クソボケのことが大大大好きな生徒達   作:あば茶

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今回は特に恋人って訳ではありません、でもいずれそうなる関係ではあります


名無し草に芽生えた感情(ハルカ)

 

 

『ぐ、うぅ……!』

 

『くそっ……無関係の癖に……!』

 

『はぁ……はぁ……これに懲りたら二度と俺の前で下らねえ真似すんなよ……!』

 

 

私の前に突然現れて、私の前で喧嘩を始めて、私をいじめてた人達をやっつけて

 

 

『ほら、これアンタの植木鉢だろ?』

 

『は、はい……』

 

『今度は盗られないようにしっかり持っとけよ、じゃあな』

 

『えっ!?あ、あの───』

 

『悪い、仕事あるから話してる時間無いんだわ』

 

 

奪われた私の植木鉢を取り返して、ボロボロの背中であっという間に去っていく

 

そんな嵐の様な男の子との出会いは私がアル様と出会うより前の話でした

 

 

『……お、お礼……を……』

 

 

私の控えめな声量じゃ既に絶対に届かないところまで行ってしまった彼を追うことができず、私はただ手を小さく伸ばしながら立ち尽くしている事しかできませんでした

 

こんな性格だから意地悪な人達に目をつけられてしまったのは自覚しています、昔からこんな自分自身を嫌悪していましたから

 

でも今はこんな性格のせいで目をつけられてしまった事よりも……こんな性格のせいで助けてくれた彼にお礼を伝えられない事の方が心に来ます

 

 

『…………?』

 

 

そうして俯いて後悔していると、地面に落ちている生徒手帳を発見しました

 

入っていた写真は先程の男の子の写真、つまりこの生徒手帳は彼の物

 

 

『…………か、返さないと』

 

 

その時にお礼を言おう、そう思いながら後を追おうとして────ピタリと足を止める

 

 

『…………』

 

再び生徒手帳を開き、写真の中の男の子の顔をじっと凝視する

 

 

『折川……酒泉……さん』

 

 

その名前を呼び上げる、脳に、記憶に、心に、刻むように

 

そして私は何を思ったか────その生徒手帳を自分のスマホのカメラの枠に収め、撮影ボタンを押すと同時にパシャリと音を鳴らした

 

 

『……折川酒泉、さん』

 

 

もう一度名前を呼ぶ

 

 

『折川酒泉さん』

 

 

もう一度

 

 

『酒泉……さん』

 

 

もう一度────

 

 

『ん?あれは……なんだ、まだいたのか……おーい!この辺に俺の生徒手帳落ちて────』

 

『ーーーーーーー~~~~ッッッッッッッ!!?!!??!?』

 

 

 

生徒手帳を放り投げて逃げ出してしまった、さっきお礼を言おうって決めたのに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「……」

 

────……はぁ

 

「……!」

 

 

 

溜め息を吐きながら振り向いてみれば、電柱の裏から何者かの人影がはみ出す

 

俺が風紀委員会に入ってから何度も感じるようになった視線は今日もしつこく俺の背中に突き刺さっている

 

 

────……

 

「……ぁ」

 

 

再び前を向いて歩き始めると背後からも足音が聞こえてくる、しかし急停止してみれば俺の真似をしているかのように足音が止む

 

そしてチラッと後ろを向くとまたサッと隠れ、また前を向いて歩き始めるとまた足音が

 

 

────…………

 

「……!」アセアセ

 

 

早歩きにすると足音が大きくなり、少々小走りで移動すれば足音は露骨に、急ブレーキを掛けてみれば後ろからズテッ!という盛大に転けた音が

 

またまた後ろを向くと、背後で紫色の髪をした少女が両手を伸ばして前のめりに倒れていた

 

 

────……はぁ

 

 

彼女に尾行され始めてから何度目になるか分からない溜め息を吐きながら彼女に近づいて手を差し伸べる

 

 

────大丈夫か?伊草さん

 

「あ、はい……ありが────」

 

 

俺の手を取って立ち上がる少女────伊草ハルカ

 

