クソボケのことが大大大好きな生徒達   作:あば茶

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次回予告と展開が違うって?ごめんちょっと何言ってるかわかんない


?????(マルクトその3)

 

 

 

 

「いつまでノロノロ走ってるんですか!もっとスピードを出しなさい!お姉様を待たせるつもりですか!?」

 

「うるせぇ!俺は速度規制を守る常識人ドライバー様なんだよ!ゲヘナで不良共が暴れて出動要請された時以外はな!」

 

「お姉様を退屈させる事以上の緊急出動案件なんて存在しないでしょう!?ほらさっさと加速しなさい!」

 

「シートを蹴るんじゃねえクソガキ!レンタカーつってんだろ!?」

 

 

ギャーギャー喚くクソガキを宥めながら折川カー(レンタル)を走らせる

 

おかしい、俺がイメージしていた家族ドライブというのはもっとこう……後ろの席で子供達が楽しくお歌を歌いながら和気藹々と……

 

 

「オウル、そんな態度を取ってはいけませんよ、酒泉は我達の代わりに運転してくれているのですから。それに……我はこうして皆で待っている時間も好きですよ?」

 

「わ、私も……こうやってお外の景色を眺めるのは新鮮で楽しいです!」

 

「基本鋼鉄大陸に籠りっぱなしだったからね」

 

「むぅ……お姉様がそう言うのでしたら……」

 

 

流石はマルクト、生意気なガキンチョの宥め方も熟知しているとは皆のお姉様は伊達じゃないな

 

目的地に着くまでは暫く三姉妹の相手を任せておくとしよう

 

 

《酒泉さん、次の信号を右折したらまた暫く直線です》

 

「おう、サンキュー」

 

「……酒泉、どうしてカーナビじゃなくてプラナに道案内してもらってるの?」

 

「いや、俺もカーナビを使おうとしたんだけどそしたらプラナが〝私の方がお役に立てます〟って……」

 

《事実、道案内もワンセグもオーディオも全て私だけで十分です》

 

「いや、ワンセグとオーディオはどうやって代理すんだよ」

 

《ワンセグは私が今朝記憶した天気予報をお伝えします、オーディオは……私が代わりに歌います》

 

「うーん、気持ちは嬉しいけどやっぱ無理あるんじゃねえかな」

 

 

何に対抗心を燃やしているのかは知らないが丁重にお断りしておくと、プラナはほんの僅かに眉をムスッとさせてしまった

 

代わりに夕飯の支度中に聞かせてもらうからそれで勘弁してくれ

 

 

「という訳でシロコさん、一曲流してくんね?俺今運転中で忙しいからさ」

 

「ん……残念だけど、私も今うたた寝で忙しい」

 

「あーあ、今日は外でお昼食べようと思ってたんだけどなー。シロコさんだけお留守番かー、残念だなー」

 

「どの曲がいい?」

 

「とりあえず上から順番に」

 

「りょーかい」

 

 

シロコさんがスマホで遠隔操作すると同時に車内に流れる音楽、カーオーディオの中には俺が適当に選んだ曲が幾つか入っている

 

……因みに〝ドライブと言えばこれだろ!〟ってのも幾つか確定で入れてある

 

 

「この曲でいい?」

 

「マリカーの無敵BGMはちょっと……スピード違反で捕まりそうなんで……てか俺そんな曲入れたっけ」

 

「私が勝手に入れた」

 

「それは別に構わないけどせめて事故らなそうな曲を選んでくれ」

 

「ん、我儘酒泉……じゃあこれは?」

 

 

ピアノの音と共に曲が物静かに始まり、少ししてからとても穏やかな女性の声が聞こえてきた

 

曲調はどこか切なく、爽やかさの裏側に寂しさも感じさせるような……

 

 

「……なんて曲名だ?」

 

「〝憧れの残響〟って書いてる」

 

「良い曲だけど……なんか、しんみりするな」

 

「……」

 

「お姉様?どうかし───えっ!?」

 

「お、お姉様!?どうして泣いてるんですか!?」

 

「……え?」

 

「な、何か嫌な事でもありました!?それかこの曲が気に入らなかったとか!?」

 

「いえ、そういう訳ではありません……ただ、この曲を聞いているとどこか寂しい気持ちに……」

 

「ええいっ!何をボサッとしているんですか折川酒泉!さっさと曲を変えなさい!」

 

「だからシート蹴るんじゃねえ!?……シロコさん、お気に入りって項目から一番上の曲を流してくれないか?」

 

「ん」

 

 

とても良い曲だったし歌詞も素晴らしかったけど、どうやらマルクトのお気には召さなかった……ってよりマルクトのお気に召しすぎて涙腺を破壊してしまったらしい

 

ここまで感受性豊かな人だったとはな、一緒に暮らしてきて新たな発見だ

 

……仕方ない、ここは切り札を使うとするか

 

 

「てーててってってーてーてーてー、てーててってってーてーてーてー」

 

「ガラッと曲調変わったね……」

 

「スタート!!!ユア!!!エンジン!!!」

 

「は?何言ってんですかコイツ」

 

 

っぱドライブのお供と言えばこれしかねえよなぁ!?

 

 

 

 

 

 

 

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「あ、あわわわわ……こんなに人が沢山……!」

 

「……改めて考えると、あのまま計画が上手く行ってたとしても本当にこの量の人類を管理し切れたのかな」

 

「群れるのが好きな生物だと知ってはいましたが、まさかこれ程とは……」

 

「皆、我に元に集まってください。はぐれないように皆でくっついて行動しましょう」

 

「「「はい!お姉様!」」」

 

 

駐車を済ませてからショッピングモールに入った途端、あまりの人の数に唖然とする姉妹

 

マルクトのクソデカ帽子は家に置いてきたが、それでも元から目立つ容姿をしているので幾つか視線を集めてしまっている

 

勿論帽子を被せたりパーカーを被せたりと出来る限りの対策はしているが、それでも全ての視線を防ぐ事はできなかったようだ

 

「ん、酒泉も迷子になると危ないから私にくっつくべき」

 

「迷子って……俺はそんな年齢じゃねえっての」

 

「そんな事はない、酒泉はすぐ一人でどっかに行っちゃうし、そのまま迷子になった先で女の人と仲良くなって帰ってくるから」

 

