クソボケのことが大大大好きな生徒達   作:あば茶

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多分この世で最もウサギに近い女(ミヤコその2)

 

 

 

『やるな月雪、その学年でもうそれ程の戦闘技術を身に付けているなんて……この調子なら俺なんかすぐにでも越えられちまうだろうな』

 

『違う違う、お前の体格ならもう少し脚を閉じて構えた方が銃の反動が……ん?分からないから直接身体を動かして教えてほしい?…………先輩をセクハラで訴えるつもりか?』

 

『聞いたぞ月雪ぃ!お前今月の訓練成績トップだったんだってな!そら!宴だ宴だ!今日はなんでも好きなもん食わせてやるぞぉ!』

 

『おう、聞いたぞ月雪。昨日の訓練、成績ドベだったんだってな。……ん?いや、別に叱ったりはしねえよ。足捻った仲間背負いながらランニングしてたんだろ?立派な事じゃないか。俺が認めてやるよ、お前は間違いなく一位だって……はっ!?な、なんで泣く!?失望されるかと思った!?ば、馬鹿!俺がお前を嫌うはずないだろ!?』

 

『あー悪い、明日は訓練見てやれないんだ……悪い、その日も無理だ。その次の日も……ああ、ちょいと先約がな。他の生徒からも訓練を見てほしいって頼まれてな、当分会えそうにないんだ。だから────あっ、行っちまった……いかにも機嫌悪そうだったなぁ』

 

『ギ、ギリセーフ!間に合った!……え?どうしてこんな所にって……そりゃお前、可愛い後輩の訓練見てやる為に決まってんだろ。前にも言ったけど暫く会えなくなっちまうからな、無理矢理にでも時間作らないと……ん?任務は大丈夫なのかって?んなもん速攻で終わらせてやったわ!それよりほら、お喋りしてる暇があるならさっさと弾込めろー?』

 

『おー休日に会うなんて奇遇だな月雪。ん?これ?貰い物のお稲荷さんだけど……そうだ、お前も食うか?俺の友人が作ったやつなんだけどさ、プロ顔負けで美味いぜ?ほれ、あーん』

 

『何?任務を手伝いたい?俺の力になりたいだと?……駄目だ、少なくとも〝今の〟お前じゃ戦力になれない。そうだな……もしお前が一つの小隊の隊長を務められるくらい強くなれたら、その時は存分に頼らせてもらおうかな』

 

『大丈夫だって、お前なら必ず隊長になれるさ。誰よりも強い……狐や猟犬なんかよりよっぽど強い兎にな。……え?なんで兎なのかって?やっべ……そりゃお前……えっと……あれよ……ほらあれ……あれだよあれ……………………月雪ってなんとなく兎っぽいだろ?髪は白くて綺麗だし、なんかふわふわしてそうだし』

 

『おーい月雪ー』

 

『でかしたぞ月雪!』

 

『月雪ー?』

 

『月雪ぃ!お前ほんっとうに最高だな!』

 

『月雪!』

 

『よお月雪』

 

『月雪ぃ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『悪いな月雪、俺はもう正義なんて信じられないんだ。だから俺の背中なんて追うな……お前は憧れる先輩を間違えたんだ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「先輩、さっきから視線が突き刺さってます」

 

「あ……すまん」

 

「……何か言いたい事でもあるんですか?」

 

「いや、まさかうちの台所でエプロン着た女の子の後ろ姿を見られる日が来るとは思ってなくてな……ちょっと天に感謝してた」

 

「は?」

 

 

先程からずっと無言で見つめてくる先輩に用件を尋ねてみると何やら訳の分からない事を言ってきました

 

そこまで盛大に感謝する程の事なのでしょうか、別にエプロンくらい頼まれれば幾らでも着てあげますけど

 

 

「お待たせしました、野菜炒めです」

 

「おお……久し振りの手料理だ……!カップ麺とかも悪くないけど、やっぱ気持ちが籠ってるかどうかって大事だよなぁ……」

 

「……自炊などはしないんですか?」

 

「昔はやってたんだけどな……ただ、こんな生活を続けている内に自分で作るのが面倒になってきてな……」

 

 

……でしょうね、今の先輩に自分の身の回りの世話をする余裕なんて無いでしょうし

 

人間一人で出来る事なんて高が知れています。凡人は勿論、一見完璧に見える〝超人〟でさえ生活の基盤を支えてくれる第三者の助けがなければ生きていく事は出来ません

 

