クソボケのことが大大大好きな生徒達   作:あば茶

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クソバカ作者「さーて、大大大好きの方に投稿したアヤメルート、どんな感想来てるんやろな~」
クソバカアホ作者「……ん?」
何故かアリ潰の方に投稿してるのに感想が来るまでその事に気付かなかったクソバカアホゴミカス作者「ほげええええええええええええええええええ!!!」

はい、という訳で実はアリ潰の方に投稿したあの話、本当はこっち用のやつだったんすよ

でも今更消すのもアレなんでこっちにも投稿しちゃいます、それと以前言ってたマリールートなんですけど一話じゃ押さえきれなくて数話掛けてしまうかもしれません


私の拠り所(アヤメ)

 

 

 

 

「ありがとうアヤメちゃん!お陰で助かったよ!」

 

「アヤメさん!さっきあそこで魑魅一座が……!」

 

「アヤメちゃん!ちょうど良いところに!さっきウチの旦那が腰壊しちゃって……」

 

「おお!アヤメじゃないか!いやなに、大した問題じゃないんだが……実はな?」

 

「アヤメちゃん!」

 

「アヤメさん!」

 

「アヤメちゃん!」

 

「アヤメお姉ちゃん!」「アヤメ!」

 

「アヤメ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「流石はアヤメだね、こんなに皆に慕われるなんて……やっぱり百花繚乱の委員長はアヤメしか考えられないや」

 

 

 

慕われてる?違う、押し付けてるだけだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────ありがとねアヤメちゃん!また頼むよ!」

 

 

いつもと変わらぬ笑みで〝任せて!〟と返せば、私に頼み事を押し付けてきた生徒は此方の気も知らず呑気に友達とどこかに去っていった

 

最初はただの迷子探しだった、なのにそれを終わらせると〝じゃあ私も〟と次々にアヤメアヤメと名を呼びながら大勢の人達が私を頼ろうと集まってきた

 

私なら何でも出来ると思っているのか、私なら疲れないと思っているのか、他の人の頼みを聞いたのなら自分の頼みだって聞いてくれるだろうと当然の事の様に思っているのか

 

期待、尊敬、信頼、それらの感情で構成された仮面を今更外すことなんてできなかった、これからも私は〝皆の大好きなアヤメ〟を演じ続ける

 

百鬼夜行で生活を営む村人達の前でも、百花繚乱の仲間達の前でも…………ずっと私の後ろをついて歩くナグサの前でも

 

苦しい、百鬼夜行の生徒なのに百鬼夜行に居る時間だけがただひたすらに息苦しい、ここじゃ私は仮面を外せない

 

私が仮面を外せるのは、素顔を晒せるのは

 

 

「お帰りなさい、アヤメさ────っと……」

 

「……ただいま」

 

 

玄関を開けて出迎えてくれた彼の胸元に飛び付くと、彼は優しく私を抱き止めてくれた

 

そう、ここだけだ……彼の、酒泉の前でだけ〝私〟は私になれる

 

 

「んー……」

 

「どうしました?今日は随分とお疲れですね」

 

「……うん、疲れた」

 

 

ぐりぐりと強めに胸元に頭を押し付けると、酒泉は私の頭を撫でながらお疲れ様ですと労ってくれた

 

彼は何でも受け入れてくれる、そんな私を頼ってくる連中となんら変わらぬ考えで身体を預けても酒泉は文句の一つも言ってこない

 

 

「どうします?この後シャワー浴びたら丁度飯作るところなんですけど……食っていきます?」

 

「……いいの?」

 

「いいっすよ、友達なんですから」

 

 

友達、そう、友達なのだ

 

おもいっきり抱きついたけど、それを抱きしめ返してくれたけど、さっき〝ただいま〟って言ったけど、さっき〝おかえり〟って返してくれたけど

 

別に恋人でもないし同棲してる訳でもない、いつぞや私が酒泉の家でだらけてる時につい溢してしまった〝自分の家みたいで落ち着ける〟という一言に対し、酒泉が〝自分の家だと思ってくれていい〟と返してくれた

 

だからその気遣いに甘えて私も我が家の様に気軽に寄っているだけだ

 

 

「そんじゃ適当に座って……って、ソファーに制服置きっぱでしたね」

 

 

すみませんと謝りながら雑に制服を回収する酒泉、畳みもせずぐちゃぐちゃにして両手で抱き込んでいる

 

よくよく見なくても服もズボンも汚れだらけ、おそらく帰ってすぐ脱ぎ捨てて部屋着に着替えたのだろう

 

 

「随分制服が汚れてるけど何か大きな事件でもあったの?」

 

「特に変わった事件はありませんでしたよ、いつも通りの面子がいつも通り暴れてただけです。ただ空崎さんとの戦闘訓練でボコボコにされただけですから」

 

 

空崎……空崎ヒナか

 

ゲヘナ学園の風紀委員長であり、ゲヘナ学園最強……ううん、どころかキヴォトス全体で見ても最強クラスの実力者だと知れ渡っている少女

 

酒泉だって強いには強いけど、流石にキヴォトス屈指の実力者相手では分が悪かったのだろう

 

