クソボケのことが大大大好きな生徒達   作:あば茶

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超能力戦争観ろ(ダイマ)


?????????????(マルクトその11)

 

 

 

「おはようございます、お兄様!」

「はいおはよう……アインはいつも早起きで偉いな」

「わっ……えへへ」

 

 

朝食の準備をしていると後ろからアインが寄ってきたので頭を軽く撫でてあげると、アインは嬉しそうに目を細めてくれた

 

ただ調理中に油が跳ねると危ないので〝ちょっとだけ待っててくれ〟と言ってからソファーに座ってもらった

 

 

「あーあ、すっかり懐いちゃって」

「ソフ……おはようさん」

「はいおはよう……にしても相変わらずアインには甘々だね」

「なんだ、お前もやってほしかったのか?ほれほれ」

「いや、違っ……だから違うってばぁ!」

 

 

と、叫びつつ何故か逃げ出そうとしないソフを一頻り撫で終えてから最後に頭をぽむぽむと優しく叩く

 

アインと一緒に待っててくれと伝えれば、少しだけ赤い頬で恨みがましそうに俺をじろっと睨んでからソファーへ駆けていった

 

 

「ふふふ、隙あr────」

「それ言ったら隙にならんだろクソガキ」

「ぬあああああああああ!!!」

「朝は〝おはよう〟だろ?」

「お、おはよぐああああああああ!!!」

 

 

ソフと会話を終えたタイミングを見計らってオウルがカンチョーを仕掛けてくるが、それを華麗に回避しつつクソガキの頭を両の拳で挟んでぐりぐり攻撃を仕掛ける

 

この辺で勘弁してやるかと拳を離してから雑に頭をわしゃわしゃ撫でると、オウルは涙目で〝クソボケの分際でぇ……!〟と呟いてからソファーへ逃げ込んだ

 

 

《……起動》

「おうプラナ、おはよーさん」

《おはようございます、現在時刻は───》

「涎跡残ってるぞー」

《…………現在時刻は6:28分です》

 

 

まな板の後ろらへんに置いていたボロボロのシッテムの箱が起動すると、口の端から涎の跡が垂れているプラナがひょこっと姿を現した

 

それを指摘してあげるとプラナは自分の服の袖で口元を拭いてから何事も無かったように平然と言葉を綴った

 

 

「酒泉、酒泉、聞いて」

「はいおはよう、どした?」

「おはよう……さっき寝起き後に〝午前の紅茶〟でペットボトルチャレンジしたら一発で成功した」

「そうか、心底どうでもいいな」

「ん……伝える相手を間違えた、簡単にペットボトルチャレンジを成功させられる酒泉に私の気持ちは理解できない」

 

 

ドタドタドタ!!!と階段を駆け降りる音が聞こえてきたので〝シロコさん朝から騒がしいなー〟とか思っていたらくっそ下らねえ報告を受けた

 

ていうか空になったペットボトルはちゃんと袋に分けときなさいっていつも言ってるでしょうが、めんどくさがって部屋に放置してんじゃないよ

 

 

「ちょっと砂狼シロコ!なんのつもりですかいきなり引っ張ってきて!」

「ん、三人に素晴らしい物を見せてあげる」

「言っておきますが逆さになったペットボトルを見せつけるつもりならはっ倒しますからね」

「ていうかさっき階段おもいっきり走ってたし今頃部屋でペットボトル倒れてるんじゃない?」

「……!?」

「もしや貴女ってアホなのでは?」

「だ、大丈夫ですよシロコさん!もし倒れていたとしてもまた成功するまで私がお手伝いしますから!」

「やっぱりアインは良い子、こんなガキンチョと一緒に居たら教育に悪いからこれからは私が育ててあげる」

「はいぃ?アインは私が育てた子ですがぁ?」

「なんでペットボトル一つで家庭内分裂起きそうになってるのさ……」

 

 

《……今日も平和ですね》

「だな」

 

 

いつも通りの声が、いつも通りの場所で、いつも通り聞こえてくる……こんなに嬉しい事はない

 

間違いなくここが自分の帰るべき場所だと、彼女達の笑顔がそれを示してくれる

 

 

「……」

「マルクト……おはよう、よく眠れたか?」

「はい」

「そうか、ならよかった」

「……」

 

