あっぶね。普通に女神様が水浴びしてた。
ジジイに言われて、狩りを誰かから学ぶことにした。
ということで、早速探すことにしたのだが──
「アルテミスという女神がモンスターを狩る活動をしておる。探して頼めばいけるじゃろ」
とジジイが言い出したので、なんとか女神アルテミスを探した。
「アルテミスは委員長気質でな。『貞淑』の女神じゃから男女の交際とか絶対認めないんじゃ。お前ももう少し大人しく、落ち着きを持たなければ断られるぞ」
「──ここは一発、カッコよくキメるか」
普通にめちゃくちゃ警戒されたけど、なんとかなった。やっぱ俺は誠実さが滲み出る良い男だな。
「獲物を追うときに殺気を出しすぎです。それではどこから襲ってくるかがすぐに悟られてしまいます」
「·······はい。」
なんか巧くいかねえなぁ。弓とか罠は女神以外に負けないくらいなのに。
どうしても敵を見つけたら殺気が出てしまう。狩りは『獲物』なのに、『闘い』だと思ってしまう。
「どうしたもんかねぇ」
あっぶね。普通に女神様が水浴びしてた。
「カリスト!」
「はい!」
『獲物』を追い詰める。罠を仕掛け、矢を射て、それでも止まらない。『獲物』は森から抜け───
───死角から飛来した矢に頭を射抜かれ、即死した。
アルケイデスは、『狩り』が上手くなっていた。以前までの殺気を出していた彼とはまるで別人のようだった。
「狩りの腕が飛躍的に上がっていますね。何か、きっかけがあったのでしょうか?」
「きっかけ、ですか。そうですね·····」
『狩人』は考えて、
「隠れ潜むことの重要性を理解しました。闘いではない、狩り故の本質を」
殺気を隠すことを覚えたアルケイデスは、狩人として完成されつつあった。
持ち前の剛力、弓の精度、罠の成功率、ナイフ捌き。
精神面でも、無駄な血を嫌い、嘘をつかず、紳士的で優しい彼は、良い狩人だった。
数ヶ月の狩りのせいか、彼の肉体は一回り小さくなった。筋肉が落ちたわけではない。『圧縮』されたのだ。筋繊維一本一本がワイヤーのように彼の肉体を構成している。
「女神アルテミス様。私と、勝負をしていただきたく存じます」
『狩人』は、勝負を挑んだ。
「勝負、ですか」
「はい。モンスターを狩った数で勝負し、私が勝った暁には、認めていただきたいのです」
「認める?一体何を?」
『狩猟の女神』は問う。
「私が、一人前の狩人であることを、です。」
『狩人』は答えた。
「勝負をしなくても、あなたは十分に一人前の狩人ですよ」
「あなたに勝って、私は初めて狩人としての自分を誇れるのです。あの女神アルテミスに勝った狩人だ、と。」
「では、始めますか」
「はい。合図はそちらでお願いします」
「では、私が矢を放ちます。この矢が地に落ちた時から始めということで」
それは、『狩り』だった。獲物を誘い、追い詰め、殺す。
「やはり強いな·····!」
『狩人』は思わず呟く。それもそうだろう。
相手にしているのは『狩猟』を生業とし、自らの象徴ともする女神。『神の力』が使えないとはいえ、最高の『狩人』である。
「·····互角、と言ったところでしょうか。」
『狩人』は思わず呟く。それもそうだろう。
相手にしているのは『下界の未知』。女神をして下界においてこれを超えるものはいないだろうと言い切れる最高の『狩人』である。
「·····ん?」
『狩人』がそれに気づく。
それは、『蠍』だった。ダンジョンが神々に対して送った『カウンター』。深層の階層主すら超える『怪物』。
『蠍』を前にして、『狩人』は───
「フン!」
『蠍』を、踏み潰した。
「まさか、引き分けとは」
「正直衝撃です。『神の力』がないとはいえ、
下界の子供と『狩猟の女神』が引き分けだなんて」
『狩猟の女神』は本当に驚いているようだった。
「········さて、『狩人』として認める、という話でしたが」
「勝負に勝てませんでした。この話は無かったことに········」
「いいえ。あなたは『狩人』です。『狩猟の女神』であるこの私が、あなたを『狩人』として認めます」
「───」
『女神』は『狩人』を認めた。
「·····多くのものを教えていただきました。自分が成長するきっかけを与えていただきました。」
「あなたに恥じるものがない『狩人』として、生きていきます」