「『福音』」
あびゃー。といってジジイが吹き飛ばされた。
あれが遺言にならなければいいが。
「筋トレでもするか」
「父親の心配もせんで筋トレかい!」
「生きてるのか。とうとう死んだと思ったが」
この助平爺、毎日ベルのおば·····お義母さんの胸に手を突っ込もうとして返り討ちに合っている。懲りないにも程がある。
「というかジジイ、奥さんが居るんじゃねえのかよ。不倫か?」
「やめろ!ヘラの話は出すな!」
奥さんが怖いならセクハラすんなよ。
ベル・クラネルは激怒した。ベルには男のロマンというものが分からぬ。しかし、浮気には誰よりも敏感だった。
ベルは田舎の村で、お爺さんと暮らしていた。お爺さんは稀代のエロジジイだったが、色々な英雄譚を知っており、ベルは英雄が好きになった。
お爺さんには息子と呼べる男がいた。アルケイデスである。まさに現代に存在する英雄そのものと言える益荒男で、ベルは彼のことが好きだった。
二人とも両親を亡くし、お爺さん以外の家族はいなかった。二人は仲良くなった。本当に家族のように、いや、それ以上に。
そんな彼が村から出て何処かへ行ってしまった。お爺さんに言わせれば『女を捕まえにいった』らしいが、お爺さんはかなり適当な性格の助平爺なのであまり信用せず、最愛の彼の帰りを待った。
数日が経ち、ようやく彼は帰ってきた。
ベルはとても喜び、跳ね上がる様な気持ちで彼を迎えにいったら───
「大丈夫か?」
「五月蠅い。私に構うな」
美人なお姉さんと一緒にいた。
危ねぇ。あと数秒誤解を解くのが遅かったら死んでた。
『蛇』よりも死を近くに感じたぞ。
なんだかんだあってベルとジジイの暮らしにアルフィアが追加された。最初はベルもアルフィアを警戒していたが、いつのまにか仲良くなっていた。今では本当の親子の様である。
ジジイはいつも通り助平心を発揮して返り討ちに会っている。
アルフィアはまさに女王といった感じで君臨していて、病気も色々あって治ってきている。
ベルは───大抵はいつも通りだが、村の女性達と話をしたりするとなんか怖くなる。ヘラに似てきた、といったのはジジイだったか。
「にしても、どうしたもんかね。この『残骸』」
そう。『蛇』の残骸(ドロップアイテムというらしい)を村にまで持ってきたのだ。持ってくる時にバベルの入り口がガリガリ削れたが、まあ誤差だろう。持ってきたのはいいものの使い方がない。
武器や防具は論外だ。筋肉の方が強いし、邪魔になる。農具にでも使うか?
牙などからは毒が出た。蛇の毒は薬にできそうなので、ジジイが知っている薬屋などに渡したらしい。
皮にはまだ『魔法を反射する』特性が残っているらしい。何かに使えるかもしれない。
骨にはモンスターを寄せ付けない効果があった。畑の柵にでも使うか?
「うーん、保留で」