《同意、時にはその女性を連れ帰ってくる事もあります》

 

 

……どうしよう、迷子云々に関してはともかく女性を連れ帰ってるって部分に関しては否定できねえ

 

シロコさん達、そしてマルクト達……二回も前例があるせいで何も言い返せねえ

 

 

「……さて、こんなところで立ち話してると他のお客さんに迷惑だしさっさと移動するか」

 

「逃げた」

 

《露骨です》

 

「いいや違うね、これは戦術的撤退というやつだ」

 

「じゃあ逃げてるじゃん」

 

「なるほど、折川酒泉のお持ち帰り癖は私達と出会う前からと……」

 

「4対1とか誉とかないんか?」

 

「お、お兄様!私はお兄様にお持ち帰りされて嬉しかったですよ!」

 

「アイン、気持ちは嬉しいけどそれは擁護にも援護にもなってないからな?」

 

「酒泉、我ら全員を持ち帰ってくれただけでなく我ら全員を家族にしてくれた事を改めて感謝します」

 

「ねえ…今の聞いた…?」

「まさかあんな小さい子達まで…」

「あんなスレンダー美人だけじゃ飽き足らずあんなデッケェのまで……」

「姉妹丼…ってコト…!?」

「お兄様って…まさか近親相姦…!?」

 

「マルクト、お前もきっと純粋な気持ちで礼を言ってくれたんだろうな。ありがとう、タイミングが最悪だった事以外嬉しいよ」

 

 

エレベーターが一階に降りてくるまで待機する俺達、その間背中に突き刺さる視線が痛かったけど恐らく気のせいだろう

 

何かを消失した様な虚無感や瞳から零れるこの雫も、きっと全て気のせいだろう

 

 

「いかん、雨が降ってきたな」

 

「室内なのに?」

 

「いや、雨だよ」

 

《だとすると雨漏り以外考えられませんが》

 

 

流石に無理があったか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「さて、皆が見て回ってる内に俺達もプラナの服でも選びに行こうか」

 

《はい》

 

 

プラナが住んでいるシッテムの箱はアロナが住んでいる方のシッテムの箱と違い、多くの機能が制限されている

 

主を守るバリアは張れず、電子戦はできず、対象をスキャンしての分析も不可能

 

プラナが本来持つ機能をフルスペックで活かすにはアロナの端末に移動しなければならず、大半の機能を失った方で暮らす事は自らに不自由を強いる事に他ならない

 

 

「んで?プラナは今のところ気になる服とかはあるのか?」

 

《いえ、まだ》

 

「じゃあ適当に歩き回りながら探してみるか、気になんのがあったら言ってくれ」

 

《はい……あの》

 

「ん?」

 

《……ありがとうございます、酒泉さん》

 

 

だが、それでも彼女は少年と共に暮らす事を選んだ

 

アロナを介さなければ触れ合えない、してあげられる事は限られている、そう理解しているなりにプラナにも幸せを分け与えようとしてくれている少年と共に歩む事を

 

同じ屋根の下で暮らしている時点で十二分に幸せを貰っているというプラナの気持ちに気付かぬまま、彼はどの服が良いかと視線を忙しそうにキョロキョロと動かしている

 

 

《酒泉さん、私は酒泉さんが選んでくれた服ならばどの様な物でも構いません》

 

「うーん、そう言ってくれるのは嬉しいけど〝何でもいい〟って任されるのが一番選ぶの大変なんだよなぁ……俺みたいなファッションセンスの欠片も無い奴だと特に」

 

《理解しました、酒泉さんはセンスが無いのですね、記録しておきます》

 

「ファッションセンス限定だからな?それだってダサいとかそういう意味じゃなくてあくまで〝平均的〟って意味だし」

 

《では他のセンスは有るという事でしょうか》

 

「たりめーよ、まず戦闘センスはずば抜けてるだろ?ネーミングセンスだって…………調月さん比で完璧だろ?」

 

《酒泉さんがそれでいいのであれば私は何も言いません》

 

 

なにも不便なのが悪い事とは限らない、現に彼女は今満たされているのだから

 

少年が〝プラナに何かしてやれないか〟と思い悩んでいる時間は、プラナにとっても少年を独占できている様な気がしてちょっぴり歓喜していた

 

先生以外で自分を認識できる唯一の存在の時間を独り占めできるのだから────

 

……とはいえ、プラナも全く他者に干渉出来なかった訳ではない

 

例えばプラナの方のシッテムの箱を修復する際にエンジニア部が気合いを入れて導入したアバターの表情再現システム、原理自体はそこらのバーチャルモモチューバーも使用しているキヴォトスではありふれた様な何の変哲もないシステムだ

 

しかしこれを使用する事によってプラナは〝プラナと全く同じ容姿の少女の顔〟を画面に映し出す事ができる

 

プラナ自身の姿は認識されないしプラナ自身の声も酒泉含め一部の者達にしか聞き取れないが、それでも他者とコミュニケーションを取るには十分すぎる機能だった

 

因みにこの機能は今のシッテムの状態で稼働するにはかなりの電力を消費するらしく、会話も基本的に酒泉を介して行えばいいのでいざという状況でしか使われていない

 

それがどの様な状況かと言えば、例えば同じ電子系ヒロインとマウント合戦を行う際など……いざ?

 

 

「お……プラナ、あの黒いジャージなんてよくないか?やっぱプラナには黒系統がよく合うよ」

《……驚きました》

 

「え?何が?」

 

《先程〝ファッションセンスが無い〟と仰っていましたが、謙遜でも何でもなく本当の事だったのですね。まさか女性への服の送り物でジャージを選ぶとは》

 

「ぐ、ぐぬぬぬぬぬっ……さっき〝何でもいい〟って言ってたのに……めんどくさい彼女みたいなムーブを……!」

 

《彼女……ふふっ》

 

結局のところ、どれだけアバター越しに他者と関わる時間が増えようとプラナにとって折川酒泉は〝本当の自分を認識してくれる存在である〟という事実に変わりはなく

 

そんな彼と過ごす時間こそが何よりもプラナが求めているものだという事実も今後変わる事はないだろう

 

 

「お、俺だってその気になればオシャレの一つや二つくらい……ほ、ほら!この黒い子供ドレスなんかどうだ!?それかあっちのゴスロリとか!そ、それかあの……ホットドッグの着ぐるみとか……ア、アロナさんとお揃いだぞー?センスあるだろー?」

