Saga of Creatures   作:hinoki08

65 / 90
7・太古帝国の興亡
太古帝国の興亡 1


 

 全ての起こりは、何であっただろう。

 その起こりにも起こりというものがあり、またその起こりにも起こりというものがある。全てを掘り返していたらきりがない。全ての罪は、この世が生まれ出でたことに起因してしまう。

 だが少なくともまず、「死」の概念がこの世に生まれ入れてしまったことなくしては、覇王ブラックモナークの治めし太古帝国、その興亡の物語が生まれることはなかっただろう。

 あとは……そう。

 超獣たちが思想、という概念を持たず、誰もが誰も目先のものだけを享受しただ生きて死ぬだけの生命体であったなら、たとえ生死に縛られたこの世でも、ブラックモナークは実在してやる意味すらなかっただろう。

 

 ●

 約千年前のことだった。

 フィオナの森は、ふたつの魔術文明に二分されていた。圧倒的多数派たる自然文明と、少数派なれど確かな魔力を持った闇文明。

 彼らが明確に袂を分かつようになったのはいつからだったろう? それは最早問題ではない。身体に宿す緑と黒のマナが齎す気性こそ大まか傾向はあるものの、同じマナの生命体でも全て示し合わせたように完全に同じ気性はしていないからこそ生命というもの、いつしかフィオナの森に生きる二者を分かったのは、あるものを巡る「思想」であった。

 それこそが、生死。

 自然のうちに生きていれば、長かれ短かれ、死という者は訪れて当然の概念。秋に枯葉が落ちればこそ春に若葉が芽吹くように、死を経て自然は巡りゆく。

 だが、生きていたいと願うのもまた生物の当然の欲望であり本能。まして唯々諾々と生まれて子孫を残し死ぬだけでなく、知的な欲求、文明を抱いてしまった、只の獣ではない「超獣」となってしまった身の上ならばなおのこと。

 死を恐れ、死に抗う事はどこまで許されるだろうか。その生物としての根幹をなす哲学に「死はそもそも絶対的なものではない、克服可能な概念であり、克服すべきものだ」という結論を見出した種族、それが『闇文明』と定義され、それほどにも思わず死を恐れこそすれど受け入れる種族が『自然文明』といつしか定義された。事の起こりは、そうだった。

 

 

 闇文明の民を統べるダークロード達は死の克服、つまりは不老不死についての研究を進めた。そのためには彼らは何も厭わなかった。罪の概念を消す事すらも。彼らは自分たちの領分のものは愚か、必要とあらば森のどんな恵みも、実りも、時には……命すらも、彼らはその圧倒的実力で躊躇なく奪い去った。全ては不老不死のため。自然文明の民たちは当然、それに反発の心を持った。だがその段階においては、自然文明の民にとって彼らはそこまでの脅威ではなかった。驚異どころか……滑稽、と言ってもよかった。なぜかと言えば、不老不死の実現、自然への唾棄の試みはことごとく失敗していたからだ。

 自分たちの思想と相容れぬ、つまりは自分たちの目にとって愚かに映ることをしている者たちが延々失敗のみを繰り返し罪を重ねるさまを見て気をずっと引き締めていられるほどに用心深い者たちでこの世が構成されているわけもない。自然の民にとって、闇はいつしか相手にする価値もない嘲笑の対象となっていた。そして彼らは、自らの自然の哲学に対する正当性の確信をその滑稽を見下すことでより一層強めた。

 死は、避けるべきものではない。

 誰かが死んでこそ、誰かが生きる。誰もが得をし、誰もが損をし、それでこそ自然の秩序は回る。不老不死と言うものはその秩序のうちに成り立つ世界に生きておきながらその世界に未来を還元しない傲慢である。ゆえに、世界には許され得ないものであると。

 

 ああはなりたくないものだ。

 そう嗤われ、何人かは諦めもした闇文明の立場を、それに向けられる視線を一気に変えたのは、ある日生まれ出でた驚異の天才の存在であった。

 その名こそ、《非時(ときじく)大公アザガースト》……のちの、死皇帝アザガーストであった。

 