彼女は顔を上げて俺の姿を視認すると、ゆっくりと口を開けながら次第にガクガクと震え出した

 

 

「あ……あわわわわわわわわわわわ……!」

 

────そんな怯えるくらいなら最初から尾行なんてすんなよ……

 

「ごごごごめごごめごごごggなささsさささささ」

 

────とりあえず落ち着け

 

 

全身から振動音を発しているこの少女は便利屋のメンバー、度々問題を起こしては風紀委員会に追われている組織の一員である

 

因みに風紀委員会というのは俺が所属している組織……そう、つまり俺が警戒すべき人物でもあるという訳でして

 

 

────……そんで?どうして今までずっと俺を尾行してきたんだ?闇討ちでも狙ってるのかと思って泳がせてみればそんな気配も全くないし……

 

「そ、それは……」

 

────もしかして風紀委員会の情報でも集めようとしてんのか?だとしたら無駄だぞ、俺から得られる情報なんざたかが知れてるからな

 

「ち、違います!わ、私は…………わたし……は……」

 

────……

 

「…………ご」

 

────ご?

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!」

 

 

何か言おうとしていたし途中で言葉を遮るのも良くないと思って向こうから口を開くのを待っていると、伊草さんは急に顔を青ざめさせて謝罪の言葉を口にしながら走り去ってしまった

 

周囲からの冷たい視線と〝やだ……あの子女の子脅してるわ……〟というひそひそ話すら気にならないほど唖然としてしまった俺は地面に一枚の紙が落ちているのに気づく

 

 

────……伊草さんの落とし物か?

 

 

表面を確認してみるとそこには入社承諾書と書かれていたが、本人氏名を記載するところには誰の名前も書かれていない

 

……もしや便利屋は新メンバーを募って勢力拡大を企んでいるのではなかろうか、だとしたら少々面倒な事になりそうだ

 

 

────一応、空崎さんに報告しておくか……

 

 

陸八魔さんにこれ以上社員を雇える程の経済力があるとは思えないが……念には念をだ

 

 

 

 

 

 

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「……」ジー

 

────……またか

 

 

昨日に続いて今日もいつも通り、視線を感じながら帰路を歩く

 

今まで二日連続で尾行される事は無かった……訳ではないので大して驚かない、それはそれとして少々鬱陶しいけど

 

 

「……!」

 

────いや、もう気づいてるから

 

「…………」

 

────さっさと出てこいよ

 

「は、はぃ……」

 

 

後ろを向きながら路地の曲がり角に隠れている人物に声を掛けると、そいつはモジモジしながら自信無さげに姿を現した

 

紫髪の少女、どうやら今日の尾行者も伊草さんだったようだ

 

何故か右手に紙とペンを持っているが……俺の行動パターンのメモでも取っていたのか?

 

 

「あ、あの……」

 

────伊草さん、前にも言ったけど俺を尾行したところで面白いもんは何も見れんぞ

 

「え!?ち、違っ……」

 

────陸八魔さんからの命令かそれとも陸八魔さんの為に個人的に行動してるのかは知らないけど、こんな事しても時間の無駄になるだけだ

 

「ぁ……そ、その……」

 

 

風紀委員としての仕事中ならともかく、活動が終わってからの俺の行動を追ったところで極普通の男子高校生の日常風景しか見れんだろうに

 

こんな事をしてる暇があるなら事務所に戻って仕事でも……いや駄目だ、便利屋が仕事をするとその分風紀委員会の仕事が増えるかもしれんし何もせず大人しくしてくれ

 

 

「わ、私……しゅ、酒泉さんを……」

 

────あん?俺が何だって?

 

「か……かん……かかかかかかかかかかかかかか……」

 

 

どこぞのゲームで上X下BLYRAのコマンドを打った時みたいなバグり声を上げると伊草さんはまたガクガクと身体を震わせ始めた

 

その光景にどこか既視感を覚えながら伊草さんから話してくるのを待っていると、伊草さんは急に紙とペンを空に放り投げて俺とは反対の方向に駆け出した

 

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!!!」

 

 

あっという間に遠ざかっていく背中、取り残された男一人

 

昨日と全く同じ出来事にポカーンとしていると、風で飛ばされそうになっている紙が視界に入る

 

 

────また忘れ物か……ん?

