『精霊郷』
それはエルフに伝わる御伽話の中の秘境。
その名の通り精霊が住まう森であり、幻の『霊薬実』が実るとされる場所である。
「ハハハハハハハハハハハハッッ!!」
『火』が、踊っている。人型の『火』が『大聖樹』の前に立ち、踊っている。
その周りを、小さな、『光の球』が回っている。
その全ては『精霊』と呼ばれる『下界で最も神に近い存在』であり、
『英雄』に力を貸す『人類の隣人』である。
故に、『精霊』は『神に近しいもの』や『英雄』に惹かれる性質がある。
『大聖樹』が、実をつける。
本来精霊達との友愛の証として、儀式の後の宴でもたらされる『霊薬実』は、『火』の踊りに感化され、実をつけた。
「きゅっぴー3分メイキング〜!」
まず、材料を用意しましょう。
そのために、材料の材料を用意します。
『蛇』の毒 (大さじ1)
『生命の泉』の『源泉』からとってきた水
(いっぱい)
『英雄』 (一人)
『蛇』の毒は少量でも危険です。
十分に注意しましょう。触ったら死にます。
この毒をまずは薬に加工します。そのために毒と水を混ぜましょう。
比率とかは特に考えず、毒と水を混ぜて
神話的握力で圧縮します。
握力が弱い人は英雄にやってもらいましょう。
ギギギ、ギギギと物理法則を超越した音が聞こえたら加工完了です。
では材料です。
『蛇』の毒から作られた薬 (大さじ1)
『精霊』のエッセンス (大さじ1)
幻の『霊薬実』 (一つ)
『冬』の『精霊』 (一人)
『天上の神焔』 (浄化済み)
まずは『霊薬実』に『天上の神焔』で火を通し、浄化します。『天上の神焔』を持っていない人は
英雄か神に頼みましょう。
火が通り、なんか聖なる液体っぽいものが出てきたら火を止め、器に載せます。この時、『霊薬実』は熱く、柔らかくなっているので注意しましょう。
器に載せたら薬とエッセンスをかけ、『精霊』の力で冷まします。
『精霊』がいないなら魔法などで代用可能です。どうにもならなければ神に頼みましょう。
はい。完成です。
皆さんもご家族やお友達に作ってあげましょう。
「すごい!甘くて美味しい!」
「これは─────」
「マジかよ贅沢じゃな。ウッヒョー!」
「病気が、治った?」
「そう言っとるじゃろ。スキルが消えとるんじゃ。お前も最近調子良かったじゃろ。」
治った。治って、しまった。
生まれた時から自分と、自分が才能を奪った最愛の妹を苦しませ、殺した病が、治ってしまった。
「私は─────」
私は、救われた。あの『英雄』に。私だけが。
妹は、死んだのに。私だけが、また─────
「また変なこと考えてるだろ」
「─────」
見破られた。見透かされた。理解された。
この『最後の英雄』に。
この男は意外と周りを見ている。ベルと筋肉と英雄のこと以外考えてないような奴なのに。
「何が不満だ。何が不安だ。何が嫌だ。全部言え」
「·········私は妹から才能を奪った。妹は私と違ってトロくて、才能のかけらもない、甘くて、優しい、子だった」
懺悔するように、灰色の女は語り出す。
「白い髪で、私の忌むべき『雑音』を、好きだと言ってくれた。子供の名前につけるほどに」
「ああ、だから『ベル』なのか」
「妹は、私と同じ病気で死んだ。誰よりも優しかった妹は死んで、私は生きている。」
「·········」
男は、静かに聞いている。
「私はファミリアが黒竜の討伐に失敗し、壊滅した後は『竜の谷』で監視をしていた。
そこに、エレボスが現れた。
『最後の英雄』のための踏み台として、最後に悪として散る計画を聞かされた。私は──」
息を、吐いて。
「私は、『最後の英雄』を作ることにした。
妹の娘を捨てて、世界を取った。お前に連れられてこの村に来た時、心底驚いたよ。
妹の生き写しのような少女が、私を見ていた。
あの赤い眼は似てないが」
少しずつ、心を曝け出す。
「お前とベルを見て、安心した。ベルは妹と違って、ちゃんと守られている。お前が、ベルを救っていると、安心したんだ。」
「私はお前のようにはなれなかった。妹を救えなかった。お前がもっと早く生まれていたらと、何度も考えた。お前が私を救うたび、私は考えてしまった」
「私は、お前のようになりたかった」
懺悔とも言える話を聞いて、『英雄』は──
「最近わかってきたけどさ、アルフィアって結構馬鹿だよな」
「──なんだと?」
女は怒りを露わにする。言葉にはしないが、女は『英雄』を信頼していた。それを、馬鹿などと──
「お前は妹にとって英雄だったんだぞ」
ガツンと、頭を殴られたような衝撃だった。
「嫌いな奴の魔法とか好きじゃないし、子供の名前につけないぞ」
それは、女の負い目。妹の方が弱かったのに、
妹の方が人として優れていた。心のあり方で、女は妹に負けていた。そんな妹が、死んでしまった。
ずっと、嫌っていてくれ、憎んでいてくれと、ありえないことを思っていた。自分だけ救われることを、悔やんでいた。
「お前はお前の妹の英雄だった。それを否定するな」
「ッ!だが、妹は死んだ!私は、あの子を、救えなかった·····ッ!」
「やっぱり馬鹿だな。じゃあベルはなんだよ」
「は·····?」
「お前に救われたから、ベルが生まれたんだろ。妹がお前を愛していたから、『ベル』が生まれたんだろ」
「妹の愛を、否定するな」
「私、私は、わた、し·····」
「それに、お前はベルを救っている」
「ベル、を?」
男は語る。
アルフィアに会う前のあの白い少女を。
「昔は、一緒に遊んでても一緒に寝ててもどっか寂しそうにしててさ。村の親子を羨ましそうにしてたんだ。」
「だから俺は、ベルの英雄になろうと思ったんだ」
それは、羨むような声だった。
「ベルの孤独を、お前は癒した。俺ができなかったことを、簡単に。俺は、お前になりたかった。お前みたいに、ベルを救ってやりたかった」
懺悔するような、声だった。
「───そう、だったのか」
「というか、俺はもともと『最後の英雄』とか嫌だったんだぞ。」
「そうなのか?かなり楽しんでいるようだったが」
意外だ、という声で女は言う。
「今でこそそうだが、昔は嫌だった。民衆とかが嫌いだったしな。だから、ベルの英雄になりたかった。それをお前は·····。」
「お前が、ベルの英雄になった。俺は、ベルの英雄にはなれなかった。だからしょうがなく『最後の英雄』になることにした。
ベルと、ベルを救ったお前のために」
「フ、フフフ。ハハハハッ!」
女が、笑う。
「そうか、そうだったのか。お前が、私を·····。ハハハハッ!」
「笑いすぎだろ、恥ずかしい。」
男が、笑う。
「これで分かっただろ。お前は結構馬鹿だ。考えすぎなんだよ」
女はムッとして反論する。
「それを言うならお前は考えなさすぎだ。普段からその半分でも頭を使うべきだ」
「なんだとー!俺だって結構考えてるんだぞ!ベルのことはいつも考えてるし、お前の病気についても色々考えてたんだぞ!」
「ああ、そうだったな。お前は考えではなく言葉が足りない。もっと説明しろ。よくわからんものを口に入れるこっちの身にもなれ」
「しょうがねえなまったく。じゃあ、今日食べたスイーツの話からするか」
「は?あれも薬だったのか?」
「あれ、言ってなかったか?」
「言ってない!説明しろ!」