クソボケのことが大大大好きな生徒達   作:あば茶

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濁り酒(女先生その3)

 

 

酒と共に嫉妬を飲み込み、愚痴と共に本心を吐き出したあの日から五日後

 

あれだけ酒泉への想いを昂らせていたというのに、私は近いうちに社長令嬢さんとお見合いをするであろう酒泉に対して何の行動も起こせずにいた

 

……とは言っても、私に出来る事なんて何も無いけど

 

お見合い相手とお付き合いするのか、とりあえずお友達からスタートするのか、それともバッサリと断るのか

 

それを選択するのは酒泉だし、その選択を強制する権利だって私は当然持ち合わせちゃいない

 

半ば諦めてしまっている私の心、しかし未だ未練がましく酒泉を見つめる私の目、明らかな挙動不審だというのに酒泉は私に何も聞いてこない

 

……ていうか、むしろ酒泉の方が挙動不審だった

 

 

「……あ」

 

 

私と目が合った瞬間、逃げるように視線を逸らす酒泉

 

〝あ〟ってなにさ〝あ〟って、どうしてそんな急に避けるように……

 

 

「あ」

 

 

心当たりが浮かんできた事で酒泉と全く同じ一文字が零れてしまった

 

……酒泉が私を避けるようになった原因って、もしかして私が今まで酒泉を避けてきたからなのでは?

 

どうしよう、もしそれが理由なら私から〝なんで避けるの?〟って聞くとどの面案件に……そ、そうだ!ここは適当に話題を振って会話中に然り気無く訊いてみよう!

 

 

「ねえ酒泉」

 

「……なんすか?」

 

「酒泉って特撮好きって聞いたんだけどほんと?」

 

「はい」

 

「そっか」

 

「……」

 

「……」

 

 

 

 

 

 

~終~

 

 

 

 

 

……いや会話止まるの早いって

 

そういえばそうだ、私自分から酒泉に話しかけた事あまりないんだった

 

会話が膨らまないとか話の種が育たないとかの問題ではない、そもそも種を植えた事も膨らまそうと息を吹き込んだことすらないレベルだった

 

 

「……先生はロボアニメもいける口って聞きましたけど、好きな作品とかありますか?」

 

「私?私は……鬱血のオルフェンズかな」

 

「あー分かります、メカデザインとか最高ですよね」

 

「ねー」

 

「……」

 

「……」

 

 

 

 

 

~終~

 

 

 

 

 

だから早いって、せっかく酒泉の方から話題振ってくれたのにすぐ終わらせちゃ駄目じゃん

 

他の生徒とはもっと長く会話を続けられるのに対酒泉になった時だけコミュニケーション能力がクソザコになってしまうなんて

 

もしかして私って恋愛よわよわ先生なんじゃ……いやいやいや落ち着け私!私は大人!大人のお姉さん!私には酒泉と違って豊富な人生経験がある!

 

……その中に恋愛経験は一つも無いけど

 

 

「うー……」

 

 

そのうーうー言うのをやめなさい!って声が聞こえた様な気がするけど呻くぐらいは許してほしい、ていうか呻かないとやってられない

 

いや、こんな状況を作り出したのは私だけど、その状況を悪化したのも間違いなく私が原因だけど

 

私が酒泉に恋してなければ普通に接する事が出来たのに……そんな事を考えていたせいか〝そもそもこれは本当に恋心なのか?〟という今更すぎる疑問まで浮かんできてしまう

 

……そうだ、もしかしたら私のこの気持ちって恋とは限らないんじゃない?酒泉には何度も助けられてきたし庇われた事だってあるから、その罪悪感とかでちょっと過保護になりすぎてるだけで……

 

なんだ、それが原因だったんだ。自分の気持ちを誤魔化す様に、自分の気持ちから逃げ出す様に早計に決めつけると少しだけ酒泉と話す勇気が持てた気がした

 

絶対にあり得ないと、私は先生だから生徒をそういう目で見る事は無いと自分に言い聞かせる様に心の中で繰り返し囁きながら口を開いた

 

 

「そういえばさ、お見合いの話って今はどうなってるの?」

 

 

そうすると自分でも驚くほど冷静に会話を切り出す事が出来た

 

話しかける前に覚悟を決める必要も、繰り出す話題に悩む必要もなく、ごく自然な流れでスラリと言葉が出てきた

 

 

