クソボケのことが大大大好きな生徒達   作:あば茶

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クソボケのことが大大大好きな教師(女先生)

 

 

 

生徒が教師に告白する、それは恋愛漫画等でちょくちょく見掛ける展開

 

そんなフィクションの様な出来事も意外と現実世界でもニュース(悪印象的な意味の方で)になる程度には起きているらしく、実際に私自身生徒に告白された事は何度かあったしそれ以外にも明らかに好意を向けられているって感じる状況に陥ったことも何度かあった

 

でも、私はその度に〝私は先生だから〟って理由で生徒達の想いをやんわりと受け流してきた

 

彼女達が求めてるのはそんな答えなんかじゃないって事は私だって理解していた、教師と生徒だからって理由じゃなく一人の人間として見てほしいって気持ちも

 

それでも私にとっては皆〝生徒〟だから告白を受け入れる訳にはいかなかった、勇気を出してくれた子達に対してこの対応をするとは我ながら最低だと思う……まあ、卒業した後でまた告白するって言ってくれた子もいるけど、というよりも大体がそんな感じの子だったけど

 

ともかく、今までずっと自分の立場を理由にして告白を断ってきたしこれからもずっと同じ対応をしていくんだなーって自分でも思ってた

 

 

「せんせー、こっちの書類片付きましたよー」

 

「……ありがと」

 

 

彼と出会うまでは

 

誰か教えて下さい、今までずっと〝先生だから〟って理由で生徒の告白を流してきた女がその生徒に惚れてしまった場合はどうすればいいですか?

 

此方から告白する?他の子の告白を拒絶しておきながら今更?それは最低というレベルを軽く越えているだろう

 

「じゃあ次取り掛かりますねー」

 

「うん、お願い」

 

 

私と彼の……酒泉の会話はかなり淡白なものだ、というか私が敢えてそうしている

 

下手に関係を深めるとより想いが強くなりそうで、それが怖くて必死に平静を装っている

 

私は生徒とは仲良くしたいと思ってる人間だけど、酒泉にだけそんな対応をしてるせいで〝酒泉君とは仲がよろしくないんですか?〟と聞かれることも度々

 

そんなだから酒泉も下手に私の方に踏み込んで来ようとはせず、私自身それも助かるから下手に話し掛けるような真似はしないでいる

 

……エデン条約の件で庇われ、アトラ・ハシースでの戦いも協力してくれたというのになんて冷たい女なのだろう、私は

 

 

「……」

 

「……」

 

 

互いに無言のまま仕事を進める、部屋にはキーボードで何かを打ち込む音とボールペンで何かを書く音だけが響く

 

酒泉が当番になった日は基本的にずっとこんな感じだ、他の生徒が当番の時はここまで静かじゃないのに

 

 

「…………あ」

 

 

……あれ?今更だけど私って酒泉に〝俺のこと嫌いなんだろうなぁ……〟って思われてるんじゃ?

 

他の生徒と比べて対応が冷たくなってる事は酒泉だって感じてるだろうし、なんなら実際にそんな場面も何度かその身で味わってるだろうからそう思われてもおかしくないよね

 

例えば当番が二人いる日は他の子との雑談にだけ集中しちゃって自分から酒泉には声を掛けようとしなかったり、もう一人の当番の子が帰った後は極力平静を保つ為に表情を急にスンとさせたり

 

……これ、一部の生徒だけを蔑ろにしてる最低教師なのでは?

 

 

「どうかしました?もしかしてさっきの書類に不備でも……」

 

「気にしないで、酒泉には関係のないことだから」

 

「そうですか、了解しました」

 

 

ほら、また冷たくした

 

これだと自分だけ嫌われてると誤解するの無理はない、本当は全然そんな事ないのに

 

むしろめっちゃ好きだし今すぐにでもプライベートに踏み込みまくりたいと思ってるしなんならもしお付き合いしたらどんなデートになるんだろうと想像した事だって……デート……かぁ……

 

 

「いや無理でしょ」

 

「はい?何がです?」

 

「あ……い、いや……何でもないよ、うん」

 

「はぁ……そすか」

 

 

また声を溢してしまった……けど実際に無理なんだからしょうがない

 

ずっと距離を取り続けていたせいか、自分の脳内ですら酒泉と付き合った時の想像が出来なくなっている

 

……いや、そもそも生徒とそういう関係になる妄想をする事自体がおかしいんだけどね。

 

 

(……だいぶ色ボケてるなぁ)

 

 

生徒を相手にこんな事ばかり考えてしまっている自分のピンク色の頭に対して心の中で溜め息を吐く

 

折角酒泉が当番として仕事を手伝いにきてくれているというのに、肝心の私は仕事だけに集中できず一息吐く合間合間に別のデスクに座っている酒泉の横顔を何度もチラチラと見つめてしまっている

 

前途の理由から面と向かっての会話はできず、仕事の話をしてる時ですら目を合わせてるフリをして僅かに視線をずらす事しかできない

 

これが生徒に対する教職者の態度だろうか

 

 

「あの……先生、随分疲れてる様に見えますけど大丈夫ですか?」

 

「そう?気のせいじゃない?」

 

「それならいいんですけど……」

 

 

乱心している事を悟られないように平静を保ちながら返事をしてみるが、眼の良い彼の事だし私が取り繕っている事などお見通しだろう

 