 ●

 闇の死皇帝として君臨する以前のアザガーストの姿は、他のダークロードとさしたる違いはなかった。

 高い上背、さらりと長く伸びた黒髪……女と見紛わんばかりの美青年。しかしその誰もが陶酔するほど美しい顔とは似ても似つかぬ狂気じみた魂を、彼はその奥底に宿していた。

 

 彼はまるで、不老不死への執着の権化であった。

「死なないことが、なぜ悪い」彼は全てをその一言で片づける、そんな精神の持ち主だった。

 議論も哲学も彼の前では無駄。そんなことを言っていてもお前たちも道を歩いていて崖があったら歩き続けやしないだろう、病気になって効く薬があると知れば普通呑むだろう、知性のない虫けらですら、天敵の巣と分かっているところをわざわざ餌場にしやしない。僕はそれを只管徹底するだけのこと、お前たちもなんだかんだと死を恐ろしいものとして避けたがるのだから、絶対的な死の超越は間違っているはずがない思想であり、死とは全てに勝る最悪の苦痛であり屈辱である、彼はそう信じて疑っていなかった。まるでその思想そのものを親として生まれたような男であった。

 のみならず、彼にはその執念を支えられるだけの異常な優秀さがあった。彼はいつしか、ただモノを貪るだけの知性なき魔蟲、闇文明側における主要な家畜たるパラサイトワームをヒントに、不老不死の可能性を引きずり出した。

 つまり伝承されていたことであるのだが、ワームは今でこそここまで零落してしまったが、はるか太古の昔、それこそ今のようなダークロードが生まれ出ずる以前の世界においては闇文明で隆盛を極めた種族であったらしい。当然ただの非知性種族がそうなれるはずもない。零落の理由は何か? それこそが不老不死であったと言われている。

 彼らは「禁断の実」の味に溺れた。それは生命を凝固させた紅い宝玉。食べれば食べるほど生命力を増し……代償に知性を徐々に失ってゆく甘い魔石。それを貪りつくした結果、引け際すらもわからなくなり知性を完全に失い、そして禁断の実の作り方すらわからなくなり、食べなくなったが故に不死の生命力も失い、後に残ったのはゴミ溜めでもなんでも食べてブクブク肥え太るだけが能の家畜。この通り不老不死とは全く愚かなものなのははるか太古より変わっていない……と伝承される話から、アザガーストは一切不死への嘲笑も屈辱も見出さず、代わりに彼が見出したのはそれが本当であるのなら何世代を経ていようともワームの身体に残っているのではないか、知性と代償に手に入れた最高の生命力の残滓……さらに辿れば……その「禁断の実」のシステムすらも。そんなことだった。

 ワームは恐ろしいほどなんでも食べる。フィオナの森時代から彼らは汚物の処理をして太らせ、力仕事か食肉を任せるのが主な仕事の家畜であったが、通常の超獣をはるかに凌駕する雑食性、それは要するに大抵の命にとっては毒という生命を脅かすものに異常な耐性を持っているということ……それは「生命力」に外ならない。彼はワームの食性から辿り、あらかた見出してしまったのだ。太古の時代の、不死のシステムを。

 

 その時代。

 フィオナの森は阿鼻叫喚となった。たちまちのうちに、闇文明の領土を中心に悍ましき死体と死霊の生命体……リビング・デッドとゴーストが現れたからだ。

 

 

 全ては、アザガーストの研究の成果だった。彼は、ワームにわずか残った遺伝子から「禁断の実」の魔力の構造を割り出し、さらにその精度を高め、実現したのだ。何かと引き換えに不死と呼んで差し支えない圧倒的かつ半永久的な生命力を実現する魔術のシステムを。

 知性を捨て、肉体を捨て、永遠の命を受け取った生命体が、フィオナの森に生まれてしまった。その素となったのは、実験台として捉えられたアザガーストに背いた者たちや、不死を望み自ら実験に志願したダークロード達。

 不老不死。ありうべからざる自然からの逸脱の体現者たちが。

 ……そして、その逸脱の残酷性を物語るかのように、永遠の苦しみにあえぐか、生きる喜びを失い漂うだけになってしまった生命体が。アザガーストと言う不老不死に執着する天才の手により、生まれて、死ぬことを許されなくなってしまった。