だからこそ人は群れを成すのであり、我々SRTも例に漏れず〝小隊〟という形で個々の力を纏めるのです……まあ、これらは全て酒泉先輩からの受け売りですが

 

……どうしてその教えを説いてくれた先輩ご本人が一人で戦っているのでしょうか

 

 

「……先輩、やはり先輩もRABBIT小隊に入りませんか?」

 

「素晴らしい提案をしようってか?……前にも言ったけど、俺はどの隊にも入るつもりはないからな」

 

「っ……どうしてですか?一人でこんな生活を続けるより私達と行動を共にした方が────」

 

「いやお前らホームレスじゃん、生活の質の悪さならどっこいだろ」

 

「…………」

 

 

そういえばそうでした、何なら電気ガス水道が繋がっている屋根付きの部屋を持っている時点で先輩の方が安定している生活を送れていると言えるでしょう

 

……後は先輩本人が御自分の身を案じるような生活を心掛けてくれたら、今よりもっと快適な暮らしが出来る筈ですが

 

 

「先輩、前に先輩は〝人間が一人で出来る事なんて高が知れてる〟と教えてくれましたよね」

 

「露骨に話を逸らしたな」

 

「誰よりもそれを理解している先輩が何故一人で戦っているのでしょうか、先輩はたった一人で……何を成すつもりなんですか」

 

「……別に大した事は考えてないさ」

 

 

やはりはぐらかされましたね……露骨に話を誤魔化しているのは先輩の方も同じでしょうに

 

この人はいつもそうです、他人事には敏感なのに自分事になると〝大した話じゃない〟とすぐに口を閉ざしてしまう

 

その気も無いのに他者の心を簡単に絆してしまうくせして、自分だけどこか一線を引いた様に壁を作って、自分がどれだけ想われているかも知らずに────

 

 

「……先輩のそういうところ、嫌いです」

 

「おお、今日はよく月雪の〝嫌い〟が出てくるな」

 

「茶化さないでください、私は真剣に聞いているんです……先輩が一人で戦う理由を」

 

「じゃあこっちも真面目に答えるけど、本当に理由なんて────」

 

「先輩、私はそんなに頼りになりませんか?」

 

懲りずに話を逸らそうとする先輩の言葉を遮り、その瞳を真っ直ぐ見据える

 

……すっかり逃げ癖のついてしまった先輩でも、こうして正面から向き合えばきちんと応じてくれますから

 

 

「確かに先輩から見れば私なんか非力に感じられるかもしれません……でも、私だって少しずつ精進しています。先輩の戦闘サポートぐらいは十二分にこなせる筈です」

 

「見りゃ分かるよ、後輩の成長すら感じ取れないほど俺の眼は節穴じゃないからな」

 

「っ、それなら────」

 

「でも、駄目だ」

 

 

変わらず拒絶の一言、悩む素振りすら見せずに即答される

 

 

「……お前を巻き込む訳にはいかない」

 

「……巻き込む?」

 

 

しかし先程までの様に話を逸らそうとする事はなく、散々閉ざしてきたその口から漸く理由の一つを聞き出せました

 

 

「月雪、俺は自分の正義に反する事をやろうとしている。そんな俺と一緒に行動してるとお前までグルだと思われるかもしれないからな」

 

「正義に反するって……先輩は一体何を────」

 

「ヴァルキューレと連邦生徒会を襲撃する」

 

「……は?」

「いや、より具体的に言うならヴァルキューレ上層部の一部連中と連邦生徒会の防衛室を襲撃する」

「……具体的に言い直したところで動機が理解できません」

 

 

SRTを組み込もうとしているヴァルキューレ、SRTの責任問題を放って会長が逃げ出した連邦生徒会

 

双方に思わないところが無い訳でもありません……が、かと言ってそれが両組織を襲撃する理由になる程大きい訳でもありません

 

たったそれだけの理由で、あれだけ正義を熱く語っていた先輩が大きな罪を犯すなんて

 

 

「……俺と同じSRTの友達が防衛室長に飼われていてな、そいつらはSRTの復興を餌に様々な汚れ仕事を押し付けられているんだ」

 

「なっ───」

 

 

先輩の告げた事実は、そんな私の疑問をかき消すのに十分すぎた

 

 

「それ、は……本当、ですか……?」

 

「証拠は無い、データ実物問わず正当な手段で調べようとした物は片っ端から削除されたからな」

 

「では、何故防衛室長が汚職をしていると?お言葉ですが、今の先輩の発言だけを聞くと……」

 

「分かってる、端から見れば陰謀論者にしか見えないだろうよ」

 

「……はい」

 

 

