クソボケのことが大大大好きな生徒達   作:あば茶

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勘違いから始まり全てが終わる両思いラブコメディ(スバルその7)

 

 

 

「何もよろしくないが?」

 

 

〝まあいいか!!よろしくなあ!〟の精神で考える事を諦めた過去の自分に対して半ギレでツッコミを入れる男、その名も折川酒泉

 

彼は現在アリウス自治区まで来ていた、今回は事前アポ有りで

 

あの時はなんかしれっと告白を受け入れた事前提で話を進められてしまったが、やはり答えを出すには時間が必要だろうと改めて告白の件をスバルに伝えに行こうとしていた

 

 

「あっ!酒泉だ!」

 

「やっと来た!」

 

 

女性側から勇気を出して想いを伝えてくれたというのに、それを振り出しに戻さなければならない

 

そんな理由で重い足取りのままアリウス自治区を歩き続ける酒泉の視界に何人かのアリウス生が声を掛ける

 

 

「お、おう……久しぶり───」

 

「待ってて!今スバル先輩呼んでくるから!」

 

「え?い、いや……会うのは三十分後だからまだ────行っちゃった……」

 

 

話も聞かずに去っていく生徒達、彼女等は何故自分がスバルに会おうとしている事を知っているのだろうかと首を傾げる酒泉

 

もしやあの日の出来事がアリウス中に広められているのでは?という考えが過ると共に嫌な汗が頬を伝っていく

 

もしそうだとしたら今更あの日の話を無かった事にするのはかなり気が引ける……というよりも最悪な行為になる

 

せめてそうでない事を願いながら、その場から離れすぎない程度に周囲をうろうろしていると再び酒泉に近付く人影があった

 

 

「……しゅ、酒泉」

 

「ん?……錠前さん?てかアリウススクワッド全員お揃いで」

 

「「「……」」」

 

「あ、ああ……久しいな」

 

「……なんか、疲れてません?」

 

「そ、そうか?」

 

 

声を掛けてきたのは我らがリーダー、錠前サッちゃん

 

心なしか目が泳いでおり、その目の下にはうっすらと隈が出来かけている

 

しかし様子がおかしいのは彼女一人ではなく、その背後に立っている他のスクワッドメンバーまでどこか変な空気を漂わせていた

 

 

「こんにちは、酒泉。今日は何をしに来たの?」

 

「え、えっと……今日は梯さんに───」

 

「へーそうなんだ、でも〝今日は〟って言い方は可笑しいんじゃないかな?だってこの前もスバルに会いに来てたでしょ?それなら今日〝も〟って言うのが正しいんじゃないかな」

 

「す、すみません……」

 

「何で謝るのかな?私、別に怒ってないよ?」

 

まずは秤アツコ

 

花の様に可憐な笑顔を浮かべている彼女だが、そのニコニコ具合とは真反対の圧を全身から放っている

 

有無を言わさぬその表情、ただの笑顔だけでここまでのプレッシャーを出せるのはそう多くは存在しない

 

こうして圧を放つ存在───秤アツコから秤圧子へと進化を遂げた彼女は、チクチクと言葉の針を酒泉に刺すだけという何とも言い難い攻撃を仕掛け続けるのだった

 

 

「あ、あのぉ……という事はスバルさん以外に用は無いのでしょうか……」

 

「え?まあ、特には」

 

「い、いえ!別にそれならそれでいいのですが……で、でももしスバルさん以外も視界に入れる気がまだほんの少しでも残っているのでしたら、ちょっとだけお話でも……な、なんて……やっぱり酒泉さんもこんな肥溜めの底で育った様な女のドブ臭い口臭なんて嗅ぎたくないですよね。それに、こんな塵以下の存在を気に掛けるメリットだってありませんし……わ、私に差し出せるものなんてこんな無駄に肥えた醜い身体しかありませんが、もしこれを差し出す事でちょっとでも酒泉さんの視界に入れてもらえるのなら───」

 

「アンタどうした!!?」

 

 

次に槌永ヒヨリ

 

相変わらずヒヨヒヨした卑屈そうな笑みだが、そんな彼女の中には幾つもの夢が眠っている事を酒泉は知っている

 

雑誌に載っているような服を着てオシャレしてみたり、皆で美味しい物を食べてみたりと、辛くて苦しいアリウスで育ったとは思えない程に彼女の心は強い……筈だった

 

