エヴァンとアレクサは、廃墟となった施設から無事に脱出し、エヴァンの宇宙船にたどり着いた。二人とも体に深い傷と疲労を抱えつつも、生存した安堵をかみしめながら船内に入り込む。
船のハッチが閉じると同時に、外の惨劇と決別するように内部ロックが作動する。エヴァンがすぐにシステムを操作し、船内セキュリティを再起動させた。
「…これで、ひとまず安全だ」
エヴァンは船内カメラで船外を確認し、何も追ってきていないことを確認して安堵が胸の内に広がった。
船のコンソールにアクセスし、せめてもの命綱となった回収した貴重なデータを保管すると、アレクサは冷凍睡眠の準備を整えるため、静かにカプセルの中に入った。彼女はエヴァンを見つめ、感謝と安堵の笑みを浮かべる。エヴァンも船の進路を設定設定してからカプセルに入り、彼女に微笑みを返す。
船内で冷凍睡眠の準備を待ちながら、エヴァンとアレクサは一息つき、少し言葉を交わす時間を持った。長い戦いを終えた後、二人は不安と安堵が入り混じった複雑な心境で、しばし沈黙が続いたが、やがてエヴァンが静かに口を開いた。
「ここまで生き延びられるとは思わなかったよ」
とエヴァンが呟くように言うと、アレクサも小さく笑ってうなずいた。
「本当よね。でも、エヴァンのおかげでここまで来れた。あなたがいなかったら…私ももう、ここにはいないかもしれない」
エヴァンは少し照れくさそうに視線をそらしつつも、
「ありがとう。でもアレクサ、君だって勇敢だった。あの混乱の中で、冷静に判断し続けられる人はそういない」
と返した。
アレクサは少し間をおいてから、静かに言った。
「だが何人もの仲間を失ってしまった…。こんなことなら最初から脱出していればよかったんだ」
「エヴァン、これからどうするの?帰ったら」
「そうだな…」
と彼は少し考え込む。
「まずは報告だ。それが済んだら、今度こそのんびり過ごしたいな。もっと安全な場所でね」
アレクサもそれに頷きつつ、
「そうね。でも、きっと普通の生活に戻っても、今回のことが頭から離れないわ」
と呟く。
「少なくとも当面動物とは過ごしたくないが。…それでも、君がどこかで元気でいてくれるなら、それでいい」
とエヴァンはふと真剣な眼差しで言った。
「私もよ、エヴァン。互いに無事でいられたら、それが一番」
とアレクサは微笑む。
冷凍睡眠が始まる直前、エヴァンはふと視線を巡らせた。
船内が静かすぎる。聞こえるはずの音がない。
「……フィン?」
答えはなかった。
何かがおかしい、と彼は思った。だが確かめる時間はなく冷凍処理が始まり、意識は遠のいていった。
宇宙船は静かにエンジンを始動し、無限の宇宙の暗闇へと消えていった。