クソボケのことが大大大好きな生徒達   作:あば茶

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キラキラ部の間にクソボケ挟んだら売れたわwww


これが私の(マルクトその12)

 

 

 

トマト、レタス、コーン、ゆで卵、赤緑黄白の四色で彩られてサラダの上にはマヨネーズが網状に掛けられている

 

目玉焼きは半熟、その隣には焼かれたベーコンが

 

二枚の食パンにマーガリンを染み込ませれば、カリカリに焼けた表面が狐色に染まっていく

 

全員分のコップにオレンジジュースが行き渡ると、家主はジュースのパックをテーブルの中央に置いて手を合わせた

 

 

「いただきます」

 

「「「「《いただきます》」」」」

 

 

そして、何の変哲もない朝が始まった

 

 

「酒泉、今日は何時に帰ってくるの?」

「何事も無ければ19時くらい、何かあったらもっと遅くなる」

「言っちゃあれだけどゲヘナって何事も無い日の方が少なくない?学生が普通の社会人に混じって帰宅してるのやっぱおかしいって」

「いやまあ、そこはトリニティの正実とかヴァルキューレの生徒も似たり寄ったりじゃないか?学園自体が大きかったり巡回範囲が広かったりするとどうしても忙しくはなるって」

「……いっそのこと風紀委員辞めちゃえば?学生の内から社畜みたいな生活する必要なんてないでしょ」

「なるほど、考えましたね……そうすれば家で一緒に居られる時間が増えると───「ゆで卵一個貰うね」───この泥棒猫っ!!!」

「勝手に自分の考えを私に代弁させないでよ、オウルじゃないんだからそんな寂しがったりしないって」

「ソフ、貴方……食事中にだいべ「それ以上口開いたら本気で縫い合わせるから」───失礼しました」

 

 

嘗ては一人分の音しか聞こえてこなかった食卓

 

しかし今は箸と皿がぶつかるカチャカチャした音や塩の入った瓶を置く音などが自分以外の席からも聞こえてくる

 

それに雑談も、(内容はともかく)家内から響く自分以外の声は間違いなく酒泉の胸を暖かい感情で満たしてくれていた

 

「心配してくれてありがとな、風紀委員を辞めるつもりはないけどなるべく一緒の時間を作れる様に努力するからさ」

「は、はあ!?もしかしてオウルが言ったこと本気にしてるんじゃ───撫でるなぁ!?」

「でも振り払おうとはしないんですね貴女」

「それに社畜みたいな生活って言うけど皆が家事を分担してくれてるお陰でそれも大幅に改善されたしな、本当に助かるよ」

「き、気にしないでくださいお兄様。私達は家族として当たり前の事をしているだけですから……だ、だから今日もお風呂掃除頑張りますね」

「そっか、今日はアインの当番か」

「は、はい!ピカピカに磨いておきますから、帰ってきたらゆっくり身体を休めてくださいね!」

「ああ、ありがとなアイン」

「えへへ……」

 

 

何かを期待する様にうずうずとしているアインの頭を酒泉が撫でると、アインは目を伏せながら照れ臭そうに笑う

 

酒泉の言葉は偽りでも世辞でもなく、今まで一人でこなしてきた家事を複数人が手伝ってくれているので独り暮らし時代に比べ、心身共にかなり負荷が軽減されている

 

 

「つーわけでシロコさんも飯当番よろしくな、今日は夕食作り置きとかしてないからさ」

「ん、任せて。最近になって漸く酒泉に奪われた生活力が戻ってきたから、この前なんて目玉焼きを崩さず両面焼きに出来た」

「別に奪った覚えはないけどな」

「今日はありとあらゆる野菜肉調味料をふんだんに使った〝スペシャルシロコ丼〟を皆に振る舞ってあげる」

「そういうオリジナル料理作るのはもう少し感覚取り戻してからの方がいい気が……」

「ん、余裕」

「……プラナ、俺がいない間それとなーくフォローしてやってくれ」

《了解しました、出来る事は限られていますがやってみます》

 