 

少し遅れて返事をするマルクト、虚空でも眺めている様に呆けているその様は明らかに普段の様子と違っていた

 

……唯一いつも通りじゃない点を上げるとすれば、マルクトの様子だけだ

 

ここ最近、マルクトと会話していると一瞬何かを考える様な素振りを見せる事が多々ある。しかもその頻度は俺と会話している時が一番多い

 

 

「あ、お姉様だ」

「おはようございます、お姉様!」

「聞いてくださいお姉様!砂狼シロコが私から親権を取り上げようと……!」

「皆さん、喧嘩はいけませんよ?我等は共に生活を営む家族なのですから」

 

 

にっこりと微笑みながらやんわりと注意するマルクト、恐らく本人的には普段通りの自分を取り繕えているつもりなのだろう

 

しかし残念ながら俺以外の奴等もマルクトの様子がおかしい事に薄々と気付いてきている、敢えて口にしないのは確証を得ていないからだ

 

……んー、これは勘でしかないけどマルクトは俺に何かを伝えようとしている……気がするな

 

先程述べた様に俺と話してる時にフリーズしやすいし、それに特に意味もなく視線を向けられる事が増えてきたような気もするし……

 

マルクトが俺に伝えたくても伝えられないこと、それは一体……あ、もしかして

 

 

「なあプラナ、もしかして俺鼻毛はみ出てる?」

《いえ、特には》

「じゃあ髭が濃くなってきたとか」

《剃り残し等は見受けられません》

「最近腹回りが太くなってきたとか……」

《それもありません、あれだけの糖分を摂取しておきながらスタイルに関しては驚異のキープ率を誇っています》

 

 

なんだ、伝え辛い内容だから遠慮してたのかと思ったけどどれも違うのか……だとしたら何が原因───あ゛っ゛!?

 

もしかしてアレか!?加齢臭か!?この年齢にして既に〝パパくさーい〟と言われてしまう全ての根元を纏ってしまっているとか……!

 

「ちょっ……シ、シロコさん!シロコさんヘルプ!ちょっと俺の匂い嗅いでみてくれ!」

「ん、わかった」

「お、お兄様……!?」

「あの変態は急に何を言ってんですかね」

「それを平然と受け入れるシロコもおかしいけどね」

「でもソフだって以前こっそり酒泉の服を───も゜っ゛」

「だからあれは洗濯物取り込んでただけだって!」

「ど、どうだ!?何か匂ったりとかは……」

「……いつもと変わらない、酒泉の匂いがするだけ」

「お、俺の匂いってどういう事だ!?臭いのか!?臭くないのか!?結局どっちなんだ!?」

「大丈夫、臭くはない」

 

 

よ、よかった……少なくとも匂い云々ではなさそうだ……本格的に理由が分からなくなってきたが、とりあえず思い浮かぶ限りでの最悪なパターンは全部潰せただけヨシとしよう

 

……いや、一番最悪なのはシンプルに俺が嫌われてるだけとかそういうパターンだった場合だけどな

 

でもマルクトに害を加えるような悪事を働いた覚えもないし、流石に何の理由もなく嫌われたとは思いたくねーな

 

 

「……お、お兄様」

「……ん?」

「お姉様の事なのですが……」

 

 

一人であれこれ考えていると突然服をくいっと引っ張られ、視線を降ろすとシロコさんとオウルの親権争いからいつの間にか脱出していたアインが不安気に俺を見上げていた

 

 

「……やっぱアインもおかしいと思うか?」

「は、はい……その、責める意図はないのですが……特にお兄様と関わってる時に様子がおかしくなる事が多いので喧嘩でもしたのかと……」

「心配すんな、喧嘩とかは一切してないから」

 

 

むしろ何もしてないから困ってると言うべきか、直前に口喧嘩とかでもしていればマルクトの様子が変になった理由にも当たりがついたというのに

 

……よし、こうなったら今日帰宅したらすぐにでも話し合うとしよう。純粋にマルクトが心配なのもあるが、お兄様としてこれ以上妹達を心配させる訳にはいかないしな

 

 

 

 

 

 

 

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「そう思ってたのに……余計な仕事増やしやがってよぉ……」