 

 

 

 

 

 

(だからどうか、酒泉さんも────私達と共に居る時間が何よりも幸せでありますように)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」イライライライラ

 

「ちょっ……ケ、ケイ!?私にばっかりキングビンボー擦り付けないでよー!?」

 

「…………」イライライライラ

 

「うああああああん!?また借金だああああああ!?もう物件も何もないのにいいいいいい!」

 

「またモモイがビリだね……」

 

「お姉ちゃんには悪いけど、暫くケイのサンドバッグになってもらおっか……日頃から迷惑掛けちゃってるし」

 

「アリスも!次はアリスもやりたいです!」

 

 

そんな祈りを捧げられてる一方で、怒りを酒泉に抱いている少女が一人

 

彼女の名前は天童ケイ、ある壮大な戦いの果てに自分専用のオリジナルボディを手に入れた元電子系ヒロインである

 

そう、自分だけの肉体を手に入れた……という事はつまり、行動範囲や活動時間が大幅に広がったという事である

 

今まではアリスへの遠慮からか極力肉体の主導権を借りる事は避けていたし、訳あって肉体を借りる事があっても一ミリの傷も付けないよう常に気を張り詰めて生活していた

 

 

「…………」イライライライラ

 

「うわああああん!?私のリボーンズがケイのストフリにいいいいいい!?この時代だと最強なのにいいいいいい!」

 

「あーあ、慣れない環境機使うから」

 

「使った事ない環境機より使い慣れた愛用機の方が強いから……」

 

「アリス知ってます!モモイは地雷です!」

 

 

だが、これからはそれらを気にする必要もない

 

自分の身体なら万が一が起きてもアリスに影響は及ばないし、何をしようともアリスの時間を奪う事もない

 

誤解されないように言っておくが彼女はアリスの中に住むのが嫌だった訳ではない、むしろこうして自分の体を手に入れた事でアリスと触れ合えるようになったのは喜ばしい事だし、勿論他の皆と触れ合えるようになったのも(本人は素直に認めないだろうが)嬉しいだろう

 

ただ、それと同じくらい〝自由に使ってもいい体〟を得た事への喜びを感じているだけだ

 

 

「いけー!ブラッドヴォルスー!更に団結の力を装備だー!ふふん!どう?この攻撃力!越えられないでしょ!?」

 

「しかもお姉ちゃんの場には沢山の伏せカード……これって───」

 

「う、うん……モモイの勝ち、だね……」

 

「では私のターン、ユニコーンともう一体素材にアクセスコードトーカーで」イライラシャカパチイライラシャカパチ

 

「ひょ?」

 

「いけアビドスゴートートーカー!!!あっちむいてほインテグレーション!!!」パチパチパチィン!

 

「いわああああああああああく!!!」

 

「うわああああん!モモイが消し炭になりました!」

 

「まあだよね」

 

「現代でブラッドヴォルスはちょっと古すぎるかな……」

 

 

この肉体があれば自分の身体でやりたい事ができる

 

世話になった者達への礼も、夜更かしするアリスを寝かしつける事も、生活リズムが乱れまくっているゲーム開発部を強制的に正す事も

───それと、ちょっとのオシャレも

 

まあ、自分はあまり興味ないがせっかく人間の身体を得たのだし人間らしい事をしてみようと

 

興味はないが、なんとなく、仕方なく、気紛れで、本当の本当に気紛れでオシャレしてみてもいいだろうと、彼女は存在しない何かに言い訳をし続けていた

 

 

「…………」イライライライラ

 

「うわああああん!カイリューに渦アンコされたあああああああ!!!」

 

「アンコなんて今時誰でも警戒するのに……」

 

「うわああああん!パオジアンに怯まされたああああああ!!!」

 

「一撃技連打するから……」

 

「うわああああん!麻痺ったああああああ!」

 

「アリス知ってます!麻痺はバグです!クソゲーです!」

 

そしてオシャレをするならやはり他者からの意見も取り入れたいところ

 

何故なら少しでも自分の価値観が世間一般から駆け離れていた場合、自分が第二の調月リオになりかねないからだ

 

それを避ける為にもここはやはり誰かを連れてオシャレをしに行くべきだ、それなら誰が最適だろうか

 

 

「うわああああん!?ラス1でカービィに吸い込まれてステージ外まで落とされたああああああ!」

 

「…………」イライライライラ

 

「まあ、残機リードしてたらあれ狙うよね」

 

「あのムーブはそもそも警戒しない方が悪いから……」

 

「ていうかお姉ちゃん、普通に距離取った方が良い場面でもかっこつけて無駄にジャスガ狙いまくる癖あるよね」

 

「アリス知ってます!こういう時は〝お侍様の戦い方じゃない〟って言うんですよね!」

 

「それは別のゲームかな……」

 

 

一番オシャレに詳しい人、それは────折川酒泉である!!!

 

本人が聞けば〝え?〟と固まってしまいそうな謎の人選、だが待ってほしい、ここは一旦天童ケイの考えを覗いてみようではないか

 

まず1に〝そらさきさんだいすき!!!〟2と3のどちらかに〝とうぶんたべたい!!!〟〝とくさつかっこいい!!!〟なアホ面クソボケの周囲には大勢の美少女が存在する

 

美少女=可愛い=オシャレ、ならばそんなオシャレを見慣れている折川酒泉もきっとセンスのある男なのだろうと彼女は結論付けた、ジーニアスケイちゃんですまない

 

 

「ラッキーダーツ、シールドを選んでください」シャカパチシャカパチ

 

「え?えっと……じゃあこれで」

 

「オールデリートで、それでは効果でバトルゾーンとシールドゾーンと手札と墓地とあのクソボケを巻き込んで私も一緒に死にますね」シャカパチシャカパチ

 

「落ち着いてケイ!そのカードにそんな効果はないよ!?」

 

「うわああああん!アリス、バッドエンドスチルなんてみたくありません!」

 

「これは……相当参ってるね……」

 

「参ってるっていうか……怒ってるっていうか……」

 

 

〝そうはならんやろ〟と思ったそこの貴方、そのツッコミは正しい

 

しかし敢えて触れないであげてほしい、何故なら彼女はこの無茶苦茶な理論を立てるのに数十時間も掛けているのだから

 