 

嫌な予感が脳裏を過った酒泉はプラナにシロコのサポートをお願いするも、ふんすふんすとやる気満々なシロコの姿を見て余計に不安が表情にこびりついてしまった

 

一応彼女の名誉の為に補足しておくが本来の〝砂狼シロコ〟は決して料理下手属性という訳ではなく、むしろ度重なる悲劇によって孤独だった期間を長く経験している為、最低でも一人で世界を生き抜く程の生活力はある……筈だった

 

しかし何の因果か、シロコと同じく大切な者達との別れを経験した事のある酒泉が彼女と出会い、そして彼女の心の穴を埋める様に寄り添った結果────砂狼シロコは見事な甘やかされ上手なワンちゃんへと退化し、温もりを得た代償として牙を抜かれると共に生活能力まで奪われてしまった

 

だが、そんな彼女も最近我が家にやって来た〝後輩家族組〟にだけは負けまいと〝先輩家族組〟としてのプライドを刺激されてか、徐々に徐々に取り戻しつつあった

 

 

「……マルクト、料理初心者のアンタにこんな事頼むのもなんだけど、もしシロコさんが明らかに可笑しな行動を取ろうとしたら力ずくでもいいから止めてくれないか?」

「可笑しな行動……というのは?」

「調味料を過剰に入れようとしたり、必要も無いのに料理酒で無駄にフランベしようとした時とか」

「……分かりました」

 

 

が、それでもまだ心配なので念には念をとマルクトにストッパー役をお願いする酒泉

 

その不安気な表情の背景には過去にシロコが無理して料理酒で慣れないフランベに挑戦した結果、台所が燃えそうになってしまった過去

 

そしてプルプルと怯え震える手でフライパンの上のチャーハンをひっくり返そうとした結果、コンロの上に盛大にぶちまけた過去という二つの失敗例があったからだ

 

何故そんな事になってしまったのかと聞かれたら、これもやはり〝先輩家族組としてのプライドを保つ為〟としか答えられない

 

先輩としてのIGENを見せつける、その為に背伸びした事を行おうとした結果が上の有り様である

 

そしてチャーハンすらひっくり返せなくなっていた事に心を砕かれた彼女は、酒泉の提案でまずは簡単な料理から一人でチャレンジしていく事にした

 

 

(……まあ、ただ焼くだけなら問題無いだろ)

 

 

何度も言うが彼女は料理が下手な訳ではない、ただ暫く本格的な料理をしてこなかったせいで腕が鈍っているだけだ

 

それならば何も心配する事はない、一つのフライパンで色んな種類の肉をいっぺんに焼こうとした結果均等に火が通らず、肉が生焼けになってしまう……なんて失敗をする事もないだろう

 

自分でフラグを立てている事にも気づいていない酒泉はテーブルの中央に置かれているオレンジジュースのパックに手を伸ばし、お代わりを注ごうと────

 

 

「そういえば酒泉、昨夜の件についてですが───」

「───っ、」

 

 

べちゃっ、と

 

マルクトの口から〝昨夜〟という言葉が出てきた瞬間、酒泉の手が震え、コップの位置から逸れたオレンジジュースがテーブルに零れる

 

 

「あーあー、何やってんですかこのおっちょこちょいは」

「あ、ああ……悪い、今拭くよ。マルクト、ちょっとそこのテーブル拭き取ってくれないか?」

「いえ、我が拭くので酒泉は食事を続けてください」

「いやいや、自分で溢したんだから自分で拭く───っ!?」

 

 

すっ、と

 

マルクトの手からテーブル拭きを取ろうとした瞬間、酒泉のごわごわした手がマルクトの滑らかな手と重なる

 

すると酒泉は〝ついうっかり指先が熱されたフライパンに触れてしまった人〟の様に反射的にマルクトから手を離し───仰け反った勢いで椅子ごと床に倒れてしまった

 

 