「くそっ!〝チョコとミントを分けようの会〟である私達がこんなあっさり捕まるなんて……!」

「お前達まであんな歯みがき粉の肩持つのかよ!失望したぜ風紀委員会!」

「空崎さん、こいつら全員死刑でよくないっすか?」

「駄目に決まってるでしょう?」

 

 

現在時刻午後の9時、まさかこんな時間に問題児共が暴れ出す計画を立てていたとは!……なんて今更驚いたりはしない、ゲヘナではよくある事だし

 

大人に補導される可能性なんてお構い無しに暴れ散らかす、そんな輩なんざゲヘナには幾らでもいるからな

 

 

「戦闘時間より張り込み時間の方が長かったですね……ま、俺と空崎さんの二人掛かりならそれも当然ですけどね」

「うん……それよりも酒泉」

「はい?」

「デストロイヤー、似合ってるね」

 

 

ケイさんとアリスさんに作ってもらった第二のデストロイヤーを肩に担いでいると空崎さんが微笑ましそうに俺を見つめながら褒めてくれた

 

俺としては馬子にも衣装的な感じでまだまだこの銃に相応しい男に成れていない自覚があるのだが、空崎さん本人が似合ってると言ってくれたのならそういう事になるのだろう

 

 

「ありがとうございます……この武器本当に凄いですね、範囲攻撃だけじゃなく狙撃用にも変えられるなんて。それに何より……」

「何より?」

「空崎さんと一緒に戦ってる様な気がして、それだけで不安が消し飛びます!」

「……酒泉って私のこと好きすぎるよね」

「好きじゃなかったら〝支える〟なんて約束しませんけど?」

 

 

何を当たり前の事を言っているのだろうかこの人は、我前世からの追っかけぞ?ファンで居た時間は天雨さんより圧倒的ぞ?

 

むしろこれでも厄介オタク心を抑えている方だが?本気出したら俺の寿命が尽きるまで空崎さんの魅力を語り続けられますが?

 

 

「で、そんな私の事が大好きな酒泉は……どうして私を置いて世界の危機に立ち向かっていたの?」

「あ、あの時は調月さんに〝調査したい場所があるから貴方の眼を貸してほしい〟って言われただけで……まさかあんな大事件に繋がるとは思ってなくて……」

「ふふ……冗談よ、事情はもう全部聞いたから。それに、そんな離れた場所からでも酒泉は私を頼りにしてくれてたって証明もあるし」

 

 

嬉しそうに笑みを浮かべる空崎さん、その視線は俺の肩のデストロイヤーに向けられていた

 

……あの時、どんな相手にも勝てる装備を想像しようとしたら自然と銃を担いでいる空崎さんの背中が浮かんできたんだよなぁ

 

もしかしたら俺は俺が思っている以上に空崎さんを信頼しているのかもしれないな

 

 

「さて、とっととコイツらしょっぴいて俺達も帰りましょっか」

「そうね……ところでだけど、酒泉はこの後用事とかある?もし良ければ帰りにどこかで食事でもしない?……この時間だと空いてるところは限られてるだろうけど」

「あー……すみません、今日はちょっと早く帰らないといけない事情がありまして……」

「それなら仕方ない……一応聞くけどまた家族絡み?」

「はい」

 

 

とはいえ、今から最速で帰ってもマルクト達は既に寝ているかもしれないが……無理に起こす訳にもいかないし、そうなれば話し合いはまた明日以降に持ち越すしかない

 

因みに空崎さんが〝また〟と聞いてきたのは、少し前までマルクト達を住まわせる為の手続きやらでドタバタしていて周囲からの誘いを断りまくっていたからだ

 

……その結果がこの前のケイさんぶちギレ事件に繋がるという訳ですね、はい

 

 

「…………そう、すっかり家族の方にお熱って訳ね」

「そ、空崎さん……まさか空崎さんまで〝白ければ誰でもいいんだ〟とか言い出すんじゃないでしょうね!?流石に同じ展開は勘弁っすよ!?」

「何の話……?」

 

 

あの時は本気で胃に穴が空きそうだったので二度と同じ体験はしたくない、いや勿論悪いのは俺なんだけどさ

 

また地獄の様な空気が訪れるのを恐れていると、それを察してか空崎さんはくすりと笑いながら〝大丈夫よ〟と呟いた

 

