Saga of Creatures   作:hinoki08

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※非常にグロテスクな表現があります。ご注意ください


ふたつの同盟 10

 

 さて、時は少しばかり前に遡り。

 リーダー達がアザガーストと謁見している間、火文明の面々も共闘に当たり闇文明の主な戦力たちを紹介されるに至っていた。

 ただ、やはりそこは闇文明であり。

 

「で……こちらが、リビング・デッドですわ」

 既に生物として滅茶苦茶なグロテスクたるキマイラ、貪欲の権化パラサイトワーム、意思を持った人型ヘドロとしか言いようのないヘドリアン……などなどの居住区を案内された後に、案内役のメガリアに見せられたリビング・デッドの居住区を柵で覆われた崖の上から見下ろして、火文明一同、改めてうへえ、と何とも言えない声を出した。

 そこにいるのは、グチャグチャになっていまだに動いている死体、としか言いようがない。彼らは血をすすり、肉をむさぼり喰うことだけを知っている、そんな生命体だ。ダークロードから投げ入れられる餌に飽き足らずお互いの肉に必死に噛みつき、血を、しゃぶりあってすらいる。どうも女性と見える個体が何度も牙を振り下ろし傷口をべろべろと舐めている肉塊から、何やら細く伸びているものがある……彼女につながっているようにも見える、もしや臍の緒なのではないか……そんなようにも思える何かを見てしまったホーバスは目をそらし、それ以上は信じたくないことは信じないようにしよう、という思いのみ頭に浮かべるよう努めた。

「兄貴……大丈夫、帰る?」

「心配するな……ミサイル。ちゃんとボーグのいない紅戦線代表としてオレは……」

「なー、ロンリー。あいつ何食ってんの?」

「……《スケルトンソルジャー》のこと……? あいつ、確か最近こ……」

「わーわー!! それ以上言うな!! 何も教えてくれるな!!」

 ムラマサが慌ててゲットの隣を飛ぶロンリー・ウォーカーの発言を遮った。

「ってかお前、なんでまだ居んの!?」

「オレ、ゲットの友達だもん。帰りになるまでついてく」

 先程ゴースト居住区を見せられた際出会って、勝手についてきたのだ。メガリアの方も鷹揚なもので「その子はブラックモナーク様の顔を立ててくれた子って、お父様のお気に入りだからね。彼とお友達になったというなら特別よ」と彼女の同行を許した次第だ。

 そんな紅戦線の大騒ぎはさておき。「……彼らは最前線に送るべきだ」その、仲間意識などは一切期待できない非知性種族の様相を見て発言したのはドラグストライク。

「味方の近くにいると危なくてしょうがないからな……」

「否定は致しませんわ。前線部隊は妥当でしょう」メガリアは言った。

「ですが、ワームやキマイラと同格には扱わないでくださいませ。彼らにはそれなりの身分がありますから、相応の対応をお頼みいたします」

「えっ!?」

 その言葉にドラグストライクはじめ火文明軍が驚いたのは、想像に難くないことであろう。

 キマイラに、パラサイトワーム。飢えて、乾いて、貪るだけが能のグロテスク極まる生命体。そんなものがこの闇にあふれていることはこの一日だけでも窺い知れた。だからリビング・デッドも、それ同様の生命体、そのうちで人型のタイプか、その程度に思ったのは不自然な話ではあるまい。

 だが、メガリアの話は違っていた。

「ああ……申しておりませんでしたわね。我ら闇文明、ダークロードが最上位、その次に位置しますのが後日改めご紹介したく思います最強戦闘種族デーモン・コマンドですが……一般市民階級で最上層にいるのはゴーストとリビング・デッドですわ」

 それは、要するに。

 一応会話が出来なくもないゴーストはまだしも、あの肉と血を何の意思もなく貪るだけのゾンビにしか見えないリビング・デッドが、グロテスクで不潔とはいえど立派に言語を解し知性のあるヘドリアンなどより上に置かれているという事を指す。

 しかし言われてみれば、城下の怪物たちが飢えた腹をお互いの身を齧りあってまで満たしあっていたのに対し彼らの元には餌としてかなりの量の生肉が投げ入れられている……ダークロードが投げていい、というだけの価値を彼らには見出しているのだ。