「はっ───」

「お、お兄様!?大丈夫ですか!?」

「……あ、ああ……気にしないでくれ、急に座ったままバク転したくなっただけだから……」

「それを〝気にするな〟って相当無理があるんだけど」

《理解不能、変わった生徒さん達を相手にしてきたせいで酒泉さんの性格にまで影響が出てきたしまったのでしょうか》

「か、かもしれないなー!はは、はははは!」

 

 

話を誤魔化す様にサラダを一気にかきこむ酒泉

 

ほんの数噛みする程度でろくに咀嚼せず雑に飲み込み、そして行儀悪くモゴモゴしながらほひほうはまれひは御馳走様でしたと手を合わせ────

 

 

「もしや、体調が優れないのでしょうか?……昨夜の話の続きをしたかったのですが、それどころではなさそうですね」

 

「ごごぼっ!?ごぼぼぼっ!?」

 

そして、大して咀嚼せず中途半端に形残った茹で玉子が酒泉の喉に詰まった

 

洞窟に住んでそうな鳴き声を上げながら酒泉は即座にオウルのコップをぶん取り、オレンジジュースを茹で玉子ごと喉に流し込む事で辛うじて窒息を免れた

 

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?あ、貴方……何してくれてんですか!?人のコップに勝手に口つけるなど、これでは私が貴方ごときと間接───」

 

「ご馳走さま!学校行く準備してくるから!」

 

「乙女のコップに口つけておきながらスルー!?な、なんて贅沢な……!?」

 

「乙女扱いするには心が汚れすぎてるし多分女の子として認識されてないんじゃない?」

 

 

逃げる様に部屋を飛び出す酒泉、その情けない背中を見送りながらオウルは〝チッ!〟とわざと聞こえやすい舌打ちを放った

 

 

「まあ別にぃ?構いやしませんがねぇ?あんなクソボケ、此方の方からお断りですしぃ?」

「冗談だって……そんな怒んないでよ、まさかここまで効くとは思ってなくてさ」

「はいぃ?効いてませんがぁ?あんな奴にどう思われてようと私には関係ありませんしぃ?」

「あ、あの……お兄様、ちょっと様子が変……でしたよね……?」

「……だね」

「……まあ、はい」

 

 

アインに同調する様に頷く二人、先程まで怒り心頭だったオウルですら困惑が勝ってしまう程に酒泉の様子は可笑しかった

 

だが、それとは反対に先日様子の可笑しかったマルクトは少しだけ調子が戻っている

 

 

(……酒泉がオレンジジュースを溢す前、マルクトは〝昨夜の件〟って言ってた……)

 

 

その〝昨夜の件〟とやらが酒泉に動揺を誘ってしまったのだろうか、そう予測したシロコがさりげなくマルクトに視線を向ければ────

 

 

 

「……酒泉、我は一体……」

 

 

 

────やはり、マルクトも何か思うところがあるかの様に酒泉が去った後の扉を見つめていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

両手で水を掬い、それを何度も自分の顔に叩きつける

 

そうする事で体温と共に思考回路まで冷え、漸く冷静さを取り戻す事ができ……

 

 

「……いや、無理だろ」

 

 

洗面台の前でそう呟いても答えてくれる者は誰も居ない、存在するのは鏡の中の自分のみ

 

……鏡と言えば、鏡に写る自分に向かって〝お前は誰だ〟と言い続けたら段々と自我が失くなっていくという都市伝説があるが

 

もし俺が鏡側の俺だったとして〝お前は誰だ〟と問われたら、その時は現実側の俺にハッキリとこう突き返してやるだろう

 

 

 

 

〝お前はただの大クソボケだ〟と

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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『正直に言うよ……マルクト、俺は多分マルクトが抱えているその感情の正体を知っている』

 

『……!!本当、ですか?』

 

『ああ……ただ、その正体は教えてやれない』

 

 

俺を押し倒した姿勢のまま目を見開くマルクト、そんな彼女から目を僅かに逸らしている今の俺は、きっと居心地の悪そうな顔をしているに違いない

 

