使えば、この暑い環境下でも段々、結晶が作れるようになってきた。
そしてついに……目の前にふわり、と現れた、見慣れた浮遊結晶。
「あっ、できた!」
ようやく、火文明に着いてから初めて結晶を作ることができたのだ。
「やったネ!!」クルトも、わが身のことのように喜んでくれる。
見慣れたそれは触るとひんやりと冷たく、六角形の形もしっかり維持している。これに乗って飛ぶのも久しぶりだ。ひょい、と彼女がクルトと共に飛び乗ると……若干の、不安定さを残していた。
少し、薄いかもしれない。……というか、溶け始めている気がする。
まだ高所を飛ぶには至らないだろうか。パキ、と音がして、割れないうちに降りちゃおう、と彼女が思った、その時。
どこからともなく、ふわふわとポップルの杖に吸い寄せられるように、緑色のマナが飛んでくる。緑色のマナ……自然文明のマナが。
「?」ポップルは首をかしげる。なんで自然のマナが、ここにあるんだろう……? けれど彼女のそんな疑問も意に介さないかのように、ふわふわ飛んできた自然のマナは勝手にタオパブの杖に宿り、そして……その力を受けて、溶けかかっていた浮遊結晶は途端に冷気を増し、ガチンと強靭に凍りついた。
触ってみても、全く火文明の熱気に負ける様子もなく、溶けすらしない。すごい。マナがいいのも勿論だけれども、自然に居た時もここまで強靭なものは作れなかった。自分の力も間違いなく、向上しているということだ。
嬉しい、と言う彼女の気持ちに応えるかのように、ふわり、と結晶は宙に飛びあがる。一番に見せたい相手は、勿論、彼だ。
ゲットは、ちょうど走り込みから帰ってきた折だった。門が開いて帰ってきた彼の頭上から「ゲット!」と、ポップルは声をかける。
「あれ、ポップル……? ん、どこ?」
「ここだよー!」
「だヨー!」
そこでようやくゲットは、自分の上にふわふわ浮いている彼女と、彼女に抱かれているクルトに気が付いた。無論、他のヒューマノイドたちも驚いたが、それ以上に彼は……ゴーグルの奥の目を思いきりキラキラ輝かせて「なんだそれ、かっけー!!」と、興奮気味に言った。
「やっとできたんだ、あたしの浮遊結晶!」ポップルは高度を少し下げ、手を差し伸べる。「ゲットもおいでよ! 一緒に飛ぼう!」
「うん、いくいく!」
彼女の手を取って、ゲットもひょい、と結晶に飛び乗る。「あ、おい!」と、タイラーが声をかける。
「お前、この後の訓練メニューも……」
「ポップル、早く行っちゃえ」
「わかった!」
ふわりと、彼女が念じた通りに結晶は浮かび上がり、みるみるうちに火山要塞ヴァルから離れていく。「ボーグになんて言えってんだよ……」と、タイラーは嘆息した。
「何やってんだ、あいつら……」
最も、なんて言えも何も、ボーグはその一部始終を見ていた。そして彼の隣で、はは、と笑うのは……ハウクスだった。
「喜んで頂けたようで何より。わたくし共も、このような土産を用意してきた甲斐があります」
そう言って彼が指さす先には……キマイラに運ばせている、禍々しい籠。そしてその中には……結晶化したマナが入っていた。
光を一切受け付けないほど黒く染まったものと、若葉のように瑞々しい緑色のものと、両方。闇文明のマナと、自然文明の……闇文明の占領下に入った土地で採取したマナを、魔術で結晶化させたものだ。活性化に手間はかかるが、高濃度の状態で持ち運びやすくなる。
ポップルのマナの魔力に引き寄せられ、自然のマナが一つ、活性化して飛んで行ってしまった模様だった。
「最近来ないと思ったら、こんなものをね……」
「ええ、おいかがです? 口だけと言うのもなんですからね、実際に、自然の資源の豊かさをご覧に入れたく思いまして」ハウクスは慇懃な口調で言う。
「それに取らぬ狸の皮算用ばかりも何ですから。少なくとも現時点でも、我々闇文明は貴方方に、これほどの資源の援助は行えます……と、こちらの誠意を示したかったというのもございます」