「ど、どうして!?」とエグゼドライブが聞いた質問に、メガリアはリビング・デッドの居住区を今一度、目隠しの奥底から見通すように言った。どこか、切なげだった。

 

「ゴーストもそうですが、彼らは我らダークロードになっていた身分かもしれませんもの。父の生み出した『不老不死』実験の産物、その中で、完全な成功側には至れなかった存在。完璧になれなかったという理由のみで無碍にするのは不老不死の概念に唾棄するも同然でございますわ」

 

「不老不死……?」

 火文明一同は、はっとした。

 いくら食べても飽き足らぬとお互いに齧りあうしか能のない彼らの肉体……だが、その身は。

 齧られた先から、ぼこぼこと驚異的な再生力で再生している。切れた血管が治らないうちに血液を生み出しドバドバと地面にあふれさせ、仲間も自分もそれを舐め合っている、

 それだけのことができる肉体を、リビング・デッドは持っている。

「私どもダークロードは千年前、わが父……アザガーストによって不老不死を実現した種族。それゆえ、覇王ブラックモナーク様自ら闇の支配権を与えられました」

 

 

 千年前。まだ、闇文明が地上にあった頃。

 ダークロード達の至上の理想こそは不老不死の実現であったらしい。たとえばリキッド・ピープルの再生のような科学的、疑似的なものではなく、自然の唄うようなこぎれいな輪廻転生ではなく、もっとはるかに根本的で本質的な不老不死。

 実験がスクラップとビルドの組み合わせであることは魔術の実験とて同じ。それにより、ふたつの種族が生まれ出でた。

 肉体のみを不死にすることが叶ったのが、リビング・デッド。彼らは知性を捨て、永遠の命を求めた。そして、永遠の苦しみを受け取った。

 魂のみを不死にすることが叶ったのが、ゴースト。彼らは肉体を捨て、永遠の命を求めた。そして、生きる喜びを失った。

 知性か、肉体か。何らかの代償を差し出せば、永遠に死なない命は不可能ではなくなった。だが、それで終わらなかったのがアザガーストであった。

 リビング・デッドの不死の肉体とゴーストの不死の魂の両立、知性も肉体も保ったまま不老不死でいなくては、「意味がない」。そう信じた彼はついに、その先の段階に真に歩みを進めたという。

 それで在るのが、現在のダークロード。リビング・デッドより美しい人型種族の肉体に、ゴーストよりも知能も品性もある頭脳。それでいて、不老不死。そんな種族へと、アザガーストはダークロードを高めることに成功したのだと。

 

「そういうわけですから彼らにも彼らなりの身分がございますの。いわば我々の前段階のようなものですもの」

「へー……ロンリーもダークロード……お姫様になれてたのかな」

「オレがお姫様……? なんか、恐れ多い……」

 メガリアの説明を聞き、ふうむ、と彼らを今一度見下ろすドラグストライク。

「しかしまあ、なんだ」

 不老不死。それを実現したダークロードは確かに……闇の貴族として欲しいものを手に入れたのだろう。

 だが、「彼ら」に幸福はあるのか。

 永遠に生きるが故に死という逃げ道がなく飢え乾き苦しみ続けるリビング・デッド。永遠の生を得たにもかかわらず生の喜びから隔絶されてしまったゴースト。なるほど……アザガーストが「意味がない」といったのも道理だ。苦しみだけを得る不老不死なら世話はない。

 そんなものになった命を……死皇帝は、いまだ生かすのか。

 自分は、そうならなかったのに。

「それほどまでに不老不死に執着していたのか、死皇帝は」

「ええ。私は産まれる前ですが」

「よく諦めなかったな。自分でこのどちらかになろうとは考えなかったのだろうか」

 幸せのない不老不死の形と分かっているから、生み出すだけ生み出しておいて自分たちはそうならなかったのではないか……そう思って発言したドラグストライクに、メガリアはこう返した。

「あら、なったらしいですわ。父は、どちらにも」

「えっ?」

「自らの身をもって不全を知ったから研究をつづけたと……一度リビング・デッドになり知性を失えども本能、執念で研究を続けて自我を取り戻したと、ヒドラ様に聞かされたそうですわ。ヒドラ様は当時から父のご友人でしたのでその顛末を見届けていたようで」

