エヴァン、アレクサ、ジェイクの3人は、連れ去られた人々を救出するため、データが示したエリア「ビーストケージ」へと急いでいた。アレクサ曰く、このエリアはもともと希少な肉食獣たちの生態を展示するための隔離空間であるらしい。強固な鉄柵と闇に包まれた檻が幾重にも連なっているが、今では粘液にまみれたエイリアンたちの巣窟と化していた。
通路の奥からは時折湿った足音と、低い唸り声が響き、暗がりになんらかエイリアンの影がちらつく。3人は慎重に身を隠しつつ足を進めながら、心の中で手遅れにならないよう祈っていた。
「あと少しだ、耐えていてくれ…」
エヴァンが静かに呟いた瞬間、冷たい風が通路を突き抜け、どこか不気味な空気に包まれた。
「…待って。」
アレクサが立ち止まり、その気配に気づいた。吹き抜けとなった広い空間で、巨大な影が彼らの前方に現れる。現れたとは言ってもその体躯を壁に自らの突起で固定させたそれは、見るからに恐るべき存在だった――頭部を囲う複雑で広いフードは雄ライオンのたてがみだろう。しかしここにいるのはライオンでも雄の王でもなくエイリアンのクイーンだ。その姿は通常のエイリアンよりも明らかに大きく、二対の腕と宙づりの脚にはしなやかな筋肉が張り詰め、幅広いフードに隠れた瞳のない貌がエヴァンたちを睨んでいた。
「ク、クイーンだ…!こんなところに…」
ジェイクが銃を握りしめながら呟く。雄ライオン型のクイーン――レガリアの威圧感は尋常ではなく、全身から放たれる恐ろしいオーラに、思わず後ずさりしてしまうほどだ。
するとレガリアの側に、さらに二つの影が降り立つ――サイレンだ。本来の群れ時代の習性を引き継ぐように雌ライオン型のサイレンは狡猾な眼差しで彼らをじっと見据え、唸り声を上げて牙を剥き出しにしている。
「皆はどこにいるの…?」
アレクサが怯えをこらえながらつぶやく。
エヴァンは、レガリアの凶悪な視線に睨まれながらも、一行に向かって静かに指示を出した。
「ジェイク、アレクサ、繭を解放しなきゃいけない。なんとか奴らの隙をつくる…」
だが、彼らの作戦を読んだかのように、レガリアが威嚇の咆哮をあげる。その音はビーストケージ全体に反響し、金属製の壁を振動させるほどだった。サイレンだけでなくどこからかルプスもその咆哮に応じるように姿を現わして低く唸り、エヴァンたちの逃げ道を塞いだ。
「もう後戻りはできないぞ…」
ジェイクが覚悟を決めたように銃を構えた。
エヴァンもまた、瞳に決意の炎を宿し、レガリアを睨み返した。残された選択肢はわずかだ。レガリアとその恐ろしい手下たちを前に、3人は生き延びるための最後の戦いに臨む覚悟を決めたのだった。