そんな彼は心配そうな眼を此方に向けたまま椅子から立ち上がると、鞄の中からチケットの様な物を二枚取り出して私のデスクまで近づいてきた

 

デスクの上に置かれる二枚のチケット、そこに書かれているのは

 

 

「温泉無料券?」

 

「この前火宮さんと温泉に行ったんですけどその時に福引きやってましてね、三等賞のきなこチョコ大福目当てで引かせてもらったんですよ……でもそしたら一等賞が出ちゃいまして」

 

「三等賞目当てだったんだ……」

 

 

いやまあ、糖分狂の酒泉なら当たりの温泉無料券より三等賞のきなこチョコの方が嬉しいのは理解できるけど

 

……ていうかチナツと温泉行ってたんだ。その時に当てたやつ私に渡しちゃって大丈夫?チナツ怒ったりしない?

 

 

「俺的にはご当地名物きなこチョコの方が欲しかったんですけど……でもそっちは三等賞当てた火宮さんが無料券二枚と交換してくれたんで結果オーライっすね」

 

「そっか、よかったね……ん?二枚渡したの?それじゃ元々無料券は四枚あったの?」

 

「はい、俺も全部渡そうとしたんすけど……でも〝二枚だけでいいです〟って」

 

「……そうなんだ」

 

 

多分、二枚だけ貰った理由は次誘う時に〝あと二人誘いませんか?〟って言われたくないからだろうな、それに酒泉の性格的に無料券が四枚あると自分だけ遠慮してイオリとアコとヒナに譲るだろうし

 

私がチナツの立場でも同じ選択をするしね……でも、私の場合は二人で温泉に行くところを誰かに見られると変な誤解されちゃうかもしれないし、教師としてこれは受けとれな───

 

 

「それあげるんで時間が空いた時に羽伸ばしに行ってみては?一人で二回楽しむか一番仲の良い生徒と二人で行くかは任せますよ」

 

「───うん、ありがとう。そうさせてもらうよ」

 

 

……セーフ、勝手に早とちりしてまた冷たい対応をするところだった

 

いや、したくて冷たくしてる訳じゃないんだよ?ただそんな風に距離感を保ってたらいつの間にか戻れなくなっちゃっただけだからね?何度も言うけど本当に嫌ってる訳じゃないよ?

 

 

「……酒泉は誘いたい相手とかいなかったの?」

 

 

自分の勘違いを誤魔化すように話題を酒泉の方へスライドさせると、酒泉は困ったように眉を下げた

 

 

「あー……俺は近いうちに旅館行く予定あるんでその時に温泉入ればいいかなって」

 

「旅館?……もしかして旅行でもするの?それか風紀委員の仕事で出張とか」

 

「まあ、ちょっとプライベートで……旅行とは違いますけど」

 

「ふーん……風紀委員の誰かと行くの?それともクラスの友達?」

 

 

何かを言い淀む酒泉、生徒のプライベートを執拗に探るなど教師のやるべき事ではないというのにその様子が気になってつい深掘りしてしまった

 

しかし酒泉は私のその行動をうざがる事もなく、質問に答えようと素直に口を開いてくれた

 

 

「……その、二週間程前に会ったばかりの人と」

 

「にしゅっ……そんな最近会ったばかりの人と旅行に?えっと……そ、相当仲良くなったんだね」

 

 

とんでもないスピードで距離を縮めたなと驚きつつ〝酒泉の女誑しっぷりならそれも有り得なくはない〟とほんの少し納得してしまった

 

すると酒泉はどこか面倒そうに溜め息を吐き、自分のデスクに戻りながら語りだした

 

 

「別に遊びに行く訳じゃないっすよ……ちょっとプライベートでゲヘナの不良に絡まれてる女の子を助けましてね、その子が結構有名な会社の社長の娘さんだったんですよ」

 

「おお、なんという偶然……」

 

「んでまあ、そのまま娘さん一人で帰らせるのも危険だなと思ってとりあえず電話でその子のお父さんに迎えに来てもらったんですよ。そしたら〝礼がしたい〟って事で家にお招きされまして……俺も最初は断ってたんすけど、何度も断ってるうちにお父さんが頭を下げてきちゃいまして」

 

「あー……有名企業の社長さんに頭を下げられちゃ無下にもできないよねぇ」

 

「はい、なんでここは素直にお邪魔する事にしました」

 

 

……あ、もしかして話の流れ的にあれかな?娘さんを助けてくれてお礼に旅館に連れてってもらえる事になったとか?

 

 

「家に着いたら早速シェフっぽい人がなんかめっちゃ美味しそうな食事を用意し始めて、その間父娘さんにどんな組織に属しているのかとか普段はどんな仕事をしているのかとか何が好きなのかとか色々と訊かれまして……正直に答えてたらなんか二人に気に入られちゃいました」

 

 

なるほど、それでその後旅館に誘われたと……それにしても流石は酒泉だねぇ、女の子の方だけじゃなくてお父さんにまで気に入られるなんて

 

まあ、日頃からの働きっぷりを教えたら気に入られてもおかしくは────

 

 

「そんでまあ……なんかトントン拍子で話が進んで気づけば娘さんとお見合いする事になってました、はい」

 

「───────────────、へーそうなんだ」

 

 




次回!酒の勢いでぶちまけた本音!
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