無理だ、今の俺は堂々とそれを伝えられる程の勇気を持ち合わせちゃいない……神を堕とす戦いに身を投じる事は出来ても、これだけはどうしても怖いんだ

 

 

『でも、その感情は決して抱いてはいけない感情なんかじゃない、それだけは確かだ。マルクトが使命に意識を乗っ取られることはないし、マルクトが人類に危害を加えることだってないだろうよ』

 

 

自分の考えがただの自惚れだった場合に湧いてくるであろう羞恥、それも俺がマルクトに答えを出し渋っている理由の一つであるのは確かだ

 

だが、真に恐ろしいのは────俺が、マルクトの感情を〝決めてしまう〟という行為そのものだ

 

もし、彼女が俺に抱いている思いが恋慕等と何ら関係の無い物だとしたら、彼女は好きでもない相手を一生好きだと思い込み続けてしまう

 

 

『何故……何故、教えてくださらないのですか?』

 

『っ……それは……マルクトが自分で気付くべき事だから……だ』

 

 

だから、縋る様な目を向けられて不安気な声色で問われても、俺は何も教えてやる事ができない

 

家族の不安を取り除きたいのなら今すぐにでも全てを話すべきだろうに、俺は自分の中の恐れに敗北してその場をなあなあで済ませる選択を取った

 

 

『大丈夫、マルクトを悩ませているその感情は大体の人間も持っている物だ。社会に溶け込んで生活していけばいずれその正体が解る日が来るよ』

 

『……酒泉も我と同じ思いをした事があるのですか?』

 

『人に対しては無いけど……まあ、お店で売ってるスイーツが残り僅かな時とかは〝誰にも取られたくない!〟って独占欲湧いたりするよ』

 

 

無論、人と食べ物とでは話が違う

 

それを理解していながら冗談混じりに場の空気を誤魔化そうとするなんてどこまで腑抜けた奴なのだろうか折川酒泉という男は

 

マルクトは自由意思を持つ人間に対して〝縛りたい〟という独占欲を抱いてしまったが故に苦しんでいるというのに、スイーツという何の意思も持たない食べ物を例にして何の意味があるというのか

 

……まあ、ゲヘナでは食べ物が意思を持つ事もそこそこの頻度で起こるけどあれは例外中の例外だろう

 

 

『まっ、とにかくそんな深く思い悩まなくても問題ねーよ。マルクトの中でその感情が大きくなる事があっても、それが人類に向ける牙に変わる事は絶対に有り得ないからな』

 

『しかし……』

 

『マルクトもいつかきっと〝ああ、こんな単純な事で悩んでいたのか〟って全てを理解する日が来るよ。さっきも言ったけどそこらの人間だってマルクトと同じ思いを経験した事があるけど、それを抱えた上で平然と生きていけてるんだからさ』

 

 

自分はそれを経験した事が無い癖に、何をペチャクチャと知ったような口を利いているのだろうか

 

好きになったものを独占するより好きになったものを周囲にも広めたい、そんな俺がマルクトの気持ちを真に理解するなど出来る筈もなく

 

俺は〝これで一旦なんとかなるだろう〟という甘い考えのまま、未だモヤが残っているであろうマルクトとの会話を終えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「はーはっはっはー!残念だったな、折川酒泉!君が追い込んだと思ったこの洞窟は元々私達の温泉開発予定地だったのさ!」

 

そこら中に部下達が倒れているというのに目の前の女は堂々と腕を組み、高笑いしながらそのちっこい身体で仁王立ちしている

 

その手には何かのスイッチが握られている、何かのスイッチとは言ったが十中八九何処かに仕掛けられた爆弾の起爆スイッチだろう

 

 

「おっと!動くんじゃないぞ!もし君が一歩でも動けばこのスイッチを───」

 

「爆破したきゃ勝手に一人でしてろ」

 

 

結局、その先の台詞は不明だった

 

 