「……」

 先の思考は撤回だ。なったのか。あの姿に。

「今のリビング・デッドとゴーストはダークロード化の適応に耐えきれなかった方々とその子供たちですわね。それでも生きているほうが死ぬ命になるよりいいだろう、と父のお考えで、このように居住区を作って食物を与えておりますの」

「……なぜ、そこまで……?」

 なぜ、そこまでして、若き日の死皇帝は不老不死など求めたか。そんな問いかけにメガリアはこう返した。

 

「『死なないことが悪いことのわけないじゃん』と、父はいつもそれで済ませますわ。私も、それで十分と思っております」

 

「……すまなかった。度重なる非礼を詫びさせてくれ」

 あの日、ブラックモナークをけなした時には自分から出せなかった言葉が、とうとうドラグストライクの口からも出た。

 

「大した根性だ。闇の誇りというものは」

 

 不全の不老不死。彼らが、どれほど不幸など知る由も断ずる権利もないが。

 少なくともその苦しみを自らの身ですら受けて尚、完全な不老不死に向かい足掻き、不死であるなら何が起ころうが素晴らしいという思想は貫き通した者がいたのだ。それこそが死皇帝アザガースト。そしてそれを認めたのが、闇の覇王、ブラックモナーク。

 有限の生に甘んずる者には歪かもしれない、狂気かもしれない。だがそこまで狂えるならば歪であろうと一つの誇りだ。

 

 

 ●

「すごかったー……」

 その後も闇文明を一通りぐるり巡らされ、火文明の下っ端軍団は自由時間と相成った。紅戦線は、口の悪いわりに繊細なホーバスが気分を悪くしてしまったのをそれとなく察し、宿にしているグレゴリアの館に向かった。

「ずらずら~!! お客人様たちお帰りなさいませずら!」

「ピギ!」

 屑男とスケルトン・シーフが出迎え。「こら、お前たちはお客様を出迎えるのではない! 不潔だろうが!」と一息遅れてシャドウ・ムーンが出てきて二人をのけた。

「失敬。ただいま邪妃様が外出中です故、私のご案内でご容赦をば」

「別にそんな遠慮はいらねえよ」とタイラー。「あ、そうだ。ジョーの奴どうなった?」

「マイキー氏から伺っております。まだ暫く治療に時間はかかるとのことで」

「ったく……あいつ抜きでのゲットのお守りも楽じゃねえのに」

「いや、起きたらあいつがあいつでお守りが必要な存在になるだけでは?」とムラマサ。……一同、あのパーティーの大騒ぎを思い浮かべる次第であった。生きているのが不思議な姿にされて懲りる程度の浮かれであってくれたら、さて、果たして御の字なのであるが……。

「というか……さっき凄い地震があったな。そんな中身を護るどころか家を空けなきゃならんとはあんたらの女主人様も忙しいもんだ」

「ええ……あの方にしか出来ぬことでして。邪妃様の館をお守りするしか出来ぬ我々の無力が臣下として不甲斐なき限りです」

「でも、このお館ほんとにグレゴリアさんと使用人の皆さんだけなんだねー」と、ホーバスに肩を貸しながらミサイルボーイが言った。

「『邪妃』ってくらいだから旦那さんいると思ったのに……」

「……!」

 その時。

 ピリ、と空気が張り詰めた気がした。

「え……? なに? オイラ、なんか悪いこと言った?」

「いや……言っただろ」

 マスクの下の顔を青ざめさせてホーバスは言う。

「あんまり女の人のプライベートをズケズケ詮索するもんじゃねぇ、失礼だぞ、ミサイル。謝れ」

「あ、うん……ごめんなさい」

「……お前、嫌味のくせして時々マジの坊ちゃん育ちが出るよな、ホーバス」とタイラーは言った。だが、よく考えれば彼のいう事が実に最も。

 ダークロードは不老不死。アザガーストなどは千年前から生きている。そしてその千年前の戦争で……彼らは、負けたのだ。

 近しい誰かに何かしらがあった身でなお生き延びるダークロードがいた所で、何の不自然もない。……それを悟ったらしい紅戦線を見届けてシャドウ・ムーンも言った。

「……邪妃様は気丈なお方。しかし余計な詮索はご遠慮下されば、有難い限りでございます」

 

