クソボケのことが大大大好きな生徒達   作:あば茶

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間違えて一回アリ潰の方に投稿しちゃいました、ごめんなサイフレームロードΩ


迫真告白部!キヴォトス中に晒された先生(女先生その4)

 

 

 

ゴーン、ゴーン

 

青空の下、鐘の音と共に新郎新婦が階段を降りてくる

 

新郎の彼を慕っていた多くの生徒達が涙を流しながらも、これからの二人の道に幸多からん事をと笑顔で迎える

 

そんな中、私だけはその生徒達には混ざらずに数歩引いた場所から幸せそうに笑う新郎新婦を見つめていた

 

近くで祝おうとも話したいとも思わない、だって私は────皆みたいに自分の感情を押し殺してまで好きな人の幸せを祈れるほど、良い人じゃないから

初恋の相手が自分以外の誰かと結ばれたのを素直に喜べる人なんて限られている、私はその中には含まれていない

 

あの二人に近づいてしまうときっと私は未練がましい泣き言を抑えきれなくなってしまう、只でさえ生徒の幸せを素直に祝福できない最低教師だというのに、それ以下の存在に成り下がってしまう

 

だから、こんな日ぐらいは、この日が終わるまでは、貴方が尊敬してくれた大人らしくいさせてほしいな

 

 

「あ!先生!」

 

「───っ」

 

 

そう、思っていた筈なのに

 

私を見つけた途端、此方の気など露知らず満面の笑みで酒泉が駆け寄ってくる

 

 

「先生も来てくれたんですね!連絡がつかなかった時はどうしようかと……」

 

「あ、あはは……ごめんね?ちょっと仕事が忙しくてさ……」

 

「そうだったんですね……そんな中お越しくださってありがとうございます!」

 

 

嘘、そんなものは建前

 

本当は貴方が私以外と幸せになるところを見たくなかったから、それと嫉妬と後悔でぐちゃぐちゃになった顔を見られたくなかったから

 

だからそんなに頭を下げないで、貴方が感謝している相手は貴方が思っているより醜い女だから

 

でも、それを伝える勇気は無い。ここで全てをさらけ出してしまえば〝先生と生徒〟という唯一の深い繋がりまで崩れ去ってしまう

 

せめてそれだけは守りたい、貴方に信頼される大人であり続けたい

 

 

「酒泉」

 

 

無理矢理作った笑顔、きっと彼の眼には通用しない

 

震えてる声、誰が聞いても明らかだろう

 

それでも私は酒泉にとっての〝良い先生〟を演じる為にその言葉を口にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結婚、おめで「私!!!このバカヤロウ!!!」────ぶべっ!?」

 

 

思ってもいない言葉が出てくる前に何者かに殴り付けられた頬

 

しかし横から急に殴られたにも関わらず私の身体は大して動かず、それどころか頬にも大して痛みを感じない

 

恐らく私と同じくらい身体能力がクソザコな相手に殴られたのだろうと予測しながら、そのへなちょこパンチを放ってきた相手を睨み付ける

 

 

「……え?」

 

 

その顔を見た途端、思考が停止した

 

青色に近いショートの髪に緑の瞳、顔付きも背丈も全てが同じ

 

私と殆ど同じ容姿をした女性、異なるのは身体中のあちこちに巻かれている包帯、それに沢山の生傷や火傷の痕

 

大怪我を負った自分みたいな姿をした人、彼女の醸し出す雰囲気に私はどこか心当たりがあった

 

いつだったか、この感覚、何処かで、確か───アトラハシース?

 

じゃあ……

 

 

「……プレナ、パテス?」

 

「正解」

 

「なんでこんな所に……」

 

「こんな所って?」

 

「だから、なんでこの式場に……な、なに───っ!!」

 

 

こ、これは……さっきまで視ていた脳破壊寝取られ風景は!?

 

いつの間にか、こんな何も存在しない真っ白な空間に……!?