はたして誠意なのか、見下しではないのか……それはともかく、マナの結晶の純度がとても高いことは、一目見ても疑いようがなかった。
ボーグも、ハウクスを追い帰し辛くなっていた。
「分かった。ひとまず来い。生憎、昼は済んでしまったが……」
「あ……いえ、食事は済ませてきましたので、お構いなく。わたくし、小食でして、晩ご飯も頂きません……」
「? ……そうか」
なぜか急にどもり始めたハウクスに疑問を感じつつ、ボーグは彼を自分の部屋に通す。
●
バサ、バサとエグゼズ・ワイバーンが飛んでいく。
切り立った崖の合間に、ほどなくしてエグゼドライブは、一人きりで歩いていくヒューマノイドを見つけた。
全身を覆う装甲は、間違いなくヒューマノイドのもの。けれどその手に持つのは……火文明が使うにしても原始的な、アナログ感漂う大盾。
間違いない。エグゼドライブはエグゼズ・ワイバーンに合図して、急降下。
ヒューマノイドの方もそれに反応し、装甲に内蔵した銃を撃ってきた。だが……ひゅん、と速度を上げ、エグゼズ・ワイバーンは華麗に打ち出された銃弾をよける。ダダダ、と標的を失った弾丸が派手に岩肌を鳴らした。
「ははっ、やっぱ、ばーさんだな!」
「!? その声は……」
「俺だよー! ばーさん! 俺俺!!」
ヒューマノイドは攻撃を止める。そして……マスクを外した。
何と言うことだろう。出てきたのはヒューマノイドの、体毛の少ない肌ではない。真っ黒な毛皮に覆われた顔面は、間違いなくビーストフォーク。それがヒューマノイドの装甲を纏って、変装していただけだ。
そう、出てきたのは、黒豹のビーストフォーク。……盗賊の盾だ!
「エグゼかい!」
「あはは、ばーさん、久しぶりー!」
エグゼズ・ワイバーンを着陸させ、ひょいと笑顔で出てくるエグゼドライブ。
「あんた。見違えちまってまあ……兵隊になったたぁ、ほんとだったんだね!」
「まーな! これが、今の俺の相棒だぜ!」と、エグゼドライブはエグゼズ・ワイバーンを指さす。
何を隠そう、エグゼドライブはかつてはドラゴノイドの盗賊旅団ドラゴ・シーカーの跡取りであったのだ。そしてエグゼドライブにとって、ドラゴ・シーカーのライバルであった盗賊の盾は、小さい頃から喧嘩仲間として顔を合わせていた存在だった。
盾を持ったヒューマノイド、と言う時点で彼はピンと来ていたのだ。体格がビーストフォークと似ている上に顔を隠せるヒューマノイドは、火文明で怪しまれないために、盗賊の盾が良くする変装の一つだった。大方、どこかのヒューマノイドから適当にはぎ取ったのだろう。
「なんでまあ……意外だったよ。あんた達とは、いい喧嘩相手だったんだけどね……」
「俺にもいろいろあったんだよ、ばーさん。俺、今は最強のドラグライドを目指してっからさ! それより……ばーさんはウチに、なんの用だったの?」
盗賊の盾は、名の通り盗賊だ。もし盗みなら、噂になるほど派手に来るような人物ではない。盗賊の盾もそれは察したか、答える。「うん。あんたがボルシャック渓谷の本隊にいるって聞いたからね……実は、火文明で探している子が一人いるのさ。その情報を探ってたんだが、うまくいかなくてね……知り合いのあんたを、あたろうと思って」
「そういうことだったんだ」エグゼドライブは笑った。
「オッケー、ひとまず基地に来なよ。俺の相棒の飛びっぷりも、見せたいしさ!」
エグゼドライブが合図して、盗賊の盾もひょいと飛び乗る。盗賊の盾とドラゴ・シーカー。どちらも超一流の盗賊であり、ライバルであった……そして決して、敵ではなかった。からこそ、できるやり取りであった。
●
「すげぇ……こんなに高く飛んだの、初めてだ!」
飛行できるタイプのアーマロイドでも飛べない高所まで、ポップル達は登っている。もはや、アーマード・ワイバーンの領域だ。
ドラゴノイドたちはいつも、こんな景色を見ているのか。ゲットは心から、目に入る見晴らしに感動していた。