 

「女の人のプライベートは、かー……」

 さて、ホーバスを客室に寝かせた隙にゲットはとっととグレゴリアの屋敷を抜け出してロンリーと散歩に出た。

「ロンリーも嫌か?」

「……オレは、ゲットになら何教えてもいいけど……だれもオレの事なんて聞いてくれる人いなかったし……」

「……ポップルは、どうだったのかな。いっぱい話してくれたけどな」

「……だれ?」

「オレの……友達」大爆発の時の地震で崩れてしまった廃墟の瓦礫に座って、ゲットは答えた。

「……かわいいの? いい子?」

「すげえいい奴だった」

「そう……」

「……でも、もういないんだけど」

「え?」

「多分……死んじゃったんだんだけど。光文明の、せい、で」

 ……。

 苦しい。

 どうして、ポップルを、クルトを、守れなかったんだろう。自分は。

 リビング・デッドやゴーストでも死なない限りは死ぬよりは幸せだろうと、死皇帝は言ったらしい。全肯定はできない。だが……何か全否定もできない気がする。

 自分も、あのクリスタル・ランサーの槍に狙われた時……死ぬのは怖かった。

 そして、ポップルたちが死なない身なら……あの程度は大丈夫だったかもしれない。

 何が、正解なのだろう。リビング・デッドは幸福なんだろうか、不幸なんだろうか。

「……ゲット」ロンリーが、そっと彼のそばに寄った。

「オレはゴースト。オレはもう死なないから、大丈夫」

「……ありがと」

 と、その時。

 

 

「待てこのお転婆ーー!! くっ、ザックを地上に返したからってコラ言うこと聞きなさいコラ!! もう世話役にブレイズつけるぞ!! ブレイズを!! あいつのうるささでうんざりすれば少しは大人しくなるか!?」

「ピキャキャキャキャ!!」

「ボンバット軍曹! 俺に任せて!!」

 不意に二重の声が聞こえ、ゲットの前に白い姿が現れて。

「! ピキュ!」

 それが流れるようにゲットの顔を見たと同時にその膝の上に乗った、と同時に、「あり?」と、その膝の上の白い姿……白い仔ワイバーンを俊足で掴んだエグゼドライブが現れた。

 

「え……お前、サンドリヨンを助けてくれたやつなの!?」

「サンドリヨンってんだ、こいつ……うん。あの光文明が来てた時だろ? 真っ白できれいだったし、よく覚えてるぜ」

「キュッキュ♪」

「ヒューマノイド相手に随分懐いたものだな……まあ命を救われたならヒューマノイドもドラゴノイドも関係ないか」

「ザック、知っときゃよかったなぁ。お前にお礼言いたいって言ってたぜ。後で手紙かなんかよこすよう火文明に連絡しとくよ」

 白い姿。それはあのファル・イーガ・カーテンが地上演習を始めた日、ゲットが助けたワイバーン……サンドリヨン・ワイバーン。

 世話役のザック・ランバーがあの不始末と言うにも過ぎた不始末をやらかしてしまったおかげで、責任と万一のダークロードからの追撃の懸念で地上に強制送還。だが世話役がいなくなって輪をかけ勝手に飛び回ってドラゴノイド達を困らせている始末だという。

 それがどうだ。命の恩人ゲット相手には、大人しく膝で撫でられている。

「……ちょうどいい。何かの縁だ」ボンバットが言った。

「ユーカーンさんには俺が伝えておく。ゲット……だったかな。そいつの世話頼めないか? 必要な餌とかはこちら渡すから。俺たちよりお前の方がまだそいつの世話ができるようだ」

「いいぜ!」とゲットも二つ返事で了承。縁は異なものだ。

「しかし……」ふう、とボンバットはため息をつく。「わからん時代だなぁ。闇と組んだり、ヒューマノイドと組んだり……」

「でも、あのポップルちゃんといい、お前モテるなー、ゲット! サンドリヨンも女の子なんだぜ!」

「えっ?」

「キュピ?」

 その言葉を聞き、サンドリヨンをじろりと見たロンリーと、聞きなれない名前に反応したらしいサンドリヨンと、「え、なに?」と一連の状況に首をかしげるゲット。そして「カーッ、羨まし」と吐き捨てたエグゼドライブと、「冗談でも子供に嫉妬してどうする、それもワイバーンに懐かれてるだけの子供に……」とあきれたように言うボンバットであった。

