クソボケのことが大大大好きな生徒達   作:あば茶

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ケイさんに好きな人が出来たらしい

 

 

 

「……マジ?」

 

「私が冗談でその様な事を言う性格に見えますか?」

 

 

あまりの衝撃に持っていたスプーンをテーブルの上に落として固まる俺とは反対に、目を瞑りコーヒーに口つけて冷静に答えるケイさん

 

〝相談したい事がある〟と言うから呼び出しに応じて共にファミリーレストランに向かってみれば、そこで告げられたのは衝撃的な言葉だった

 

 

「だよな……えっと、とりあえずおめでとう?」

 

「……私に好きな人が出来る事が、貴方にとってはおめでたい事なんですか?」

 

「え?いや……それってつまり、ケイさんも〝自分の身体で〟青春を謳歌できる様になったって事だし……?」

 

 

今、俺の目の前に座っているケイさんは〝天童アリス〟の肉体で喋っているわけではなく、自分だけのオリジナルの肉体で喋っている

 

ケイさんの美しい赤色の瞳や彼女が着ている内側がピンク色のミレニアム製ジャケットは、青や水色といった色を彷彿とさせるアリスさんの容姿とは対照的に感じた

 

 

「……つまり、貴方は私が誰に恋をしようが構わないと?どこぞの馬の骨を好きになろうと自分には関係無いと?」

 

「まあ、それはケイさんの勝手だしな……最低な奴に沼って破滅しそうとかだったら流石に止めるけどさ」

 

 

ホストに貢ぎすぎて身を滅ぼすとか、そんな事態に陥りそうだったら縛ってでも止めるけど……ケイさんに限ってそれはあり得ないだろうけどさ

 

……そんな杞憂を感じ取られてしまったのか、ケイさんは怒った様に若干目を細めて俺を睨んできた

 

 

「な、なんだよ……」

 

「いえ、別に。なんとなーくですが将来貴方に妻が出来たとして、その妻が旧友の男と二人きりで出掛けたとしても貴方は嫉妬も何も感じなさそうだなと思っただけですよ」

 

「何で急にそんな昼ドラみたいな想像を……つーか友達と出掛けるだけなら別に嫉妬する理由なくね?」

 

「……もし空崎ヒナが先生と二人で出掛けている場面に遭遇したら貴方は何を思いますか?」

 

「二人とも普段から仕事で大忙しだろうし、その日くらいは羽を伸ばして休日を満喫してほしいな」

 

「……私が間違ってました、貴方はそういう人でしたね」

 

 

結局ケイさんは何を伝えたかったのだろうか、もしかして最近昼ドラに嵌まってるという話でもしたかったのか?

 

そういや新しく増えた同居人の彼女等も昼はテレビの前でドロドロしたドラマを観ていたな、変な影響を受けていなければいいが……

 

 

「……で、聞かないんですか?」

 

「ん?何が?」

 

「その……私の好きな人が誰か……とか……」

 

 

そっぽを向いてボソボソ声で呟くケイさん、頬が少しだけ赤く染まっているのは恥ずかしさからか

 

その横顔はまるで恋愛漫画等で見る恋する乙女そのものだった

 

 

「んな野暮な事はしないって、ケイさんだって余計な首は突っ込まれたくないだろ?」

 

「……本当にそういうところばかり気が利きますね」

 

「え?俺怒られてる?」

 

「怒ってません、感心してるだけです」

 

「ならいいけど……」

 

「はい、一周回って感心してます」

「それ怒ってる時の言い方やん」

 

 

なんだなんだ、じゃあつまりケイさんは俺に〝誰が好きなん?〟って聞いてほしかったのか? 俺がケイさんの立場だったら必要以上に突っ込んでほしくないんだけどな

 

……いや、そもそも突っ込んでほしくないなら最初から〝相談したい事がある〟なんて言わないわな

 

