イタコ系配信者温魂うつすの配信 作:温玉丼
《あ なたのなまえは?》
『名前言ったら呪ったりしませんよね?あと殺されたりしませんよね!?』
《しな い。たぶん》
『マイケルです』
怖い、絶対殺される奴だ。と言うか知らない人に個人情報教えちゃいけないし。
《ちが う》
『いや、あってるで』
「急に出身まで変えないでください」
《うそつ き?》
地震が起きてないのに、熊の人形だけが強く震え出した。ヤバイ、コレはやばい。
『あー嘘じゃないっ。嘘じゃないよ?冗談。冗談だから!』
なんか肉事件の時もそうだし、私笑いのセンスが無いんだろうな。いや話のセンスが無いのか?よし、今度はこの路線で引退したいと伝えてみるか。バーチャル配信者にとってトークスキルは切っても切れないからね。コレはいける!
《じ ゃあ。ホントウの なまえ お しえて?》
『温魂うつすです。嘘ついて……ごめんなさい』
《コメント欄》
・謝れて偉い
・さっきクソびびった
・怖い
・声震えてて可愛い
・温魂すべるに改名しろ
《うつす?》
『そうです』
《へんな なまえ》
クスクスと人形から笑い声が漏れるのは、正直かなり怖いけどそんな事言ってられない。楽しそうだから良いか。あと、コメ欄うるさいな。何が温魂すべるだ。うつすだが?
《私は◾️◾️って言うの》
『あ、知ってます』
「うつすさん、それで会話終わっちゃいますから。田島さん?でしたか。彼女が名前を教えてくれたって事はそう呼んで欲しいって事ですよ」
『え、それは……』
それは困る。きっと彼女なりに心を開いてくれたって事なんだろうけど。
『無理ですね』
「え、何でですか?」
『良く聞き取れないので』
資料も名前の所だけ黒く染められてたから、もしかしたら彼女はこの名前が嫌なのかもしれない。だから名前で呼ばないでって事かな。
《わたし このなま えすきじゃ ないんだ》
『うん』
ゆっくりと聞こえる彼女の声を逃さない様に、耳を澄ます。
《だ からともだちみたいに あだなでよんで?》
『わかった。ちょっと待ってね』
『で、マネージャーさんなんか良い案あります?私の場合、唯一居た友達は名前呼びか苗字で呼んでたのであだ名とか無かったんですよ』
「私ですか?」
『はい、陽キャなマネージャーさんなら友達沢山居そうなので』
と言うか、やっぱり名前が嫌いだったんだなぁ。当たっちゃったな。なんか良く分からないけど罪悪感が湧いて来た。
「いや、私もそんなにいる訳じゃないですよ?でもぉそうですね。……タージーとかどうですかね?田島さんだから」
『コメ欄のみんなはどう思う?』
《コメント欄》
・俺達⁉︎
・急に振るなw
・マネちゃんのスルーで笑った
・タージーww俺は良いと思うぞw
・熊だから熊子とか?
・↑タージーの方がマシレベルで草
・そんなの言われてもパッと思いつかん
・分からん
『熊子はねえ……ちょっとアレだし。くま、ベア』
ベア、ベアべあ。ベア。アベ。
『アベちゃんとかどうですかね?田島さん』
《あ べ ちゃん?》
『それか熊子かタージーの三択なんですけど、どうします?』
少し固まった後、両腕を上げ頷いた。
《アベ ちゃん で いい》
『ですよね?アベちゃんの方がタージー熊子より良いですよね?けっていっ』
「うっ、なんか敗北感があるのは何なんですか?」
『ふっふーん。マネさんに勝った〜』
「ぐぅ……。あ、そうだ。うつすさん!アベちゃん引き取ってください」
『え?』
何言ってんのこの人?絶対強いよアベちゃん。そんな人と暮らせと?
「この家、近々取り壊すらしいので色々危ないんですよ。だから、専門家のうつすさんが預かってくれたら嬉しいな〜!って思うんですけど」
『え、え?ちょ、ま。マネージャー?』
勝手な事を言うな!こっちは膝ガックガックなんですけど?分からないだろうけど怖いんですけど?
「そう言えばオチが付きますし、この動画もバズれば、遊んで暮らせる将来の道が近付きますよ」
『おかね……。あ、でもアベちゃんの気持ちが大事ですし?アベちゃんは嫌ですよね?』
《おと もだちと おとまり?》
「そうですよアベちゃん!今日はうつすさん家で三人パジャマパーティーして貴方もリア充の仲間入りですよ‼︎」
『何勝手な事言ってるんですか!』
《コメント欄》
・アベちゃんくさ
・うつ玉てえてえ
・俺もパジャマパーティー混ざりたい
・アベちゃんよろ!
・アベちゃん俺らと同じか
こうして、私達は悪戯する霊をなんとかした。その代わり、私の家に熊さんの友達が居着く事になってしまった。まぁ、友達だと思えば怖く無い……ハズ?