素直に〝折川酒泉を誘いたい、折川酒泉にオシャレした自分を見てほしい〟と言えば良いものを、変にツンデレを発揮してしまったせいで酒泉を誘う理由作りに躍起になってしまったのだから

 

斯くして、何度かモモトークを送ったり通話を掛けたり偶然を装ってゲヘナ自治区内で直接酒泉と会って誘おうとしたケイ

 

その結果は────

 

 

 

 

 

『え?その日?……あー悪い、マルクト達の日用品買いに行かないといけないんだ』

 

『ん?この後?ああ、実はマルクト達とタコパーティーやるんだよな!』

 

『お、ケイさんじゃん、こんな所で奇遇だな……ん?これ?そうそう!最近新作が出た某乱闘ゲーム!これから家族でゲーム大会開くんだよな』

 

『いやー最近ほんとにやる事が多くてさー、風紀委員の仕事もあるし、家族が増えたから色々準備する必要だってあるだろ?……その割には楽しそう?……ははっ、そうかもな』

 

 

「……しょう」シャカパチシャカパチ

 

「ケ、ケイ?今何か言って────」

 

「ちくしょう!!!」シャカパチパチパチバチイイイインッッッ!!!

 

「ひいっ!?」

 

「弾かれたカードが壁に突き刺さった!?」

 

 

結果は見事に惨敗

 

ケイが誘う度にクソボケは〝家族と予定があるから〟と断り、そこに風紀委員の忙しさも相まって絶賛すれ違いを続けていた

 

〝埋め合わせはする〟と言われてはいるものの、この調子だとその埋め合わせは何時になるのやら

 

 

「ちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょう!!!」

 

「ケ、ケイ!ストップ!めちゃくちゃ声響いてるから!」

 

「ちくしょう!ちくしょう!!ちくしょう!!!」

 

 

学校に行けばほぼ確で会えるし風紀委員の仕事で長時間共に居られるヒナと違い、会える機会が限られているケイ

 

そんな彼女が抑えていた怒りを溢れさせてしまうのも仕方なしか

 

 

「なんなんですかあの男は!せっかくこちらから誘ってあげているというのに!口を開けば二言目には〝マルクト〟だの〝家族〟だのと!」

 

 

鋼鉄大陸で見せた以来の怒りっぷりを披露するケイを前に何も言えなくなるゲーム開発部

 

部室の外まで声が轟いてしまっているが幸いにもまだ誰も部室付近を通っていない……が、このまま放置すればいずれセミナーの大魔王が騒ぎを聞き付けてくる可能性が大

 

 

「白ければ何でもいいんですか!?ええそうなんでしょうね!貴方の大好きな空崎ヒナも貴方が家族にしてきた人も全員見事に白系統ですからね!!」

 

それなら私も気に掛けろ、せっかく貴方好みの身体に成れたのに、せっかく自分の身体で貴方に触れられるのに

 

同じ白なのにどうして私だけ、あのクソボケは私も家族にするべきだ

 

 

「私だって……私だってもっと!!!」

 

 

 

他にも多くの愚痴やら文句やらが彼女の中で渦巻いているが────

 

 

 

「……貴方と一緒に居たいのに」

 

 

赤いロボットのキーホルダーを指先でつまみながらポツリと呟くケイ

 

〝寂しい〟

 

彼女の感情は要約するとこの一言に尽きる

 

 

「貴方が家族を大切にしている事は分かっています、でも……同じくらい私も大切にしてくれたっていいじゃないですか……」

 

 

一通り怒り終えたからか、もはや本音を取り繕う気力さえ残っていないケイ

 

モモイをゲームでボコボコにしても心が晴れぬままの彼女は、いじいじした態度でぶつくさ呟きながら両膝を抱えた

 

一体何と声を掛ければいいのやら、勢い収まり気まずさが勝ってきた空間で誰も声を上げぬ中、アリスだけが立ち上がり握り拳を天に掲げた

 

 

「…………ケイの言う通りです!!」

 

「ア、アリスちゃん……?」

 

「最近の酒泉はアリス達に冷たいです!アリス達は皆あの戦いで頑張ったのですから全員平等に扱うべきです!」

 

「……そうだそうだー!平等性を軽んじる風紀委員を許すなー!」

 

「お姉ちゃんまで……」

 

「酒泉ってば最近私の扱いまで軽くなってきたんだよ!?しかもあんま向こうから遊びに誘ってこないし!恋愛ゲームっていうのは全ヒロインのフラグ管理をしっかりしてないとハッピーエンドに辿り着けないのに、なんにも分かってないよね~!」

 

「お姉ちゃんの扱いが軽かったのは結構最初の頃からじゃ……」

 

「そ、そんなことないもん!」

 

「アリス、モモイ……」

 

 

無論、二人も理解している

 

折川酒泉は自分達を蔑ろにしている訳ではないと、今はただ優先すべき事項があるからそちらを優先しているだけだと

 

 

「……やはりそうですよね!?あの男は私達の重要性が分かっていません!あの戦いでどれだけ私達が戦闘に貢献した事か!」

 

「そうそう!しかも輸送船の中でも素っ気なかったよね!」

 

「アリス、せっかく新衣装で登場したのにあまり褒めてもらえませんでした!」

 

「私なんてせっかく新しい装備を作ってあげようとしたのに〝デストロイヤー作れるか?〟って頼まれましたよ!そこは空気を読んで私に一任するところでしょう!?」

 

「しかもそれまでずっと素っ気無かった癖に銃を持った一瞬だけ微笑んじゃってさ!」

 

「アリス、聞き逃しませんでした!小声で〝やっぱ心強いな……〟って呟いていたのを!」

 

「なんだったんですか!遠方の恋人に想いを馳せる様なあの顔は!!目の前の白髪を放置してどこの白髪を想像してたんですかあの男は!!」

 

 

素っ気なかった事に関しては〝場の空気を和ませる役割は先生達に任せればいい〟という考えで一人離れた場所からずっと鋼鉄大陸の方向を警戒し続けていただけなのだが

 

周囲がわちゃわちゃしてる時に一人だけ真剣な顔してギャップを醸し出さないでください、そんな顔をしてる暇があるなら迅速に私の衣装を褒めてください(トキ談)との事

 

 