「えーと……話を戻すんだけどさ、ケイさんの相談事ってその〝好きな人〟に関する事だったりする?てか流れ的にそれしかないよな?」

 

「……悪いですか?」

 

「いや、それ自体は全然構わないんだけどさ……でも、何で俺を相談相手に選んだ?自分で言うのもなんだけど人選盛大にミスってんぞ」

 

「そうでしょうか?普段から多くの女性に言い寄られてはその気持ちを無下にしている貴方なら、恋愛に関するアドバイスもそれなりに出来ると踏んでいたのですが……」

 

 

知らない折川酒泉の話をされたので〝誰だそいつ〟と返そうとしたが、過去に一度告白してくれた女の子の想いを無下にした事を思い出し咄嗟に口を閉ざす

 

ただ〝多くの女性〟の部分だけは絶対に間違っているのでそこだけは否定させてほしい

 

 

「……つっても、その相手がどんな人柄なのか教えてくれないとアドバイスのしようがないぞ?」

 

「人柄、ですか……分かりました、では私が把握している情報を全てお話しますね」

 

 

よしキタ、一言一句聞き逃さぬ様にしなければ……俺がケイさんの恋のキューピットになってやる

 

 

「まず、その人は自分がどれ程大変な思いをしていても自分の事より他者を優先してしまうくらい優しくて」

 

 

成る程、先生タイプか

 

あの人基本的に自分の疲労より生徒のお悩み解決が優先だしな

 

 

「そんな性格のせいかよく事件に巻き込まれて、でもその人は強いのでその事件にも最後まで向き合って、なんなら解決までしてしまって……」

 

 

聞けば聞くほど先生みたいな人だな……あの人も(精神的に)滅茶苦茶強いし

 

心が折れそうになったのだって俺が知る限りだと自称神と対峙した時ぐらいじゃないか?

 

 

「それで、その人に助けられた女性が次々と周囲に集まっていって気付けばハーレム状態に……でも、その人は鈍感なので周囲の女性からの気持ちには一切気付く素振りもなくて」

 

 

あれ?てかこれ先生じゃね?

 

女の子に好かれてて本人が鈍感て……先生以外居ないでしょ

 

 

「他には……抜けているところはあれど、決める時は決めてくれるとか」

 

 

先生じゃん

 

 

「特撮作品が大好きで、ロボットとか目の前にすると興奮するとか」

 

 

先生じゃん

 

 

「時折無自覚にデリカシーのない発言をしてしまう事があるけど、それ込みで周りの生徒に好かれているとか」

 

 

先生じゃん(スリーアウト)

 

 

「後は、その気もないのに女性を期待させるような発言をしてしまうとか……こんなところでしょうか、私から見たその人の人柄とは」

 

 

大体分かった、その鈍感を破壊する

 

なーにやってんだか先生は……今度会ったら俺がキチンと乙女心という物を叩き込んでやらないとな!その時だけは俺が先生側だ!

 

 

「……先に答えておきますが先生ではありませんよ」

 

「え?違うの?」

 

「訳知り顔で何を頷いているのかと思えば……やはり勘違いしていましたか」

 

 

すまん先生、とんでもない冤罪を押し付けるところだった……下手したら俺も事実陳列罪に問われていたかもしれない

 

でもなぁ……先生以外でキヴォトスにそんなクソボケ存在するのか?

 

 

「なんつーか……厄介な奴を好きになっちまったな、ケイさん」

 

「……貴方もそう思いますか?」

 

「ああ、ケイさんみたいな美少女に好かれておきながらその好意に気付かないなんてとんだ贅沢クソボケ野郎だぜ」

 

「………………」

 

「あ、ドリンクバー行くけどなんか飲みたいもんあr……ケイさん?どうかしたか?」

 

「いえ、何も……私はメロンソーダでお願いします」

 

「あいよー」

 

 

ビックリしたぁ……ケイさんの目が愛清さんのジト目みたいに変わっていたからてっきり何かあったのかと

 