 

「三回くらい挑んで三回とも負けちゃいましたよ、結構粘りはしたんすけど……やっぱ空崎さんは強いっすね、流石は俺の憧れっすよ」

 

「褒める割には悔しそうな顔するね」

 

「そりゃ当然っすよ、負けたんですから」

 

 

いつだか聞いてみた事があるけど、酒泉にとって空崎ヒナは〝推し〟であるらしい

 

文武両道、それでいて人格面も優れているらしく、噂を聞く限りだと完璧という言葉が近い

 

彼女がいなければ他校との勢力図すら変わりかねない程に空崎ヒナという一個人がゲヘナに及ぼしている影響は大きく、そんな彼女に酒泉は尊敬の念を抱いているのだとか

 

でも────酒泉は〝憧れ〟だけで終わるような奴じゃない

 

 

「まあ、次は勝ちますよ。いつまでも負けっぱなしじゃ悔しいですし、少なくとも空崎さんが卒業する前までには倒してみせますから」

 

「よくやるよ……まだ一年生なのにそんな焦る必要ある?」

 

「ありますよ、俺が……ていうか風紀委員の誰かしらが空崎さんを安心させられるくらい強くならないと空崎さんが心置きなく卒業できないじゃないですか。それに来年までずっと空崎さんに頼りっぱなしってのも嫌ですし」

 

「……」

 

 

酒泉は自分の憧れを、空崎ヒナすらをも越えようと日々成長している

 

〝あの人は自分とは違う〟とか〝あの人がいれば大丈夫〟とか、そんな諦め混じりの世辞とは違って自分もその領域に達しようと手を伸ばしている

 

憧れと肩を並べるどころか憧れの前を走る為に、今は支える事しかできなくてもいつか自分が引っ張っていけるように、そんな決意を持って毎日を生きている

 

決して優秀な〝個〟だけには頼らない、むしろ自分がその〝個〟にとって頼れる男に成ろうとしている

 

 

「それに空崎さんだって人間なんですから、負担ばっか掛けられて何も思わない訳がないですしね」

 

「…………いいなぁ」

 

「はい?何がっすか?」

 

「なんでも……それよりご飯って何作るの?」

 

 

つい溢してしまった空崎ヒナへの羨望を咄嗟に誤魔化して話題を逸らす、すると酒泉は先程までの悔しそうな顔から一転して幸せそうに顔を崩した

 

 

「今日はビーフシチューっすね、すね肉が安く買えたんすよ!」

 

「おー、いいね!御馳走じゃん!……そうだ!折角だし酒泉がシャワー浴びてる間は私が準備しとこっか?」

 

「いやいや、客人をこき使うなんて出来ませんよ」

 

「いいのいいの、むしろこっちはお邪魔してる側なんだしさ!」

 

そうだ、何かしてもらったらお礼をする、助けてもらったら今度はこっちが助ける、この〝対等〟という当たり前の関係が気に入って私は酒泉の所に入り浸っている

 

だから私だって酒泉の助けにならないと、そう思いながら躊躇っている酒泉の背中を押して無理矢理お風呂場に運ぼうとするも、直後に困り顔で振り向かれて一瞬身体が硬直してしまう

 

 

「……アヤメさん、なんか無理に元気なフリしてません?」

 

「……え?」

 

「だって、さっき見るからに疲れてそうだった……ていうか自分で疲れたって言ってたのに」

 

「……そうだっけ?」

 

「そうっすよ……いつも仕事で頑張ってんですから、プライベートくらいは俺に全部任せちゃってくださいよ」

 

「……でも」

 

 

今日だって仕事終わりに突然〝寄ってもいい?〟ってモモトーク送っちゃったのに、これ以上自分の都合だけで彼を振り回すわけにも

 

……そういえばさっきソファーに雑に置かれてた制服も、私が来る事になったから急いで着替えたのかな、シャワーを浴びようとしてたのも本当は彼も仕事が終わったばかりで、私の為に急いで帰宅したからなんじゃ

 

だとしたらこれ以上迷惑は────

 

 

「………………ごめん、じゃあ甘えてもいい?」

 

さっきまでの考えとは正反対な選択を私は取っていた

 

……あ、あれ?おかしいな?迷惑は掛けちゃ駄目って分かってたのに、気付いたら口が勝手に……今すぐ断らないと────

 

 

「よし来た!存分に甘えちゃってください!」

 

あ、駄目だ、今ので余計に断れなくなった

 

にかって笑顔を向けられただけで〝彼になら甘えてもいいんだ〟って本能が屈し、取り繕う気さえ一気に削がれてしまった

 

ずるい、ずるすぎる、これじゃ私も人のことを言えなくなってしまう、私まですぐ酒泉に頼ってしまうような輩になってしまう

 

これじゃ酒泉に失望されるかも────そんな心配を掻き消してしまうくらい、酒泉は満面の笑顔を優しさと一緒に私に向けてくれた

 

……今なら、言えるかも

 

 

「……ねえ、酒泉」

「はい?なんです?」

 