 なんという、命への冒涜を。そう憤った自然文明の魔術師たちは、アザガーストの館に行き……瘴気と大量の生贄に満ちたそこに広がる光景に説得など放り出して逃げ出す始末であった。なぜかと言えばそこにいたのは自らの野心のため罪もなき命を逸脱者にした者、では片づけられない姿があったからだ。

 ある者が見たのは煌びやかな肉体は腐り果て苦痛の雄叫びを上げ続ける姿。

 ある者が見たのは霊体と化しぶつぶつと無気力な言葉を吐く姿。

 ……彼は、リビング・デッドにも、ゴーストにも、その身をもって変質していた。理由など至極簡単、「死なない」からだ。「死なない」ならば、闇文明を統べる貴族ダークロード如きの身体よりはるかに高貴で価値がある。それこそがアザガーストの思考回路であったからだ。

 そして、彼はそれでいて。知性も、希望も失った状態で、なおも研究を続けていた。なおも、不死の魔術を完璧にしようと突き動かされていた。

 不死は実現できないものではなかった、だが代償が無ければ、のうちは生態として完成しているとは言え難い。ホーン・ビーストは角を持つ代わりに何かを代償にしていると言えるか? 我々は闇の頂点にも立てる強力な魔力の代わりに何を代償としているというのだ? 代償があるうちは生態ではない。完成形ではない。完璧な不老不死とは息をするように何の代償もない当たり前として不老不死の生命体足りえる事なのだ。知性も、希望も、無いはずなのに、彼はその思考回路にそぐうような動作を続けていた。

 

 そこにいたのは最早冒涜者などという単純な言葉で片付けていい存在ではなかった。不老不死を求める狂人。そのほかに、彼を称すべき言葉などなかった。

 

 ●

 自然文明はアザガーストを恐れた。そして、死体と死霊を「哀れ」だとみなし、彼らを自然のうちに救ってやろう、とすることを決めた。

 後から思えばこの時からすでに、歯車は狂いだしたのだ。彼らは、見てしまったのだから。

 自分たちこそ正しいと信じていた自然の民はそもそも、不死とは愚か者の掲げる理想論であり絶対に実現不可能なものだ、という前提で思考を進めていた。自然の世界がそれを許すはずがない、と思っていた。

 だが、世界が、許してしまったのだ。リビング・デッドとゴーストの誕生を。

 更に、狂気の天才にして元凶であるアザガーストがあんまりに常軌を逸しているが故触れることを拒んでしまった彼らは代わりに、その弱い、代償にあえぐ命たちに向かい合い……一体何を「救い」として与えたか。

 それは不死と言う逸脱と苦痛からの解放であり……つまり……苦しみあえぐ生命体を無理やりにでも襲って殺すという事を意味した。

 彼らはそれを、狂人のために生まれてしまった哀れな生命体たちのためと言った……しかし、そのうちにあった本心はもっと根本的な恐怖であった。

 実現するはずがないと嘲笑っていたものが実現してしまったことから目を背けなければ、自分たちの世界こそ間違っている、自分たちもこれに汚染させられかねないという恐怖と向かい会わねばならない。だから彼らはリビング・デッドを、ゴーストを、直視したくはなかったのだ。それは当然の反応であり、きっと責められるいわれはなかった。

 自然の民はただ、今まで通りでありたいだけだった。

 

 不死の生命。余程の魔力を叩きこまねば生き返る。

 それでも余程を叩きこみ、動かない姿にした。

 余程がないものたちも、それでも救おうとした。彼らをか、自分たちをか……肉体の弱ったリビング・デッドたちでは脱出のしようのない深い穴に圧死させんばかりに埋め込み、岩と土をかぶせた。ゴースト達を眠りにつかざるを得ない石の中に封印し、これも地中深くに埋め込んだ。

 救い……救い。そう、それは救いであったから、彼らが自分たちの手で黙らせられる死霊たちを前に心を痛めたのは彼らが「アザガーストに苦しめられたこと」に同情したが故であった。そして、それ以外には心を痛める由を見出さなかった。仕方がない。「それ以外」を直視すればまた、自分たちが信じたいものが、自分の心が壊れてしまう。フィオナの自然を愛していたければ、目は背けるしかなかったのだ。その上何回もやっていれば、悲鳴も抵抗も聞きなれる。ただの雑音にしかならない。