 

 

昨日と同じようにまた紙を拾い上げると、落ちていた紙もまた昨日と同じ入社承諾書だった

 

まさか本当に人員集めでもするつもりなのか?だとしたら何の為に────いや待て、確か対策委員会編のストーリーで便利屋がヘルメット団を雇ってたよな……?

 

もしそれが目的なのだとしたら物語が始まるのがもうすぐという事に……

 

 

────……まあいいか、俺が関わるのはエデン条約編だけだし

 

 

もし先生に会う機会さえあればカイザーに関する軽い情報だけ流して後は放置しよう、そう決意しながら入社承諾書をくしゃくしゃに丸めてポケットにしまった

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

〝放課後、屋上で待ってます〟

 

そんな一言が書かれた紙を持って屋上に向かう俺の気持ちはウッキウキ……ではなかった

 

こういう時、まず真っ先に疑うべきはこの紙が罠かどうかだ。以前にもラブレターが届いてついに我が世の春が来たと思って誰もいない旧校舎にまんまと誘き出された事があったけど、その時は案の定不良共に囲まれて危うくリンチされるところだったわ

 

まあ、全員返り討ちにしたけど(泣きながら)

 

 

────……さーて、今度こそ春は訪れるかなー

 

 

春ですよー、と一人呟きながら屋上の扉に手を掛ける

 

因みに鍵は掛けられていない、だって鍵掛ける度に不良にぶっ壊されるし

 

 

────どうもー、折川でーす

 

 

相変わらずの治安の悪さにうんざりしながら屋上に居るであろう誰かさんに声を掛ける

 

すると、予想に反して闇討ちも騙し討ちする気も微塵も感じさせないほど堂々と屋上の真ん中に立っていた少女がくるりと此方に振り向いた

 

 

────えっと……貴方がこの手紙……を……

 

 

周囲にその子以外の姿が無い事を確認してから此方も屋上の真ん中に向かおうとするとその姿を見て思わず足が止まってしまう

 

何故ならその子は本来なら風紀委員会を敵視していてもおかしくない立場で、俺も実際にその子の属する組織とは戦った事があるのだから

 

 

「………」

 

────……伊草さん?

 

「は、はい……」

 

 

なぜ?なぜ?なぜ?と俺の脳内黒服が首を傾げている

 

だって今までは風紀委員会の情報を探る為に俺を尾行してたんだろうって勝手に当をつけてたけどさ、今回に関しては何一つ理解できねえもん

 

直接呼び出したってことは尾行目的じゃないって事だろ?……あっ、それかあれか?アル様の邪魔をする輩をここで仕留めてしまおうって魂胆か?

 

 

────あー……その、なんだ?ここでドンパチやろうってか?

 

「ち、違います!私は……私は……!」

 

 

いつぞやの様にまた震え始めたのでこのまま走り去ってしまうのかと思いきや、伊草さんはその場にたったまま一枚の紙を両手で此方に差し出してきた

 

 

「きょ、今日は酒泉さんにこれを渡したくて……!」

 

────……紙?

 

「は、はい!」

 

 

宣戦布告でもされるのか、はたまた最近友達になったトリニティのスーパースターみたいに挑戦状でも書いてきたのか

 

若干肌がひりつくのを感じながら紙を見ると、そこにはまたまた入社承諾書の五文字が一番上に書かれていた

 

 

────……は?これを俺に?