 

 

「いや冷静に考えて夢でしょ」

 

「だよね」

 

 

そりゃそうだ、こんな訳の分からない展開なんて夢の中でしか起こり得な……いやキヴォトスだと普通にありそうだ

 

 

「で、どうして私の夢に貴女が出てきたの?」

 

「んー、ずっとうじうじしてる情けない私をちょっと焚き付けにね?」

 

「……は?」

 

「いつまでベッドに埋もれてるつもりなの?お見合い、もう始まっちゃってるよ」

 

 

……そっか、今日は酒泉のお見合い当日だっけ

 

寝ようにもそれだけが気掛かりでずっと寝れなくて、何とか頭の中からお見合いの事を消そうとしたけどそれすらできなくて、私は自分の意識が自動で落ちるのを待つしかなかった

 

なのに夢の中でまで酒泉の夢を見るなんて、どうやら私は現実から逃れる事が出来ないようだ

 

 

「……別にこのままでもいいんじゃない?私には関係の無い事だし」

 

「うーん……夢の中でくらい素直になってもいいと思うけどなぁ」

 

「これが私の本心だよ」

 

 

そうだ、酒泉が何処で誰と結ばれようとそれが私の人生に関係してくる訳じゃあるまいしそう気に掛ける事はないだろう

 

……そう思い込まないと、そういう事にしておかないと、私の心は耐えられなくなってしまう

 

おかしいな、カイザーに狙われた時もゲマトリアと直で会った時も……それに世界の危機ですらこんなに弱気になった事は無いのに、たった一人の生徒にこんな気持ちにさせられるなんて────

 

 

「私だって酒泉みたいな男の子と出会いたかった!!!」

 

「………………はい?」

 

 

そんな私の想いをかき消すかの如く、プレナパテスが唐突に自身の願望をぶちまけてきた

 

口を半開きでぽかーんとしている私など見えていないかの様に続けざまに言い放つ

 

 

「私だって酒泉みたいな子とロボット談義したかった!!!特撮の夏映画観に行きたかったしファイナルステージも観に行きたかった!!!」

 

「いや、あの……」

 

「私だって年下の男の子にドキッとさせられたかった!その身体で抱きしめられて〝わっ……男の子ってこんなにガッチリしてるんだ……〟って思わされたかった!成人した酒泉の初飲酒の相手を勤めたかった!でも酒泉は……私の世界には存在しなかった……!」

 

「何の何の何!!?」

 

 

いや、気持ちは理解できるけども!正直全部腕組みながら頷けるけども!

 

流石は同じ私だと自画自賛(になるのかな?)していると先程まで悔しそうな表情で叫んでいたプレナパテスは急にシリアス顔になって語りかけてきた

 

 

「何って……私は本心を伝えただけだよ?色んな可能性が残されてる貴女が羨ましいなーって」

 

「……可能性なんて残されてないよ」

 

「ううん、残ってるよ。貴女がそれを見つけようとしないだけ」

 

「……じゃあなにさ、今からお見合いの邪魔しに行けって?そんなの大人のやる事じゃないでしょ」

 

 

そんなのは一般常識として間違っているし、それ以前に私と違って勇気を出して酒泉を誘った相手の子に失礼だ

 

一歩踏み出す勇気も持てず酒泉との間に壁を作り続けた私には、負け犬らしくベッドの隅で縮こまっているのがお似合いだ

 

 

「別に邪魔しに行けって言ってる訳じゃないよ、それ以外に出来る事なんて山程ある筈だよ?」

 

「……無いよ、そんなの」

 

「想いを伝えるだけなら、誰にだって権利はある筈だよ」

 

「……っ」

 

「二人きりで遊びに誘うのも、一緒に映画に誘うのも、成人したら一緒にお酒を飲むって約束するのも、答えは酒泉次第だけど伝えるかどうかは全部貴女の自由だからね」

 

「……言うだけなら簡単だよね」

 

 

他人事だからと簡単に言ってくる私に少々腹が立ち、若干当たり強く言葉を返す

 

同じ私だからと言っても互いに同じ人生を歩んできた訳じゃないんだ、プレナパテスが私の苦悩を理解できる筈もない

 

 

「まあ、今の私には言うことしかできないからね、身体はもう死んでるし」

 

「っ……」

 

「そんな私だからこそ言わせてもらうけど……伝えたい事は生きている内に伝えるに限るよ」

 

 

生きている内でしか伝えられない、そんな事は当たり前の筈なのに、死者からの忠告だけあってかその言葉にはかなりの重みを感じさせられた

 