卑しい、喧しい、厚かましい、彼女の取り柄はすっかり消失し、今ではただ卑屈な笑みで卑屈な事を呟くだけの存在

 

つまり、卑屈寄りの人間───槌永卑寄りへと成り下がっていた

 

「い、戒野さん!この人達一体何があったんですか!?明らか様子が変なんですけど!?」

 

「…………」

 

「……い、戒野さん?」

 

「何?」

 

「い、いや……なんかあったのかなーって……」

 

「自分で考えたら?」

 

「考えても分からないから聞いてるんですけど……」

 

「……そうやって都合の良い時だけ頼るんだ」

 

「は、はい?」

 

「普段は気にも留めない癖に、味方が居なくなって困った時だけ今更持ち主面するんだ」

 

「えっ」

 

「どうせ杜撰な管理のせいで失くした道具を探してる程度の感覚なんでしょ?〝あれどこに置いたっけ、まあ見つかんなくても買い直せばいいや〟って、酒泉にとっての私はその程度なんでしょ」

 

「いやっ」

 

「別に道具扱いは構わないよ、でも持ち主になったからには使って使って使い潰す最期の時まで責任持ってよ。自分で買った物が気に入らなかったからって後から新しいの買い直さないでくれる?」

 

「あのっ」

 

「そうやってすぐポイ捨てする様な人間に伴侶なんて出来るとは思えないけどね、道具の管理すらできない人が人間の管理なんてできる筈もないし」

 

「……」

 

「今〝面倒〟って思った?別にいいよ、正直に言っても。どうせ私と酒泉の関係はこれで終わりだし、最後くらい聞いてあげる」

 

「はい、正直ちょっと……めんどいなって……」

 

「は???」

「どうすりゃいいんだよもう」

 

 

最後に戒野ミサキ

 

家族やクソボケと関わっている時だけ微妙に光が宿っているかどうかギリギリ判別できる程度の無機質な瞳は、今では誰の前でも光を発さないブラックホールになっていた

 

自傷痕が増えていない事が奇跡なくらいの絶望オーラを醸し出しているが、これは未だに自分は酒泉の道具だと思っている証拠だろうか

 

そんな彼女も今ではすっかり話しかけてきた者を皆言葉で傷付けてしまう不機嫌ちゃんに

 

そう、つまり戒野ミサキは───戒野皆裂きミサキと化してしまっていた

 

 

(なんだこれ、スタンド攻撃でも受けているのか?)

 

 

何故怒っている何故落ち込んでいる何故絶望している

 

必死に思考回路を回すも彼が答えに辿り着く事は永遠にないだろう……クソボケという、この世の罪を凝縮した存在そのものである限りは

 

しかしつい最近、そんなクソボケを突破した勇者が現れた

 

(勘違いによって)好意を自覚し、(勘違いによって)好意を自覚させ、(勘違いによって)告白され、(勘違いによって)告白を返した王道的ヒロインが現れてしまった

 

 

「何ですか、来て早々騒がしいですね」

 

「か───梯さん!」

 

 

捨てる神あれば拾う神あり

 

今の折川酒泉にとって彼女の到着は何よりも心強く、これによって〝じゃあ梯さん来たしそろそろ行くわー〟とこの場から逃れる事が可能になった

 

 

「酒泉、待ち合わせは今から三十分後だった筈では?」

 

「そ、そうなんですけど……一応三十分前行動しとこうかなって」

 

「プライベートなんですからそこまで気を遣わなくてもいいですよ」

 

「そうですよね、すみませ───」

 

「わ、私だって……貴方と会う前に格好を整えたかったんですから……」

 

「───っ」

 

 

髪の先をくるくると指で弄りながら、もじもじとちょっぴり照れ臭そうに口を尖らせて呟くスバル

 

その乙女然とした表情仕草めっちゃいいにおいを前に、気付けば酒泉は〝クソボケ〟としてではなく〝好意を伝えられた一人の男〟としてスバルを見ていた

 

 

(言いづれええええええええええっ!!!)

 

 

だからこそ、だからこそ本当に、これからやろうとしている事が本当に正しいのかと少年の中で疑問が渦巻いていた

 

このまま告白を受け入れた事にして話を進めてもいいのでは?いやしかし自分の気持ちすら伝えずに付き合うなど、かと言って人を傷付ける嘘は駄目だが人を傷付ける本音も同様にいけない事なのでは?