 

「そ、そうですよね……私みたいな塵以下の存在が酒泉さんを呼び出すなんて烏滸がましいですよね……ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさ────」

 

────い、いや……それはいいんだけどさ……これを俺に渡した意味は?それを教えてほしいんだけどさ……

 

「そ、それは……」

 

 

大した情報は乗っていないとはいえ敵にこんなもんを渡すなんて……伊草さんが陸八魔さんを裏切るとは思えないし、普通に理由を考えるなら俺を便利屋に入社させる為としか思えないけど……

 

でも陸八魔さんの邪魔ばかりしている俺を伊草さんが勧誘してくる理由はもっと分からない、その理由を探ろうにもこの人と会話した記憶なんて戦闘時以外だと殆ど思い当たらないぞ

 

 

「その……しゅ、酒泉さんに便利屋に入ってもらいたくて……」

 

────あ、普通にそのまんまの理由なのね……てっきり裏でもあるのかと

 

「う、裏なんてありません……私はただ……しゅ、酒泉さんと……戦いたくなくて……」

 

────……え?

 

 

てっきり風紀委員会の戦力を削ぐついでに人質にでも利用するつもりなのかと思っていたが全然そんな事はなく、伊草さんの口から出てきたのは意外な理由だった

 

俺と戦いたくないから?……風紀委員会と戦いたくないからじゃなくて?俺一人の戦力なんてたかが知れてるのに?普通は〝空崎ヒナと戦うのを避けたいから〟とかじゃないのか?

 

「わ、私……実は中学生の時に酒泉さんに助けてもらった事があるのですが……お、覚えてますか……?」

 

────……中学時代?

 

「その……私が意地悪な人達に植木鉢で育てていた雑草を奪われた時……酒泉さんがその人達を倒してくれて……」

 

────……あー、そういえばそんな記憶もあった……様な……

 

「お、覚えていてくれたんですね!?……あっ、ご……ごめんなさい……」

 

 

表情をパッと明るくさせて俺の手を握ってきた……かと思えばすぐ卑屈な表情に戻って謝罪を口にする伊草さん

 

また〝マシンガンごめんなさい〟を食らう前に話を続けるように伝えると、伊草さんはポツリポツリと言葉を紡いだ

 

 

「わ、私は……私を助けてくれたアル様を裏切ることも私を助けてくれた酒泉さんと戦うこともできません、ですから……」

 

────……俺を便利屋に入れればアル様を裏切る事も俺と戦う必要も無くなる、と?

 

「…………はい」

 

控えめに頷く伊草さん、彼女には申し訳ないがこんな事を伝えられても困るというか……

 

伊草さんが陸八魔さんを裏切れない様に俺だって風紀委員会を裏切るつもりはないし……ん?

 

 

────そもそもの話さ、伊草さん以外の社員は俺が便利屋に入る事を認めているのか?元々風紀委員だった奴だぞ?

 

「あ、はい。そこは問題ありません、アル様曰く〝器もデカいのがアウトロー〟らしいので……」

 

────単純すぎんだろぉ……

 

 

それでいいのか陸八魔アル、俺が風紀委員会のスパイだったらどうするんだ陸八魔アル

 

 

「で、ですので酒泉さんも安心して入社して頂けるかと……しょ、職場の環境も和気藹々としてますし!こんな私にも優しく接してくれるぐらい皆さん良い方達ですから……!」

 

────つってもなぁ……俺は空崎さんの事は裏切れんし……

 

「そ、それは勿論存じ上げています!酒泉さんが風紀委員長と〝高校に入っても支える〟という約束をしている事も……」

 

────……ん?この話、伊草さんにしたことあるっけ?

 

「い、いえ……」

 

────じゃあなんでそれを……

「じ、自分で調べましたから……酒泉さんを勧誘する為に……」

 

 

勧誘相手の情報を調べあげるのは当然の事……とはいえ、伊草さんはそれ程までに俺と戦いたくなかったのか

 

 

「酒泉さんの趣味の事も……」

 

 

話の合う相手とは仲良くなりやすいからな、これも勧誘する為だろう

 

 

「酒泉さんの好物の事も……」

 

 

そんな些細な事まで調べてたのか、どうやら伊草さんは本気で俺を勧誘しようと────

 

 

「酒泉さんの行き付けのお店の事も……」

 

 

ん?