 

「もっと生徒を知りたかった、触れ合いたかった、仲良くなりたかった、お喋りしたかった、遊びたかった、色んな事を教えてあげたかった、力になってあげたかった、助けたかった……そんな後悔、もう二度と貴女にはしてほしくないから」

 

「……貴女はしたんだね」

 

「したよ、沢山。生きてる内にやりたかった事がやれなくて、身体だけ死んだ後にやりたかった事が更に増えて……本当に苦しかったよ」

 

 

やりたかった事、というのは間違いなくシロコやプラナの事だろう

 

目の前の二人を救いたくてもそれだけの力が残されていない、残酷な運命を背負わされた二人の代わりになりたくても身体の自由が利かない、孤独に震える二人を抱きしめてあげたくてもその手はピクリとも動かない

 

シロコ達を私に託す時に見せた、色彩に対する最後の意地。あの一瞬以外はずっと自分自身の不甲斐なさに怒り、そして後悔し続けてきた筈

 

……私がプレナパテスなら、きっとそう思うだろうから

 

 

「まあ、ここまでごちゃごちゃ言ったけど要は……〝やらずに後悔するよりやって後悔しろ!〟って事かな?」

「やって後悔ってそれもうフラれてるじゃん……でも、ありがと」

 

「お?元気出た?」

 

「全然、こうして話している間にも酒泉が相手の子と仲良くなってると思うと今にも死にそう」

 

「おおう、重傷……で?それじゃあどうするの?」

 

「どうする、か……」

 

 

正直、やって後悔した結果どうなるのかなんて全く予想つかない

 

ちょっとだけ関係が改善されたら嬉しいけど、今より関係が悪化してしまう可能性だって十二分に有り得る

 

ただ、ここで悩み続けても何も変わらないから……

 

 

「とりあえず会いに行って、その後は……流れに任せる」

 

 

頼んだぞ未来の私、今の私も頑張るからそっちも頑張ってくれ

 

 

「……うん、まだ悩みが完全に解決したわけじゃないけどさっきよりはマシな顔付きになったね」

 

「誰かさんのお節介のお陰でね……発破かける為にあんな事まで言っちゃって」

 

「あんな事?……ああ、酒泉と色々したいってこと?あれ割と本心なんどけどなー」

 

「えっ」

 

 

まさか男の趣味まで同じになってしまうとは、流石は私……この下りさっきもやったね、うん

 

 

「あーあ、私もあんな子と出会いたかったなー」

 

「相手生徒だよ?私の癖に倫理観とか無いの?」

 

「生徒にそういう想い抱いてる時点でどっちもどっちじゃない?」

 

「半分は当たっている、耳が痛い」

 

「全部の間違いでしょ……はぁ、なんでこっちの世界には居なかったのかなー」

 

「さあ、私に聞かれても……まっ、来世こそ良い人に巡り会えるといいね」

 

「……じゃあ転生した酒泉貰うねー」

「駄目」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ここまでハッキリ覚えてる夢も珍しいなぁ」

 

 

現在時刻11:28、随分ぐっすり眠っていたらしい

 

入る時はいつの間にか入っていて覚める時はほんの一瞬で見ている風景が切り替わる、夢の世界というのは面白いものだ

 

 

「まあ、そんな事はさておき……」

 

 

デジタル時計の隣に立てられている、ミレニアム製の防弾ガラスで作られたカードケース

 

その中に入っているボロボロのカードに私は頭を下げた

 

 

「ありがとう、プレナパテス」

 

 

あの夢は彼女が見せてくれたのか、それともただの偶然か、どちらにせよ私の行動は決まった

 

スマホのホーム画面をスワイプさせて連絡帳を開き、ヒマリに電話を掛けてから支度を始める

 

予め着替えを用意してからシャワーを浴びて、髪を乾かした後は歯を磨いて、その後は……

 

 

「……あ、もしもし?ヒマリ?急に掛けてごめんね、忙しかった?」

 

 

靴下を雑にソファに投げ捨てた直後、私が電話を掛けた相手の声で〝もしもし〟と聞こえてきたので意識をそちらに集中させる

 

完全な私用で生徒の力を借りてしまう事に後ろめたさを感じてしまう、全て片がついたら何か埋め合わせしなくちゃなぁ……

 