 

そもそも自分は梯スバルをどう思っている?好意的に見ているのは確か、ならばその好意は一体どんな種類の好意なのか

 

いや、でも、やはり、キスまでしてくれたし、それでも、責任を

 

頭の中がぐちゃぐちゃになりつつある酒泉、しかし無情にもそんな彼を置いて生徒達の恋バナはヒートアップしていく

 

 

「あ!スバル先輩顔赤くしてる!」

 

「大好きな人の前なんだし当然でしょ、ねー!スバル先輩!」

 

「み、皆さん!本人達の前でそんな話を堂々としないでください!確かに私と彼はそういう関係ではありますが……さ、流石にまだ恥じらいというものが……」

 

「聞いた聞いた!?〝大好きな人〟ってところ否定しなかったね!」

 

「「「きゃー♡」」」

 

「お、落ち着いてください皆さん!私と彼の事は後程正式に公表しますから!」

 

 

ベアトリーチェが支配していた頃では考えられないほど平和な光景も、今この瞬間だけは酒泉の胃をズキズキと痛ませていた

 

自分は今からこの平和な光景をぶち壊す事になる、その先に待ち構えているのは間違いなく地獄の様な空気だろう

 

アリウスを再び地獄に落とす覚悟があるのか、折川酒泉は瞳を閉じて己の心と向き合った

 

 

「スバル先輩スバル先輩!酒泉とちゅーしたって本当ですか!?レモンの味ってしました!?」

 

「えっ!?スバル先輩そこまでしてたの!?だから時々唇押さえてにやにやしてたんだ……」

 

「先輩の〝酒泉〟って寝言を聞いた生徒は多いんだ!」

 

「ねえ先輩!酒泉に告白する時なんて言ったの!?酒泉はどう返したの!?」

 

「で、ですから質問は後で……って、私から告白した訳ではありませんよ!?私はただ、彼が好意を伝えてくれたからそれに応えただけで……」

 

「でもスバル先輩も酒泉の事が好きだったんですよね!?」

 

「そ、それは……はい……」

 

「両思いだ!」

 

「いいなぁ……」

 

 

確かに自分が何も余計な事を言わずスバルの想いを受け止めていればそのままハッピーエンドで物語を終えられるだろう

 

しかし今後末永くなるであろう付き合いを考えれば、やはり真剣に悩んだ末に答えを出すべきだろうと───

 

 

「……ん?いやちょっと待ってくださいよ、告白してきたのは梯さんからですよね?」

 

「……はい?」

 

 

そんな決意を抱いた矢先、酒泉の耳に気になるワードが飛び込んできて

 

スバルは今、〝彼が好意を伝えてくれたから応えただけ〟と言っていたが、酒泉には自分から告白した覚えなどなかった

 

むしろ告白してきたのはスバルからで、だからこそここまで思い悩む羽目になっているのだが

 

 

「何を言ってるんですか?あの日、貴方は私に想いを伝える為にアリウスに来たのでしょう?それをもうお忘れになったのですか?」

 

「想いを伝える為?一体何の話を……」

 

 

もしかして自分から告白したと思われるのが恥ずかしいから誤魔化そうとしているのか

 

だとしたら悪い事をしたなと反省しようとした酒泉だが、スバルの反応を見る限りどうやら本当に心当たりがない様子

 

 

「確かにあの日は梯さんと二人で話したい事があるって伝えに行ったけどさ」

 

「ちゃんと覚えてるじゃないですか!もう……からかわないでくださいよ」

 

「いや、でもさ……ただ礼がしたいって伝えようとしただけなのに〝想いを伝える為〟って言い方に変えるのはちょっと大袈裟すぎやしません?」

 

「礼?何のですか?」

 

「え?いや、だから……ほら、メイドの……」

 

「メイド?」

 

「えっと……あの日の出来事、皆の前で言ってもいいんですか?」

 

 

特に秤さん辺りにからかいの種にされそうだけど、そんな言葉を飲み込んでなんとか意図を伝えようとする酒泉

 

一方であの日酒泉が伝えようとしていた〝二人だけで話したい事〟が告白の件だと信じてやまないスバルはただ首を傾げるのみ

 

おかしい、ここまで話が噛み合わない事があるのか

 

 

(いや、これは噛み合っていないどころか……お互い全く別の話をしてるみたいな……)

 

 