特に怒らせるような行為はしていない筈だしきっと気のせいだろうな、うん

 

 

「はいお待たせ……そんで?まずケイさんは何のアドバイスからしてほしいんだ?」

 

「ありがとうございます……まず、意中の相手に意識してもらうにはどうすればいいのでしょうか?正直なところ、今の私はその人に〝子供〟としてしか見てもらえていない気がしまして……」

 

「うーん……そいつが普段からケイさんを子供扱いしてるってんなら普段と違う格好をしてみたらいいんじゃね?」

 

「普段と……違う格好……?」

 

「会う度に髪型を変えてみるとか、普段は着ない様な服を着てみるとか」

 

「髪型……」

 

 

話を聞く感じだとそいつは最低最悪のオーマクソボケ野郎だが、自分より他者を気に掛ける様な奴ならきっと些細な変化にも気付いてくれる筈

 

それが髪型や服装といった大幅な変化なら尚更だ、そいつが〝そういや髪切った?〟という薄っっっっいリアクションする様な男でない限り何かしら褒めてくれるだろう

 

 

「こ、こう……でしょうか……?」

 

「おっ、いいじゃん似合ってる似合ってる」

 

「……えい」

 

「なんでさ」

 

 

早速アドバイスを実行しようとケイさんが自身の長い髪の毛を両手で持ち上げ、簡易的なツインテールをその場で作り上げた

 

なので正直に褒めたのだが、何が気に入らなかったのかケイさんはテーブルの下で俺の靴の先をコツンと蹴ってきた

 

 

「そんなに反応が薄いと本当に似合ってるのかどうか分からないじゃないですか、もう少し真剣に褒めてください」

 

「ええー…………似合ってるよ、ケイさん」

 

「……態度は変わっても言葉が先程と同じです」

 

「可愛いよケイさん」

 

「……まだ適当さが残ってます」

 

「……ケイさん、綺麗だ」

 

「っ……ま、まあ……及第点でしょうか」

 

 

解せぬ、ちゃんと真面目にやったのに及第点とは

 

そもそも俺がリアクションを大袈裟にしたところでケイさんの好きな人まで同じリアクションをするとは限らないのだが、果たして今の一連の流れに意味はあったのか

 

 

「次は〝服装〟の方ですね……その、貴方はどの様な格好が好みなんですか?」

 

「俺の好み?……聞いても意味なくね?」

 

「わ、分かっています!あくまで参考程度にするだけですから!」

 

「まあ、別に教えてもいいけどさ……」

 

 

そうだな……俺の好みは……好み……は…………あ、あれ?

 

困った、好みの服装が全く浮かんでこないぞ……好みの容姿を聞かれたのだったら、考える時間さえ貰えれば答えを出せるだろうに

 

好みの服かぁ……そういうのは特に無いけど、ここ最近俺の中で印象に残った服装を浮かべてみれば自然と答えに辿り着くのかな

 

印象に残った服、印象に残った服といえば……ちょっとエッチなネットをサーフィンしてる時に保存した逆バn────って馬鹿野郎

 

 

「悪い、特に無いわ……っていうか俺に聞いたところで参考にすらならないと思うぞ?こういうのはやっぱり直接好きな奴本人から聞かないとさ」

 

「そ、それが出来たら苦労しません!」

 

「そっか、恥ずかしいもんな……じゃあ俺が代わりに聞いてこようか?」

 

「そ、それも出来ません!か、彼は……その……とても警戒心が強い方なので初対面の貴方では……」

 

 

ほーん、ケイさんの好きな人は警戒心が強いのか。そのくせ他者を放っておけず、事件に巻き込まれても最後まで付き合うと

 

……なんか〝優しい〟の方向性が思ってたのと違うな、これツンデレタイプだな多分

 

 

「うーん……好みを知る方法が無いんじゃどうしようもねーわな、こうなったらもう相手の好みとか関係無しに服装決めるしかないな」

 