「────へ?」

 

 

何故なら、狙撃用にカスタマイズされたデストロイヤーで俺がスイッチを完全に撃ち抜いてしまったからだ

 

信号を発する事もできないただのガラクタ、どうしてこの人はそんな物で俺を脅せると思っていたのだろうか

 

……そもそも、俺の〝眼〟の前でスイッチを取り出しておいて撃ち抜かれないとでも本気で思っていたのか?だとしたら舐められたものだ

 

何かを取り出そうとする動作を見せれば俺の眼は当然反応するし、一瞬でもその〝何か〟を視角に収める事ができれば大抵は正体を掴める

 

 

「……いや、あの、君なんか反応速度が更に増してやいないかい?元より反射神経は良かっただろうが随分化物染みて───ぴいいいいいいいいいっ!?近寄らないでくれええええええええええ!?」

「ていっ」

「あうっ」

 

 

某小さくて可愛い有名キャラクターみたいな泣き顔を晒す鬼怒川さんに軽くチョップすると、鬼怒川さんはぐずぐずと泣いたまま此方を睨んできた

 

なんでさ、迷惑掛けられてんのはこっちな上に手加減までしてやったのになんで悪者扱いされにゃいかんのだ

 

 

「最初は厳しく接し、その後優しくする事で女性を依存させるその手口……まさか私まで堕とすつもりか!?空崎ヒナだけじゃ飽きたらず、君は小さければ誰でもいいのか!?」

「よし分かった、お望み通り厳しくしてやるからとりあえずケツ出せ、デストロイヤー突っ込んでやるから」

「ひええええええええええ!!?空崎ヒナが二人いりゅうううううううううう!!?」

 

 

最近ちょっと厳しくしすぎたかなーって思ったから偶には優しくしてやろうとしたが、どうやらこの人にそんな配慮は必要無かったみたいだ

 

……そういや、これは自惚れとかじゃなくて自分の中の〝壁〟を何度か乗り越えた上で気付いた事なんだけど

 

どうやら人間ってのはある程度強くなると余裕……ていうか心のゆとりってのが生まれてくるらしい、空崎さんが万魔殿なんぞ眼中に無かったのも問題児相手にそこまでムキにならないのも全部それが理由だったのかもしれない

 

今じゃ俺も空崎さんと同じくらい落ち着きを持って問題児の相手をする事ができ「うぅ……やっぱりロリコンなんだぁ……私を捕らえてあんな事やこんな事をするつもりなんだぁ……」

 

「死にてえかクソガキ」

 

 

やっぱ駄目だ、いつまで経っても精神が成長する気がしねえ

 

果たしてこのまま大人になっていいものなのか、それとも大人も成り立ての頃は大して子供と精神性は変わらず、歳を重ねるに連れて徐々に落ち着きを得ていくものなのか

 

社会に揉まれ、責任を負う立場になり、伴侶になる者と出会い、結婚して新たな家族が出来て、子供が出来て、孫が出来て……

 

 

「……家族、かぁ」

「……へ?」

 

 

結婚する前から既に新しい家族が出来ているって……もしかして俺、大事な手順踏めてないのでは?

 

……い、いやでも!よくドロドロしたドラマとかでは〝血が繋がってなくても家族だ〟みたいな展開よく見るし!それと同じでマルクト達も本当の家族って事でいいよな!

 

だから結婚とか考える必要も……

 

 

『今も我の中で膨大し続けているこの感情の正体を教えてくれませんか……?』

 

 

「……そうもいかないよなぁ」

「あ、当たり前だろう!?そんな急に言われても、君は風紀委員で私は温泉開発部の部長なんだから……いや待て、もしかしたらこれは使えるかもしれないぞ……?」

 

 

もし、マルクトが自分で悩んだ末に出した答えが〝恋〟だったのなら……俺はどうするべきなのだろうか

確かにマルクトは魅力的な女性だ、俺自身彼女に魅了される事も何度かあった

 