私自身の目で確めた訳ではなく、私が証拠を持っている訳でもなく、ただ先輩の口から聞かせてもらっただけ

 

きっと私以外の誰でも同じ反応をするでしょう、ただの妄言にしか聞こえないと

 

 

「唯一の証拠は俺が直接奴等の口から聞いた言葉の数々だけだ、でも……それは証拠とは言えないだろ?」

 

「直接?……という事は、不知火防衛室長と話を?」

 

「ああ、俺は友人達を……それと不知火防衛室長を止める為に話し合いを求めた。もし説得に応じなかったとしても盗聴機でその時の会話を録音する事さえできれば、それをネタに脅してやる事ができると考えていたんだけどな……まあ、当然そんな上手く事が運ぶ訳がないよな」

 

「……説得出来なかったんですか?」

 

「ああ、しかも盗聴機の一つも持ち込めなかったよ。奴等の指定した会場に入る前に念入りに身体中を検査されたし、なんなら衣類や靴だって全部脱がされたさ」

 

 

これに関しては敵の警戒が厳重だった……というよりは当たり前の事でしょうね

 

後ろめたい事をしている者がそれを素直に白状する筈もありませんし、白状するにしても絶対に第三者に聞かれたり録音されたりしない環境下でしか言わないでしょうね

 

 

「……先程〝ヴァルキューレを襲撃する〟と言ったのは、ヴァルキューレにも防衛室長の息が掛かっているからですか?」

 

「ああ、奴等にタレこもうにも証拠云々以前の問題だ。むしろ防衛室長の悪事の証拠を消してきた側だしな」

 

「……だから強行手段に出る、と」

 

「そうだ。なんとかヴァルキューレと連邦生徒会のセキュリティを掻い潜り、そんでデータベースに証拠が残っていないか片っ端から調べ上げる。金庫かなんかに証拠の実物でも隠していてくれりゃ価千金なんだがな」

 

 

これが、先輩の言ってた私を巻き込めない理由

 

今まで貫いてきた〝正義〟という言葉に反し、法を破ってでも悪を正そうという覚悟ですか

 

……なんというか、まあ……要らぬ心配と言うのでしょうか……

 

 

「────つー訳でだ、俺はこれから犯罪者になるからお前もあんま関わらない方が「その程度の理由ならもっと早く教えてほしかったです」……は?」

 

「それなら私も協力します、不正の証拠を掴めればそれで全てが解決するんですよね?」

 

 

先ずは敵地の建物内の構造の把握、それから各部署毎の仕事内容等も把握しておきましょう

 

誰が何時何処でどんな仕事をするのか、外回りしている者がいるとして何時に帰ってくるのか……長い戦いになりそうですね

 

 

「いやいやいや……月雪、お前正気か?今の俺の話を信じるのか?」

 

「はい、それが何か?」

 

「……お前さっき俺の話を疑ってたろ、なのにどうして急に信じるつもりになった?」

 

「何故って……先輩が証拠を示してくれたからですが」

 

「……証拠?そんなの何も────」

 

「ありますよ、確かな証拠が」

 

 

 

私にとって大きな証拠が、絶対的な信頼が

 

 

 

「私が誰よりも尊敬し信じている先輩が、私にだけ打ち明けてくれた───それだけで先輩の話は信用するに値します」

 

「……さっき〝陰謀論者に見えるだろ〟って聞いた時頷いたろ」

 

「そうですね、もし今の話が先輩の膨張した想像だけで組み立てられた話でしたらその評価のままでした。でも、先輩は防衛室長達と〝話し合った〟と言いました。なら、私は先輩から聞いた〝直接防衛室長達と汚職の件を話し合った〟という証拠を信じます」

 

「……自分が何を言っているのか分かっているのか?お前は証拠の実物も用意できない男の〝言葉〟だけを信用しようとしているんだぞ?」

 

「はい、それが何か?」

 

「それがって……」

 

先輩が嘘をついている可能性など考える必要がありません、根拠も証拠も無くても構いません

 

誰かを傷付ける様な悪意ある嘘を酒泉先輩が吐く筈がない、それさえ理解しているのなら誰でも同じ選択を取るでしょう

 

……先輩、私は嬉しいんです。すっかり変わり果ててしまったかの様に見えた先輩が、私の瞳を焼き尽くしたあの日から何ら変わらず今も正義を貫こうとしている事が

 

正義では正せない悪を下す為に自ら悪に堕ちるという行為そのものが私には〝正義〟に見えます

 

 