「……では、服選びのお手伝いも貴方にお願いしてもよろしいでしょうか?やはり他者から見てもらわないと気付けない事もあるでしょうし、それに……貴方は眼が良いですから、きっと服のサイズが微妙に合わなかった時などにすぐ気付いてくれる筈です」

 

「それは勿論構わないけど……でも俺、ケイさんよりオシャレのセンス無いぞ?」

 

「はい、それで構いません。貴方が……か、可愛いと……そう思ってくれた服を着たいので」

 

「……ん?」

 

「あ……い、今のは変な意味ではありませんからね!?ただ、男性基準の〝可愛い〟を知らないから貴方の意見を参考にしようとしただけで……!」

 

「ああ、そゆこと」

 

 

顔を真っ赤にしながらわたわたと慌てふためくケイさん、そんな彼女の口から〝好きな人は男性〟という新情報が飛び出してきた

 

いやまあ、当たり前の事ではあるんだけどね?ただ前世でユズケイという概念を知った者としてはワンチャンその可能性もあったのかなーって

 

……花岡さん別にツンデレでもクソボケでもないけどな

 

 

「さて、一通り〝女性として意識してもらおう作戦〟のプランAを説明したが……次はプランBの説明に入るぞ」

 

「なんですかその作戦名……」

 

「気にするな、そんでプランBの内容はズバリ……〝ギャップ萌え〟だ!」

 

「……ギャップ?」

 

「そう、例えば普段はツンツンしてる女の子が急にデレデレと甘えてきたり!一見冷徹に見える女の子が実は友情に熱かったり!誰の目から見ても完璧な女の子が裏では泥臭く努力していたり!」

 

「急に饒舌になりましたね……よ、要するに普段の自分とは正反対の自分を演じるという事でしょうか?」

 

「まあ、概ね?」

 

 

俺がブルアカ始めたての頃、常にキリッとしていた空崎さんがあんなに甘えたがりなキャラだったと知って一気にハートを鷲掴みされた経験がある

 

それと同じように普段と違うギャップを醸し出せばきっとその男もケイさんを好きになるかもしれない

 

「という訳でケイさん、ここでギャップ萌えを感じさせるような台詞を何か一つ────」

 

「……き……」

 

「……はい?」

 

「す……すきすき~♪だいすきですよ酒泉~♪」

 

「────、」

 

 

ギャップ萌えを感じさせるような台詞を一つ言ってもらおうとしたが、驚く事にケイさんは頼まれる前に自分から台詞を言ってきた……しかも、作り笑いで

 

彼女が照れているであろう事は耳まで赤く染まったその表情を見れば一発で理解できる、そんな思いをしてでも彼女はそいつの心を堕としたいのだろう

 

だが……

 

 

「こ、これからもずっと一緒ですよ~♪離れちゃダメ「───まだまだだな」───です……え?」

 

「まだケイさんの中から〝羞恥心〟が抜け切ってねぇ」

 

 

例えば空崎さん、彼女は日常生活の中で〝酒泉、さっきの訓練は一人だけ前に出過ぎてた〟とか〝酒泉、その書類全部提出してきて〟とか〝酒泉、相手が格下だからって油断しないで〟とか、とにかく威厳ある態度で余裕を感じさせる様な言葉遣いをしていた

 

だが、これが寝起きとなった途端〝やだ……まだねる……しゅせんといっしょにねる……〟だの〝おしごとや……しゅせんとあそぶ……〟だの〝えへへ……しゅせんのだきまくらぁ……〟だの、別人になったかのようにドチャクソ甘え散らかしてくる

 

 

「分かりか?今みたいに中途半端に羞恥心を含めた状態でギャップを狙おうとしても相手は〝萌え〟より〝困惑〟の方が勝っちまうんだよ、ギャップ萌えのコツ……それはもっと堂々と本心を晒す事だ」

 

「ひ、人が恥ずかしい思いを圧し殺していざ実戦してみたというのに……!」

 