「とりあえず明日相手の方々と会って、その後は……流れ次第ですかね」

 

「え?明日?結構早いね」

 

私がずるずると未練がましく想いを引き摺っている間にお見合い相手の娘はもうそこまで漕ぎ着けていたのかと思うとより一層自分が情けなく感じてしまう

 

いやいや、何を情けなく思う必要があるのだろう。さっき自分で〝これは恋じゃない〟と決定したというのに

 

……やっぱり駄目だ、どれだけ取り繕おうとしたところで一度気づいてしまった自分の感情からは逃れられないみたいだ

 

 

「もし、さ。相手の娘にその場で告白されたりしたらやっぱり受けちゃうの?」

 

「それはまだ何とも……まだお互いの事とかもあまり分かってないですし、断る可能性だって全然ありますよ」

 

 

〝受けちゃうの?〟なんていう明らかに不安が入り交じった様な言い方をしてしまったが、幸いにも酒泉がそれに気付く事はなかった

 

それからバレない様にほっと一息吐いてから、如何にも気にしてなさそうな余裕を取り繕って言葉を続けた

 

 

「なんか、勿体ないね」

 

「────え?」

 

 

相手の子って結構良い所の娘さんらしいし、将来を見据えて前向きに考えてみても全然問題ないと思う

 

そりゃあ、物語みたいに初恋の人と両思いになれてーっていうのが一番の理想なんだろうけどさ?でもここは現実な訳だし、相手の立場を鑑みて人生の将来図を組み立てるっていうのも私は大事だと思う(ていうか大人の婚活パーティーなんてそんなのばっかだし)

 

……なんていう考えからつい溢れてしまった一言、余計な塩を送ったかもしれないと自覚する前に酒泉が俯きながら訊ねてきた

 

 

「先生は……俺がその子と付き合ってもいいんですか?」

 

「いいと思うよ?最終的に決めるのは酒泉だし、私に言える事は殆ど無いけど」

 

 

いいんですか、とは

 

何の事だろうかと思考を巡らせた結果、〝もしかして私の気持ちに感付いているのでは?〟という可能性が頭を過る

 

ほんのりと顔が熱くなっていくと同時に、それを誤魔化す為につい咄嗟に強がってしまった

 

 

「────、」

 

 

その直後、私は酒泉の眼差しが揺れるのを感じた

 

困惑している様な、絶望した様な、悲しんでいる様な、失望した様な、怒っている様な

 

様々な感情がぐちゃぐちゃに混ざりあった様な瞳が私を真っ直ぐに捉えていた……筈だった

 

でもその瞳は私が一度瞬きをしただけでいつも通りに戻っており、この一瞬だけ視た光景は私の幻だったのかと思わずにはいられなかった

 

 

「しゅせ────」

 

「そうですよね!やっぱ自分の人生に関わる選択は自分でしないといけないですよね!」

 

 

私が酒泉の名前を呼ぶより先に、酒泉が満面の笑みで応える

 

その表情は一見晴れやかで悩み事など何も感じさせない程に清々しく見える

 

でも、私はどうにもその笑顔に違和感を覚えてしまった。いつも彼の横顔を見ている……横顔を見る事しかできない私には、その笑顔が無理をしている様に見えた

 

 

「俺、お見合いの話前向きに考えてみます!」

 

「そ、そう?が、頑張ってね、うん」

 

 

妙に明るい酒泉、この日ずっと同じ調子だった彼に自ら心の壁を作っていた私が踏み込める筈もなく

 

仕事を進めて、途中で休憩して、仕事を再開して、最後にお礼を言ってそのまま解散、そんな普段通りの流れが終わったのは17時頃だった

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

《むにゃむにゃ……カステラには……ミルク……》

 

《アロナ先輩、起きてください。先生が来ましたよ》

 

《……はっ!?先生!カステラは!?ミルクは!?》

 

「先生はカステラじゃないしミルクだってまだ出ません」

 

 

涎を口の端から垂らしながら寝ぼけ眼で訊ねてくるアロナにそう返すと、その幼い手で目の周りをくしくしと擦り始めた

 

 

《先生、今日はどの様なご用件で?》

 

「ほら、ちょっと前に柴大将に迷惑掛けちゃったでしょ?今日はその謝罪に行こうと思って……それで何か良い手土産とかないかなーってずっと考えてて」

 

《柴大将さんの所に……それは五日程前の、先生が見るも無惨な姿になってしまった日の事ですか?》

 