「それで戦いが終わったかと思えば!私達を放置し他の女に現を抜かして!」

 

「攻略される側がいつまでも待ってくれるとは限らないんだよ!」

 

「そうですそうです!!」

 

「モモイの言う通りです!なのでケイ───今からアリス達とオシャレをしに行きましょう!」

 

「はい!!…………はい?」

 

 

大きな声で頷き、直後にクエスチョンマークを浮かべながらキョトンとするケイ

 

そんな彼女の思考を置いてきぼりにしたままアリスは自分の理論を自信満々に説明し始めた

 

 

「いつまで経っても酒泉がアリス達を攻略しに来ないならアリス達の方から酒泉を攻略しに行くまでです!その為にもアリス達の魅力レベルをアップさせに行きましょう!」

 

「え?いや…あの…そうはならないと思いますけど…」

 

「それってつまり皆でお買い物って事!?いいじゃん!」

 

「まあ、活動の息抜きにもなるし丁度良いかもね」

 

「あ、あまり人が多い場所は……で、でもこれでケイの気が晴れてくれるなら……」

 

「ま、待ってください!私はまだ行くとは……」

 

「ケイ!」

 

周りが仕度を始める中で一人だけ座り込んだまま制止の声を上げるケイ、そんな彼女の声に応えたのは屈託無い笑顔を浮かべるアリスだった

 

 

「アリス、可愛いケイが更に可愛くなっていくところが見たいです!」

 

「───~~~っ!」

 

 

アリスとモモイがケイに同調したのは何も〝イエス〟を引き出す為だけではなく、かと言って本気で酒泉を罵りたかった訳でもない……ケイの内に溜まった鬱憤を晴らす事こそが真の目的だった

 

彼女達の善性を知っているが故にその意図を察してしまったケイは断ろうにも断れず、更に可愛いアリスのお願い事という最強の攻撃まで食らってしまい、結果────

 

 

「……わかり、ました」

 

「やったぁ!承諾取れたよー!」

 

「アリス、マルクトが被っていたクソデカ帽子が欲しいです!」

 

「多分普通のお店には売ってないんじゃないかな……」

 

「わ、私は……普段通りでいいかな……」

 

「ええっ!?そんなー!せっかく素材が良すぎるのにオシャレしないなんて勿体無いよー!」

 

「そうそう、パイロットスーツあんなに似合ってたんだから他のもきっと……ううん、絶対似合うよ」

 

「で、でもぉ……」

 

 

ケイが渋々頷いたのを皮切りに仕度のペースを早めていく各自

 

アリスはともかく、モモイの策略に上手く乗せられた事への若干の屈辱感だけが唯一後を引いているが、それでも皆気を遣ってくれた事だけは確かなのでケイは誰にも聞かれない程度の声量で静かに呟いた

 

 

「……ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「どう?」

 

「とても似合っていますよ、シロコさん」

 

「は、はい!素敵です!」

 

「ん、セクシーシロコでごめんなさい」

 

「自分で言わなければなぁ……」

 

「明星ヒマリですか貴女は」

 

 

試着室のカーテンが開くと同時に現る、絵に描いた様な美少女

 

肌に張り付く黒いタートルネックはまだ学生の身でありながら大人の色気を醸し出しているシロコの豊満なプロポーションをより際立たせ、マリンブルーのデニムパンツも服との相乗効果で腰のくびれを美しく表している

 

元々着けていた青色のマフラーだけ若干使用済み感が目立ってしまっているが、それ込みでも彼女の美貌は偶々シロコを視界に収めただけの同性の通行人ですら思わず見入ってしまう程であり、それが男ならば尚更夢中になる……筈だった

 

 

「酒泉、酒泉」

 

「ん?……おお、似合ってるじゃん」

 

「……もっと本気で褒めて」

 

「心の底から言ったつもりなんだけどな……しゃーない」

 

 

酒泉の服の袖をくいくいと引っ張り、褒めろと言わんばかりに服を見せびらかすシロコ

 

お望み通り褒められこそされたもののその言い方が気に入らなかったのか、シロコは不満気な顔で酒泉を見つめた

 

 

「────綺麗だよ、シロコさん」

 

「…………ん」

 

「自分で言わせておいて照れんなよ……」

 

「照れてない、ただちょっと顔が赤くて熱くなってきてだけ」

 

「それで照れてないんだったら今すぐ病院に連れていって熱を計ってもらうが?」

 

 

表情を見られぬように顔を逸らし、更にマフラーを少しだけあげて自身の顔半分を覆い隠すシロコ

 

それを見た酒泉は〝こんな暖かい日になんでマフラーなんか巻いてんだ?〟と首を傾げるが、シロコからすれば外出時の正装の様なものなので特に気温等は関係無かったりする

 

 

 

 

 

 

 

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「うぅ……」

 

「どうしたんですかアイン!お姉様とあとついでにそのクソボケにオシャレした姿を見せたいのでしょう!?それならもっと前に出ないと!ほら!もっと大胆に露出して!はりー!はりー!はり───うぼぁ!?」

 

「そんな恥ずかしがらなくても大丈夫だって、誰も笑ったりしないからさ」

 

「そ……ソ゛フ゛……チョークスリーパーはやめ───ミ゜ッ」

 

「どうしよう、私がオシャレのハードルを上げすぎたせいでアインが出てこなくなっちゃった」

 

《酒泉さん、シロコさんは何を言っているのでしょうか》

 

「気にすんな、ちょっと酔っ払ってるだけだ」

 

「アイン、我はアインの愛らしい姿を記録しておきたいのです……駄目でしょうか?」

 

「お姉様……わ、わかりました……」

 

「おお……これは……」

 

 

身を隠していたカーテンを離し、全身を露にするアイン

 

純白のワンピースは彼女の容姿に溶け込む様に自然と着こなされており、ほんのり薄い水色のフリル部分が故に強調されている

 

多くの向日葵で飾られた麦わら帽子を被っているその立ち姿は、まるで背景にまで向日葵畑が現れた様な錯覚をしてしまう程にアインに似合っていた

 

 

「流石はアインです、こんなに可愛い妹を持てて我は幸せです」

 

「ほら、やっぱり似合ってるじゃん」

 

「そ、そんな!私なんて全然……!」

 

「謙遜してないでもっと自信持ちなよ、こんなに可愛いんだからさ」

 