「これからもさ、甘えていい?」

 

 

これを言ったら呆れられるかも、面倒な女って思われるかも、そもそも彼は空崎ヒナを支える事を第一に考えてるし普通に断られるかも

 

そんな不安のせいで今まで吐けなかった言葉を、つい流れに任せて吐いてしまった

 

 

「全然構いません!むしろバッチコイっすよ!」

 

 

答えを待つ間のドキドキ、それを感じる間すら作らず即答する酒泉、多分彼にとっては困ってる友達を助けるようなものなのだろう

 

自分の意思で支えようとしているのは空崎ヒナだけで、私はそのついでなのかもしれない……でも、それでいい

 

〝恋人として〟なら断られちゃうかもしれないけど〝友達として〟なら彼は甘えさせてくれるから、本当の私を優しく受け止めてくれるから

 

 

「じゃあシャワー浴びてくるんでアヤメさんはテレビでも見て休んでてください……あ、暇だったら勝手にゲーム起動しちゃっていいんで」

 

「……うん、ありがと」

 

 

自分だって疲れてる筈なのに酒泉は私の事を優先して考えてくれてる、それはきっと私が最初に〝疲れてる〟と言ってしまったからなのだろう……それを考えると百花繚乱の委員長として周りから期待を押し付けられてきた日々も無駄ではなかったのかもしれない

 

……そうだ、これからは〝私〟皆が求めるアヤメに勝手な理想を押し付けられる度に〝これも彼に甘える為〟って思うようにしよう

 

〝私〟皆が求めるアヤメとして頑張るのも全て疲れ果てたくたくたの身体を酒泉に甘やかしてもらう為……つまり自分へのご褒美みたいもんだ

 

 

「……ふふっ」

 

 

不安要素もなくなって心置きなく風呂場に向かう酒泉、その背中を見送っていると抑えきれなかった笑みがつい溢れてしまった

 

多分、これは駄目な甘え方……はっきり例えるなら〝依存〟と呼ぶべき状態なんだろうね

 

だとしても今更酒泉を手放す事なんて私にはできない、だって彼は〝私〟じゃなくて私を見てくれる唯一の理解者なんだから────

 

 

「……ん?」

 

 

ブー、ブー、と振動するスマホ、画面にはナグサの名前

 

何のメッセージもなくいきなり通話……恐らく高確率で緊急を要する事態でも起こったのだろう

 

これに出るべきか無視するべきか、もし出てしまえばそこから緊急の要件に駆り出されて酒泉との時間を邪魔されてしまうかもしれない

 

でも……

 

「……はぁ」

 

 

酒泉は百花繚乱の委員長としての私を労ってくれた、それなら私もその気持ちを裏切らないようにこれからも百花繚乱の委員長として頑張らないと

 

早速〝酒泉に甘える権利〟というご褒美を糧に、イマイチやる気が出ない自分の心をなんとか震い立たせた

 

「……もしもし?ナグサ?」

 

 

まあ、別に何か事件が起きたとは限らないし

 

ただ単にナグサが暇で私に通話を掛けてきたって可能性も無くはない……そんな経験、一度も無いけど

 

だとしても他の可能性だって考えられるし、そこまで深刻に悩む必要も────

 

 

『ア、アヤメ!大変!さっき魑魅一座が────』

 

「……チッ」

 

『アヤメ?聞こえてる?で、電波届いてる……?』

 

「ああ、うん……それで?」

 

『え?』

 

「規模はどんな感じ?」

 

『き、規模は……十数程の集まりだけど……』

 

「それで?私はどうすればいいのかな?」

 

『え?そ、それは……』

 

 

数十人ならともかく、十数人なら私以外の面子でもどうにでもなる程度でしかないんだけどなぁ……

 

それに戦ってほしいなら〝戦ってくれ〟と、助けてほしいなら〝助けてくれ〟と、単純に自分の望みを言えばいいだけなのにこの子は何も言ってこない

 

わざわざ電話を掛けてきたなら助けを求めてるに決まってるだろうに何も答えないなんて……もしやこの子は〝アヤメなら察してくれる〟とか〝何も言わずともアヤメなら助けてくれる〟と思っているのだろうか

 

 

「分かった、すぐ向かうよ。私が到着するまでは魑魅一座の連中を人気の少ない所まで誘き寄せるのを優先的に考えて、まともに戦おうとすると被害が拡大するから……あいつら後先考えず暴れまわるし」

 

『う、うん!』

 

「何か想定外の事態があったらナグサが指揮してね、私今ゲヘナに居てすぐ到着できそうにないから」

 

『わ、私が指揮を?でも、私なんかじゃアヤメみたいに────え?ゲヘナ?』

 

「それじゃ」

 

『ま、待って?アヤメ、今日は用事があるから真っ直ぐ帰るって言ってたのにどうしてゲヘナに────』

 

 

余計な詮索をされる前に通話を切り、今頃シャワーを浴びているであろう酒泉の元に向かう

 

私はこれから酒泉に帰る旨を伝えないといけない

 

 

「……ビーフシチュー、食べ損ねちゃったなぁ」

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