「うっ……その事についてはあまり触れないでいただけると……」

 

 

プラナの言葉に心臓を刺される、ぐうの音も出ないとは正にこの事か

 

あの日の私は大人としてどころか人間としてあるまじき醜態を晒してしまった、その一番の被害者である柴大将に誠意を見せる為ならば大人の現金なんぞ何枚でも取り出してみせよう

 

 

《検索してみましたが、この辺りで一番平均評価の高いお土産屋さんは南方3.2Km程先にある洋菓子店〝ぼっかじゃるだっく〟でした》

 

《どうやら土産用に包装作業までしてくれるそうですよ!》

 

「洋菓子か……うん、そこにするよ」

 

 

アロナが表示してくれたメニュー表を見て〝丁度良い値段〟である事を確認した私はその店に行く事を決意した

 

〝丁度良い値段〟というのは〝安い〟という意味ではなくむしろその反対、程よく〝高い〟という事だ

 

相手が萎縮してしまわない程度に高く、失礼に当たらない程度に安く、こういうのは気持ちよく受け取って貰えるくらいの値段を攻めるのが大人のやり方だ

 

……というのは建前で、本当は先々週ユウカに内緒で購入したDX超合金カイテンロボZERO(税込み38200円)のせいでお財布がカツカツだからだったりする

 

本当にすみません柴大将、お給料が入ったらその時こそ沢山詫びの品を買ってきますので今回は何卒……

 

 

《賛成です!そこなら酒泉さん好みのスイーツも沢山置かれてそうですね!》

 

 

……ん?酒泉?

 

 

「あ、ああっ、そうだよね。今まで何度も助けてもらったわけだし、お礼とお詫びを込めて何か送らないとね」

 

《そうじゃないですよ!この前お世話になった件です!》

 

「え?この前?」

 

《酔っ払ってしまった先生が酒泉さんに介抱されながらシャーレに来たあの日の事です》

 

「……私が?酒泉に?」

 

《えぇ!?先生、まさか覚えてないんですか!?》

 

 

酔っ払ったあの日って……柴大将にダル絡みしたのと同じ日だよね?私、あの日は一人で帰った筈だけど……

 

うん、一旦行動を整理してみよう。まず柴関ラーメンに行ったのは明確に覚えてるでしょ?その後でろんでろんに酔って酒泉に対するとんでもない願望とか下ネタっぽいのを柴大将にぶちまけたのも忘れたいけど覚えちゃってるでしょ?

 

それでその後は……フラフラになった歩いてたら……えーと……うーん……あ、そうだ!確か酒泉の幻覚が見えてきたんだっけ?

 

 

「…………えっ!?あれ幻覚じゃなかったの!?」

 

《驚愕、まさか幻だと思っていたのですか?》

 

《酒泉さん、先生を送り届けた後は私達を起動して状況説明までしてくれたんですよ!?……なんで私達を起動できるのかは未だに分かりませんけど!》

 

「そ、そうだったんだ……でも、それならそうと言ってくれたらよかったのに」

 

《だって私達があの日の話をしようとしたら先生ってば〝黒歴史だから触れないで〟ってすぐ耳を塞いじゃったじゃないですかー!》

 

《責任転嫁は良くないです》

 

「うぐぅ!?」

 

 

幼い子二人からの軽蔑の視線が私を貫く、なにこれすっごく痛い

 

いや、間違いなく悪いのは私なんだけどさ……まさか一部記憶が混濁してしまうくらい泥酔しちゃうなんて

 

あんなに飲んだ事が無いから自分が悪酔いした時の酷さなんて初めて知ったよ、今までは休日前の仕事終わりに飲むくらいだったからさ

 

よし、決めた、酒泉の所にもすぐ謝りにいこう。迷惑を掛けた事もだけど、勝手に幻覚扱いした事も────

 

 

「……ん?」

 

 

待てよ……あの酒泉が本物という事は……?