「それだよ!中途半端に羞恥心を圧し殺すからデレムーブも中途半端になるんだ!デレるなら全力でデレる、照れるなら全力で照れる!どっちかにするべきだ!」

 

 

ケイさんはあれだ、もう少し飛鳥馬さんを見習うべきだ

 

この前〝来週休日なのでどこか楽しめる場所に連れていってください〟ってくっそ雑に頼まれたから〝休日なのに大好きな調月さんと遊びに行かなくていいのか?〟って聞いてみたら〝はい、貴方の事も大好きなので〟って真顔で返されたぞ

 

あれも〝クール系がデレる〟っていう一種のギャップ萌えだよな、俺は割と厚かましい対応されてるし今更萌えたりはせんけど

 

「まあ、このムーブは今のケイさんには無理そうなので後程特訓するとして」「もう二度とやりません!!!」

 

「女性として意識してもらおう作戦の内容は以上二つだ、他にも方法は色々あるんだろうけど俺の頭で思い付く限りだとこれが限界だった」

 

 

他にも然り気無く食事に誘ったり、共通の話題を探してみる等、地道な方法は幾らでも浮かんだ

 

しかしその好きな人とやらの周囲が女性だらけだと知ればそんな欠伸が出そうな事など言っていられない。なるべく早急に、短期決着を狙える様な策でないと何時誰に横からかっさらわれるか分かったもんじゃない

 

……いや、恋愛戦争に〝横取り〟なんて言葉は存在しないのかもしれない、結局は出遅れた奴が悪いのだから

 

「ケイさん」

 

「なんですか……今度はどんなトンチキな案を出すつもりですか……」

 

「いや、次に教えるのはただの心構えだ」

 

「心構え?……つまり精神論ですか、それだけで何とかなるのなら苦労はしませんよ……」

 

 

故に───今から教えるのは一番大事な事だ

 

恋愛という名のレースでライバルに遅れを取らない為の、このレースをか

 

 

「〝好き〟を否定するな」

 

「……はい?」

 

「これを徹底するだけで大抵の恋愛はなんとかなる」

 

〝べ、別にアンタの事なんて好きじゃないんだから!〟

 

〝ああ、言っとくけどそれただの友チョコだから〟

 

〝恋人?……あはは!違う違う!ただの幼馴染だって〟

 

……などと抜かし敗北してきたヒロイン達を俺は幾度もこの眼で見てきた(主に恋愛漫画等で)

 

千載一遇のチャンスを棒に振るどころか棒をへし折る勢いで好意を誤魔化そうとすればそりゃ想いなんぞ伝わる筈もなく

 

何も最初から馬鹿正直に告白しろとは言わない、でもせめて恋人なのか聞かれたら〝違う!〟とハッキリ否定せず〝あはは、そう見える?〟くらいに留めておけばいいのだ、チョコを渡す時もわざわざ自分から友チョコだと断言せず〝好きなように捉えていいよ〟と伝えればいいのだ

 

……恥ずかしさに負ける程度の好意なら始めから捨てちまえ!どうせ他のヒロインに勝てねえんだから!

 

 

「どんだけアピールしようと、どんだけ仲を深めようと、どうせ最後には堂々と想いを伝えなきゃいけねえんだ。だったらそれまでの間好感度がマイナスになるような真似は避けるべきだ」

 

「そ、それはそうですが……じゃ、じゃあどうしろと言うのですか!?正面からす…す…〝好きです〟と伝えろと!?」

 

「俺はただ〝あ、この子は俺のこと男として見ていないんだな〟って思われるようなムーブはするなって言ってるだけだ、すぐ告白しろって訳じゃない」

 

 

一切脈が無いと思われてしまえば恋愛レースのスタートラインにすら立てない、そうなれば後はヒロインではなくただの観客としてレースを遠くから眺める事しかできなくなってしまう

 