 

「最近二人で出掛ける機会が減ってきたのは確かに寂しいけど……でも、その銃のお陰で確信が持てたから」

「確信?……えっと、何のですか?」

「誰と仲良くなっても、何処に行こうとも、最後に酒泉が求めてくれるのはこの私だってこと」

 

 

トン、と

 

空崎さんの指先が俺の胸元を優しく突く

 

小悪魔的なその仕草と表情を前に一瞬色気を感じてしまうが、即座に首を左右に振って邪な気持ちを排除した

 

 

「ちょあよ」

 

 

排除できてねぇ

 

自分の発言を誤魔化すべく、咄嗟に言葉を捲し立てた

 

 

「……そ、空崎さん!代わりといっちゃなんですが今度の昼休み久しぶりに弁当交換でもしませんか!?暫くやってなかった間に結構料理の腕上げたんすよ自分!」

「……うん、久しぶりにやろう。でもそうなると……午前の内に問題児達を全員片付けないといけないね」

 

 

〝酒泉との時間を邪魔されたくないから〟と、その時だけ空崎さんの表情は恐ろしく冷たい無表情へと変貌していた

 

そんな空崎さんも素敵だとは思うが、出来ればこの人には笑顔で居てほしいので当日は俺も気合い入れて問題児の掃討に乗り出さねば

 

 

「……でもそっか、酒泉の家族は誰かに邪魔される事もなく酒泉と一緒の時間を過ごせるんだ」

「え?まあ……緊急出動時以外はそうですね……」

「…………酒泉と一緒に住んでる人達って、キヴォトス全土を巻き込む事件を起こした人達ばかりよね」

「あ、あの……空崎さん?もしかしてシロコさん達を危険視してるんですか?そんなに警戒しなくてもあの人達はもう────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまり……私も世界を滅ぼそうとすれば酒泉と家族になれる……?」

 

「空崎さん?????」

 

 

 

 

──────────

 

 

 

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──────

 

 

 

 

 

 

「ただいまー……」

 

 

時刻は22:38、何故学生がこんな時間に帰宅しているのかと聞かれたら〝ここがキヴォトスだから〟と答えるしかない、更に付け加えるなら〝ここがゲヘナだから〟とも

 

別にしょっちゅうこんな時間に帰宅してるって訳じゃないんだけどね、これも全部こんな真夜中にアイスクリーム屋襲撃を起こそうと企てた奴等の仕業なんだ!あとついでに薄汚いオルフェノクと陸八魔アルの仕業なんだ!

 

 

「さてさて……皆は……」

 

 

起きてるか起きてないか微妙な時間帯、万が一を考えて足音と気配を殺しながら廊下を歩いていると、リビングから明かりが漏れ出ているのを確認した

 

まだ誰も寝ていないのか、それとも皆が寝ている中シロコさんがまたこっそり冷蔵庫を漁りにきたのか、どちらか確認するべくそっと扉を開ける

 

 

「……マルクト?」

 

「ぁ……おかえりなさい、酒泉」

 

 

視界に映ったのは犯行現場を目撃されたかの様にアイスを咥えたまま耳を立てて驚いているシロコさん……ではなく

 

スマホも弄らず、テレビも点けず、ただソファーにちょこんと座っているだけのマルクトだった

 

 

「えっと……皆まだ起きてるのか?」

「いえ、我以外は全員寝床につきましたよ」

「そっか、マルクトもこれから寝るのか?」

「いえ、我は……」

 

 

此方の問いに答える事なく何かを言い淀むマルクト、そんな彼女を前にして改めて様子がおかしい事を確信する

 

夜分遅くまで付き合わせてしまうのはマルクトに悪いが……やはり今からでも話し合いをするべきだろうか───

 

「あの、酒泉はこれから就寝するのでしょうか」

「いや、もう少し起きてようかなって」

「……では、少しだけ御時間を頂けないでしょうか。少々お話したい事がありまして」

「……おう」

 

 

どうするべきか悩んでいると、なんとマルクトの方から話し合いの申し出をしてきた

 

マルクトとの話し合い抜きにしても風呂やら食事やらでどのみち遅くまで起きてるつもりではあったし、タイミング的には丁度良かったのかもしれない

 

 