すれ違ってすらいない、互いに全く別の道をウロウロしてる様な感覚を覚えた酒泉は一呼吸分間を置いてから冷静に呟いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……一旦状況を整理しませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこからは互いに一つ一つピースを嵌めていく作業が始まった

 

スバルは〝ここまで自分に尽くしてくれるのはきっと折川酒泉は私のことが好きだから〟と思っていた事、酒泉の友愛としての〝好き〟発言を恋愛方面で捉えていた事、あの日酒泉が二人きりで話そうとした内容を告白だと思っていた事を

 

酒泉はメイド服で奉仕してくれた事への礼がしたくてスバルの下を訪ねた事を、その事をあまり他人に言い触らすのもどうかと思ってスバルと二人きりで話そうとした事を、それをスバルが〝何を伝えたいのか分かっている、だからここでは言うな〟と止めてくるのでスバルも此方の用件を理解していると思っていた事を

 

カチリカチリとピースが嵌まる度に少しずつ冷えていく背筋、互いに小さくなっていく声量、最終的に消失する語彙力

 

話す事がなくなり、それから数分間無言が続き、暫く────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その……つまりこういう事か?スバルは自分が告白されたものだと勘違いをし、それに気付かぬまま告白への返事をした事で恋人関係が成立したと……」

 

「勘違いに勘違いを重ねた結果って事だね」

 

「…………」

 

 

冷静に話を整理するサオリとアツコを前に、顔を赤くしたまま無言で俯くスバル

 

先程まで二人を祝っていた周囲の生徒達は全員気まずそうな顔をし、勝手に脳破壊されていたアリウススクワッドですら何とも言えない顔をしていた

 

いくらベアトリーチェに支配されていたとはいえ、彼女達の心は仲間の不幸を喜ぶほど落ちぶれてはいなかった

 

 

「き……気にするなスバル!勘違いくらい誰にでもある!私だってバイトの契約書に書かれた重要事項を読み違えた事があるからな!」

 

「まあ、うん、でも今回は勘違いだったとはいえ、近い内に〝本当〟にならないとも限らないからね……ねえ、やっぱり今の内に世継作っておこっか?酒泉」

 

「スバル先輩も大変だね、酒泉が平然と人を誑す様な言葉を吐くクソボケだったばかりに……先輩もこんな奴と付き合うのやめた方がいいよ、もっとマシな男探せば?」

 

「あ、あのぉ……全て勘違いだったという事は……私、これからも酒泉さんの視界に入ってもいいんですよね……?口を押さえて呼吸音すら聞かせないようにする、なんて事はしなくてもいいんですよね……?」

 

 

……仲間の不幸を喜んだりはしないが、自分に訪れたチャンスを喜びはするようだが

 

一方でこの状況を生み出した一因でもあるクソボケはどうフォローしようかという気持ちでいっぱいだった

 

地獄の様な空気になるのは覚悟していた、しかしそれはスバルの告白を保留する事で生み出されると思っていた……それがまさか、ただの勘違いによって引き起こされるとは

 

 

「あ、あの……スバル先輩……ごめんなさい!私が余計な事を言っちゃったせいで……!」

 

「……」

 

「……あ、あの……先輩?やっぱり怒って────」

 

 

無言でも阿鼻叫喚を作れるという新事実を前に酒泉が頭を抱えていると、スバルの前にマイアがやってきて頭を下げた

 

あの時、彼女は良かれと思って先輩の後押しをした。それが原因で先輩に恥をかかせてしまったと自責の念を抱いた彼女は謝罪を口にした

 

しかしマイアの声にすらスバルが反応する事はなく、それを気に掛けたマイアはスバルの顔色を窺おうとし────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────はああああああああああああああああああああああああ!?!!?」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

 

自警団が誇るスーパースター兼アイドル兼エース兼以下省略にも負けず劣らずの大音量で叫ぶスバル

 

声の勢いに乗るかの様に手を伸ばしてくる彼女を前に、マイアは溢れんばかりの怒りをぶつけられる事を覚悟する

 

……が、そんな予想とは裏腹に、スバルが伸ばした手は酒泉の胸ぐらを掴んでいた

 

 

「勘違いってなんですか!?こっちはずっと悶々としてたんですよ!?それをやっと解消できたと思ったら……勘違い!?勇気を出した結果がこれですか!?」

 

「あ、あの……」

 