 

 ●

「……お前、ゲットの友達か? オレより早く?」

「キュキュキュ」

「なんでちょっとむくれんだ、ロンリー? 友達なんていつできてもいいだろ?」

「……だって、オレにはゲットだけだし……」

「サンドリヨンともなればいいじゃん」

「……」

 ゲットにはよくわからないが気まずい空気が流れる中。ふいに、彼らの視線を横切る姿があった。「あれ……」とゲットは言った。

「グレゴリアのおばさん……?」

 自分たちと入れ違いに館から出たらしいグレゴリア。彼女は館に若干、疲れた様子で帰っていくようだった。

「何の用だったんだろ」

 何か本当に疲れる用事があったのか……それは戦士の範疇で理解できることなのか女性の機微を解さねばだめなのか、今の微妙な状況下ではどうもゲットには判断しかねる。

「……闇を揺るがす地震……千年間、ときどきあったみたい……オレは千年も生きてないけど……最後に鎮めるのは、いつも、グレゴリア様……」

「え? そんなにすごいの? あのおばさん」

「あの方……デーモン・コマンドの最高司令官……」

「ま……マジで!?」

 デーモン・コマンド。巨大で勇猛な最強戦闘種族と、すでにダークロードには聞かされていた。その紹介を勿体ぶられるほどの存在であるという事実と合わせ。

 あの細身でか弱そうなグレゴリアが、その最高司令官というのか。その問いにロンリーはこくん、と頷く。

「最強の悪魔使い……ゴーストでも、みんな名前は知ってる……」

「すっげ……」ゲットは舌を巻いた。ボーグのような屈強な肉体の持ち主でなくても、それほどまでの戦士になれるのか。たちまち自分の理解できない領域から興味のある領域に話が移ったゲットは、目を輝かせる。

「ロンリー! デーモン・コマンドってどこに住んでるか知ってっか!?」

「え? ……んーと、行くことは許されてないけど……島に住んでる……島を眺められるとこなら、知ってる……」

 

 ●

 そういったわけで、魔霊宮の端からゲット達はデーモン・コマンドの島を眺めるに至ったのだ。ロンリーも、望遠鏡という闇文明にはない技術に目をキラキラ。

 何が起こったまでは彼らは知る由がないが、おあつらえ向きに闇騎士団の主戦力がそろい踏み……かつ……何者かに殺気立つその圧巻の光景を見てゲットははあ、とため息をつく。

 

 ドラゴノイドは、ドラゴンを最強と言っている。見たことはないがきっとすごいのだろう。

 ロック・ビーストもすごかった。昔話の怪物の姿そのまま。

 それとはまた違う。強大で、凶悪そうで、だがどこか不気味の中に品格も感じさせる生き物。あれが、闇文明の最強戦力デーモン・コマンド。

「マジで……すげーな……あんなのと一緒に戦うんだ、オレ達……」

 あれらと機神装甲たちが揃い踏みする戦場など、どんなものだろう、きっと光文明如き、蹴散らせるに決まっている。

「早く会ってみてぇな……」

 デーモン・コマンドたちの紹介はあとあとする、とメガリアに言われていた。恐ろしそうな彼らではあるが暗黒皇女の案内とあらば悪い風にはしなかろうとはいくらゲットでも察しはついた。

 だから、その日が楽しみ……そう言っただけの、はずなのに。

「キュ? キュキュキャ!」

 何をはやったのだろう。サンドリヨン・ワイバーンは。

 

「え?」

 ゲットは状況を理解するのが若干遅れた。小さなワイバーンにそれほどに力があると思ってはいなかったからだ。

 サンドリヨンがゲットの首根っこをひっつかんで、魔霊宮から悪魔の孤島に向かって白い翼を広げて飛び立ったのだ。その状況が飲み込めた時には足の下は既に冷たい十二肋深海の冷気でいっぱいで、ゲットは暴れる体を反射的に縮ませざるを得なかった。

「ゲット!? わー!! ゲットー!!」

 ロンリーも慌てて、無関係のゴーストは立ち入り禁止の掟も忘れ後を追った。

 

 

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