クソボケのことが大大大好きな生徒達   作:あば茶

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パジャマでお邪魔します(ユウカ)

 

 

「えっ」

 

 

モコモコ、モコモコ

 

帰宅して食事も風呂も済ませてさっさと寝ようとしたら謎の生き物が俺のベッドに侵入していた

 

しかし本人は正体を隠しているつもりだろうが俺にはハッキリと分かっている

 

頭に浮かぶヘイロー、あれは間違いなく俺の恋人────そう、早瀬ユウカだ

 

 

「……えっ」

 

 

ゲヘナとミレニアム、風紀委員会とセミナー、互いの所属する学園と組織は違えどシャーレの仕事の手伝いで会う機会は何度もあった……が、それ以前にもアリウスの巡航ミサイル対策の為にエンジニア部にシールド装置を作ってもらう際にも何度か会っている

 

最初はなんとなく、互いに問題児を相手にする立場から〝互いに大変ですねー〟って話すだけだった

 

そこから何度も会話を重ねていく内にどっちも他の生徒にロリコン扱いされてる事を知ったり定期的に学園の一部が破壊されてその後始末に追われたりとあまりにも最悪な共通点が多すぎる事を発見していった

 

気付けば休日はちょくちょく愚痴を言い合う関係になり、そして……いつの間にかお付き合いする事になりました、はい

 

 

「すー、すー」

 

(……ぜってー起きてる)

 

 

わざとらしい寝息を立てながらも未だにベッドから出てこようとはしないユウカさん

 

これはどういう事なのだろうか……あれか?ドッキリか?家に帰って寝ようとしたら人が侵入してました的な?

 

……だとしたら寝息は立てないよな

 

 

「……えっと……ユウカさん?なにしてんすか?」

 

「……ね、寝てるから聞こえないわ」

 

 

起きとるやん、バリバリ起きとるやん

 

自分が寝た振りしてる事を隠す為の策がこれなのだろうか、きっとユウカさんの頭の中ではかんぺき~な作戦だったに違いない

 

 

「ユウカさーん?これで誤魔化せるほど流石の俺もボケちゃいませんよー?」

 

「……ボケてはなくてもクソボケではあるでしょ」

 

「その節は本当に申し訳ございませんでした」

 

 

ひょこっと毛布から顔だけ出してジト目で睨まれる、その話をされると何も言えなくなってしまうので勘弁してほしい

 

告白してきたのはユウカさんから

 

美少女からの告白という全世界の男子が羨むであろう状況に対し、俺が返した言葉は〝えっ!?先生の事が好きなんじゃないの!?〟だった

 

自分がユウカさんに好かれているという現実をイマイチ受け止め切れず、何度も想いを確認している内に涙目になったユウカさんにキレられるという……これはクソボケ扱いされても仕方ない

 

……が、それはそれとして人様のベッドを占領する悪い子にもお仕置きをしなければならない

 

 

「酒泉は激怒した、必ず恋人の毛布を剥ぎ取らねばなるまいと」

 

「きゃーっ!?」

 

 

それー、っと勢いよく毛布をひっぺがす

 

するとあら可愛い、水色パジャマ姿のユウカさんが膝を曲げながら寝転んでいたではありま……うおっ、なんか良い匂い……風呂上がりか?

 

 

「……そういや、なんか風呂が既に温かかったような」

 

「あ、ごめん。勝手に借りちゃった」

 

「いや、それは別に構わないんですけど……でも、なんで急に?」

 

 

合鍵を渡すぐらいには信頼と信用を寄せているので俺の家の物は好きに使ってもいい、しかし俺のベッドに侵入していた事だけは疑問だ

 

え?なんでそんなに気にしてるのかって?そりゃあ、ほら……ベッドの下にさ……あるだろ?男の子なら必ず持ってる本がさぁ……

 

 

「最近お互いに仕事が忙しくて中々会えなかったでしょ?それで……その……」

 

「もしかして……寂しかっただけとか?」

 

「うぇ!?い、いやっ、私は別にそこまで寂しかったわけじゃないわよ!?でも酒泉君側が寂しくしてるかもなーって思って、もしそうなら恋人としても先輩としても放っておく訳にはいかないし会いにいってあげよっかなーって────」

 

 

めっちゃ早口やん

 

まるで特撮を語っている時の俺みたいに早口で延々と言い訳をするユウカさんを眺めながら呆れてみる

 

この人は全体的に優秀で頭も良いんだけど時々ちょっと残念な感じになる時がある(まあそこが可愛いんだけどね)

 

だから、そんな時は俺の方がしっかりしなければならない……恋人としても男としても

 

 

「────つまりこれは特別でもなんでもない極普通の感情であって恋人同士の私達にとっては当たり前の……って聞いてる?」

 