 

「実はちょっとお願いしたい事があって……え?あーいや、私にとっては大事件だけどキヴォトス全体にとってはそうでもないというか……うん……ありがと。それで、ヒマリにお願いしたいのは────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

電車を降り、改札を通り、駅を出た瞬間から全力ダッシュを開始する

 

目的地は酒泉のお見合い会場、場所を特定できたのはヒマリやヴェリタスの皆のお陰だ

 

え?特定した方法?……それはほら、目撃証言とか監視カメラの記録とかで……か、監視カメラと言ってもシャーレの権限で触れられる場所だけだからね!?それと許可貰えた場所だけだから!

 

ストーカー紛いの事をしているような気がしつつ、重たい女と思われてもいいから彼に会いたいという気持ちが勝って足が止まらない

 

……止まらないとは言っても既に足はフラフラだし息切れもしてるけど

 

 

「い゛っ!?」

 

 

もう少し運動しておけばよかったと嘆いていると何もない普通の道で足を挫いてしまい、走っていた勢いで盛大にずっこけてしまう

 

「……ったあ……」

 

子供の頃は転んだ痛みなんかすぐに忘れられる程度のものだったのに、大人になると何故こんなにもシャレにならない痛みに変わるのだろうか

 

身体が老化してるとかそういうのかな────誰が老化じゃい!ピチピチの二十代前半だって言ってるだろ!

 

なんて何処の誰に対してなのかすら分からない言葉を心の中で叫びながら歩き続ける、痛みでちょっと涙目になってるけど気にしないでね偶々転ぶシーンを目撃しちゃった犬のおじいちゃん

 

 

「……っ」

 

 

そうして足の痛みに耐えながら歩き続けること十分、漸く目的の建物が見えてきた

 

お高い雰囲気を醸し出している和風旅館、木製のの門扉の付近には五名程の門番らしき人達と────

 

 

「────しゅ、」

 

 

せん、と名前を呼び切る前に口を閉ざす

 

会いに行くと決めてはいたもののその後の行動を全く考えていなかった私はこれ以上足を踏み出せずにいた

 

それに今更会って何を言えばいいのか。〝酒の勢いでキスした挙げ句その記憶を忘れちゃってごめんなさい〟?これじゃ火に油とガソリンと薪をぶちこむ様なものだ

 

でも、実際にそれが事実なんだから謝らないといけないのは確かで

 

 

「あ……ま、待っ────」

 

 

酒泉が門番の人と何かを話しているのを見た私は〝このままだと中に入ってしまう〟と焦り中途半端にまた呼び掛け、そして中途半端なところで伸ばした手を止めた

 

こんな所でモタモタしていても酒泉は待ってくれない、声を出さなければ此方に気付いてくれない、でも酒泉は私の顔なんて見たくないかもしれない

 

だったらここで会う事自体が────違う、間違ってるとか正しいとかじゃない、そもそもこれはただの自己満足なんだ

 

酒泉の気持ちなんてお構い無しの自己満足、私がそうしたいからそうするだけ、どう思われようと関係ない

 

 

「───ッッッ!!!しゅせええええええええええええええええん!!!」

 

「っ……は?先生!?なんでここに……」

 

 

それにプレナパテスだって言ってたじゃないか、やらずに後悔するよりやって後悔しろって

 

そうだ、それで何かあったらプレナパテスのせいにすればいいんだ

 

〝それ実質自分自身のせいでは〟というツッコミは捨て、思いっきり空気を吸い込む

 

胸が苦しくなってもまだまだ吸い続け────一気に吐き出した

 

 

「大好きだああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 

私の言葉を信じられないのか、それとも驚いて反応できないだけなのか、ただ立ち尽くす酒泉

 

言葉が返って来なくてもいい、私は私の本心を伝えるんだ

 

 

「ずっと!ずっと大好きでした!でも!先生が生徒を好きになるのはいけない事だと思って!ずっとずっと隠してきました!」

 

「これ以上距離が縮まるとこの気持ちが抑えられなくなると思って!生徒に告白するのが怖くて!ずっと素っ気ない態度を取っていました!本当にごめんなさい!」

 

 