「こっちは貴方への好意を自覚したばかりなんですよ!?やっと素直になれて貴方に〝大好き〟って伝える事ができたのに!両思いだと知って嬉しかったのに!無責任ですよ!その気にさせておいて!それもこれも全部〝好き〟とか簡単に言ってしまう貴方がいけないんですからね!?」

 

「それは、はい、本当に仰る通りで……」

 

「だったら責任取ってくださいよぉ!!!ちゅーまでしたんですから私と一緒に幸せになってくださいよぉ!!!」

 

 

無表情から泣き顔へ、泣き顔からキレ顔へ、キレ顔からキレ泣き顔へ

 

器用に表情を変化させていきながら号泣するスバル、元より酒泉絡みの事になると平静さを崩しやすい女ではあったのだが、ここまでの乱れっぷりを見るのは全員初めてだった

 

 

「ス……スバル、それは流石に横暴じゃ───」

 

「サオリ!貴女はトリニティに居た頃から酒泉と良い思いしてるんですからいいですよね!でも私は貴方が居ない間ずっとアリウスを支え続けてきたんですから今回くらい譲りなさい!!!」

 

「ぐっ!?」

 

「でもサッちゃんの言う通りだよ、確かに酒泉にも悪いところはあると思うけど……その要求は自分勝手すぎると思うな」

「そもそもスバル先輩が変な勘違いをしなければここまでややこしい事態にはならなかったしね」

 

「私より胸の小さい貴女達は口を挟まないでください!!!」

 

「「は?」」

 

「あ、あのぉ……胸の大きさでしたら私もぉ……」

 

「貴女はそもそも女として見られてるんですか?せいぜい大型犬、良くて妹くらいでは?」

 

「うわあああああああん!!!」

 

「たった1ターンで四人を……」

 

「ワンターンフォーキルゥ……」

 

 

嘗て先生の指揮下にあったアリウススクワッドに敗北したスバルだが、今度は逆に彼女一人で瞬殺してしまった

 

しかし望まぬリベンジを達した程度でその怒りが収まる筈もなく、スバルは酒泉の胸ぐらを掴んだままぐわんぐわんと揺らし始めた

 

 

「とにかく!責任取ってくださいよ!貴方が責任取ってくれるまで!ぜーったいに離しませんからね!?」

 

「あ、あの……それ含めて今後のお話がしたいので一旦冷静に───」

 

「うるさい!!!好きです!!!」

 

 

酒泉の背を勢いよく地面に叩きつけたスバル

 

何か言い訳を述べようと開きかけている酒泉の口にスバルが自らの口を近付けると────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぢゅーーーーーーー♡♡♡♡♡!!!」

 

「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!゛?゛」

 

 

ぶちギレながらの接吻をくらった少年は後に語った

 

〝エロ漫画みたいな擬音のキスって実在したんだ〟と

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんて事もありましたねぇ」

 

「ま、またその話ですか!?恥ずかしいから止めてくださいって何度も言ってるでしょう!?」

 

「ははっ……いやースバルさんの反応が可愛くてつい」

 

 

透き通る様に綺麗な噴水を背後に、ベンチに座って過去に思いを馳せる二人

 

ここはアリウスの名地・愛の噴水広場、嘗て男女のいざこざが起きた事からそう名付けられたとか

 

恋愛成就、失恋等、良い事悪い事問わずここでは愛に関する何かが起きるのだとか

 

故に、デートスポットとして最適かは賛否両論である

 

 

「悪かったですって、これからはもう二度と言いませんから……スバルさんにとっては消したい黒歴史ですもんね」

 

「……いえ、消したいとまでは思ってませんよ。だって……あの出来事があったからこそ、今度こそ勘違いではなくこうして好き合っていられるのですから」

「……スバルさん」

 

「……酒泉」

 

 

特に言葉を交わした訳でもないのに、ただ見つめあっただけで互いの思いを理解した二人は目を閉じて口付けを交わした

 

そう、この噴水広場がどんな場所であろうと今の二人には何ら関係無かった、何故ならどんな事が起きようと互いに離れ離れになる事はないだろうと確信していたから

 

 

「んっ……ぷはっ……」

 

「……梯さん、あの頃に比べてキス上手くなりましたね」

 

「誰が上手にさせたと思ってるんですか、もう……」

 

 

こてん、と酒泉の肩に頭を乗せるスバル、そんな彼女の肩に手を回してより密接に抱き寄せる酒泉

 

スバルが〝ん〟とだけ呟いて顔を寄せれば、最初から示し合わしていたかの様にその頬に酒泉がキスをする

 

