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白い壁の向こう側 ――CT-7701の記録――

「全員、ヘルメットを装着せよ。これより降下を開始する」

ガンシップのハッチが開くと、戦場の熱気とオゾンの臭いが一気に流れ込んできた。

目の前に広がるのは、惑星カミーノの平穏な海とは正反対の、泥と火花にまみれた地獄絵図だ。

俺の名前はCT-7701。兄弟たちからは「セブン」と呼ばれている。

ジャンゴ・フェットという男の遺伝子から作られた、数百万人のうちの一人だ。

俺たちは、共和国という巨大な機械の「部品」として、この世に生を受けた。

「セブン、ぼーっとするな! 突撃だ!」

隣でDC-15Aブラスター・ライフルを構えるのは、同期の「ブラスト」だ。彼はいつも勇ましく、そして少しだけ無鉄砲だった。

俺たちは泥を蹴り、無数のドロイド軍が待ち構える最前線へと走り出した。

空を切り裂くジェダイのライトセーバー。その鮮やかな青い光が、俺たちの唯一の道標だった。

ジェダイの将軍は、俺たちを「兵士」として扱ってくれる。名前を呼び、背中を預けてくれる。

だが、心のどこかで分かっていた。俺たちは、彼らの高潔な理想を守るために消費される、消耗品に過ぎないということを。

「衛生兵! ブラストがやられた!」

叫び声が響く。振り返ると、ブラストが胸を焼かれ、泥の中に倒れていた。

彼の白いアーマーは、あっという間に惑星の土色に染まっていく。

俺は彼の元へ駆け寄ろうとしたが、B1バトル・ドロイドの容赦ない掃射がそれを阻んだ。

「進め! 止まるな!」

コマンダーの声が響く。

そうだ。俺たちに立ち止まる権利はない。

一人が倒れれば、別のクローンがその場所を埋める。それだけの話だ。

戦闘が終わり、夜が訪れた。

簡易キャンプの中で、俺は自分のヘルメットを見つめていた。

傷だらけの白いバケツ。これが俺の顔だ。

鏡を見れば、周りにいる数千人の兄弟と同じ顔がそこにある。

声も、体格も、植え付けられた知識もすべて同じ。

「俺たちが死んだら、誰が俺たちを覚えているんだろうな」

ふと口から漏れた言葉に、誰も答えなかった。

みんな、今日失った兄弟のことを考えていたのか、あるいは明日の死を予感していたのか。

クローン・トルーパーには、老後という概念がない。

俺たちは戦うために生まれ、戦うために生き、そして戦いの中で消えていく。

カミーノの白い無機質な壁に囲まれていた頃、俺たちは外の世界に憧れていた。

広大な銀河を、自由な空を。

だが、手に入れたのは血生臭い硝煙と、終わりのない行軍だった。

それでも、俺は引き金を引く。

隣で戦う兄弟たちのために。俺を「セブン」と呼んでくれた、あの将軍のために。

たとえ俺という存在が、銀河の歴史の脚注にすら残らない塵だったとしても。

「……セブン、交代だ。少し休め」

別の兄弟が肩を叩く。彼もまた、俺と同じ顔をしていた。

俺は無言で頷き、ヘルメットを被り直した。

バイザー越しに見える世界は、少しだけ青白く、冷たい。

いつか、この戦争が終わる日が来るのだろうか。

その時、俺たちの「役目」はどうなるのだろう。

考えを打ち消すように、俺はブラスターの安全装置を確認した。

俺たちはクローン。共和国の盾であり、剣。

そして、名もなき英雄たちの影だ。


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