そう、酒泉にとって私は勝手に好きになって勝手に距離を置いて勝手に告白してきた自分勝手な女だ

 

でも、その自己満足も今回だけだから。今日で全部終わりにするから、この想いだけはどうか伝えさせてください

 

 

「ずっと目を合わせないようにしてきたけど!実はずっと酒泉の横顔を見てました!仕事中にこっそり見たり!ゲヘナの視察に行った時に然り気無く執務室に顔出してみたり!戦術対抗戦の記録を見返してる時に〝笑いながら戦ってるのちょっと心配だけどカッコいいなー〟って思ったり!」

 

 

仕事中の真剣な顔、好き

 

甘いものを食べてる時の笑顔、好き

 

執務室でヒナと喋っている時の嬉しそうな顔、嫉妬しちゃうけど好き

 

自分より格上と戦ってる時にちょくちょく見せる無自覚であろう謎の笑顔、心配だけど好き

 

 

「あの日酒泉に語った言葉は全部本当です!酔った勢いなんかじゃない!ずっと隠してきた想いです!あの告白も!あのキスも!全部全部!私自身の願望です!」

 

「ずっと愛してました!私は先生だって自分に言い聞かせても我慢できないくらい!生徒である酒泉の事を愛してしまいました!生徒として接してくれてる酒泉を相手に!私は女として接してました!」

 

 

生徒は生徒として酒泉と触れ合えるズルい

 

ミカと喧嘩してる時も、サオリに知らない事を教えてあげてる時も、互いに理解し合えているようにリオと作戦会議してる時も、心の底から幸せそうにヒナに尽くしている時も、ずっとずっとそんな醜い感情に蓋をしてきた

 

酒泉の良すぎる眼がずっと私だけを見続けてくれたらいいのに、酒泉の口が糖分より私を欲してくれたらいいのに、私を庇って出来た傷を私で埋められたらいいのに

 

 

「酒泉!私は……私は────」

 

 

ごめんなさい、生徒に嫉妬してしまう駄目な先生でごめんなさい

 

それでも、軽蔑されても、失望されても、これだけは〝女〟として言いたいから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「酒泉が欲しい!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

言いたい事は全て言い切った、これでもう満足した、結果がどうであれ悔いはない

 

嘘だ、本当はまだ悔いがある、どこにもいかないでほしい、私から離れないでほしい、私を見てほしい

 

息を整えながら縋る様な眼差しで見つめていると、硬直が溶けたように酒泉がぽつりぽつりと語り始めた

 

 

「あー……えっと……なんというか……まあ……正直驚きました、俺がそこまで想われていたなんて」

 

「そう、だよね……はあ……あんな、態度……げほっ!……きらわれてるって……おも……おぇ……」

 

「……一旦水でも飲んで落ち着いてください」

 

「あ……ありが……」

 

 

喉を酷使した私を気遣って酒泉が天然水を差し出してきた

 

そんな時でも私の頭は〝これって酒泉の口付けなのかな〟なんて馬鹿な事を考えていた、卑しい先生で本当にごめんなさい

 

 

「んぐっ……っはあ……」

 

「どうです?落ち着きました?」

 

「うん……ありがとう……ちょっとだけ……回復した……かも……」

 

「そりゃよかった……しかしまあ、驚きましたよ。お見合いが終わって外に出てみりゃ急に先生に愛を叫ばれるんですもん」

 

「ご、ごめんなさ……え?お見合い終わったの?」

 

「はい」

 

 

さっき酒泉が門番の人と話してたからてっきりそのまま中に案内されちゃうのかと……そっか、終わった後だったんだ

 

 

「……そ、それで?酒泉はなんて答えたの?」

 

「断ってきましたよ、〝今はまだ結婚とか考えられない〟って」

 

「え?……ま、まあ……そうだよね」

 

「それでも納得してくれなかったんで何とか妥協点探して、結果〝お互い結婚できる年齢になるまでに好きな人を見つけられなかったらまたお見合いしよう〟って事で、それまでは友達として普通に接する事になりました」

 

 

冷静に考えてみれば酒泉はまだ学生なんだし、結婚なんて当分先の問題……いや、本当かな?結婚出来るようになるのは確か18歳からで、酒泉は今16歳だから……

 

……2年!?たった2年で酒泉は結婚できるようになっちゃうの!?

