これが戦艦レ級! 悪魔の力よ!! 作:ウィルキンソンタンサン
稚拙な文を見せて申し訳ない気持ちがありますが、レ級ちゃんへの愛は止まらないので続きます。
てくてくてく、と喧騒に包まれる街の中を歩く。……いやはや、大変な目にあってしまった。
右肩から右腹にかけて血で染まってしまっているが、触った感じ傷は無い。
いやー、はは。不思議だなぁ(呑気)。
『ップハ!なにが起キタ……!?』
と、肩から声。目を向けると、ミニサイズのマスコットのようになった例の化け物が水面から這い上がるようにして姿を現した。ここまで小さいと脅威は感じない。可愛い。
「そう言われてもね……呑み込まれる寸前に何かを掴んで、それを我武者羅に引っ張ってたら……なんか、行けた?」
というか、本当に覚えてない。寸前で何かを掴んだのまでは覚えてるんだけれど、そこからすっぽりと記憶が無くなっている。残ったのは、ダイビングをした後の様なひと握りの達成感と疲労感。
『この姿……ックソ!ダセ!』
「いやいや、自分から入ったんでしょ。そんな事言われても私にはどうしようも……」
よくよく見れば、彼女の尻尾の先が私の肩と繋がっている。一心同体とでも言うのだろうか。
ひとまず状況をまとめると、だ。
"身体を乗っ取った後、逆に私に乗っ取り返され結果として元に戻ってしまった"
多分、こんなところか。しかも彼女は身体
え? 妙に落ち着いてんなって?
馬鹿言え動揺しまくりだよ。膝なんかもう産まれたての小鹿以下。顔と声の調子を維持するので精一杯。
でもあれだよね、人ってテンパリ過ぎると逆に冷静になるよね。多分今それ。
「まぁ、私から出られる方法が見つかるまでご一緒だね。どうぞよろしく」
『………。』
膨れっ面でそっぽを向く。何て奴だ、挨拶は大事だぞ? 古事記にもそう書かれている。
じゃけん自己紹介しましょうね〜
「私は
『お前のコトなんザ興味ナイ。』
「あ、そう。んじゃーそっちは名前……ある?」
『………特に、ナイ。』
それは困った。ずっと彼女とか奴とか呼んでるし、そろそろクドいんだけど。
付ければいいのか? でも私のネーミングセンスってたかが知れてるしな。
そんなようなことをグルグル考えていると、彼女は『でも』と接続転換の言葉を紡いだ。
『昔、呼ばレタ名はアル。』
「ほーん……なんて名前?」
呼ばれた名。仲間でもいたのだろうか?
呑気な考えを他所に、その口から出た固有名詞。
それを聞いた瞬間、私の動きは止まった。
『───戦艦、レ級。』
「……ゑ?」
れきゅう
レキュウ
レ級!?!!?
脳内にその単語がヒット。詳細を求めて記憶の棚を漁り倒す。
海底や川底に蓄積する小石──それは
抗精神病薬───それはレキサルティ!
有効熱を燃料の余熱に利用する熱交換器──それはレキュペレータ!
……あぁもう、レ級ってなんだっけ!?
忘れてないのに思い出せない!! こういうの超イライラする! 歯に挟まったニラが全然取れない時くらい腹立つ!
進行方向を宿への道から急速旋回し、港湾へ向かって全力疾走。目的はただ1つだ。
道行く人に怪訝な目で見られる。うるせぇ、この歳で全力疾走して何が悪い。
……いや、走ってる事への疑問の目ではないな。これはどちらかと言うと変質者を見る目────
あ、銃持ってない。
「F××K!!!」
なんて事だ、もう助からないゾ♡
キヴォトスでは全裸の奴よりも銃を持ってない奴の方が少ないんだぞ、何してんだ。
あ、このレ級のせいで落としたのか。クソが、どこ行きやがった私の銃。
突然吐かれたFワードに目を剥く民草を押し退け走る。
やがてオデュッセイア管轄下の整備停泊地たる港湾付近へ辿り着き、停泊している複数の大きな艦艇が目に入った。
どの船頭にも、銃を持った左向きの女性のエンブレム。オデュッセイア海洋高等学校が所有する自治区もとい船だ。
足元に気を付けながら、中でも一際大きな大型船へ爆走。
「ん? あれ、レーキじゃん。戻ったん? ちょっと手伝ってくんね───」
「ごめん後で!!!」
偶然そこで貨物の乗り入れをしていた同級の友人に声を掛けられるが、まともに受け答えしている暇が無いので適当に返事して船内へ。
「レーキ、船内走らない───って血だらけじゃないどうしたの!?」
「転んだ!!」
「な訳ありますかボケ!」
通路をタブレット片手に歩いていた奴の脇をくぐり抜け、テロリスト対策で必要以上に入り組んでいる通路を通り、『データ室』という表札が掲げられている部屋の前で急停止。
ドアの前の札を"空室"から"使用中"にして入る。
ここでは、今までオデュッセイアが得てきた情報が古今関係無く殆どアーカイブ化されており、いつでも閲覧する事が出来る。
端末に生徒証をかざし、セキュリティ認証をパス。表示された検索バーに"戦艦レ級"と打ち込み。
ヒット、1件。
「……やっぱりあった。100年前の御伽噺……」
『……』
「これ、あんたでしょ?100年選手とか、大先輩じゃん。」
当時もミレニアムとの提携で最新鋭の艤装を積んでいたはずの艦艇を尽く潰し、オデュッセイアを震え上がらせた海上の悪魔。