 救い。救ってくれ、と、いったい何人の死霊たちに頼まれたのか、誰も覚えていないだろう。

 

 だが、そんな救済の実行は、狂気の天才の前には気休めでしかなかった。

 ある日、フィオナの森の民は見た。

 

 元の通りに優雅な美青年の姿に戻ったアザガーストを。

 

「死ぬ」限りこの身に価値などないと言っていた不老不死への執着の塊がその姿になる理由など他にあるはずがない……彼は、辿り着いたのだ。虫に翅があるように、ワームに丈夫な胃袋があるように、ただ個性として不老不死足りえる種族としてダークロードを改造する魔術に。

 

 

 ダークロードは無論のこと、狂乱した。そして、自然文明の民は絶望した。

 世界が、壊れない。

 世界は、不老不死の種族をフィオナの森に許してしまった。

 

 どうして? 

 不老不死は、「自然」ではない。

「自然」の中に、あれがあってほしくない。

 不老不死に搾取されたくない。自分たちがそれになるのも嫌だ。限りある生を生きていたい。限りある生こそ素晴らしいと信じていたい。だってそうじゃないと、ずるいじゃないか。申し訳が立たないじゃないか。自分たちの食べている野菜や果物は、自分たちの家を作る樹木は、自分たちのために死んでくれたのに。自分たちがそれにお返しをしないなんて、道理が通らないじゃないか。

 自分たちが森を富ませ、やがて朽ち果て、自分たちもまた彼らが命と引き換えに残した子孫を育む土に。そうしたいのはそんなに、悪い事なの。

 森に恩返しをしたいのは、間違った考えなの。

 有限の命だけで支え合って生きていく森に生きていたいのは間違いだというの。

 

 アザガースト。

 あんな者は、フィオナの森に生まれるべきではなかった。あれは「自然を逸脱した」。フィオナの森よ、あれの存在を受け入れないで。

 あれらはあの力を森中に伝播しようとしていることは知っている。あれは間違いだった、あれは死ななくてはならない、死して、死の素晴らしさを知らなくてはならない。お願い、お願い、フィオナの森よ。

 

 私達は、不死が怖い。

 皆で支え合って、生きていきたいの。

 

 そう願った民の強い、強い思いは、フィオナの森の化身を顕現させた。

 そして、その遠吠えが森に響き渡った、その日のことだった。

 

 

 不老不死を実現させたダークロードの天才アザガーストは、急に大規模な地滑りに巻き込まれ、身体と魂を森の土や石や木々……それに籠った魔力、自分の魔術を圧倒的力量で覆す魔力によって「圧し潰された」。

 彼が「最初の最期」に見たのは、自分を見下ろす、森色の霊獣。……護りの角フィオナが、森の全てに埋もれる自分を見下した視線。

 お前の研究は、お前の誕生は、このフィオナの森に望まれないのだと。

「恐れるな。お前にもわかる」

 霊獣は視界の薄れゆく彼に、厳かに語りかけた。

「斯様なことをせずとも、役目を終えればお前たちの魂も、この森へと帰る。死とは、終わりではない。死を恐れずとも好いのだ。お前が思うほど、死は苦痛ではない」

 

 ……そんな、耳にさんざんタコを作ってくれた言葉を、今際の際にわざわざと。

 

 ●

 痛い。苦しい。

 息が出来ない。何も見えない。体が壊れる。

 

「死」を前にし、アザガーストが感じたのはこうだった。死とは、世界にこれ以上ない苦痛の瞬間だ。

 苦痛にあえぎ、死に抵抗し、どれほどの時間が経ったろう。彼はずっと、死を受け入れさえすれば死ねる状況で、それでも生にしがみつき、考えていた。

 何が、役目を終えれば、いつか帰るだ。その時、僕は、僕じゃない。僕じゃない者がいつかどこかで生まれて生きるからと言って、だからなんだ。

 そんなにも死して森に恩返ししたいなら子供を作り次第自殺すればいいのになぜしない。それがすべてじゃないか。何が美学であるものか。お前たちは、負けたんだ。死からの逃亡を諦めたから、死を崇め媚びへつらうことに決めたんだ。死ぬべき自分たちこそが偉いという事にすれば、死の運命を苦しまずに受け入れられる。そんな易きに流れたのがお前たちなだけ、僕はその詭弁に騙されなかっただけだ。