その頬への口付けを一度受けたスバルは蕩けた笑みを浮かべ、もっともっとと強請る様に更に顔を近付ける

 

しかし餌を求める雛鳥スバルに〝今日はもう駄目ですよ〟と酒泉が返せばスバルはちょっとだけ不機嫌そうにムスッとし、そんな彼女の機嫌を取るかの様に酒泉は頭を撫でた

 

 

「どうしてですか」

 

「今から任務なんで……これ以上ベタベタしてると離れたくなくなっちゃいますよ」

 

「……それでいいじゃないですか、久しぶりに会えたのですから」

 

 

昔に比べ随分甘えてくる様になった愛しい恋人、そんな彼女の子供っぽい姿に苦笑しながら〝困ったな〟と呟くと酒泉はスバルの頭を撫でたまま言葉を綴った

 

 

「今日の任務が終われば暫くフリーなんですよ、だから……」

 

「そうですか、つまり貴方は恋人より仕事を優先すると……」

 

「うぐっ……お、怒りました……?」

 

「……ふふっ♪冗談ですよ、愛する夫にちょっと悪戯してみたくなっただけです♪」

 

「……そ、そうですか」

 

 

まるで夫婦になるのが決まっているかの様に堂々と口にするスバル。勿論酒泉もいずれそうなるつもりではあるが、それでも不意打ち攻撃に耐える事はできず

 

細やかな抵抗として僅かに視線を逸らすのみの酒泉、しかしそんな僅かな行動すら見破ったスバルは〝おや?〟と呟き、悪戯前の子供の様な笑みを浮かべながら耳元に顔を近付けた

 

 

「もしかして……〝愛する〟って言われて照れちゃいました?」

 

「さ、さあ……何の事やら……」

 

「……愛してますよ、酒泉♡」

 

「っ」

「愛してます♡好きです♡好き♡」

 

「ぅあ……」

 

「すきっ♡だいすきっ♡すーきっ♡」

 

「───っ、も、もう十分です!十分頂きましたから!」

 

「ふふっ……そういう可愛いところも大好きですよ?」

 

「だ、だからもう十分ですって……だーもう!とにかく俺はもう行きますからね!?後でまた連絡しますから!」

 

 

先程までと打って変わり、余裕綽々なスバルと逃げ出す酒泉

 

立場が逆転した事で心が満たされたのか、スバルは満足気な表情で酒泉を見送ろうと手を振ろうとする……が、その直前で何か用事を思い出したのか〝待ってください〟と酒泉の腕を掴んで引き留めた

 

 

「……今日の任務が終われば暫くお休みって言ってましたよね?それなら今日の夜は私の寮でお泊まりというのは?」

 

「おお、それいいですね。じゃあ任務終わったら同居人の分の飯作ってから向かいます」

 

「はい……あ、あの!」

 

「ん?まだ何か───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの日のメイド服と全く同じ物を用意していますので…………着替えた状態で待ってますね?♡」

 

 

赤い頬で、上目遣いで、チラチラと顔色を窺いながら小声で囁くスバル

 

その日、折川酒泉が出動した二時間後にはゲヘナ中から不良の声が消えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの二人、よく私達の前であんな会話できるよね……ねえサッちゃん」

 

「もう、いいんだ」パリン

 

「そっか……サッちゃんの心は、もう……」

 

「……」

 

「あ、あの……ミサキさん?そろそろ雑誌を返してほしいのですが……あれ?このページ、メイド服の……」

 

「着ないから」

 

「え?で、ですが───」

 

「偶々開いたページがこれだっただけだから」

 

「でも、もう何十分も同じページを───」

 

「違うから」

 

「……」

 

「……違うから」

 

「なあ、私達でWSS物のサークルを作って今度のトリニティのイベントに参加しないか?きっとこれもアリウスの発展に繋がると思うんだ」ガコン

 

「どこでそんな知識覚えてきたのサッちゃん」

 

「既に何人かメンバーは決まってるんだ、ミカとヒナと、それから二人の紹介でミレニアムの会長も……」

 

「……私は逆NTR物描くからいいや、サッちゃん達だけでやってなよ」

 

「や、やっぱりペット枠だけでも譲ってもらえませんかねぇ……えへへ……」






〝錠前サオリ〟の〝オリ〟は〝おりかわしゅせん〟の〝おり〟だ、よろしくたのむ
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