「ふっ……やはり私の見立てに狂いはありませんでした……」

 

「セクシーシロコに対抗してのキューティーアイン……成る程、そう来るなんて」

 

「眼中にも無いだろうから安心しな」

 

「……あ、あの!お兄様!」

 

「ん?なんだ?」

 

「お兄様から見ても……私は可愛いですか……?」

 

「ああ、よく似合ってるよ。こりゃ将来別嬪さんになる事間違い無しだな、きっと男共は全員夢中になるだろうよ」

 

「……そ、それは……お兄様も、ですか……?」

 

「そうだな、ベタ惚れになるかもな」

 

「……えへへ」

 

 

唯一格好への言及が無かった酒泉に近付き、不安気に見上げるアイン

 

その不安を取っ払うべく酒泉はアインの麦わら帽子を脱がせ、頭を優しく撫でながら素直な感想を伝える

 

勿論、酒泉としては幼子の話相手をする感覚でアインを甘やかしているだけなのだが、様に成りすぎるその光景を眺めていたオウルが一言呟いた

 

 

「やっぱりロリコンじゃないですか」

 

「変な誤解をするな、俺はお兄様なだけだ」

 

「ん……オウル、それは間違ってる。酒泉はロリコンじゃない、だってベランダのベンチの下の奥の方には巨乳物の本が入っていたから」

 

「でも洗濯機の裏にはつるぺた白髪幼女物の本がありましたよ?」

 

「まって、なんでもうみつかってるの」

 

「あれは見た目はロリでも設定上は年上の先輩らしいから」

 

「なるほど、合法ロリってやつですか」

 

「やめて、ほんとうにやめて」

 

「結局のところ男の子は皆おっぱいの大きい人が好きだから」

 

「まあ、そうなのですね。我にもっとおっぱいがあれば酒泉好みの身体だったというのに……酒泉、礼の一つもまともに返せず申し訳ありません」

 

「ちがう、おれのほんじゃない、しらない、すんだこと」

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

 

「ね、ねえ……本当に私のも見せなきゃ駄目なの?どうせ出掛ける時に見せるんだからわざわざここで着なくてもよくない?」

 

「駄目に決まってるでしょう?サイズが合っていなかったらまた買い直す羽目になるんですから、ここで試着して確かめておかないと」

 

「いや、でもさ……」

 

「ほらほら!観念しなさい!お姉様に無駄の時間を浪費させるおつもりですか!?」

 

「あーもう!分かったって!」

 

やけくそ気味に開かれた試着室のカーテン、その奥に立っているのは当然ソフ

 

キャメル色のハーフパンツは膝の僅か下まで掛かっており、それより下は靴下がショートな事もあってソフの白く細い脚を露出している

 

服は白黒ストライプの上から白いパーカーを羽織っており、そして頭には黒のキャップを被っていた

 

 

「か、可愛いです!」

 

「ふむふむ、中々カッコいいじゃないですか」

 

「「え?」」

 

「……まあ、どっちでもいいけどさ」

 

「我はかっこいいソフも可愛いソフも好きですよ」

 

「お、お姉様まで……でも、ありがとう」

 

 

パーカーのポケット部に両手を突っ込み、ちょっとだけムスッとした顔で視線を逸らすその様、そしてショートパンツ+黒キャップ+ソフのショートヘアも相まって若干のボーイッシュさまで醸し出していた

 

しかしそれでいて少女らしい可愛さまでしっかり表現されているのだから流石と言う他無い

 

 

「ソフは将来ボーイッシュな王子様系女子になりそうだな」

 

「なにその名前の時点で矛盾してる存在」

 

「その名の通りだよ、王子様みたいな容姿で女の子をかっさらっていく女泣かせと男泣かせを兼ね備えた究極の存在さ」

 

「あーはいはい、つまり性別と容姿以外は概ねアンタね」

 

「は?俺だって爽やか王子様なんだが?」

 

「と、一般兵Bが申しております」

 

「ん、序盤の村でお得な情報をくれる村人Cごときがしゃしゃらない方がいい」

 

「王子様から一気に転落させられたんだが?」

 

「ぷっ……あはははは!いいじゃん、少なくとも王子様よりかはまだそっちの方が似合ってるよ!」

 

 

せめてもう少し段階を踏んで下げてくれと項垂れる序盤の村のNPC、そのあまりにも情けないショボくれた面がツボにはまったのかソフはカラカラと笑い始めた

 

遠目からなら大人に見えなくもない男性が幼い少女に罵倒され負かされているという惨めすぎる光景が続き、漸く笑いが収まってきたところでソフが然り気無く呟いた

 

 

「あはははは…………まあ、王子様じゃなくても私達を助けてくれた時はカッコよかったけどさ」

 

「……え?」

 

「な、なにさ……そんな意外そうな顔して……」

 

「ソフ、お前───「デレました!?貴女もしかしてデレたんですか!?オシャレした事でうっかり色気でも出しちゃったんですか!?王子様系が大好きなあの人の前でだけ雌の顔になるなんて、そんな王道展開が現実で起きる筈が───」うわでた」

 

「ち、違うって!…………そういうのじゃないから」

 

「馬鹿な……いつもならこの後すぐ私を暴力で黙らせてこようとする筈なのに、それすらせず本気で照れているなんて……!?」

 

「まあ、なんというか……ありがとな、世辞でも嬉しいよ」

 

「……うん」

 

 

ただフォローしてくれてだけかと思っていた酒泉もソフの表情を見て本気で感謝の念を伝えてくれようとした事を察し、何とも言えない気持ちになりながら礼を返す

 

「……あ、そういえば俺からもちゃんと言葉にして伝えないといけない事があったな。さっきさ、ボーイッシュな感じになりそうって言ったけど変な誤解はしないでほしいんだ」

 

「誤解?」

 

「そうそう、ボーイッシュとだけ言うと〝男にしか見えない〟って風に捉えられるかもしれないけどさ……そんな事はない、ソフは女の子としても可愛いよ」

 

「やっぱりロリコンなんだ!!!」

 

「うるせぇぞチビ」

 

「わ、わざわざ訂正してまで言うこと?……でもまあ……ありがと」

 

「ソフ、流石に男の趣味が悪すぎますよ。考え直した方が───」

 

「抹殺のラスト・ブリットォ!!!」

 