「聞いてます聞いてます……要するに俺の為ですよね?ありがとうございます、俺も最近ユウカさんに会えてなくて寂しかったんで嬉しいです」

 

「そ、そう?なら良かったわ」

 

 

満更でも無さそうに頬をかくユウカさん、彼女は先程俺が発した〝俺も〟という言葉に気付いてなさそうだ……否定はしないんですねー

 

しかしこれを口に出すとまた長々と言い訳が始まりそうなので黙っておく、酒泉はできる子

 

 

「そ、それじゃあ……早速寝る?温めておいたから」

 

「どこの豊臣っすか」

 

「残念だったわね、この頃はまだ木下よ」

 

「……」

 

「ふふっ……私の勝ちね?」

 

「うるさいです」

 

「わっぷ!?」

 

 

ドヤ顔で屁理屈を捏ねるユウカさんに対して覆うように毛布を被せ直す、最初は〝ぐへへ!その生意気な口を塞いでやろうか!〟って言いながらキスしようとしたけどあまりにも雰囲気が無さすぎるのでやめておいた

 

モゾモゾと毛布からの脱出を試みるユウカさんの隣に身体を寝かせてお邪魔する……なるほど、確かに温かい

 

 

「もう……言い負かされたからって八つ当たりしないでよ」

 

「言い負かされてませんー、ユウカさんが意地悪なだけですぅー」

 

 

下らない言い合いをしながらも毛布を俺達の首元まで引っ張る

 

あー……あったけぇ……一瞬で眠気が襲ってきた……

 

 

「ね、ねえ酒泉君?ところでだけど私が寝た振りをしていた理由とかは聞かないの?」

 

「んー?……今日は眠いんで明日聞きますよ────痛い!?」

 

 

俺の言葉を聞いた瞬間、ユウカさんが一瞬で毛布の中に潜り込む

 

そして俺の脚を両の太ももでギリギリと力強く挟み込んできた、大変素晴らしい太ももをしていらっしゃいますね痛い痛い痛い

 

 

「ぼ、暴力はよくない……」

 

「ねえ酒泉君、ところでだけど私が寝た振りをしていた理由とかは聞かないの?」

 

「え?もしかしてこれって〝はい〟って答えるまで延々と同じ選択肢をつきつけられるパターンですか?」

 

「ねえ酒泉君、ところでだけど私が寝た振りをしていた理由とかは聞かないの?」

 

「駄目だ、完全にNPCになってやがる」

 

 

意志無きキャラクターと化してしまったユウカさん、彼女を救えるのは俺だけだろう

 

しゃーない、ここは乗ってあげよう……本当はめっちゃ眠いけど

 

 

「えっと……どうしてです?」

 

「その……今日の私の格好、何か気にならない?」

 

「今日の格好……」

 

 

毛布から出てきたユウカさんの格好を見つめてみる

 

まずはパジャマ、何度か見たことのある水色のパジャマ

 

次に頭、髪を下ろしてタオルを上で結んでいる

 

……うん、特におかしいところは何もないな。パジャマの一番上のボタンが外れてるところ以外は

 

 

「特に何も無いっすね……あ、それよりもパジャマのボタンちゃんと閉めた方がいいっすよ、風邪引くんで」

 

「……てい」

 

「もふっ」

 

 

顔に優しく枕を投げつけられた、なんで?

 

 

「酒泉君、もし目の前で酒泉君の好きな極上スイーツがスプーンやフォークと一緒に寝ていたらどう思う?」

 

「そんなん俺に食べられる為に寝ているとしか思えないじゃないっすか、据え膳っすよ据え膳」

 

「でしょ?」

 

「はい」

 

「……」

「……」

 

「…………それだけ?」

 

「はい」

 

「えい」

 

「痛っ……くない」

 

 

今度は優しく額に額をぶつけられる、なんで?

 

 

「おやすみなさい」

 

「え?答え教えてくれないんですか?」

 

「当然よ、それぐらい自分で考えなさい」

 

「このままじゃ気になりすぎてこのままじゃ眠れないんですけど?」

 

「だったら寝ないでずっと私の事だけ考えてなさい」

 

 

拗ねたように背中を向けるユウカさん、恐らくこれ以上は何も教えてくれなさそうだ

 

仕方ない……ユウカさんが何を伝えたかったのは分からないけど今日のところは一先ず寝るとしよう、起きてスッキリしたら何か気付くかもしれんし

 

 

「じゃあおやすみー」

 

「うん、おやすみ────じゃないわよ」

 

「ぐえっ」

 

 

ベッドの上でゴロゴロ転がってきたユウカさんに激突される、危うく落とされかけた

 

 

