幸いだったのは生まれたてのチェストバスター達は一体一体はそこまでの力を持っていないことだった。数は多いが、中には反撃を受けるとすぐに逃げ出そうとするものもいる。しかしそれでも敵はあまりに多い。
一行が繭から飛び出したチェストバスターたちと激闘を繰り広げていたその瞬間、突然、轟音が響き渡り、壁がまだ残っていた繭ごと粉々に砕け散った。巨体がその残骸から現れる――ティタンだ。無数の傷を刻まれた漆黒の皮膚、鈍く光る牙、異形の眼のない頭部が彼らを捉えていた。象型の巨大エイリアン、かつて動物園で一番の存在感を誇ったその姿は、今や恐怖そのものだった。
「ティタン…!また邪魔をするの…」
そのとき——
ギャアアアア!!
突如、四方から甲高い鳴き声が響いた。
「あいつらが…!」
アレクサが叫んだ。
壁、天井、床。
無数の影がうごめく。チェストバスターたちだ。
大きさも形もバラバラな異形の幼体たちが、金属の梁を這いずり、床を滑るように進み、まるで蜘蛛の子を散らすように出口を求めて動き始める。
なぜエイリアン同士で。呆然とする人間達をよそにティタンは低い唸り声をあげ、鋭い牙を露わにしながら、辺りの生命体を一瞥した。そして負傷で取り残されたラピドスバスターを踏み潰すと、残る一行に向かってゆっくりと歩み寄る。時間がない。ジェイクが銃を撃ち始めるが、その巨体に対してはほとんど無力だ。
「何か方法は…」
チェストバスター達がまだうごめいている今、逃げ道は限られていた。だが、エヴァンがふと目をやると、床にラジオが転がっている。それは園の館内放送用の古い機器だった。ひらめいたようにラジオを掴むと、すぐにスイッチを入れる。
ラジオから突然、軽快な音楽が流れ出した――エヴァン以外にとっては聞き慣れたリズム。すると、またしてもティタンがその場で立ち止まり、頭を少し傾けた。音楽に反応している!昔、音楽に合わせて芸をするように訓練されていた記憶が残っているのだ。
「今だ!走れ!」
エヴァンが叫び、一行はその隙に出口へ向かって猛ダッシュした。ティタンは音楽に釘付けになり、まるで思い出したかのように体を揺らし始める。その方角にはティタンにおびえているのかチェストバスターがいない。
ドアが目の前に迫る。エヴァンが先頭に立ち、全員が無事に脱出するまでティタンを見張る。アレクサとジェイクが次々と外に飛び出すと、ドアを力いっぱい閉めた。すぐさま、ドアに鍵をかける。これで時間ぐらいは稼げるはずだ。
ティタンが音楽に合わせて少しずつ動いている足音を最後に確認し、一行は息をつきながら次の行動を考えるのだった。