「ちょっと待ってくれ、今コーヒー淹れてくるから……あ、マルクトも飲むか?」

「我の分はお構い無く……いえ、やはり我の分もお願いしてよろしいでしょうか」

「りょーかい、砂糖はいるか?」

「必要ありません」

 

 

前に飲んだものと同じ、ただ湯で溶かすだけの簡単なインスタントコーヒー

 

高い豆を使っているわけでも高い機器を使っているわけでもない、そんなただの安物がこれまた良い香りを醸し出している

 

そんなコーヒーが入ったマグカップをマルクトに手渡し、ソファーに座っているマルクトの隣に腰掛けた

 

「はいよ、ただのブラックコーヒーだ」

「ありがとうございます」

「知ってるか?実はコーヒーにも色んな種類があってな、その中に〝ウィンナーコーヒー〟っていうのがあるんだぜ」

「ウインナー……もしかしてそのウインナーというのは一昨日の朝食の時、目玉焼きの隣に置かれていたあのウインナーの事でしょうか」

「はは、やっぱそう思うよな?俺も子供の頃は全く同じ勘違いしてたよ……ウィンナーコーヒーってのは上にクリーム乗っけたコーヒーの事だよ」

 

 

恐らくマルクトの頭の中にはコーヒーの中にウインナーが一本突き刺さっている光景が浮かんでいるだろう

 

昔調べた時の記憶ではウィンナ・コーヒーという呼び方もあるらしいが、名前のインパクトがあまりにも強すぎて今じゃすっかりウインナー呼びばかりだ

 

 

「そうでしたか、これはお恥ずかしい勘違いを……」

「まあ、そういう勘違いってのは歳を重ねる毎に答え合わせして正していくもんだからな。俺もマルクトもまだまだ若いんだから、知らない事はこれから知っていけばいいさ」

「……これから」

「ああ」

 

 

特にマルクトなんてついて最近目覚めたばかりだ

 

知識としては持っているが実際に見た事はない、マルクトには是非そんな経験を積み重ねて世界の事をもっともっと知ってほしい

 

その為なら俺は幾らでも力になろう、例え彼女の抱えてる悩みがどれ程重かったとしても────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もしかしたら、我には〝これから〟が存在しないのかもしれません」

 

「………………え?」

 

 

そう決意した矢先、俺が眼にしたのは心細そうにマグカップを両手できゅっと握るマルクトの姿だった

 

……〝これから〟が存在しない?何だその言い方は、それだとまるで────マルクトが消えてしまう、そう聞こえてしまうじゃないか

 

いや、有り得ない、これはきっと俺が深く捉えすぎているだけで本当は言葉の綾か何かなのだろう

 

 

「酒泉、お願いがあります。もし我が再び人類に矛先を向けてしまう事があればその時は……我を破壊してください」

「……マルクト、どこでそんな質の悪い冗談を覚えてきた?」

「冗談などではありません、あの時の戦闘を思い出して我は確信しました、酒泉が本気になれば誰も犠牲にする事なく我を破壊できると」

「そうじゃねぇ、そもそも何がどうして人類と敵対する事になるってんだ」

 

 

というか犠牲云々に関しても言いたい事が山程ある、俺はアンタを破壊するつもりはないって事やアンタが死んだ時点で犠牲は出てるんだとか

 

……落ち着け俺、あまり興奮しすぎるな。一体何があってマルクトがそう結論付ける事になってしまったのか、それを聞いてからでも遅くない

 

〝家族〟への説教はそれからだ

 

 

「我は未だ、他者に敷かれた道を歩み続けているのかもしれません」

「……どういう事だ?だってアンタはもう、この世界をどうこうしようとは思ってない筈じゃ……」

「我の中に芽生えてきているのです、他者を縛ろうとする意志が……他者の自由意思を、奪おうとする意志が。これでは嘗ての我やデカグラマトンが成そうとしていた事と何ら変わりありません」

 

 

ここ暫くマルクトがずっと抱えていた悩みの正体、それは俺が想像していた以上に深刻な問題だった

 

〝自分を殺してほしい〟とまで言い出してしまう程追い詰められていたなんて……俺は馬鹿だ、もっと早く無理矢理にでもマルクトから悩みを聞き出すべきだった

 

 