でも俺がマルクトに抱いている好意は〝家族〟としてのものであり、そこに恋愛感情やらは含まれてはいない

 

そんな俺が再びマルクトに想いを伝えられた場合……どう答えるべきか

 

 

「そ、そうだな……もし君が温泉開発部に協力してくれるというのならそういう関係になるのも吝かではないが?我々としても空崎ヒナと同等の戦力が手に入る事は非常に喜ばし───」

「まあ、考え事は仕事が終わってからにするか……おらさっさと立て、ブタ箱がアンタとキスしたがってんぞ」

「えっ」

 

 

家族の事は大事だが職場の仲間の事も同じくらい大事だ、俺が考え事しながなちんたら仕事してる間に皆は必死に汗水流しているのだから

 

 

「ま、待て待て待て!切り替えが早すぎやしないか!?さっきまであんな事言ってたのに───力強っ!?君そんなに腕力あったか!?さっきも何故か拳で弾丸キャッチしてきたしゴリラに磨きが───」

 

「君消す」

 

「ひょええええええええええっ!?」

 

 

抵抗するちい川カスミの襟を引っ張って護送車の待機場所まで引きずっていくと、どうせ捕まるからと最後に好き放題言ってきやがった

 

人をゴリラ呼ばわりとは失礼な、服越しからならそこまでムキムキには見えんだろ

 

着痩せフィジカム酒泉ですまない

 

 

「……あ、あれ?酒泉、もう終わったのか?」

「うっす、自分次の現場に向かうんでその裾出しショーパン属性過多爆弾魔ロリ連行しといてください」

「そんな急がなくても……酒泉も車内で暫く休んでから向かった方がいいんじゃない?私達が駆け付けて間も無く戦闘が終わったって事は相当無理したんだろうし、酒泉も疲れて……なさ……そう、だな……」

「でしょう?そんじゃ後は頼みますねー」

「う、うん……なんか凄いね……」

「はえー……あれがジェネリックヒナ委員長かぁ……」

 

 

現在他の風紀委員が〝ヌメヌメヘルメット団と交戦中〟との通信が入ってきたので自分用の巡回車に乗り込んでその援護に向かう……つーかなんだよヌメヌメヘルメット団って

 

そんな疑問を抱えながら向かった戦場、そこでは銀鏡さんがなんかよう分からんピンク色の液体でヌメヌメになりながら敵と交戦していた

 

完全にローショn

 

 

 

 

 

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「……はい?昨夜何があったか……ですか?」

 

「ん」

 

 

庭に設置された物干し竿から洗濯物を回収しているシロコがそう訊ねると、縁台で服を畳んでいるマルクトが困った表情で俯いてしまった

 

その反応を見て〝やはり二人の間に何かあったのか〟と予想が的中したのを察したシロコは、必要以上に踏み込むべきか悩んだ末に真相を突き止める事を選んだ

 

 

「マルクトに続いて酒泉まで様子がおかしくなっちゃったから二人とも何かあったのかなって」

「私も……ですか?」

「ん、見てて明らかだった」

「そう、でしたか……シロコさんは観察眼が優れているのですね」

「……観察眼とかじゃない、家族の異変に気付くのは当然の事」

 

 

酒泉の意識がマルクト達に向かうようになれば、その分シロコに構う頻度が減るのは当然である

 

しかしだからと言ってシロコはマルクト達を恨みはしない、少し嫉妬したり酒泉に噛みついたりはするものの基本的に彼女等が〝家族〟である事も否定したりはしない

 

居場所が無い事の辛さを知っている彼女が、居場所を失った者達を拒む筈がないのだから

 

 

「昨夜喧嘩でもしたの?」

「お心遣い感謝します、ですがそういった出来事は一切起きていませんので御心配なく……ただ、少々相談事をしていただけですので」

 

 

特に戸惑う様子もなく平然と答えている辺り恐らく〝喧嘩した訳ではない〟というのは本当の事だろう

 