 

 

「ねえアロナ、昨日の映像記録とかは残ってたりする?」

 

《残ってませんよ!先生が〝ここからは大人の時間〟とか言ってシッテムの電源切っちゃったんですから!》

 

「ご、ごめんなさい……」

 

 

頬を膨らませながら怒るアロナに頭を下げる、大人の姿か?これが……

 

酔った姿を生徒に間近で見られたくないからと電源を落としてしまったのが仇になった、仕方ないので朧気な記憶を頼りに昨日酒泉の幻(本物)に仕出かしてしまった事を思い出す

 

えーっと?確かシャドーボクシングしてたら幻が浮かんできて、多分バキが戦ってたエアカマキリ的な奴だろうなーって思いながら抱きついて……その後は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────だぁいすき────

 

 

 

 

 

「…………」

 

《先生!これからはお酒の飲み過ぎは駄目ですからね!?》

 

《酒は飲んでも飲まれるな、です》

 

「…………はは」

 

《……先生?どうかされましたか?》

 

「はは、ははは」

 

《せ、先生!?まさかお酒を求めすぎて禁断症状が!?》

 

「あは、あはははは」

 

そっかそっか、そっかー

 

私、あんな事をした癖に、あんな事を言った癖に

 

酒泉に対して〝私に言える事は殆ど無い〟なんて返しちゃったんだー

 

 

「ちょっと腹切ってくるね」

 

《先生!?》

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

俺がこの世界に生まれた理由は推しを幸せにする為だと、本気でそう信じていたし今だってそう思っている

 

では推しにとっての〝幸せ〟とは何か、それを考えた時に浮かんだのが〝先生〟の存在だった

 

先生、つまりは前世で言うところの〝ブルーアーカイブの主人公〟

 

原作でも俺の推しは先生に甘えていたし、先生と居る時が誰よりも楽しそうに見えたからそれこそが推しにとっての……空崎ヒナという少女にとっての幸せだと、そう確信した(これは後に空崎さん本人から〝私の幸せを勝手に決めないで〟と否定されたが)

 

だから俺は先生がキヴォトスに来たら空崎さんと先生の絆を深めさせようと自分で勝手に決意した

 

だが、それを実行するにしてもキヴォトスには俺の計画を阻む事件が多すぎた。原作のメインストーリーの数だけ事件が起きると考えると当たり前の事ではあるのだが

 

その事件の中には先生の命に関わる様な危険な事件まで存在するので、そういった事件が発生した時は偶然を装って協力したりもした

 

それ以外だとシャーレの当番中に発生した問題事の解決を手伝ったりとまあ……他の生徒でもやってる様な事を真似してただけだ

 

そんな風に原作の展開を先読みして先生を守ろうとすれば先生と関わる機会が増え、そうなれば必然的に先生の活躍とかを目にする機会も増えていく訳で

 

その度に俺の中で少しずつ先生への〝憧れ〟やら〝尊敬〟といった念が大きくなっていった……まあ、その先生は俺のことを避けてるっぽかったしこっちも態度には出さないようにしていたけど

 

俺の事が苦手なのか、単純に嫌いなのか、それとも異性の距離感なんてこんなもんなのか、理由はずっと謎のまま

 

唯一他の生徒達と同じように接してもらえなかったのがちょっとだけ寂しかったが、そこは〝人生二週目なんだから我慢しとけ〟と大人に成りきれない自分を諭して我慢し続けてきた

 

 

 

 

 

────だぁいすき────

 

 

 

 

だからこそ、あの一夜の出来事が鮮明に頭に焼き付いた

 

あの日、空崎さんに内緒で残業して仕事を終わらせた俺は帰り道で偶然先生と出会った

 

フラフラな足取りに赤く染まった顔、アルコールの臭いが届かない距離からでも分かる酔っ払い具合

 

心配になった俺は先生に声を掛けようとしたが、それより先に気の抜けた様な笑みを向けて近寄ってきた先生はその両手で俺を抱き寄せ────突然キスをしてきた

 

誰かに見られたらマズイとか、酒臭いとか、そんな言葉が浮かんでくる余裕すら無い俺に対して先生は更にド直球な告白で追い討ちを掛けてきた

 

無言で佇む俺に寄り掛かる先生の火照った身体、真っ白になった頭では先生が寝落ちした事に気付くのに一分も掛かってしまった

 

漸く気を取り戻した俺は緊張で震える身体で先生を背負い、道中〝すき〟だの〝あいしてる〟だの心臓に悪い言葉を受けながらシャーレへと向かった

 

シャーレに到着した後は一旦先生を置いてからコンビニへ向かい、二日酔い用に水や味噌汁を購入して再びシャーレに戻り、最後にシッテムの箱を起動してアロナさん達に事情を説明して帰宅

 