「我は怖いのです、我自身の意識が〝使命〟に上書きされ、そして……自由を得た妹達に、我に居場所を与えてくれた酒泉達に害を与えてしまうのが」

 

 

俯きながら語るマルクト、マグカップを包んでいるその両手は暖かいどころか少し熱いくらいなのに実際には寒そうに震えていた

 

そんな彼女の両手に、俺は────自分の両手を被せ、少しだけ力を込めて握った

 

 

「大丈夫だマルクト、アンタは絶対に死なせない」

 

「何度意識を奪われそうになってもその度に呼び止めてやる、何度意識を奪われても俺が何度でも連れ戻してやる、何回暴れてもアンタの愛する家族は俺が全員守ってやる」

 

「破壊してくれなんて悲しい事は言うな。俺達はアンタが思ってるほど弱くない、例え暴走しようとあの手この手で必ずアンタの自我を取り戻してみせる」

 

「だから頼む───家族らしく、俺達に甘えてくれ」

 

 

口先だけではない、実際に俺達はデカグラマトンからマルクトを取り戻している

 

ならば、再び同じ事が起きようとなんとでもなる筈だ────俺達全員で戦うのなら

 

安心してくれたのか、それとも自然と収まっていたのかは分からない。しかしマルクトの両手の震えは、確かに俺の両手の中で止まっていた

 

 

「……わかり、ました」

 

「……信じてくれてありがとな、マルクト」

 

 

とはいえ、根本的な解決には至っていないのでまだまだ安心はできない状況だ

 

……よし、明日にでもミレニアムに行って調月さんか明星さんに今回の件を相談しよう

 

その為にも……

 

 

「マルクト、先ずは主にどういった状況下でその〝支配したい〟って感情が芽生えたのか教えてくれるか?もしかしたら異変解決の糸口になるかもしれないし」

「状況、ですか……そうですね、主に我は酒泉が関係している時にその様な感情が沸き立ってしまいます」

「……俺が関係してる時?」

「いえ、主にというよりかは〝全て〟ですね」

 

 

……俺が関係している時だけ物騒な思考になるって事か?

 

 

「その……例えば?」

 

「酒泉の帰りが遅くなり〝ももとーく〟で確認を取ろうとしても既読が付かない時や、酒泉が〝そーしゃるげーむ〟の中の女性に興奮している時など……でしょうか」

 

 

……ん?

 

「あとは酒泉が他の女性に自分の所有物扱いされた時や、我の知らぬ者の前で酒泉が我の知らぬ表情をした時など……我の自己分析では、酒泉が家族以外の女性と親しそうにしている時にこの様な現象が起きてしまいます」

 

「えっと……それはつまり、俺に対して家族愛なのを感じてるとか……家族への嫉妬心とか……?」

 

「我も初めはそう考えていました、ですが不可解な事に酒泉以外の家族に対しては同様の現象は起きないのです」

 

 

だとしたらそれじゃあ残る選択肢は……いやいやいや、それは流石に自惚れすぎだろ

 

まさかそんなね……恥ずかしい妄想すんなっての俺

 

 

「唯一、酒泉が他の女性と関わっている時にだけ〝管理せねば〟という感情が湧いてくるのです」

 

いやこれ確定じゃね?

 

だから違うって、きっと別の理由が……じゃあどんな理由が残ってるってんだよ

 

それは……

 

 

「ただ酒泉が我の元へ戻ってきた途端、それらの感情が全て裏返ったかの様に歓喜へと変化していくのです」

 

 

……あの、これやっぱ……

 

 

「お願いします酒泉、どうか……」

 

 

マグカップをテーブルに置き、身を乗り出して俺の両肩に手を置いてくるマルクト

 

まるでソファーで押し倒されたかの様な体勢になってしまっているが、マルクトの不安気な瞳を見るに必死すぎて本人もその事に気付いていないのだろう

 

 

「どうかこの現象を……」

 

 

そんな縋る様な彼女を振り払うこともできず、俺はただ───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今も我の中で膨大し続けているこの感情の正体を教えてくれませんか……?」

 

 

自分なりに見つけた答えがただの自惚れなのか、それとも真実なのか

 

言うか言うまいかただひたすらに二つの考えが頭の中で渦巻いていた







ちくしょう!!!!ちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょう!!!!!!
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