「先輩、大丈夫ですよ先輩、私は分かってますから。先輩は正義感が強くて優しい人だって、ただ人より少し罪の意識を感じてしまいやすいだけで誰よりも誠実な人なんだって」

「月雪……信じてくれるのか……?」

 

「信じてほしいから打ち明けてくれたのでは?」

 

「……そう、かもな。付き合いの長いお前なら……ずっと俺を慕ってくれていたお前なら信じてくれるかもしれない、無意識にそう願っていたからお前にだけ打ち明けられたのかもな」

 

 

珍しく弱々しい笑みを浮かべる酒泉先輩────その口から出た言葉を聞いた瞬間、私の心は内から焼き尽くされてしまいそうな程の熱を帯びた

 

今までずっと憧れてきた先輩が、私を信じて……否、私だけを信じて、私だけに打ち明けてくれた

 

先輩に向けてきた信頼を、今度は先輩の方から向けてくれた

 

先輩を慕っている生徒達なんて私以外にも山程居るのに、その中で私だけを選んでくれた

 

その事実を認識した時、何故か下腹部が妙にむず痒くなってきた

 

 

「……なんて、俺の事が嫌いな今のお前に言ったところで迷惑なだけか」

 

「っ、そんな事はありません!」

 

「え?だってお前、前に〝先輩の様な人は嫌いです〟って」

 

「あれは……」

 

 

そうでした、あの時の私は正義の在り方に悩んでいた先輩の苦悩にも気づく事ができず、勝手に裏切られた気持ちになって咄嗟に感情を吐き出してしまいました

 

先輩からすれば自分は未だに嫌われたままだと、そう思われていても何ら不思議ではありません

 

 

「……私が嫌いだった先輩は簡単に信念を捨てるような……〝私が憧れた先輩〟を否定する先輩です。でも、実際には先輩は自分の信念が正しいのか悩みながらも、自分なりの正義を信じて戦い続けてきました」

 

「あの時は先輩の気持ちも考えず配慮に欠けた発言をしてしまい、大変申し訳ございませんでした。……こんな事を言うのは今更都合が良すぎるかもしれません、それでも言わせてください────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────私は、先輩の事が大好きです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「……悪い」

 

「はい?何の事ですか?」

 

「今日は飯を作ってもらったばかりか、その……色々と弱音を吐いちまって」

 

「いえ、気にしないでください。先輩には前々からお世話になっているお礼がしたいと思っていたので。それに……先輩の珍しい姿も見られましたから」

 

「で……できれば忘れてくれると助かる……」

 

「ご安心ください、他言はしませんので」

 

「忘れるとは言ってくれないんだな……」

 

 

当然です、そもそも〝忘れろ〟と言われて簡単に忘れられるほど人間の脳は単純ではありません

 

だからこれは仕方のない事です、決して私だけが先輩の意外な一面を知っていたいとかではありませんから、はい

 

 

「ふふっ……♪」

 

「先輩の情けない姿を見る事ができたのがそんなに嬉しいのか……?」

 

「そういう訳では……いえ、ある意味ではそうと言えますね」

 

「お前って結構容赦ないところあるよな……まあ、後輩ってのはちょっとぐらい毒を吐いてくる方が可愛いし────」

 

「それは誰を想像して言ってるんですか?」

 

「圧が強い顔が近い雰囲気が怖い」

 

 

……?何故先輩は若干怯えたような表情をしているのでしょうか、私はただ先輩が脳裏に誰を浮かべたのか尋ねただけなのに

 

「……そ、そうだ!他のメンバーは元気にしてるか!?暫く会えてないから心配してんだよ!」

 

「先輩、話を逸らそうとするのはこれで何度目ですか?」

 

「うぐっ……で、でも心配してるってのは本当だからな?全員可愛い後輩ではあるけど、やっぱ一癖も二癖もある奴ばっかだからなぁ」

 

「……その〝可愛い後輩〟という言葉はあまり多用されない方がよろしいかと」

 

「うぇ?なんで?」

 

 

本当に何も分かってなさそうな表情で首を傾げる先輩、おそらくこの人的に言葉以上の意味は籠められてはなさそうですが……でも、それで変な誤解を生んで先輩の人間関係に亀裂が入っても私は知りませんから

 

……まあ、私は〝可愛い後輩〟と言われても変な誤解はしませんが、なので幾らでも言ってもらって構いません

 

 

「はぁ……何でもありません、小隊全員元気です」

 