そうなれば────負けヒロインになる事すら許されなくなる

 

 

「本人が居ないところでもいい、その人を想いながら毎日どこかで〝好きだ〟と呟くんだ。誰も居ない教室でも、騒音に囲まれたショッピングモールの中でも、どんな場所でも構わない……〝好きだ〟と声に出して再確認する事が大切なんだ」

 

「……」

 

「それはきっと、告白する時に役立つ筈だから」

 

 

無論、本人に向かって言うのと独り言の様に呟くのでは緊張度に天と地程の差があるだろうが

 

それでも日頃から言葉にしておけば、いざその時が来ても〝いつも呟いている事を今日は目の前の相手に伝えるだけ〟と多少は心の支えにもなるだろう

 

 

「……好き、です」

 

「……ああ」

 

 

早速アドバイスを取り入れようとケイさんは少しだけ口をもごつかせてから一言呟いた、きっとその脳裏には大好きな彼とやらの姿が浮かんでいるのだろう

 

一度吐き出した事で心の蓋が開いたのか、ケイさんは次々と〝好き〟を口から発していく

 

 

「好きです」

 

「そうだ、それでいい」

 

「好きです、大好きです」

 

「いいぞ、その調子だ」

 

「本当に好きなんです……心の底から大好きなんですっ!」

 

「分かるぞ!好きなんだよな!」

 

「ままー、あのふたりなにやってるのー?」

「青春……かしらね」

 

「もっと私を見てほしいです!もっと私を構ってほしいです!せっかく肉体を得たんですからもっと沢山触れ合いたいです!」

「そうだ!我儘全部吐き出しちまえ!」

 

「なに?告白現場?」

「動画撮っとこ」

 

「愛しています!誰にも渡したくありません!私だけを見ていてほしいんです!」

 

「───よく言った!」

 

「ねえ、あの人モモチューブのさ……」

「え?マジ?……ほんとだ!〝議長のボールペン全部ビリビリするやつにしてみた〟の人だ!」

 

 

勢い余って立ち上がり、ゼェハァと息を整えるケイさん

 

己の本心を吐露した勇気あるその少女に俺は惜しみない拍手を送り、テーブル越しから彼女の肩に手を置いて座るように促した

 

 

「今の言葉、全部忘れるなよ。その想いを抱えながらアプローチしていけばきっといつかその人に届く筈だ」

 

「酒泉……あの、本日は親身に相談に乗ってくれてありがとうございました」

 

「気にしなくていいよ、ケイさんの初恋記念なんだからさ……そうだ!今の内に祝勝会もやっておくか!好きなもんなんでも頼んでいいぞ!」

 

「え?い、いえ……私は……」

 

「いいっていいって!ケイさんの可愛さで落ちねぇ男なんざ存在しないんだから!こんなのもう勝ったも同然だしさ!」

 

 

遠慮しようとするケイさんにメニュー表を押し付け、早く早くと注文を急かす

 

慌ててメニュー表を捲るその姿は、まるで家族と食事に来たお子様の様でとても愛らしかった

 

……おっと失礼、今の彼女はお子様ではなく恋を知るレディの間違いだったな。これじゃ彼女を子供扱いしているクソボケ野郎と一緒じゃないか

 

 

「んじゃ、圧倒的勝利を祝って……かんぱーい!」

 

「……乾杯」

 

 

割れないように優しくコツンとグラスをぶつけ、中のコーラを一気に飲み干す

 

願わくば、ケイさんの恋愛がこのコーラの様に甘ったるく、そして炭酸の様に刺激的な経験になる事を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケイ:貴方から頂いたアドバイス、1ミリも役に立ちませんでした!!!

 

「えぇ……」

 

そう願っていた俺にこんなモモトークが届いたのは、ファミレスを出て1時間も経たぬ内の事だった

ンアーッ!実行するのが早すぎます!







ネクストしゅせーんずヒント!


「ん、ゲヘナにリスポーンした」


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