基地も、工場も、町も、皆うんと小さく見える。自分たちが本当に、山のあいだに細々と住む民なのだと言うことが、山の上から見渡すよりもよく分かった。見渡す限り赤肌の岩山がごつごつと広がり、カラッと乾燥し晴れ渡った青空とどちらも対照的で、眩しいほどのコントラストだ。
自然のマナのおかげで相変わらず、火文明の熱気の中でも、結晶は溶ける様子も見せない。涼やかに、空中を滑っていく。
良く見知った火文明の光景のはずなのに、初めて見る世界に来たような感動を、ゲットは心の底から覚えていた。
「綺麗な景色だな……!」
「うんっ! 火文明ってほんとに、素敵なところなんだね……!」
良く晴れた大空の下を飛び回りながら、ゲットとポップルはそう話していた。遠くで、火山が湯気を放出している。そこに、何か動いているものがあった。
「あれ、あれって……」
「ああ、ロック・ビーストだぜ!」ゲットは言う。そして、自分のゴーグルを外した。彼のゴーグルは、戦場によく出るようになり、双眼鏡入りのものに改造された。
「これで見てみろよ、良く見えるからさ!」
と言って彼は、ポップルにゴーグルを渡す。彼女が怪訝そうに覗き込んでみると、丸いレンズの向こうから、まるで目の前にいるように映りこむ、マグマの怪獣の姿!
「えっ、すごい! 何、これ!? 魔法!?」
「ううん、ピコラがつくってくれたんだ! すげーだろ!」
「すごい! それに……あれが、ロック・ビーストなんだ……!!」
ほぼマグマの塊と言ってもいい《マグマティラノス》は火山の噴火口の中で、上機嫌にファイアー・バードたちと遊んでいる。確かに、あんな熱そうな種族が側にいたら、ひっくり返ってしまうのも無理はないかもしれない。一方で見た目の怖さとは裏腹に、小鳥たちと無邪気に遊ぶ光景は、彼らは決して悪意の存在ではないのだとポップルに伝えてきた。
「なになニ!? ボクにも、見せてヨ!」と、クルトも声を出して、ポップルもそっとクルトに双眼鏡を添えてあげる。
その調子で彼らは、双眼鏡でいろいろなものを見た。
山々の間に作られた畑では、ヒューマノイドたちがデューンゲッコーと一緒に、一生懸命畑仕事をやっている。先だってのマナは様々な場所に分け与えられたらしいが、あそこにも行ったのだ、と言うことが、地面から湧き上がるわずかな赤色の光で分かった。
町では相変わらず、喧嘩をやっている。喧嘩した後お互い起き上がって、笑いながら酒場に入っていった。必ずしも仲が悪いから、お互いが嫌いだから喧嘩をしているとも限らない。そんな火文明の気質がよく分かる光景だった。
もうもうと蒸気を湧き上がらせる工場では、マシン・イーター達が所狭しとわらわら油まみれになって動いている。太古の時代の武器の発掘現場では、アーマロイドやヒューマノイドたちがいい武器を見つけたのか、ワイワイ大騒ぎしていた。
どこもかしこも賑やかで……活気に満ち溢れている。確かに、秩序なんて大したものはない。けれど秩序がないと言うことが、必ずしも目を覆いたいほどの悪を指すとは限らない。ポップルが火文明に来てから学んだのが、それだった。光の教えとは無縁の土地でも、優しく明るい心を持つ民が住んでいる。この世はやっぱり広い。そして、この世はとてもきれいだ。
同じような感想は、火文明で育ったはずのゲットも持っていたようだった。彼はため息をついて「本当に、いいもんだな……こうやって、いろんなものを見れるって」と言った。
「ポップルは火文明じゃないから、きっとオレよりもっと感動してるんだろうな」
「うん、勿論!」
「そっか……このくらいの感激を、世界中で楽しめるんだもんな。機神装甲と同じくらい、世界一の冒険家って、すっごい楽しい夢だな! 流石、ポップルの夢だぜ!」
自分の思っていることを他人にそう言葉にしてもらえて、ポップルは胸がきゅんと熱くなる。