小さな悪魔、超弩級重雷装航空巡洋戦艦、ぼくのかんがえたさいきょうのせんかん。
コードネーム、Battleship。
その名も───
「なるほど、強い訳だ……」
『戦艦レ級』
……あーあ、厄ネタ背負い込んだわ。
☆
「おいレーキ、今朝からどうしたよそんな酷いツラして。フラれた?」
「アホ抜かせい。誰に惚れるんだよ船上しか知らない私達が」
「んー……私?」
「死ねとまでは言わないけど両手の指全部同時に突き指しろ」
「あまりの殺意に泣きそう」
翌日。1度戻ってきてしまったが故に補給の手伝いを強制されている現在、私はゾンビのような負のオーラを纏って仕事をしていた。
愛用のジャケットはクリーニング行きで、面倒くさい手伝いもさせられている。まぁ、そこまではいい。
問題はもっとある。それはもうデッカイのが。
「あんたさ……"レ級"って、知ってる?」
「ん? んー……」
物資を持って並列して歩いている友人に訊ねてみると、友人は首を傾げて考える。
「……あっ、もしかしてあれ? オデュッセイアの昔話……ってか、怪談?」
しばらくの思考の後、ポンと手を打ってそう返答。
「そう。……あれさ、本当だとしたらどうする?」
「えぇ? あれがぁ? そうだねぇ……砲撃とか魚雷とか艦攻とか艦爆とかぶっぱなしてきて、全部ちっちゃいサイズの癖にすんげー破壊力があるって話だもんなぁ……」
立ち止まり、うんうんと唸って再び考える。彼女の青色の髪が光を反射してキラキラと輝く。
数歩進んだ先で、その姿をぼうっと眺める。
また暫くして、頭を上げた彼女はこう答えた。
「っぱ1オデュッセイア生徒としちゃ、ぶっ飛ばしてみたいよなぁ……」
「………。」
その友人を、微妙な目で眺める。
だがその大言壮語も、あながち夢では無いのかもしれない。当時と比べて、当然ではあるが艤装は別次元で強化されている。どういう訳か100年囚われていたレ級が敵うのかと言えば……割と楽勝なのではなかろうか?
ゾクリと身震い。もし私がコイツを抑えられれず暴走すれば、諸々母校にボコボコにされるかもしれない*1。
最悪の場合、死ぬ。
……え、待って嫌すぎるんだけど。
「……せめて鹵獲に留めて」
「ん?」
「寝床にはベッドで、食事は3食」
「は?」
「独りだと寂しいから話し相手もつけて欲しい」
「え、知り合い?」
「うん」
「そうかぁ……そうかぁ!?」
「いや全然知らない」
「そうかぁ。」
再び歩き出す。補給と言えども、諸々の作業は終わっている為後は細々とした物しかない。
「ってか、捕獲じゃないの?鹵獲?」
「え、知らね」
「なんなん?」
……あぁ、憂鬱だ。こんな厄ネタが身体にいて、ちょっと間違えれば殺されるか檻の中。
オデュッセイアの内部進学組は、昔話だか童歌だかでレ級への恐れが根付いている。……にしては忘れかけていたが、まぁそんな事は置いておいて。
とにかく、それは幽霊や妖怪に向ける様な恐れではなく、船乗りが
自然に向ける、大いなる尊敬と畏怖。そして、勇気。
やる。
レ級だろうとクラーケンだろうと、オデュッセイアならば。オデュッセイアの大馬鹿者共ならば必ず
「……ほら、何があったのかは知んないけど今は仕事仕事。今日はサボらせないからね!」
「はぁーい……」
今は目の前で笑っているコイツも、ずっとこの顔を向けてくるとは限らない訳だ。
明日には鬼と化すかもしれない。演習時や交戦時の様な真面目くさった顔付きで、私の命を刈り取らんとしてくるかもしれない。
あーあ、全くさぁ…………。
────ワクワクするじゃん。
「……いいね、非日常がグッと近付いたねぇ……」
「仕事は日常だよアホンダラ。早く運ぶよ!」
「あ、はい。」
パタパタと先に保管庫へ走り去っていく友人。
非日常がいいなら早く身体を渡せよ、と頭の中で反響する声はスルー。
「理想の死に方は何かな。戦艦の主砲に貫かれて爆死かな。巡洋艦の魚雷にホーミングされて轟沈かな。」
『ワタシはそんなブザマな沈みカタハしない』
「どーだかね。ウチの装備を舐めないで欲しいね」
肩からぴょこっと出てきたレ級は自信があるようだが、私から言わせれば甘く見積もりすぎている。
オデュッセイアと技術提携している技術屋界の帝王、ミレニアムサイエンススクール謹製の艤装の数々。そう簡単に捌けるとは思えない。
通路を進み、すれ違う奴とちょっとした挨拶を交わしながら保管庫に物資を置いて盛大に息を吐く。
「うっし、OK。後は部屋行って予備のHG取って……」
『何するンダ?』
「んー? ……銃探しに行く。」
して、ジャンパーの裾を翻して部屋から出る。
『バショに検討ハ?』
「無い。さっぱりね。」
『はっ、ムノウめ。』
「尽く街ぶち壊してくれやがったあんたのせいなんだけどね!?!!?」
ベシッと肩を叩く。
いない、避けられた。
……あーあ。
「上手くやってける気がしない。」
しかしどうにも、ニヤケは抑えられなかった。
主人公は非日常が好きなガチサイコ覚悟ガンギマリ馬鹿です。
マジキチが好きなんです、仕方がない。