ならばその相談事とやらが関係しているのだろう、シロコがそう考えた矢先、今度はマルクトから〝あの〟とシロコに問いかけた

 

 

「シロコさんは誰かを縛りたいと……そう強く思った事はありますか」

「……私?私は……」

 

 

質問の内容に困惑するも、それに答えようと一瞬顎に手を当てて悩む素振りをするシロコ

 

とは言え実際には一秒足りとも悩む必要はなく、彼女の脳裏には自身が家で留守番している間に外で他の女性とイチャイチャしている少年の顔が思い浮かんだ

 

 

「それくらいなら何回も思った事があるけど」

「そうですか……では、昨夜の酒泉の言葉は我を安心付ける為の嘘という訳ではないのですね」

 

 

ここで再び〝昨夜〟というワードが飛び出す

 

その意図が無かろうと自慢話を勿体ぶられている時の様な感覚に陥ったシロコは、もどかしいと謂わんばかりにムスッとした表情でマルクトに近づいた

 

 

「もしかして今の質問が悩みの種なの?」

「……」

「……マルクト、妹達も貴女の不調に気付いてる。これ以上心配を掛けたくないなら早い内に問題を解決した方が良いと思う」

 

 

これ以上時間を掛けても埒が明かないと判断したシロコはマルクトの妹をダシに話を聞き出そうとする

 

シロコ自身不安を煽る様な言い方をして申し訳なく思っているが、このまま引き摺り続けた結果妹達まで精神に不調を来してしまうよりかはマシだと強行突破を試みた

 

 

「……そう、ですね……家族の為を思うのであれば、我もこのまま何もせぬ訳にはいかないのでしょうね……では、少々長くなってしまいますが昨夜の出来事を───」

 

 

実際に効果は覿面だったらしく、マルクトは少しだけ悩む素振りをした後に酒泉との出来事を語り始めた

 

初めに、自分の中で得体の知れぬ〝感情〟が涌いてきた事を

 

日が経つに連れてその感情が膨大化していく事を

 

その感情は主に酒泉が見知らぬ女性と共に居る場合に沸き立つ事を

 

そして───その旨を昨夜酒泉に伝えたが、その答えまでは教えてもらえなかった事を

 

話はそこまで長くなく、マルクトの言う〝得体の知れぬ感情〟とやらの正体にもシロコは心当たりがある為、問題の解決自体は早期に行えそうだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん゛……っ!!!」

 

 

 

それが故に、彼女は目を閉じて強く歯を食い縛る羽目になる

 

めちゃくちゃ渋そうな顔で言葉を詰まらせるシロコ、そんな彼女にマルクトは容赦なく追い討ちを掛ける

 

 

「シロコさんも我と同じ様に〝誰かを縛りたい〟と強く思う事があると……そう仰っていました、シロコさんはこの感情が何なのかご存知ですか?」

「知ってる……けど……」

 

 

説明するのはあまりにも簡単、しかしシロコはそれを言うのを躊躇っていた

 

何故ならそれを言えばマルクトと酒泉の距離が急激に縮まってしまうから、どうしてそれがシロコにとって悪い事なのかと問われたら〝察してあげてほしい〟としか答えられないが

 

 

「……どうしよう、先生」

 

 

しかしこのままでは目の前の生まれたてほやほや純粋無垢ガールはずっと自分の感情に苦しめられる羽目に

 

知らぬフリは出来ない、だが態々ライバルを増やす様な真似をするのもどうなのか

 

究極の選択を前に嘗てない程のピンチに陥ったシロコは今は亡き恩師に助けを求めるも、聞こえてきたのは〝私だって酒泉の作る朝御飯食べたかった!〟等という糞の役にも立たない幻聴だけだった

 

教える教えないの二択の上でマウスカーソルを何度も反復横跳びさせながら頭を抱えるシロコ

 

「我は……我は、本当にどこも可笑しくないのですか……?」

「っ……」

 

 

だが、マルクトの弱り切ったような声色と不安を帯びた瞳を見てその迷いは一瞬で振り切られた

 