「なら良かった、風倉にはヒヤヒヤさせられる事が多かったし空井もなんやかんやで強気すぎるところがあるからな……霞沢にも〝眼〟を使った戦い方でまだ教えてやれてないところがあるし、その内様子でも見に行ってやりたいな」

 

「……」

 

「……ん?どうした月雪、そんなぼーっとして」

 

「……いえ」

 

 

そういえばいつも公園の外に出る時は物資調達や巡回の体で出ていましたが……先輩に会いに行ってる事はまだ誰にも伝えていませんでした

 

黙っていた理由?別に大した事ではありません。ただ、正義を捨ててしまった(結局誤解でしたが)今の先輩と会ってしまうと他の隊員がショックを受けてしまうと思ったので教えなかっただけです

 

会いに行く役目を他の人に譲りたくないとかそういった思惑はなく、この行為は決して私個人の感情とは何ら関係の無い……一体私は誰に言い訳しているのでしょうか

 

 

「あー……そうだ、月雪。お前に一つ伝えたい事があるんだった」

 

「伝えたい事?……なんでしょうか」

 

「さっきお前が協力するって言ってくれた件だけどな……あれ、やっぱ遠慮しとくよ。やっぱりお前を巻き込みたくないってのもあるけど、冷静に考えてお前に何かあると小隊のメンバーにまで迷惑掛かるしな」

 

「……先輩、まさかまだ懲りずに一人で────」

 

「その代わり!……て言えるのかは分からないけど、俺も一人で戦うのは止めるよ」

 

「……え?」

 

「昔っから事件起こしてばかりで迷惑掛けられっぱなしのコソ泥が知り合いに居てな、あいつなら巻き込んでも罪悪感湧かないし問題無いだろ……まあ、先ずは今の寝床を探すところから始めないといけないけどな」

 

 

代わり……私の……代わ、り?

 

 

「────反対です」

 

「おおう……ま、まあ、確かに犯罪者の手を借りるってのに抵抗があるのは分かるけどな。でも、あいつの力があれば襲撃なんて物騒な事をしなくてもこっそり侵入して機密情報を────」

 

「そうではなく、私が危惧しているのはその人の実力です。生半可な実力では先輩の計画についてこれないどころか、足手まといになる可能性も……」

 

「心配すんな、実力は確かだからな。潜入技術に関しては間違いなくプロ並……いや、それ以上だ」

 

 

……私以外の方の実力を……信頼して……

 

 

「……その方のお名前は?」

 

「……偽名の方でもいいか?」

 

「駄目です、本名を────いえ、もう全て教えてください」

 

「ぜ……全部?」

 

「はい」

 

 

私が居ない間に何があったのか、どうしてもっと早く私を頼ってくれなかったのか、私より先に先輩の苦悩に気づいていた人が居たのか

 

それと……

 

 

「まず、先輩の友人の方々の名前から教えてください」

 

「月雪」

 

「ああ、この言い方ではどれか分かりませんよね。では……服を脱がされた先輩の裸体を見たという御友人の名前から教えてください」

 

「月雪」

 

「次に先程仰った盗人の本名を、それと偽名も知っている限りでいいので全て教えてください」

 

「月雪、お前目のハイライトどこに置いてきた?」

 

「先輩、知っていますか?種類にもよりますが兎は人に懐きやすい生き物だと言われているんですよ」

 

「急にどうした」

 

 

一度懐けば飼い主の跡を追ったり、意味もなく足の周りをくるくる回ったり、鼻先で触れてきたり、頭を寄せてきたり……でも、そんな兎でも飼い主が他の生き物にかまけてばかりだとやきもちを焼いて本気で噛みついてくる事があるそうです

 

でも、その痛みは飼い主を盗られまいとする兎の独占欲によるもの。そう思えば兎の噛みつきも可愛らしく思えてきませんか?

 

 

「────ですが、私はウサギではないので」

 

「待てお前何で口を開けている噛みつくつもりかいや本当に待ってやっぱお前俺の事嫌いなんじゃちょちょちょ力強────」

 

 

 

この胸の中で渦巻いているドロドロした何かは、一度噛みついた程度では晴らせませんからね───先輩

 

 

 






補足・クソボケの内心

(やっべー本編始まる前にFOX止めたかったけど失敗したー、こうなったらせめて二章始まってあいつらがヤバい爆弾抱えさせられる前に力尽くで……いや、それかちょっと時期が早すぎるけどシャーレを頼って────いやいやいや、それでこっちの件に気を取られてエデン条約やらキリエやらに手が回らなくなる方がもっとヤバいだろ、やっぱ先生には原作通り動いてもらってこっちの事はこっちで……)
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