「いきなりっ!?」

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

 

 

「さあさあお待たせしました!本日のメインイベントの開幕です!お姉様の美貌の前にひれ伏せ人類!」

 

 

今までの様にからかう素振りもなく、本気で忠誠を誓っている信者の様に興奮するオウル

 

ほんの少しでもお姉様の手を煩わせまいとオウルが代わりにカーテンを開くと────

 

 

「こ、これが本気のお姉様……シンプル、だけど……」

 

「綺麗……」

 

「……色白度で負けた」

 

《それは当然の結果かと》

 

 

 

────オウルがマルクトの為に選んだにしては珍しい、そこまで着飾っていない普通の女の子が立っていた

 

 

リーフ柄の白いロングスカートはマルクトの清楚感とスーパーベストマッチしており、レディースの白いファッションサンダルは裸足という事もあって彼女の美足を堂々と晒している

 

そして上は薄水色のフリルブラウスを着用しており、肘にも届いていない袖口には他の布地部分より更に透明に近い水色のヒラヒラで覆われていた

 

「この様な服を着るのは初めてなのですが……どうでしょうか?」

 

「す、素敵です!とっても素敵ですお姉様!」

 

「う、うん!いつものお姉様も綺麗だけど、今日のお姉様もすっごく綺麗!」

 

「当然でしょう!?お姉様が着れば葉のスカートだろうと泥の服だろうと全てがオシャレに変わるのですから!……まあ本当にそんな物を着せようとする輩が現れたらすぐ始末しますけどね」

 

 

服装だけで言えばそこまで特別でもない、ありふれた格好

 

これから恋人とデートする女子大生が集合場所の噴水前で待っている様な、そんなありふれたシチュエーションで見掛けるありふれた格好だが

 

しかしその一般的な格好を絶世の美女が着こなす事で生まれるのがギャップというものであり───

 

 

「酒泉、酒泉からはどう見えますか?共に暮らす家族として恥ずかしくない格好だといいのですが……」

 

「……」

 

「……酒泉?もしかして……似合ってなかったですか?」

 

「…………はっ!?い、いや!全然そんな事は!その……凄く、良いというか……月並みな言葉だけど……可愛い……と、思う……」

 

「それなら良かったです……ありがとうございます、酒泉」

 

 

顔と顔の間が数センチ、というところまで近付かれて漸く気が付いた酒泉は、女性との関わりが苦手な思春期の男児の様に慌てふためく

 

それでいてしっかりと褒めるべき部分はキチンと褒める辺り、流石は日頃から女子生徒に囲まれているだけはあるか

 

 

「……」

 

「……」

 

「…………ふふっ」

 

 

しかし伝えるべき事は伝えたというのに一向に視線を外さず見つめたままのマルクト

 

これは単に会話が終了したからその時の状態で固まっているだけなのだが、そうして見つめあっているとふとマルクトの口から僅かに笑みが溢れた

 

 

「こうして目を合わせていると何故かこそばゆい気持ちになってきますね、それでいてどこか暖かい気も…………これは酒泉も同じなのでしょうか?」

 

「え?お、おう……そうなん……じゃねえの?」

 

「そうなのですね……我は嬉しいです、酒泉と我の気持ちが同じで」

 

「っ」

 

 

酒泉の両手を自らの両手で包みながら微笑むマルクト

 

そこに居るのは神の器でも人類の管理者でもない、ただ一人の普通の女の子だった

 

そんな彼女に乱された胸の鼓動を落ち着かせるべく、酒泉はバレないようにひっそりと呼吸を整えようとし───

 

 

「────へぶぅ!?」

 

「ん!ん!ん!」

 

 

突如背中を襲う衝撃

 

取り込もうとした酸素が全て吐き出され、頬が萎むと同時に〝ぽひゅう〟という間抜けな音がなる

 

シロコからの奇襲を諸に食らった酒泉が一言文句を言おうと振り向くと、なんと背後では珍しく普段のクールフェイスを崩したシロコが明確な膨れっ面で酒泉の背をぽこぽこ(キヴォトス人比)と叩いていた

 

 

「なっ!何をするだァーーーッ!」

 

「ん!」

 

「その〝ん〟じゃ怒ってる事以外伝わんねーよ!何がしたいんだよシロコさんはぁ!?」

 

「逆にそれ以外の〝ん〟は伝わるんだ……」

 

「ん!!!」

 

「プ、プラナァ!助けてくれプラナァ!シロコさんは何でこんな怒ってるんだぁ!?」

 

《憤怒、私も怒っているので酒泉さんには教えたくありません》

 

「憤怒!?いつもは〝拒否〟とか〝否定〟とかなのに憤怒!?」

 

《プラナのプはぷんすこのぷです》

 

 

〝ツーン〟と無表情で発するプラナに困惑する酒泉、希望はここに絶たれた

 

それと完全に余談だが、酒泉はシロコが発する大抵の〝ん〟は理解する事ができる

 

食事中の〝醤油取ってほしい〟の〝ん〟だったり〝ソース取ってほしい〟の〝ん〟だったり、或いは〝ベッドから起きるの面倒臭いから起こして〟の〝ん〟だったり

 

このまま甘やかされ続けたら折川酒泉が居ないと生きていけない身体になってしまうかもしれない、というかもうなってるかもしれない

 

「さて、あそこでボコボコにされてるクソボケは放っておいて……お姉様の美貌を世に知らしめる事もできましたし、さっと会計済ませてお昼にしましょうかね」

 

「……?何を言っているのです、オウル。まだ貴女の試着が済んでいませんよ?」

 

「え?いえ、お姉様……お気持ちは嬉しいのですが私は───」

 

「そうそう!せっかく皆でお出掛けなのに一人だけ何も買わないなんて勿体無いよね!」

 

「な、仲間外れはよくないです……!」

 

「なっ!?」

 

 

ソフに右腕を、アインに左腕を捕まれ、そのまま試着室へ連れていかれるオウル

 

自分だけは無事でいられると勘違いしていたその姿はお笑いだったぜと、後に酒泉は語った

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

 

「なんか私だけ毛色が違いませんか!?」

 

「とても似合っていますよ、オウル」

 

「オウルらしさ出てていいじゃん……子供っぽくてさ」

 

「はあ!?貴女の格好だって大概子どもっぽかったでしょう!?」

 