 

「本当は……本っ当はあまり言いたくないけど……でも、このままだとフェアじゃないから教えてあげる」

 

 

それに私はメインヒロインだから、最後に勝つのは運命レベルで決定付けられている

 

己の方が格上だと、持たざる者であるマルクトに対して自分は〝持っている者だ〟と誇示するかの様に胸を堂々と張りながら、シロコは全ての答えを告げた

 

 

「マルクト、その感情はきっと────」

 

 

 

 

 

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「……なんか、意外とすんなり終わったな」

 

 

いつものゲヘナらしく不良共は暴れまわったし、不測の事態だって起きもした

 

だが、そこまで苦戦する事なく順当に一件一件事件を処理していった結果、風紀委員全員定時に帰宅できる程にこの日のゲヘナは穏やかになっていた

 

 

「……明らかに負担減ってるよな」

 

 

今日は温泉開発部だけでなく美食研究会も暴れていたし便利屋とも交戦したのだが、逃走ルートの封鎖やらカーチェイスやらを除いた正面衝突に限れば……その……

 

 

「あんま苦戦しなかったな……」

 

 

言っちゃ悪いが皆いつもより弱い気がしたな……手加減でもしてくれたのか?いや、冷静に考えて手加減する理由はないか

 

やっぱ武器を変えたのが一番の理由だろうな……凄いよ空崎さん!貴女のデストロイヤーは俺が使ってたモブ銃より自由だ!

 

後は俺がつよつよ酒泉君マークⅨに進化してしまったのも大きいか

 

 

「……まあ、それでもデスクワークだけは未だにキツイんだけどな」

 

 

むしろ力じゃどうにもならない分こっちの方が厄介だったりする

 

昔は力仕事でクタクタになって帰宅する事が多かったのに、今ではすっかりデスクワークがその原因の七割を担ってしまっている

 

どいつもこいつも彼方此方で事件を起こすせいで報告書が何枚あっても足りやしない、あとついでに羽沼マコトカスが変な事をしない様に目を光らせてないといけないのも余計な心労が掛かる原因の一つだろう

 

「さて、到着……ん?」

 

 

そんなこんなで考え事をしているといつの間にやら自宅付近まで到着していたのだが、何者かが折川家の前をうろうろとしている

 

〝何者かが〟と言っても俺の眼なら少し離れた所からでも十分識別できるのだが

 

 

「……マルクトじゃねえか」

 

 

その真っ白な容姿は暗くなり始めた空の下でもハッキリと俺の眼に映った

 

家の外で何をしているのやら、今日は特に買い物とかも頼んだ覚えはないし……私用か?

 

 

「おーい、マルクトー」

 

「……!」

 

 

今朝の気まずさはまだ多少残ってはいるものの、学業と仕事に集中する事でそれも大分緩和された

だから、俺を見つけたマルクトがタッタッタと小走りで駆け寄ってきてもそこまで慌てたりはしない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「愛しています、酒泉」

 

筈だった

 

急に飛び込んできたマルクトに抱きしめられ、首の後ろに手を回されて耳元で愛を囁かれるまでは

 

 

 






次回!大大大好き!



ケイ「そんな……先程まで視ていた私のルートは……!?」

スーパーつよつよエクスドリームヒロインマルクト「どうかされましたか?……〝私の〟酒泉と結ばれる夢でも見ていたのでしょうか?」


────────


囚人「おいお前らぁ!酒泉様は甘いのがお好きなようだ!今すぐこし餡とバターとパンを献上しろぉ!」

なんやかんや冤罪で捕まったクソボケ「い、いや……甘いのは好きだけど俺一人が独占すると流石に看守さんに怒られちゃうんで……」

カヤ「ぐぬぬ……わ、私を差し置いて囚人のトップに立つなど……!」


────────



ヒナ「NTRは純愛を越える……!」

マルクト「純愛はNTRを越えます!」


日曜午前、朝9時!
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