家についた後はベッドで毛布に包まれ、ひたすら唸り声をあげながら告白された時の事を思い返していた

 

先生は俺のことが好きなのか、ただ酔っ払った勢いであんな事をしただけなのか、酔うとキス魔になるだけか、他の生徒が相手でも同じ事をしたのか

 

先生があんな行動をした理由だけなら幾つか候補が浮かんだ、なのに────自分の感情だけは日が変わるまで考え続けても何も分からなかった

 

この胸の高鳴りは俺が先生に〝そういう感情〟を持っているからなのか、それとも憧れや尊敬といった感情の延長線上に過ぎないのか、別に先生以外の異性とキスしても全く同じ反応をするのか

 

解の無い問に頭を悩ませ、俺が平静を装っている事に余裕で気づいている風紀委員の皆に心配されながら毎日を過ごしていると、ついにやって来てしまった次のシャーレ当番の日

 

この日、俺は先生にあの行動の真意を問い質すつもりだった

 

先生は俺をどう思っているのか、本当に好きならどうして避けてきたのか、全てをここで明かすつもりだった…………が、会ってすぐそんな事を訊ける勇気があるのなら五日も間を空けない訳でして

 

先生の方も気まずそうにしているしあの日の夜の事は覚えているのだろう、ならば互いにもう少し落ち着いてから話をしようとそう思っていた

 

それまで此方から適当に話題を振って場の空気を少しでも和ませておこうか、そう考えていたのは向こうも同じだったみたいで先生は唐突に俺の趣味を訊ねてきた

 

普段なら大好きな特撮の話になると幾らでも早口で語れる……筈だが、この日ばかりは上手く言葉を返す事ができなかった

 

話し合う為にはこのギクシャクした空気をどうにかする必要がある、ギクシャクした空気をどうにかする為に談笑しようとする、話し合う為にはギクシャクしたこの空気を……以下無限ループ

 

そんな負の連鎖に陥りそうになったところで、それを先に突き破ってくれたのは先生だった

 

先生は先程よりは平静を保った状態で俺に話題を……〝お見合い〟の話を出してきた

 

 

『もし、さ。相手の娘にその場で告白されたりしたらやっぱり受けちゃうの?』

 

 

正直〝あんな告白をしてきた後だから気になってんのかな〟と思わなかった訳ではない

 

もし告白を受け入れると答えたら、もし告白を断ると答えたら、この人は悲しんでしまうだろうか、この人は喜ぶだろうかと

 

先の事なんてまだまだ分からない、だから俺は〝断る可能性だってある〟と曖昧な返事をした

 

 

『なんか、勿体ないね』

 

 

一瞬、思考が飛んだ

 

勿体ない?それはつまり、俺がその子の告白を受け入れても別に全然問題ないという事なのだろうか

 

こっちが散々悩んでいたというのに、アンタは俺の気も知らないで

 

恋かどうかは分からないが、少なくとも急に口付けされても嫌な思いにはならないくらい尊敬しているアンタが、あんな事を俺に言うから

 

俺は、おれは、ずっと考えて

 

 

『先生は……俺がその子と付き合ってもいいんですか?』

 

『いいと思うよ?最終的に決めるのは酒泉だし、私に言える事は殆ど無いけど』

 

 

────ああ、なんだ……別にこの人にとっては大した問題ではないのか

 

酔った時の出来事など覚えていないのか、もしくは無かった事にしたいくらい後悔しているのか

 

どちらにせよその程度の想いならば俺が真剣に悩んだ時間など無駄だったと、スーっと頭が冷えていくと同時に心の中から重荷が失くなったかの様にすんなりと言葉が出てきた

 

 

『俺、お見合いの話前向きに考えてみます!』

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

仕出かした事の大きさに今更気づいた彼女はその罪悪感から顔を合わす事が出来ず

 

一方で〝未練が晴れた〟と清々しい顔をした彼は心の隅に残った僅かな未練など見えぬフリをし

 

言葉を交わす事なく、お見合い当日へ────

 

 

 

 

 

 

 




次回!大大大好き!

女先生「しゅせええええええええん!!!貴方が欲しいいいいい!!!」

ゲヘナの有名生徒が有名企業の令嬢とお見合いした事を聞き付けたシノン(LIVE中)「えっ」

女先生「えっ」

先生love勢「「「ん、酒泉を襲う(殺意)」」」

酒泉love勢「「「ん、酒泉を襲う(発情)」」」
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