 

 

「あ、あああああ相手の娘は今何歳なの……?」

 

「14歳の中学二年っすね、俺も相手の子も人生決めるにはまだまだ早すぎる年齢ですよ……」

 

「……は、早くて四年後……!?」

 

 

相手がもっと幼ければ恋に恋してるだけだと断言できたが、その年齢では〝将来酒泉お兄ちゃんと結婚するー!〟的な子供特有の叶わぬ夢とも言い切れない

 

そう遠くない未来である事への絶望と若さでは絶対に勝てない事への絶望で勝手に押し潰されていると、酒泉はどこか言いづらそうに頬をかきながら〝しかしまあ〟と呟いた

 

 

「よくこんな人前であんな大胆な告白できましたね……」

 

「そ、それは……無我夢中でというか……私も必死だったから……」

 

「まあ、お陰で先生の想いが本物だってのは伝わりましたけど」

 

 

困惑しっぱなしの門番さん達、スマホを私と酒泉に向けている野次馬、ライブ中継カメラを構えているクロノスの生徒、家の窓を開けてなんだなんだと顔を覗かせてくる近隣住民の方々

 

そういえば人前だったと今更羞恥心がふつふつと沸き上がり、自分では確認出来ないが確実に顔が赤みを帯びているであろうくらいに熱くなってきた

 

 

「……ん?クロノス?」

 

「あ、はい」

 

「どうも」

 

 

数人の門番の後ろからひょこっと姿を現すクロノスの生徒達、直前までずっと門番さんの身体で隠されていて見つけられなかったみたいだ

 

いつもの騒がしさはどこへやら、珍しく静かなシノンとマイが私に挨拶をした。上空にヘリは飛んでいないので足で現場まで来たのだろう

 

 

「どうしてクロノスがここに居るの?もしかして近くで事件でも起きた?」

 

「いえ、ゲヘナの有名生徒が有名企業のご令嬢とお見合いするという噂を聞きまして」

 

「これは大スキャンダルでは!?と思ってインタビューしにきたのですが……」

 

 

そっか、今の撮られてたんだ

 

 

「悪いけど、さっきの部分カットしといてくれない?インタビューに答えるかどうかは酒泉次第だけど、私の告白部分だけは間違いなく酒泉に迷惑掛けちゃうからさ」

 

「えっと……それが……」

 

「実は……今、生中継してまして……」

 

 

ふーん、生中継してるんだ

 

 

「そっか、じゃあ生中継が終わったらでいいからカットしてもらっていいかな?」

 

「む、無茶振りが過ぎません……?」

 

「後からアーカイブの編集をするだけならできますけど……」

 

「なんで?カットするだけだよ?」

 

 

二人はなんでそんな慌ててるんだろう、あのシーンをちょっと飛ばせばいいだけじゃん

 

 

「いや、あの……ですから……これは生中継でして……」

 

「でもカットできるでしょ?」

 

「先生ってこんなに理解力の無い方でしたっけ?」

「もしや現実逃避しようとしているのでは……?」

 

「とにかくさ、このままだと酒泉だけじゃなくて多方面にも迷惑掛けたり混乱させちゃったりするからさ?だからなんとかしてよおねがいだからねえほんとうにおねがいやばいから」

 

「あああああああ!?肩を揺らさないでください先生!」

 

「お、お気持ちは理解できますけど無理なものは無理ですよ!だってもうキヴォトス中に放送されちゃってるんですから!」

 

「そっかー……」

 

 

無理なのか……まあ、無理なら仕方ないよね

 

実際に流されちゃったもんはもうどうしようもないし、今更映像を編集して流し直しても元の映像が消える訳じゃないもんね、うんうん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?これキヴォトス中に流されたの?」

 

「や、やっと理解してくれましたか……」

 

「……俺的にはそれくらいの覚悟で告白してくれたのかと思ってたんですけど」

 

 

 

 




ヒナ「私が掲げるもの……それはrevolution」

ミカ「第四次恋愛大戦を宣言するじゃんね」

リオ「幻術なの……!?」

サオリ「見ろ酒泉!私の心には何もありはしない!今はもう虚しさすら感じやしない!」
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