地獄と化した施設から船が飛び立った。たった二人の生存者だったが、それでも確かに彼らはそこに生きて居た。
船内は静寂に包まれ、冷凍睡眠ポッドの中でエヴァンとアレクサは深い眠りに落ちていた。定期的に点滅する冷淡な青白いランプの光が、二人の眠る顔を淡く照らしている。艦内は生命維持システムの静かな稼働音以外、音ひとつしないはずだった。
だが、船尾の貨物室からかすかに金属の擦れるような音が聞こえた。何枚かの血に濡れた羽根の散らばる収納スペースの隅で、不気味に動き回る小さな影が姿を現す。まだ宙に羽ばたくほどの大きさでない小さな翼を備えた眼球のない小動物。小さなそれは、もし2人が目にしたならばきっと冷凍睡眠ポッドの中で絶望の声を上げていただろう。すなわちそれは鳥型エイリアンであるナクター──フィンから生まれていたチェストバスターだった。その幼体はゆっくりと周囲を確認しながら、艦内に新しい自分の棲み処を探すように奥へと進んでいく。
やがて、何かに満足するかのように口元をわずかに開くと、鋭い歯が小さな囁きを漏らすように輝いた。エイリアン幼体の小さな体は、不気味に伸びた小さな爪や鋭い尾を誇示し、機械や配管を這い登りながら、船内のシステムに触れ、安定していた船のランプが一瞬点滅する。
次の瞬間、冷凍睡眠ポッドのスクリーンにわずかに乱れた光が映り込む。だが、冷たい眠りに閉ざされたエヴァンとアレクサは何も気づかない。船内の奥深くで、エイリアンは成長の兆しを見せ始め、機械の奥で新たな形へと変わりつつあった。
誰も見ていない。誰も気づいていない。
だが、それは確かにそこにいた。
静かに、確実に、成長を続けながら。
船内に漂う無音の静寂。その中で、エヴァンとアレクサはコールドスリープの中で微動だにしない。クリーンなシステム音とともに、データ解析の進捗バーが自動的に進行している。ランプが点滅し、次々と画面に表示される暗号化されたファイル。
突然、解析がある暗号ファイルに到達すると、システムがエラー音を立てながら、音声メッセージを解読し始める。
画面には、『最終段階…封じられた卵…解放』といった警告文が断片的に浮かび上がる。暗号が解かれるにつれ、表示されるのはエイリアン計画の最終段階、そして卵の遠隔ロック解除のリスクについてのメッセージ。冷たく閉ざされた船内で、この警告が静かに未来の脅威を予感させ、深い沈黙だけが続いていた。