廃墟となった部屋に飛び込み、重い鉄の扉を閉めると、全員がその場に崩れ落ちる。息を切らしながら、エヴァンは振り返り、血を流して倒れ込んでいるヴィクターに目を向けた。
「ヴィクター、大丈夫か?」
エヴァンがヴィクターに駆け寄ると、その顔は蒼白だった全身に深い傷を負ったヴィクターは、かすかな息をついて、苦しそうに目を開けた。
「もう…無理そうだ…」
ヴィクターは息を詰まらせながら話した。
彼以外はなんとか息が整い始め、わずかに冷静さが戻り始める。しかしそうなっても助けるための方法はここには存在しなかった。
「…こんなところで…すまん…」
「そんなこと言うな、まだ助かる…!」
エヴァンが必死に声をかけるが、ヴィクターは静かに首を振った。
ヴィクターは重症だった。衣服を裂いた大きな傷からの出血がひどいため、本来なら一刻も早く病院や医療室へ運ばなければならないだろう。だが、この場には少なくとも医者もおらず、治療のための道具すらもない。
「これ以上は無理だ…お前たちは、先に行け…」
ヴィクターの目が徐々に焦点を失っていく。
「俺のことは気にするな…俺はもう…」
エヴァンはヴィクターの手を握りしめたが、その手は冷たく、力を失っていった。アレクサとメラニーが後ろで涙をこらえながら見守る中、ヴィクターは静かに息を引き取った。
「ヴィクター…」
メラニーが泣きそうな声で呟く。
「くそっ…!」
ジェイクは拳を固く握りしめ、ヴィクターの亡骸を見つめた。
「こんな場所で…」
「彼の犠牲を無駄にしないようにしなきゃ…」
アレクサが涙を拭いながら決意を固めた。
「私たちは先に進まなきゃならない。それに…」
「…それに?」
言葉を切ったアレクサに、エヴァンは先を促した。
「…この先は職員用の通路が塞がっていたはずなの。つまり飼育用のサファリエリアの中を突っ切っていくしかない」
「だからなんなんだ…?」
回りくどい言い方に、少し苛立ちながら再度促す。
それに応えたのはそれまでにも増して緊張と恐怖を顔に浮かべたメラニー。
「人間用の通路にあれだけエイリアンがうろついていたってことは、元々動物が棲んでいた場所はその比じゃないってことです。どこから何が出てくるのか私たちにも想像つきません」
「…だが、それでも…」
「…進まなければ。彼の犠牲を無駄にしないために」
重い空気の中、エヴァンたちはヴィクターの亡骸に別れを告げ、目的地までの最短距離──サファリエリアへと足を進めたのだった。