「なに本当に寝ようとしてるのよ、普通彼女のことを放っておく?」

 

「ちょっ……勘弁してくださいよ、ガチで眠いんですって……」

 

 

相変わらず騒がしいゲヘナの事やついに始まる来週の調印式の事で俺の頭は一杯一杯、ただでさえ容量の少ない頭にこれ以上情報を詰め込もうとしないでほしい

 

しかしそんな事などお構い無しにユウカさんは俺の背中から抱きついてくる、なんか当たってるので出来れば離れてほしい

 

 

「駄目よ、正解するまで今夜は寝かせないわ」

 

「まさかその台詞を女性から言われる日が来るとは思いませんでしたよ」

 

「別にいいでしょ?明日はお休みだし、それに……お互いまた暫く会えなくなりそうだし」

 

 

きゅっ、と抱き締める力が強くなるユウカさん

 

ユウカさんも俺も多忙の身、更に俺の場合はそこにエデン条約という大仕事が追加される、互いに落ち着いて会える時間が取れるのはそれが終わってからになるだろう

 

……ただ……

 

 

「一週間会えないだけなのって……〝暫く〟って言うんすかね……?」

 

「…………わ、私にとっては暫くなのよ!」

 

 

これはズルい、こんな事を言われたら男なら誰でもドキッとしてしまう

 

しかもパジャマ姿のユウカさんなんだぜ?こんなん勝てるわけないじゃん、男なら誰でも狼になっちまうよ

 

 

「じゃあ寝ますねー」

 

 

でも俺は狼ではないので────すっげー痛いっ!?

 

 

「ユウカさん!?キヴォトス人の全力で抱き締めないでくれません!?骨が砕けそうなんですが!?しかもいつもより力強くない!?」

 

「このまま抱き枕にして寝ようかしら」

 

「いや待って本当に勘弁してくださいまだ死にたくないんです」

 

 

アカン(アカン)

 

このままだと朱沢江珠みたいに抱き締められながら殺される、それか親父ぃ……みたいに脱出ポッドごと潰される

 

 

「来週!来週の調印式までに答えを出しますから!」

 

「せめて明日って言いなさいよ」

 

「いや、明日は普通に考え事とか抜きに休みたいんで……冗談ですはい明日までに答えを出しますから」

 

 

骨からピシリと音が鳴ったような気がするので即サレンダーする、俺はデュエリストの前にリアリストだ

 

それにしても危なかった……太ももを使われていたら一瞬で身体が砕けていたかもしれない

 

 

「もういいわよ……どうせ酒泉君には口で直接言わないと伝わらないだろうし」

 

「え?結局答えは?」

 

「真実は闇と共に追放されたわ」

 

「今日ってクリスマスでしたっけ?」

 

ユウカさんはなにやら物騒な台詞を吐くと再びオフトゥンに潜ってしまった

 

つーん、と声に出して言ってる、かわいい

 

「ユウカさーん、怒ってますー?」

 

「怒ってないわ」

 

「嘘だ、絶対怒ってるでしょ」

 

「……怒ってないわ」

 

「……えっと……よく分かりませんけど……どうしたら許してくれます?」

 

 

怒りの原因は分からないがこのままだとユウカさんに申し訳ないし目覚めも悪くなってしまう、という事で眠気を必死に押し殺しながら許しを乞おう

 

「……デ、デート」

 

「デート?」

 

「明日デートしてくれたら……機嫌が直る……かも」

 

 

ボソボソと呟くユウカさん、彼女の顔は恐らく真っ赤に染まっているだろう

 

前から顔を覗き込まなくても後ろからでも分かる、だって耳が真っ赤なんだもん

 

意外と積極的に見えて意外とそうでもない俺の恋人、この人はなぜこんなにも愛らしいムーブをしてしまうのか

 

ただでさえ男のベッドに潜り込むっていう据え膳みたいなムーブをしてるのにこれ以上の────ん?据え膳?

 

 

「……あっ!?そういう事か!?ユウカさん、もしかして俺が据え膳無視したから怒ってます!?」

 

「今更!?」

 

 

どうやら当たっていたようだ、そりゃ怒られてもしゃーなし

 

俺だってそんな状況のカップルが目の前に居たとして男側が据え膳を無視しようとしてたら〝このクソボケエエエエエエ!!!〟って叫んじゃいそうだもん

 

 

「で、でも……正解してもデートはしてもらうから!」

 

「結局するんかい……じゃあ明日に備えてさっさと寝ましょうか」

 

「結局寝るんかい」

 

 

 

この後めちゃくちゃ二人でぐっすりした




あば茶です、コミケで目的のミサキ本を買えてウハウハなあば茶です

野口が40枚消し飛んだあば茶です
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