「と……というよりも実際私達は子供なので……」

 

「ん、お子様にぴったり」

 

「砂狼シロコォ……!」

 

ポップなハート柄の入ったピンク色のTシャツ、膝まで掛からない程の長さの薄紫のミニスカート、腕にはピンク色のシュシュ

 

確かに似合っている、似合ってはいるし間違いなく可愛いのだが、その小学生女児が着ていそうなコーデがあまり気に入らなかったのかオウルは(マルクト以外に)怒りを露にした

 

因みに全員悪ふざけで小学生女児みたいな服を選んだのではなく、それが本気でオウルのイメージにピッタリだと感じたからだ

 

日頃からメスガキやクソガキのようなムーブを(主に酒泉相手に)していた故か、半分くらいは自業自得である

 

 

「……」

 

「……なんですかその目は、笑いたければ笑えばいいでしょう」

 

「いや、いいんじゃね?ちょっと騒がしすぎる時もあるけどお前って結構明るいし、そういう意味では似合ってるよ、うん」

 

「……ふーん?貴方にしては珍しく素直じゃないですか、明日は槍の雨でも降るんでしょうかねぇ」

 

「ただ褒めただけでその反応かよ……俺だって可愛いもんを可愛いって素直に褒めれる程度の余裕はあるっての」

 

「……褒め方としては100点中23点ですが淑女への接し方としてはギリギリ及第点ですね。まあ、一応感謝しておいてやりますよ」

 

 

まさか酒泉まで素直に褒めてくると想像だにしていなかったのか、オウルは〝この男もそこそこ可愛いところがあるじゃないですか〟と上機嫌に胸を張る

 

しかし忘れてはいけないのが折川酒泉はクソボケであるという事、この男が本当に余裕を持っているのならアコとレスバなど繰り広げないしミカからの煽りだってガン無視している筈だ

 

 

「それに、ピンク色の服は頭の中がピンクなお前にピッタリのイメージカラー────ケツを蹴るんじゃねえ!?」

 

「失礼、踵にスカートが引っ掛かって足が滑りました」

 

「そうなのですか?我はオウルの身体に合ったサイズを選んだつもりだったのですが……」

 

「本気にしなくていいよお姉様、そもそもミニスカートに踵が引っ掛かる訳がないんだから」

 

「あ、あれは……お二人のじゃれあいのようなものなので……」

 

「まあ…やはりオウルと酒泉は仲良しなのですね」

 

「仲良くねぇ!!!」

 

「仲良しじゃないですお姉様!!!」

 

「息ピッタリじゃん」

 

 

取っ組み合いながら同時に叫ぶ二人、取っ組み合いと言っても酒泉は反撃せずただ襲い掛かるオウルの両手を自身の両手で押さえているだけだが

 

まるで恋人同士が正面から手を握り合う様な光景を作り出してしまっている事に気付かぬ二人、これを知り合いに見られでもされたらロリコン疑惑が加速する事間違いなし

 

 

「ああもう!店内で暴れんな!ほらさっさとレジ行くぞ!」

 

「貴方が余計な煽りを入れなければよかっただけの話でしょう!?」

 

「日頃から余計な煽りを入れてくるお前にだけは言われたくねえ!」

 

《……?酒泉さん、どこへ行くつもりですか?》

 

「え?だからレジに……」

 

「まだ酒泉の試着が済んでない」

 

「……!そうですよ折川酒泉!まだ貴方の分が終わってないじゃないですか!」

 

「俺ぇ?俺は別にいいよ、自分用の服くらい家にあるから。つーかシロコさんとプラナの服を買う金は連邦生徒会から振り込まれてる生活費から出してるし、マルクト達の服を買うのはミレニアムから振り込まれてる生活費からだしな、俺の分はねーよ」

 

 

それらしい理由で断る酒泉を前にぐぬぬと口元を歪ませるオウル、そんな彼女を見下ろして〝俺まで犠牲になってやる義理はない〟と言わんばかりに酒泉は鼻で笑った

 

確かに酒泉に預けられた金が彼女達の為の物ならば、それを自分だけの為に使うなどあってはならない事だろう

 

 

「では、我から酒泉に服を〝ぷれぜんと〟するのはどうでしょうか?」

 

「……ん、私からも」

 

「えっ」

 

「────それです!」

 

 

では、自分の意思ならばどうだろうか

 

マルクト自身が、シロコ自身が、自らの意思で酒泉の為に使うと決めたのならそこに酒泉が介入する余地は無い

 

つまり合法的に酒泉を着せかえ人形にする事が可能、そんな悪魔的な計画をオウルは思い付いてしまった

 

 

「我等は日頃から酒泉の世話になっています、ここでその礼をさせてはくれませんか?」

 

「は、ははっ……やだなー、家族なんだから礼とかいいってー」

 

「酒泉、これは我自身が望んだ事なのです。本来の役目から解放され、改めて〝何がしたいか〟と考えた時に浮かんだのが……貴方への礼です」

 

「私達も……酒泉に貰ってばかりだったから偶には返したい」

 

《同意、酒泉さんは〝私にしてあげられる事は限られている〟と仰っていましたが、それは私の方も同じ事です》

 

「借りっぱなしっていうのも悪いしさ……これぐらいはさせてよ」

 

「お、おいおい!だから気にしなくていいって!俺は家族として当然の事をしてるだけなんだからさ!」

 

「家族に日頃のお礼をするのだって当然の事、偶には酒泉も私達に甘えるべき」

 

「ほら!どうするんですか!?こんな多くの善意をまさか断ったりはしませんよねー!?」

 

「こ、姑息な手を……!」

 

 

折川酒泉という男の性格上、こういう詰められ方をされると絶対に断れない……筈だ

 

その隙を突いて好き勝手着飾ったり似合ってねーと嘲笑ったりほんのちょっぴりだけ感謝も込めてアクセサリーを選んでやればいいだろう、そう決心するとオウルはラストアタックを〝彼女〟に任せるべく自ら一歩引き、そして───

 

 

 

「お、お兄様……だめ、ですか……?」

 

「早く試着室に入らせろ!俺はお兄様だぞ!」

 

 

 

 







次回、大大大好き


ケイ「嫌です……嫌です!酒泉に私以外の家族が増えるなんて!10年以上は私のことを引きずっててほしいです!」
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