 そうして考えた僕が、実現した僕が、なぜ、死んでやらなければならない? ああ、いやだ、いやだ、死は怖い、死は苦しい。死はこれほどまでの苦痛だ。死にたくない。死にたくない死にたくない死にたくない。どんなに惨めな姿でも、死よりはましだ。

 勝ち誇るな。勝ったなどと、思うな。ただ諦めただけのお前たちが。

 死はこんなに苦しいのに、恐ろしいのに。

 ……どうしてお前たちはそれを受け入れて、それを当然のことのように言う。

 

「死」を受け入れることなど、偉大でも何でもない。

「死」を支配出来る者こそ、この世で最も偉大なのだ。

 

 

 ……並の話でありさえすれば、こうして彼は封じられ、どっとはらいと締められたであるだろう。生前の彼がどうであるかに依らず、知性を失った古代のワーム同様に、不死の愚かさを語り継ぐ物語の主役としてのみ、地上で不老不死になった事だろう。

 だが。

 そんな彼がそれでも、生にしがみつく中……並ではないことが、起こってしまった。

 

 ●

 ある日、フィオナの森の民は見た。そして……その中にはアザガーストも含まれていた。彼の視界が急に開けたのだ。

 フィオナの森の一角に、美しいほどの漆黒のオーラに包まれて、とあるものが顕現していた。

「小さき民たちよ」

 それは惑星で最も大きな存在。まるで……闇そのもののよう。

「この星の者は、誰より不死を愛した。故、余はここが気に入った」

 ……ふいに、アザガーストは自分の体に、何かが渦巻いているのが分かった。死んだはずの自分の体に渦巻くもの。

 ……それは、「彼」の体を包むエネルギー。

 アザガーストは悟った。自分は「彼」の力でよみがえったのだ、と。自分の理論すら超越する完璧な不死を与えられたのだと。

 まさにそこに、「死」を支配する存在が立っていた。

 そして、急に開けたその視界が他の全ての見ている其れとは違うことを……アザガーストはようやく理解した。

 彼は、自分を復活させたその巨人の手に、宝物のように優しく乗せられていた。

 

「この星の闇の民よ、余はお前たちを愛し、お前たちを庇護し、お前たちの王となろうぞ。不死を信じた者共よ。闇の概念の愛し子たちよ」

 

 ……狂気の天才、アザガーストのまさに命を賭した不死への愛によって、星に顕現してしまったのは。

 

「この闇の化身、覇王ブラックモナークと共に生きるがよい」

 

 フィオナの森の化身どころではない存在だった。

 そもそも、闇文明が不死を目標にしたのはなに故か? それは、「ある存在」の伝説のためだ。

 五元のマナで構成される宇宙に遍く闇の全ては、意志を持っている……そう闇文明に伝えられる存在。それに仮に付けられた名こそ、「モナーク」。覇王ブラックモナーク。それは……死を絶対的に超越する力を有するという。故に闇において不死とは憧れであったのだ。

 そう。闇の化身。闇そのものの化身。それが、身体を持ち……「遍く超獣世界の中のたった一つ」に姿を現したのだ。

 理由など一つ。ただの超獣が抱くには身に余る不死への愛を、それでも手放さなかった者が、その惑星には居たが故。

 

「闇の魔術師たちよ、我が配下となりて、余と共に築くがよい。悠久の、太古帝国を」

 覇王ブラックモナークの治めし、未来も過去もない、無いがゆえに永遠の太古たる太古帝国が、その時生まれ出でてしまった。

 

 世界は、それを受けてなお、壊れていなかった。自然の民の願いと裏腹に。

 当然と言えば当然だったかもしれない。

 世界は「五元」であり「自然」ではなかったのだから。

 

 




今話からの章のタイトルは、Xで長年お世話になっていらっしゃいますデュエマ背景ファンのinnsekiさん(→https://x.com/innseki_dm)が以前某所に投稿した覇王ブラックモナークの小説のオマージュです。
当作品のブラックモナーク自身も当該の小説にだいぶ影響を受けております。
いずれ公開予定もあると伺っておりますので、その際はまたこのあとがきにリンクを張らせて頂きたく思います。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。