「うん……うん! そうだよ! こうやって、世界中のいろんなところを見て……ああ、きれいだな、素敵だなって思うの。きっとすっごく、楽しい事だと思う……!! それに、それと同じくらいなんだもん、きっと機神装甲も、これ以上ないってくらい、素敵な夢なんだよね」ポップルは彼の方を向いて、そう言った。
機神装甲。火文明に来てから、何度もゲットから聞かされていた言葉だった。最強のヒューマノイドだけが持つことを許される最高の鎧、そして、ヒューマノイドならだれもが憧れる最高の栄誉。
それを着るには、ただ腕力が強いだけでは務まらない。相応の精神力を持ち合わせる、心身ともに立派な戦士でなくてはならない。
昔話の闇文明のように、残酷で欲張りなだけじゃなくて……優しくて、堂々としていて、それで誰よりも強い力を持つ戦士。
「きっとそんな、なにもかもが凄い戦士になれたら……本当に、幸せだよね。世界中を見るのと同じくらい、今のままじゃ想像もできないくらいの幸せが、そこにはあるんだと思う」
「うん! オレもそう思ってる!」ゲットは言った。
「勿論、誰よりも強くなって戦いでいつも勝てるようになったり、皆に尊敬されたり、そう言うのもあると思うけど……でも、それ以上に、オレ、機神装甲を着れる戦士に『なりたい』んだ。そのくらいの戦士になってみたいんだ。きっとそうなれたら、すげえ楽しいもんよ」
ゲットは今一度、思わされる。機神装甲を着たいと言う思いに、そう言えば具体的な理由などなかった。
機神装甲を任され得られるものよりも、ただただ、その栄誉に憧れる自分を、彼は強く自覚した。極端な話、武功を認められなくても、尊敬される人気者になれなくても、そんなことは大切なことではない気がする。
機神装甲を認められる戦士になる、と言うその本質そのものに比べれば。
きっと、ボーグも、他の機神装甲も、こんな気持ちだったんだろうか。何も、はっきりわからないけれど、まだ将来は靄がかかったように不鮮明だけれど……その中で機神装甲を任された戦士、と言う憧れ一つが、鮮烈に光を放っているような感覚だ。
そのようなことを話されたポップルは、フフ、と笑う。
「ゲットって本当に、戦うの、好きなんだね」
「おう! 戦士の道は、火文明の誇りだからな!」
えへんと胸を張るゲット。
「ポップルが世界一の冒険家になるころ、オレも機神装甲ヴァルゲット、って名を馳せてるからな、必ず!」
「ほんと? じゃ、約束だよ!」
……と、二人とも、ポップルに抱っこされているクルトが二人の夢の話に舌を巻いているのに気が付く。
「そうだ。クルトはなんか、夢とかねーの?」
「ゆめェ?」クルトはきょとんと体をかしげる。
「うーン、じゃあネ、ボクは予言が皆みたいにできるようになりたいナ……」
「それだけ? 光文明で一番、とかじゃなくて?」
「一番じゃなくたっていいヨ。誰ができたって、予言が役にたつなラ、それでいいモン。……あ! あト、地上の美味しいものは全部食べたイ!」
急に謙虚さの無くなったその夢に、ポップルはクスリと笑う。
「よーし! じゃあ、その頃はクルトも予言ができるようになって、あと地上の美味いもん全部食ってろよ! 約束だからな!」
「わかッター!」
クルトは、元気よく返事する。
……全世界が静かに、世界戦争に向けてわずかながらも着実に、歩みを進めている。
そんなことも知らずに、違う文明からやってきた子供たちは、お互いに夢を語り合っていた。
未来など、見える由もなかったのだから。彼らと共に居るのは、予言のできない予言者だったのだから。
あ、とゲットが声を上げた。ファイアー・バードの生息域だ。炎色の羽毛を持つ彼らはちょこちょこ歩いて、歌ったり踊ったり、大騒ぎしている。
「すごーい! かわいーい!!」ポップルは大感激。
「降りていい!? あの子たちと遊びたいの!」
「うん、良いぜ! いこっか!」
彼らは、結晶を降下させ、ファイアー・バードたちの群れに突っ込んでいった。