 

 

「酒泉さんが帰宅してくる時間帯も……」

 

 

ちょっと待って

 

 

「酒泉さんの休日の過ごし方も……」

 

 

流れ変わったな

 

 

「酒泉さんの行動は……か、可能な限り調べ尽くしましたから……」

 

………………へー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────ソ、ソッカー。ガンバッテシラベタンダネー

 

「は、はい……」

 

────……あ、あー!そういえば俺、今日この後パトロールあるんだった!この話は家に帰ってからでもいいか!?モモトーク渡しとくからさ!

 

「だ、大丈夫です!……あ、それか酒泉さんの自宅でのプライベート時間を奪ってしまうのは申し訳無いので帰宅中でも構いませんが…………これなら酒泉さんの時間を無駄にする事もありませんし、スーパーでの買い物も手伝えますので……」

 

────……え?なんでそれを……

 

「……?だって金曜日の夕方はいつも帰り道の途中にあるスーパーでセール品を狙って買い物してましたよね?」

 

────そ、そうだけど……

 

「……あっ!?も、もしかして私……何か余計な事を……ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさ────」

 

────い、いや!全然余計じゃないから!むしろ大助かりだから!

 

「そ、そうでしょうか……」

 

────うんうん!めちゃくちゃ助かるよ!特にセール品なんて人手が幾つあっても足りないくらいだからさ!伊草さんが来てくれるなら心強いよ!

 

「そ、そうですか……酒泉さんのお役に立てるなら何よりです……えへへへ……」

 

 

 

背筋に寒気を感じたので咄嗟に逃げ出そうとしたら何故か放課後を一緒に過ごす事に、しかし断ったら断ったで何か嫌な予感がしたので下手に刺激せず素直に感謝する事にした

 

 

 

────そ、それにしても本当によくそこまで調べましたね……尾行されてる時は基本的に毎回気付けていた筈なんですけど……

 

「は、はい。私も露骨に尾行してしまうと酒泉さんにバレてしまうと思ったので……酒泉さん本人の後はつけず周囲の友人関係やご近所の方のお話から酒泉さんの生活パターンを予測しました」

 

────えっ

 

 

 

嘘だろ?俺本人の後をつけずにこの情報量だと?それじゃあ、もし伊草さんが俺にすら気配を悟られないレベルのスニーキング技術を得たとしたら四六時中監視されてる事を警戒しないといけなくなるんじゃ……

 

……不味い、これは非常に不味い。ここまで行くとプライバシーがどうこうの問題じゃない、常に視られている恐怖との戦いを強いられる事になる

 

 

 

────い……伊草さん!悪いけどこれからは俺の情報を嗅ぎ回るような真似はやめてくれ!

 

「えっ!?わ、私……何か酒泉さんの気に触るような事を……!」

 

────違う!そうじゃない!俺は友達とは正面から堂々と付き合いたいタイプなんだ!

 

「と、友達……?」

 

────そ、そうだ!だってそんなに俺の事を知り尽くしてくれたんならもう友達みたいなもんだろ!?

 

 

伊草さんの事だし下手に責めると自分の喉に銃口をくっつけて自害しようとし兼ねん、なのでそれっぽい理由を適当にでっち上げてなんとか納得させようと試みる

 

 

「友達……私と酒泉さんが友達……よ、よろしいのでしょうか……私みたいな人間が酒泉さんと友人関係を築いてしまって……」

 

────オーケーオーケー!むしろ大歓迎さ!これからは普通の友達として正面から付き合っていこうな!だから情報収集も尾行も止めてくれな!伊草さん!

 

「は、はい!分かりました!……酒泉さんとお友達に……えへ、えへへへへ……」

 

 

よ、よかった……一先ずこれで目先の問題は解決……してないか、仕事後は伊草さんからの勧誘をどう断るか考えないと

 

勧誘の為だけにここまで調べ上げる子だ、下手な断り方をするとより過激な方法で俺を便利屋にぶち込もうとしてくるかもしれない

 

 

 

「ふ、不束者ですがよろしくお願いします!……えへへ」

 

────よ、よろしく……じゃあ俺、とりあえずパトロール行ってくるんで……待ち合わせ場所は……

 

「酒泉さんがパトロール帰りに度々通ってるクレープ屋さんでよろしいでしょうか?」

 

────ひっ……

 

 

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